20141009

私達の戦争 49: 未来に向かって 3

     

前回、起きるかもしれない戦争を想定しました。
今回は、その予防策を検討します。


    

対処法
前回、戦争毎に日本が取るべき対処案A,B,Cを記しました。
Aは自国の軍備増強で、Bは日米同盟強化で、共に既定路線の強化策です。
Cは、それぞれに応じた理想的な策ですが既定路線から外れています。

従来の対処法の是非
Aの軍備増強案 : 即、防衛と抑止効果を実感出来るのだが万全ではない。むしろ遅れて軍拡競争と敵意(警戒感)を生み、紛争の起爆剤になりやすい。

説明
如何なる敵と核兵器をも撃退する軍事力を所有することは無理です。
世界1位の米国の軍事費70兆円に対して6位の日本は5兆円で到底追い越すことは出来ないし、また軍拡競争に陥ります。
既に見てきたように、軍事力強化と仮想敵国想定自体が互いに疑心暗鬼に走らせ、多くの敵意を生みだしました。
また不用意な境界線などの作戦配備は、中ソ国境のダマンスキー島事件のように紛争勃発の引き金になりやすい。

軍事力は必要ですが、歴史が示すように軍事依存体質は紛争の火種を大きくしていきます。

    

Bの日米同盟強化: 軍事同盟は一国の軍事力不足を補え、抑止力を高めるのだが、これも問題を含み、個別の日米同盟には別の問題がある。

説明
集団的自衛権で見たように、通常、仮想敵国を含む同盟と対立することなり、これもまた軍拡競争と敵意(警戒感)を生むことになる。
大規模な同盟対決は、冷戦下のように頻発する代理戦争と、開戦の頻度こそ低いが、一度起きれば途方もない大きな戦争に発展することになる。

同盟を何処と結ぶかは、戦史が示すように国の命運を分けます。
中立の選択肢もあるが、これは戦争を避ける妙手ではあるが、孤立に繋がるのでグローバル化時代には合わない。
米国と結ぶのは、いざ戦争になっても軍事援助が期待出来、これが抑止力になると言う立場です。
この可能性を否定しませんが、所詮、米国が主で日本は脇役であり、米国にとって日本は防波堤に過ぎず、始まればベトナム戦争やイラク戦争の二の舞になるでしょう。
既に見てきましたが、抑止力は不確実なだけでなく、災いの種にもなりました。

同盟が目指すべきは、第一に紛争や戦争を予防することにあります。
その為には、最も紛争が起きやすい、国境を接し過去の怨念がくすぶっている隣国と融和を目指すべきです。
少なくとも、隣国と対立する国(米国など)との同盟強化は火に油を注ぐようなものです。
但し、現時点での隣国との軍事同盟は時期尚早でしょう。
第一次世界大戦前、英国は戦争を回避するために急膨張するドイツと同盟を結ぼうとしたがうまくいかず、結果的にドイツ包囲網(英仏露)で対立する結果になった。

また覇権国家=軍事大国はやがて気ままで横暴な政策を取り始めるようになり、これがまた紛争の原因にもなります。
中近東やアフリカ、中南米の内戦の原因は、かつての植民地政策の後遺症が大きいのですが、後に米国が強引な介入(裏でも)したことも大きく関わっています。
米国は両大戦までは孤立主義で、外国に干渉しない立前だったのですが、今や、軍事派遣では世界をリードしています、すべてが悪いわけではないが。
さらに米国はそのこともあり、武器生産では世界トップであり、紛争を熾烈にする武器輸出が重要な産業になっています。

    

予防策の基本とは
それでは戦争を根本的に予防するには、何が重要なのでしょうか。

暴挙に出ないように各国の軍縮
銃社会で考察したように、軍事増強は抑止力よりも戦争の可能性を高めます。
かつて世界は軍縮会議を幾度も行った実績があり、核兵器では二ヵ国間で合意が進んでいます。
一国だけよりも、各国の合意のもとで全体に漸次軍縮を図ることです。
そして通常兵器と核兵器の生産と流通量を減らし、全体で兵器を管理することです。

紛争調停と違法軍事行動の制圧
当事者間での紛争調停や一国だけの防衛・撃退では限界があり、放置すれば軍拡競争、泥沼に入り込みます。
これを防ぐには、周辺国や中立的な国(紛争当事国から信頼されている国)が参加して、紛争調停や違法軍事行動への制圧を行うことです。
現在、これは米英主体か希に国連が主導して行うこともあるが、恣意的か不完全です。
恣意的な軍事行動は反発を蓄積させます。
現在、NATOやアフリカ連合、ASEANなどが機能しています。
出来るだけ近隣から広域で、多宗教と多民族が参加して合意形成を行うべきです。

    

周辺国との融和を図る
いつの時代も紛争と犯罪の種は尽きません。
ましてこれからはその要因は深刻で大きな広がりを持つようになっています。
一番重要なのは、紛争の要因を積極的に取り払うことです。

軍事力は警察と同じで不可欠ですが、軍事力使用には歴史上繰り替えされている大きな問題があります。
紛争解決の戦争の結果、多くの血の代償としてオール・オア・ナッシングになり易く、これが次の紛争の種を宿すことになります。

紛争を予防するには、先ず隣国から、過去の軋轢を無くしていく努力と工夫、歩み寄りが最も大事です。

これらは常識的な範疇の予防策で言い古された感がありますが、これしかないように思います。

ここでまた、おそらく次の厳しい一言が返ってくるでしょう。
「最低で、たかり罵るしか能のない隣国をどうして信頼出来るのか、現実離れも甚だしい・・」

次回は、この問題を検討します。




20141008

私達の戦争 48: 未来に向かって 2

     

今日は、日本が将来巻き込まれるかもしれない戦争を想定します。
ほとんど予想は外れるでしょうが、一つでも当たれば悲惨です。
しかし、そこから見えてくるものがあります。

*2

起きるかもしれない戦争とは
1.北朝鮮による核攻撃
被害 : 核ミサイル着弾1発で死者数十万人。
可能性: 常識的には無いが、ヒトラーがベルリンを廃墟にして自死した例もある。
対処 : A=完璧な迎撃体制。B=日米同盟による核の傘。C=日中韓の包囲網。
 
2.韓国と国境紛争で開戦
被害 : 核攻撃無しで死者数万人以下になればよいが、他国参入により拡大か。
可能性: 紛争開始でも米国の仲介を期待出来るが、日韓の感情的亀裂が障害。
対処 : A=軍備増強。B=日米同盟強化。C=韓国と融和、さらに中国とも。

3.中国と国境紛争で開戦
被害 : 中国の核と軍事力により死者数百万人を越えることも。
可能性: 対立する米国仲介の効果低い。核攻撃無しで米軍援護を想定しても、日本は防波堤に過ぎず、決着のつかない戦場になるかも。
対処 : A=軍備増強。B=日米同盟強化。C=中国と融和、さらに韓国とも。

*3

4.テロ攻撃
被害 : 日本の原発一基が狙われても最大死者数十万人。
可能性: 現在、テロの可能性は低いが、恣意的な海外派兵が続くと報復される可能性が高く、海岸の原発は危険。またテロ集団には核抑止力が効かず、防御が困難。
対処 : A=核施設の防備強化。B=日米同盟強化。C=世界中のテロ集団を抑制する為に世界的な武器管理と軍事強制力・警察力が必要。

5.世界大戦
被害 : 核攻撃なしで、死者は世界で1億人以上、日本で数百万人以上。
可能性: 以下の要因が絡み合い、地域紛争から世界大戦になるかも。
イ.地球規模で地下資源枯渇と農水産資源の限界。人類が初めて経験し、秒読み段階。
ロ.世界中で経済格差増大(南北問題)、発展はしているが不満鬱積か。
ハ.繰り返すたびに巨大化している経済恐慌、米国発の10年毎の金融危機など。
ニ.既存大国と新興大国のパワーバランスの変化、世界の戦史が示している。
ホ.武器の蔓延とテロ集団の国際化で国境を越え広域化する紛争。
ヘ.今次大戦後、融和が進んでいない地域(特に東アジア)は、第一次から第二次世界大戦に至る同じ轍を踏むかも。

対処 : A=軍備増強。B=日米同盟強化。C=世界的な仲介・調整機能の拡充と世界的な軍事強制力・警察力が必要。

*4

6.核戦争
被害 : 1発のミサイル攻撃から連鎖して作戦配備中の数千発が発射され、一瞬にして世界の数億~数十億人が死亡。
可能性: 核拡散を防止出来ないため、安上がりの軍備である核兵器が蔓延し、偶発や想定外の事件で今後勃発の可能性は高まる一方。
対処 : A=完璧な迎撃体制。B=日米同盟強化。C=世界的な核制限の合意と強制力が必要。


*5

これらのケースが起こらない為に、私達はどうすれば良いのでしょうか?
おそらく次の一言が返ってくるでしょう。
「それは専門の軍人や政府に任せれば良い。素人の浅智恵など・・・」
今まで戦争を分析して来ましたが、開戦は指導者達の言動こそが要であり、国民は賛否を示すだけに終わりがちです。
国の指導者達は、よく言えば全体を見ながら、悪く言えば過去と現在のしがらみ(選挙、経済、政党、軍、外交)が足枷となり、平和や安全について国民の目線とは異なるようです。

任せていれば、おそらく徐々に深みにはまり、同じ過ちを繰り返すことでしょう。
国民が自ら善し悪しを判断出来なければ駄目です。
国民が世界を見据えて長期ビジョンを持たない限り、戦争を防げません。

次回、どのような選択があるかを考えます。



20141006

私達の戦争 47: 未来に向かって




    

今まで、私達の身の回りで起きた戦争や軍備について考察しました。
連載を終わるにあたって少し未来に目を向けます。

振り返って
この連載では、日本が経験した今次の大戦を振り返り、また戦争や軍備の基本的な概念(自衛、抑止、銃、核攻撃など)を見て来ました。
私が皆さんにお知らせしたかったことは、戦争が如何に起き易く、想像を絶し広範囲に及ぶ悲劇が待っていることです。

一度、不用意に足を突っ込むと、当初、国民に戦意が無くとも、また指導者がたとえ避けようとしても、やがて開戦から泥沼へと突き進む可能性が高いのです。
このメカニズムは複雑ですが、太平洋戦争に至る過程を極論すれば、引くに引けない指導者達、熱に浮かされる人々、信じて付き従う人々がそこにはいたのです。
それは半世紀を超える軍事大国邁進の帰結であり、それは数千年の間、人類が繰り返して来た「戦争の甘い罠」でした。

今、私がひしひしと感じるのは、戦後半世紀が経ち、悲惨な体験が忘れ去られ、またもや一昔前の熱に浮かされ初めていることです。
その切っ掛けは、超大国の陰りと猛追する大国とのパワーバランスの変化、資源問題に端を発する国境問題などにあります。
しかし、このような転換点は姿かたちこそ変われいつの世にもありました。
人々が、そのことで簡単に踊らされてしまえば、また同じ轍を踏み、何年か後に深い悲しみ包まれることになるかもしれません。

    

戦争はなぜ起きるのか
私はこの連載で詳しく説明しませんでしたが、本連載の「戦争勃発」や「連載、戦争の誤謬」で扱っています。
色々な要因が重なって起きるのですが、一つだけ断言出来る事があります。
戦いは人間が主体であり、悪感情が災いしていることです。

たとえ狂信的な指導者が戦争を煽っても、国民が冷静であれば容易に戦争に突き進むことはないでしょう。
しかし恐怖心や嫌悪・蔑視感情を煽られると、人々は容易に賛同し始めます。
当然ながら、指導者がこの手を使うからこそ起きるのであって、多くの民主国家が起こす戦争のパターンと言えます。

例えば、あなたに隣国で言葉が通じる友人が沢山いて、隣国のことを良く知っていれば、あなたの反応はどうでしょうか。
隣国と戦うことに国益があるとか、恐怖の根を断つためとか、名誉のためとか、言われても・・・・。
隣国への無知、無関心、無理解が大きな障壁になっているわけです。
理解が進むようになれば、多くの戦争原因である国益の奪い合いでオール・オア・ナッシングではなく、フィフティ・フィフティの妥協が可能になります。

    

異論を唱える人もいるはずです。
何も好きこのんで戦争をしたいわけではない。
隣国が先に仕掛けてくるから、隣国が挑発するから、弱みを見せてはならないから、逃げずに行動するのだと・・・。
この問題については既に説明して来ましたが、これも隣国への無知、無理解が拍車をかけている可能性があります。

概ね、戦争防止に何が必要かわかっていただけたかと思います。

    

ここで注意して頂きたいこと
それでは誰が敵意を煽るのでしょうか?
もし善意ある指導者や国民ばかりであれば、戦争は起こらないのでしょうか?
実は、このような場合にも戦争が起きる可能性はあります。
あまり説明していなかったことを一つだけ取り上げます。

それはマスコミの影響です。
現在、過去の戦争を否定的に報道するマスコミが一方にあり、同じ愚を犯してはならないと警鐘を鳴らし続けています。
一方で、過去の戦争を肯定的に報道するマスコミがあり、隣国を非難し続けています。
これは自由な言論の範疇に収まっているのでしょうか。

問題点だけ指摘しておきます。
過去に、後者のマスコミ報道が世論を席巻し、戦争に突き進んだのが半世紀から1世紀前のことでした。
それこそほとんどの報道や言論界が、徐々に好戦的になって行きました。
この手の報道は、政府と同調する時、いっそう勢いを得て危険度が高まります。
この問題を避ける一手として、欧米はヘイトスピーチの禁止や、虐殺事件などの否定報道の禁止を定めているのです。
最近、日本の元駐中国大使の弁によると、日本のマスコミ全体が中国の悪い事だけを報道する傾向にあるそうです。

*5

しかしもう一つ問題があります
それは明確に表面化していないのですが、日米関係です。
日本が今あるのは米国のおかげであり、その影響力は経済・金融・外交・防衛に深く根付いています。
米国にとって、日本は東アジアに対する防波堤であり橋頭堡であり続けています。
日本が米国から離脱し、東アジアと一体になることは、米国にとって最大級の危険要因です。
当然、これを阻止する為にはあらゆることが裏で行われるでしょう。
そのような例はGHQ以来、日米の密約、世界でのCIA暗躍などに見られます。

次回に続きます。





20141003

私達の戦争 46: 集団的自衛権とは

 < 1. NATO軍 >

今まで自衛と抑止、核抑止論を見て来ました。
最後に、集団的自衛権の基本的なところを見ます。

集団的自衛権とは
「国連憲章第51条で加盟国に認められた、ある国が武力攻撃を受けた場合、これと密接な関係にある他国がその武力攻撃に協同して反撃する権利」広辞苑より。

国連が認めるこの権利に問題があるように思えない。
おそらく、多くの人はそう思われるのではないでしょうか。
そこで、歴史上有名な軍事同盟から、集団的自衛権の功罪を見ます。
両者は、厳密には異なるでしょうが、基本的な働きでは同じです。
それは勝利や交戦防止に役立っこともあったが、最後には破滅をもたらすこともあった。

    

様々な軍事同盟がもたらしたもの
*ペロポネソス戦争
紀元前5世紀、アテネとスパルタがギリシャ諸国を二分する同盟に分かれ戦い、これにより全土が疲弊することになった。
ことの発端は、ペルシャ帝国の侵攻を防ぐ為に軍事同盟が創られ、アテネが盟主となった。
やがてアテネは絶大な権益を得て、益々軍事大国を目指し強権的になっていきました。
これに反発し警戒する勢力がスパルタを盟主とする同盟を結び、アテネ同盟(デロス同盟)と戦うようになった。


    

*秦の統一
紀元前3世紀、春秋戦国時代の末期、秦国は残り6ヵ国を滅ぼす為に遠交近攻策を取り、ついには天下統一を成し遂げた。
これは先ず遠方の国と同盟を結び、近隣の国から征服し、漸次征服を拡大させる戦略でした。
日本の戦国時代、隣国を牽制する為に、その背後の国と同盟を結ぶことがよく行われました。


    

*第一次世界大戦
1914~18年、主にヨーロッパで、次々と主要各国が参戦し史上最初の総力戦が行われた。
その半世紀ほど前から、ヨーロッパの列強5カ国とロシアが勢力拡大と交戦防止のために、二手に分かれて同盟を結んでいた。
民族問題で火種を抱えていたバルカン半島も、この余波を受けて二つの同盟に分かれて組みしていた。
バルカン半島で起きた、一つの暗殺事件を切っ掛けに、同盟国を巻き込んで連載的に戦火が拡大し、遠方の日米すら参戦することになった。


 
    

*太平洋戦争
既に、独伊がヨーロッパで、日本は中国との戦争を始めていた。
そこで日本は強力な軍事同盟を日独伊と結ぶことにより、英米ソとの交戦を避け、戦況の打開を図った。
しかし、それがすべて裏目に出ました。

軍事同盟の功罪
歴史的や私たちの身の周りにおいて、弱い者同士が手を握り、防御するのは自然の成り行きです。
しかし、既に「銃がもたらすもの」「自衛とは」「抑止力とは」「核攻撃」で見たように、各国が軍事同盟に頼り、外交手段(意思疎通)を閉ざしてしまうことは、双方が疑心暗鬼になり、より敵意を増大させ、軍拡競争に突入してしまうのです。
そして、ちょっとした誤解や事件から戦端が開き、同盟締結前と比べものにならない戦火の拡大となるのです。
日本においても、豊臣政権から江戸幕府にかけて天下統一がなされると、配下の大名の勝手な婚姻が禁じられました。
同盟に至る行為は大きな武力蜂起に繋がると危険視されたのです。

軍事同盟―集団的自衛権は、戦争と平和に対して、両刃の剣なのです。

国連憲章第51条の意味
それではなぜ国連は戦争を招き易くなる集団的自衛権を認めたのでしょうか?
そこには国連のディレンマから抜け出す苦渋の選択があったのです。
国連参加の中小国は、大国の拒否権や米国が主張する集団的自衛権を問題にした。
米国にとって集団的自衛権は連邦制の軍隊やモンロー主義もあり国是だった。
また拒否権などにより安全保障理事会による武力攻撃への強制行動が間に合わない場合、自衛権と集団的自衛権が認められていれば、各国は対処出来ることになる。
しかし一方で、それらを認めないことで米やソ連が国連から離脱することになれば分裂が生じ、これまた戦争の起因になることが懸念された。
こうして条文は成立した。

その後、度重なる拒否権の行使は、多くの強制行動を不可能にし、またNATOやワルシャワ条約機構などの集団的自衛権に基づく同盟が生まれた。
結局、矛盾を孕んだままの妥協であった。

日本国憲法9条との整合性
自衛隊を持つことは、規模にもよるが違憲とまでは言えないだろう。
しかし集団的自衛権については、今まで政府は違憲と解釈して来た。
一方、政府が解釈変更を絶対に行ってはならないわけではない。
残念なことに、日本の違憲審査制度が確立していないので、勝手な解釈変更を正す手段がないのが致命傷です。

米国の場合は、成文憲法の制定が最古であり未完とも言えたので、後に憲法修正が行われた。
またかつて議会で解釈変更が行われようとした時、合衆国最高裁がそれを違憲とし、米国では三権分立が機能していることが示された。

日本にとって問題は、三権分立が機能しておらず、政府の恣意的な転換を正すことが出来ないことにある。
この状況の中で、集団的自衛権の合憲決定は、蟻の一穴が大きな崩壊をもたらすのと似ていると言える。


集団的自衛権とどう向き合えば良いのか
既に見たように、国や国民が安易に集団的自衛権に頼ると、敵を作り、戦端を開き易くしてしまい、戦火も増大するのです。

最も良いのは、敵意を醸成しない自衛だけを目指し、世界が一つの同盟になることです。
それは取りも直さず国連の正常化であり、安全保障理事会の上述の欠点を正すことが重要です。
日本にとっての次点の策は、EUNATOのように、かつての交戦国が手を携えることでしょう。
国家間の戦争の多くは国境で起きるので、隣国と手を結ぶことが戦争防止の基本です。
戦争は簡単に起きますが、平和を構築するには誤解を解き融和を築くことが不可欠です。

戦争を回避するには長期ビジョンと長期の努力が必要になるでしょう。

次回からは、この連載の最後のテーマを扱います。




20140930

I will travel in Spain and Portugal


Temple de la Sagrada Familia
 < 1. Temple de la Sagrada Familia >


I travel in Spain and Portugal with a package tour.
Do you have any information for me, please?

私はスペイン・ポルトガルをパックツアーで旅行します。
皆さん、どうか役立ち情報を教えて下さい。


map of Spain and Portugal
< 2. the red points in the map show main visit place >

Summary of this package tour
Tour name
“Traveling all over Spain and Portugal for 13 days, the Andalucia districts of the passion” by ”tropics” of Hankyu Travel International Co.,Ltd

Visited places in order of visiting
Beginning from Spain, Barcelona (Temple de la Sagrada Familia, etc., a night), Zaragoza, Toledo, Madrid ( Prado Museum, etc., a night,), the La Mancha district, Cordoba, Granada ( Palacio de la Alhambra, a night), Ronda, and Seville (a night).
Going to Portugal from here, Elvas, Evora, Lisbon ( Mosteiro dos Jeronimos, etc., two nights), Coimbra, and Porto (two nights).
Again going to Spain from here, Santiago de Compostela, Salamanca, Avila, and Segovia( Acueducto Romano, a night).
 

旅行の概要
ツアー : 阪急交通社トラピックス催行の「情熱のアンダルシア地方を巡る!!13日間のスペイン・ポルトガル」

訪問地(行程順):
スペインから始まり、バルセロナ(聖家族教会など、1泊)、サラゴサ、トレド、マドリッド(プラド美術館など、1泊)、ラ・マンチャ地方、コルトバ、グラダナ(アルハンブラ宮殿、1泊)、ロンダ、セビージャ(1泊)。
ここからポルトガルのエルバァス、エボォラ、リスボン(ジェロニモス修道院など、2泊)、コインブラ、ポルト(2泊)
ここからまたスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ、サラマンカ、アビラ、セゴビア(水道橋など、1泊)

Palacio de la Alhambra
< 3. Palacio de la Alhambra 

Acueducto Romano in Segovia
< 4.  Acueducto Romano in Segovia

Catedral in Santiago de Compostela
< 5.  Catedral in Santiago de Compostela 

The feature of this tour

By this tour, we visit the 15 world heritages, and we can look at most of scenery of the Iberian Peninsula except for the northeastern part of Spain and some part of the Mediterranean.
However we must move by bus all and this tour is slog, because the arrival time at hotel is around 20:00 every day.
In addition, there is little free time because the sightseeing schedule is full.


このツアーの特徴
このツアーは15の世界遺産を巡り、スペイン東北部と地中海側の一部を除いてイベリア半島の景観をほとんど見ることが出来ます。
しかし総べてバスで回り、毎日ホテル着は夜8時頃になる強行軍です。
また観光日程がびっしり詰まっているので、自由時間がほとんどありません。

Lisbon 
< 6.  Lisbon 

My pleasures 

I would like to see all things avariciously, and to feel the history and the livelihood of the country.
The both countries were the contact point between Islam and Christianity, Africa and Europe, the Mediterranean Sea and the Atlantic, and experienced the world leader once.
Especially this time, I look forward to visit the building of Gaudi of Barcelona and Santiago de Compostela where people pilgrimage to, and walk in Lisbon.


私の愉しみ
私は貪欲にあらゆるものを見て、その国の歴史と暮らしを感じたい。
両国は、イスラム教とキリスト教、アフリカとヨーロッパ、地中海と大西洋の接点で、世界の覇者を経験した。
今回は特にバルセロナのガウディの建築、リスボンの町歩き、巡礼のサンティアゴ・デ・コンポステーラを愉しみにしています。

Could you tell me, please?
My free time is only twice from lunch of Lisbon and from dinner of Porto.
Because I want to enjoy a meal and a fado (folk song), please tell me the good information.
As for the way of enjoying town walks, the tourist attraction, and the information of popular spot for photographs.
If there are dangerous information and the convenient information, I would like it.

As I come home, I intend to introduce to you my impression with photos.


皆さんに教えて頂きたいこと
私が自由散策出来るのは、リスボンの昼食からとポルトの夕食からの2回だけです。
食事やファド(民謡)を楽しみたいので、良い情報を教えて下さい。
町歩きの楽しみ方や、観光スポット、写真スポットの情報も。
他に、危険情報や便利な情報もありましたら、お願いします。

帰って来たら、感動を写真で紹介するつもりです。




20140928

私達の戦争 45: 核攻撃 2


広島の原爆ドーム 


< 1. 広島の原爆ドーム >

今日は、米ソの核兵器競争を振り返ります。
この競争には立派な抑止論が唱えられていましたが、常識から外れていました。


キューバ危機
< 2. キューバ危機 >

冷戦時代の核兵器競争とは
大戦前、欧米にとってソ連は脅威で、その抑えを期待してドイツの軍事化を容認していました。
しかし日独伊が牙を剥くと、米国はソ連と手を握りました。
これも大戦が終わるまでで、米国はソ連の通常戦力の優位を恐れ、核兵器武装で対抗し始めた。
遅れて、ソ連も核開発を成功させ、互いに配備競争に突入します。
この競争が一息つくのは、ソ連の崩壊まで待たなければなりませんでした。

米ソの核弾頭備蓄量 
< 3. 米ソの核弾頭備蓄量 >

米国の動き―グラフ3の青線
物理学者アイシュタインがヒトラーの核開発に先んじるように米国に進言した。
こうして米国が核兵器を生みだしヒトラーが去り、世界は救われたように思えた。

米は大戦後、ソ連の工業力を過大評価し、ソ連の通常兵器による欧州侵略が可能とし、核兵器による壊滅的な報復(抑止)が必要と判断した。
1953から61年在任のアイゼンハワー米大統領は、報復手段として核兵器が安上がりで、「全面核戦争に拡大してしまう大量報復の恐怖」は、ソ連や自国も含めた世界の紛争の抑止になると考えた。
これがグラフの急上昇を示す。
やがて60年代に始まる二つの軍事技術により核備蓄は低下する
偵察衛星によりソ連の実情を正確に把握出来るようになった。
潜水艦発射弾道ミサイルは奇襲攻撃を受けることなく反撃出来るので、破壊されることを前提にした核備蓄が不要になった。

ソ連の動き――グラフ3の赤線
米国は60年代にベトナム戦争に介入し、75年まで泥沼へと深入りしていった。
ソ連は、この時期に米国より優位に立とうとし、核兵器を増産した。
しかしこれはGDPに占める軍事費を20%まで高め、経済を大きく圧迫していた。
この状況の打破を期待されてゴルバチョフ大統領が誕生した。
彼は平和外交を目指し、1990年、米ソの合意により冷戦が終結した。

潜水艦発射弾道ミサイル
< 4. 潜水艦発射弾道ミサイル >


核戦略の変遷―しどろもどろの抑止論
54年、米国はソ連大都市への核兵器による大量報復能力を持つことで、ソ連の核攻撃と通常兵器による侵攻を抑止する「大量報復戦略」を唱えた。
57年、ソ連は、米国の爆撃機の核攻撃に対抗して大陸間弾道ミサイルで先制核攻撃上優位に立った。
こうして米ソはミサイル競争に突入した。
60年代始め、米国は、敵から発見され難い潜水艦発射弾道ミサイルを配備した。
62年、キューバ危機が発生し、米国で「核の大量報復は狂気であり、威嚇として通用しない」と批判が起きた。
そこで米国は、いきなり全面核戦争に陥らないように、攻撃を軍事目標に限定する「柔軟反応戦略」を唱えた。
これ以降、米国は対軍事力に絞った小型の「戦術核兵器」を生みだしていく。
65年、急に米国はソ連の人口1/3と産業施設2/3を確実に破壊出来る「確証破壊戦略」を発表した。
この戦略転換は、増大する軍事費への苦肉の策であった。

しかし双方の迎撃体制が進む中、新たな問題が起きた。
互いがあるゆる核攻撃に対して迎撃可能になり、何処か防御に弱点が露わになると、そこを先制攻撃する誘惑に駆られ、むしろ抑止が不安定になるとの考えが出て来た。
そこで米国は、互いの迎撃ミサイルを自制し、先制核攻撃にも生き残れる潜水艦発射弾道ミサイルを保有し合うことで抑止力を残す「相互確証破壊戦略」を唱え、ソ連もこれに同調した。

一方、ソ連が巨大な核爆弾を開発し戦略核戦力を急速に増大させ、70年代半ばに米国を凌ぐようになった。
これで疑心暗鬼に陥った米国は、ソ連へのあらゆる核攻撃で、ソ連が想定するだろう米本土攻撃の損害と相殺させるとした「相殺戦略」を唱えた。
その後、弾道数で勝っていたソ連ではあったが経済が低迷し、軍事技術で劣勢になった。

83年、レーガンが強気のスターウォーズ計画(ミサイル衛星)を発表したことにより、ソ連は核兵器競争を諦めることになった。
こうして85年、米ソは「抑止のための核兵器」の考えで始めて正式に一致し、核兵器削減を始めた。



米国の核兵器総保有数と作戦配備数 
< 5. 米国の核兵器総保有数と作戦配備数 >

現代の状況
今だ、米ソ合わせて16000発の核弾道を保有し、ミサイルや爆撃機により作戦配備されているものはその内、計4000発ある。
核爆弾の威力は人口密度により異なるが300ktの大都市投下で、40~220万人の被害、死者は半数と予想される。
広島に投下された原爆は15ktだった。
したがって米ソ核兵器の2009年の総出力19200Mtが総べて使用されたら、26~140億人が被害を受け、13~70億人が死亡するだろう。

米ソの核兵器競争のジレンマ―不思議な抑止論
大戦後、米ソは互いに抑止力と称して核兵器の製造に血眼になった。
そしてピーク時には、双方合わせて地球人口を7度死滅させるだけの威力を保有するようになった。
「総べてが死滅する恐怖こそが抑止力である」
これこそが冷戦時代、核戦争を逃れた理由だと主張する人々がいる。
この手の軍事研究者は米国で官民学合わせて1万人を超えるのではないか、私にはこれを間違いだと言い切る力は無い。

しかし、単純に考えていただきたい。
抑止と言いながら、自国も自滅する兵器を造り続ける判断は正常だろうか?
増大する軍事費は自国経済の足枷となった、ソ連は特に深刻であった。
その権威ある核抑止理論だが、辻褄が合わなくなり幾度も様変わりした。

抑止で始めた核兵器であったが、やがて先制攻撃が主眼になり、互いに破壊し合い、残った核ミサイルによる反撃を想定するようになった。
その時、既に国民は死滅し、放射能で生命は永久に誕生出来ないにも関わらず。
ある時は、互いに配備の弱点を曝し確認し合うことにより、先制攻撃の誘惑を排除しようと信頼の手を差し伸べた(相互確証破壊戦略)。
ここまで行くなら、後一歩で和平交渉になるのではないだろうか?

もっとも、核開発にばく進した米国もキューバ危機とベトナム戦争の苦さを噛みしめ、それに猛追したソ連も経済悪化に耐えきれず、やっと競争の無駄に気がつき始めた。
それに40年から70年を要し、未だに真の反省に至っていないように見受ける。

何かがおかしい、頭が良すぎて、現実が見えないのか、軍事的職務に忠実なだけなのか。
軍産共同体で生きる人ならいざ知らず、一般人には不合理この上なく、抑止論は言い訳にしか聞こえないだろう。

より深刻な問題
オバマ大統領のがんばりで米ソの核兵器は減るだろうが、まだまだ多い。
それよりも核兵器が拡散し9ヵ国まで広がり、後続を止めるのが困難な状況にある。
銃社会で検討したように、今後、偶発事故やテロ、狂信的な指導者による核戦争の恐怖は増していくだろう。

抑止を単純に信じることの愚かさから抜け出して、新たな平和戦略を生みださないと、それこそ手遅れになる。

もう一つは、原発事故で経験したように、核兵器の廃棄も問題です。
ニュースにはならないが、米国のハンフォード・サイトでは放射能汚染が起きている。

次回は、別のテーマを扱います。