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前回、ふるさと納税が消費を減少させていることを確認しました。
ところが実害はさらに深刻です。
問題点を洗い出します。
< 図2.ふるさと納税寄付者の利得 >
図の説明
前回検討した金の出入りを、一人の寄付者で確認します。
寄付者は手数料2千円を支払い、ふるさと納税を申告すると、特例により納税すべき20万円をまったく納める必要が無くる(減税)。
さらに寄付先の自治体から市場価格で16万円(80%)の返礼品、多くは食品が届きます(限度30%だが還元率は遥かに高い)。
すると寄付者の世帯は、生活費(食費)を8万円(50%)節約するでしょう。
また減税20万円の内、予定外の購入に平均5万円(25%)使い、残り15万は預金(投資)などに充てるでしょう。
< 図3. 減税と納税の関係 >
図の説明
今度は全体像を掴むために、500人の寄付者で確認します。
ふるさと納税が行われると、寄付総額1億円を別の国民の納税1億円で補わなければなりません。
赤字国債発行でも良いが、本質は誰かが補わないと税収不足になるからです。
(税収1億円の国で1億円減税出来るだろうか?)
< 図4. ふるさと納税前後の全体の消費 >
図の説明
上図は通常の納税で、下図はふるさと納税後です。
通常、寄付予定者5百人は1億円、他の国民も1億円を納税し、計2億円が国民に直接サービスされていた(後で減税を考慮する為)。
ふるさと納税になると
国民へのサービス(消費)は都市から地方に移り、2億円が7千万円に減ります。
地方の返礼品業者は3千万円の売上(消費)を増やします。
寄付者は、2千5百万円を新たに消費し、4千万円を返礼品で消費を減らします。
すると都市部の返礼品(代替え)売上が4千万円減り、全国で合計1千万円減ることになる(図中の注意1)。
結局、合計消費は2億円から8千5百万円(7+3+2.5-4=8.5)に減った。
しかも、国民への直接サービスは1億3千万円も減った。
< 図5.ふるさと納税前後の全体の流れ >
上図: 通常の税制では、寄付者5百人と国民は合計2億円を納税し、国民に2億円が広く支出される。
シンプルで、国民全体が潤っています。
下の図: ふるさと納税が行われると大変な事態が起きた。
既に見たように、消費が減り、国民サービスが減り、減税で納税額が減り、結果、赤字なので増税される。
* まとめ 問題点の整理
ふるさと納税前後を比較する。
l 消費が減る。
2億円から合計8千5百万円に減る。
実は、こんな事をしているから経済が没落するのです。
数年以内に、ふるさと納税額は1兆円に達します。
すると前述の試算値から、毎年1兆1千5百億円の消費が減り、経済の足枷になります。
これを防ぐ為に1兆円の増税をしなければならないが、するとまた消費が減り、経済はダウンする(消費増税は最悪)。
結局、こんな無駄を繰り返している限り、日本は浮かばれない。
l 市民サービスが減る。
2億円から7千万円に減る。
政府は市民サービスを減らすことに無頓着です。
l 徴税は逆進性になり、かつ減る。
結局、今後も毎年、寄付者(高所得者)には1兆円減税、一般国民(低所与得層)には1兆円増税か赤字国債発行になる。
これも格差を拡大させる。
* まだ深刻な問題がある
l ふるさと納税は、さらに自治体を疲弊させる。
支出は幾分増えるが変動があり、長期的な支出に使用出来ない。
結局、自主性のある経営を志向できない。
今の制度では、自治体は寄付金獲得競争で赤字すれすれまで返礼品業者に寄付金を注ぐだろう(表向きは出来ないが、少しでも収入増になる)。
本来、中央政府の徴税権をもっと地方に移管し、交付金のような自主性を阻害する税制を改めるべきです。
l 未だに政府は需要喚起策が分かっていない。
土建中心の公共工事や富裕層・法人への減税しか頭にない。
一部官僚は問題を理解しているが、今の政府では胡麻すりが横行し諫言出来る状況にない。
政府(与党議員)は選挙目当の人気取りと業界保護から 抜けられない。
これは明治期からの古い体質、そして自民党長期政権の弊害の最たるものです。
l マスコミや経済学が機能しておらず、国民に正しい判断材料が提供されていない。
2008年に、諮問を受けて「ふるさと納税研究会報告書」が提出されているが、一部を見ただけで絶句した。
言い出した人物(菅)への忖度で、地方活性化の嚆矢になると讃え、細かい点を指摘しているだけで、私が指摘して来た重要な視点はまったく無い。
私は小さな地方自治体の諮問委員のようなことをしているが、これが実情です。
これも長期政権による癒着が災いしている。
l 「ふるさと納税」の基本的な欠陥は、通常の寄付行為の所得控除を「全額税額控除」に替え、商品を提供できる自治体を「寄付先に認定」したことです。
* 最後に
このような害悪を垂れ流す政策が堂々と行われ続けているからこそ、日本は没落せざるを得ないのです。
これは日本政府の愚かさが如何に無駄を生み出すかの典型例です。
このシミレーションは、結局、減税と増税の問題に尽きます。
私は経済専門でないので、ミスがあるかもしれませんが、ご容赦のほど宜しく。
次回に続きます。
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