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20261011

連載 国民の責任 6; 軍備と敵について

   


国が戦争を始めた時、「国民に責任があるのか」、日本と米国について考えます。

 

今回は、軍備にまつわる話をします。

 

 

軍備は必要か

 

必要ですが、条件があります。

基本は、「隣国が侵攻されると疑心暗鬼にならない程度に自国の軍備を抑える」のが賢明です。

この為に、通常、地域全体で軍縮協定や軍事同盟(NATO等)を結び、軍拡競争に陥らないようにします。

しかし、安心は出来ません。

対立する軍事同盟が互いに牽制するようになるからです。

もう一つ日本には厳しい状況があります。

それは三つの独裁国家に囲まれていることです。

一方、米国などの軍事同盟があり、安心できる部分もあります。

 

 

考慮すべき問題とは何か?

 

仮想敵国の想定と抑止力です。

通常、自国の軍事力は、仮想敵国を設定し、相手の侵攻意欲を挫く程度まで上げることを目指します。

この軍事力に期待するものを抑止力と言います。

多くは自国より巨大な軍事力を持つ国を仮想敵国に選びますので、軍拡競争に突入しやすい。

 

話は単純そうですが非常に厄介で、この仮想敵国と抑止力の概念は、頻繁に間違いを生み、むしろ戦争を呼び込むことになった。

簡単に幾つかの事例を紹介します。

 

 

抑止力への過信と、過度な期待が戦争を煽った例

 

第一次世界大戦では、軍事同盟が引き金になりました。

当時のヨーロッパは、三国同盟(独・墺・伊)と三国協商(英・仏・露)という巨大な同盟網によって勢力均衡を保っていました。

「自国を攻撃すれば同盟国が参戦し、世界大戦になるぞ」という威嚇が、互いの戦争を抑止すると信じられていた。

しかし、2発の銃弾によるオーストリア皇太子夫妻の暗殺が、引き金になり、相次いで同盟国が戦端を開き、戦争はユーラシア大陸を巻き込んだ。

 

太平洋戦争(日米開戦)では、日米共に判断ミスをしていた。

既に説明しましたが、日本陸軍は日独伊三国同盟に「強大なドイツと結べば、アメリカは二正面作戦を恐れて妥協するだろう」という強力な外交的抑止力を期待した。

しかし米国は「世界支配を企む枢軸国側の包囲網」と捉え、日本への敵対心を激化させ、開戦に向かわせた。

また米国は、日本の中国・東南アジアへの拡張政策を抑止するために段階的な経済制裁を実施し、太平洋艦隊を真珠湾に配置した。

しかし日本は「国家の生存に対する決定的な脅威」であり、ジリ貧になる前に「予防的な先制攻撃」へと向かった。

 

 


 

 

米ソの核軍拡競争は、抑止力の概念を変えながら核戦争の防止を図った。

これは抑止力が如何にあやふやなものであり、難しいかを示している。

1940年代から1980年代までに、大きく3~4段階の変遷を経た。

大量報復戦略⇒相互確実破壊⇒軍備管理と相殺戦略へと、両国は交渉を経て兵器削減条約を結んできた。

互いに相手を核で完全に破壊する前提で始まったが、やがてピンポイント、核には核で、通常兵器には通常兵器でと、限定する方向へ進んだ。

 

 


 

 

仮想敵国を誤って開戦した例

 

ベトナム戦争が最も象徴的で悲惨な例と言えます。

1955~1975年、米国が南ベトナムを支援する為にベトナムに侵攻し、北ベトナムとベトナム解放戦線との間で行われた戦争です。

米国の5人の大統領が、共産主義の拡大を恐れ、南ベトナム支援を開始し、徐々に大規模派兵を行うようになり、遂には北ベトナムが勝利し、米国は撤退した。

総死者数は200~400万人、米国も6万人の死者を出したが、ほとんどはベトナム人でした。

 

当時の米国は、北ベトナムを「ソ連や中国が操る共産主義の手先」という巨大な妄想に憑りつかれていた。

しかし北ベトナムの動機は、「外国勢力に分断され、米国の傀儡政権となった南ベトナムからの民族独立と国家統一」でした。

この戦争を指揮した米国のマクナマラ元国防長官は敗戦の20年後、「一枚岩の共産主義の脅威」など存在せず、ベトナム人のナショナリズムの強さ、そしてベトナムは中国と対立さえしていた事を後になった知ったと回顧録で深く反省しています。

彼は間違ったが、己の重大ミスを正直に告白できた立派な人物でした。

日々、嘘を吐き続ける大統領と同じホワイトハウスにいたとは考えられない。

イラク戦争も、有りもしない敵(兵器)を求めた結果でした。

 

 

満州事変が太平洋戦争へと向かわせた。

 

これは少数グループによる仮想敵国の想定が、大きな災いを招いた日本らしい事例です。

満州事変の首謀者は関東軍参謀の石原でしたが、彼は「いずれ日本は米国と戦うことになる」、この理由は、日蓮の予言にある「世界最終戦論」に基づいていました。

馬鹿みたいと思われるかもしれませんが、世界中の多くの宗教に「最終戦」が盛り込まれており、新約聖書にハルマゲドン、ヒンドゥー教にも善と悪による最終決戦が示されています。

 

日本の仮想敵国は日清戦争辺りからロシア(ソ連)でしたが、後に、米国も仮想敵国に格上げされた。

こうして満州事変が起きたが、政府は拡大阻止の手を打ったなかったので、泥沼にはまる事になった。

後に大本営政府は国策決定で、ソ連侵攻に備えた「北進論」と米国決戦に備えた「南進論」で対立することになる。

結局は、明確な理由もなく南進論を採ることになった。

 

 

 

まとめ

 

最初、皆さんは抑止力と仮想敵国の想定は、簡単だと思われたでしょう。

しかし、実際には、非常に複雑であり、困難なのです。

単純に、同盟を組むとか、軍備増強で済む問題ではないのです。

だからこそ、長い戦争の経験から、中立を選んだ国もあるのです。

 

一番重要なのは、世界中の情報を広く集め、分析を積み重ねる事と、仮想敵国と言えども、多くの国と外交交渉を続ける事です。

 

 

--目次---

 

1話;悪化の責任は誰に

2話;皇軍が選んだ道

3話;独裁に魅了された人々

4話;皇軍の軍人魂とは

5話;日本の戦争を振り返る

6話;軍備と敵について

7話;戦争に向き合う

8話;米国民へのお願い

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

20261010

連載 国民の責任 5; 日本の戦争を振り返る

   


国が戦争を始めた時、「国民に責任があるのか」、日本と米国について考えます。

 

今回は、過去の戦争を理解し、問題点を拾いだします。

 

 

日本の戦争をどう見るか

 

日清戦争から太平洋戦争までの過程は、自己防衛、五族共和、アジア解放などの為であって、けっして侵略では無かったと信じている人もいる。

また、朝鮮半島や台湾の開発に尽力し、多くの資本投資を行い、貢献したと思っているかもしれない。

確かに、ほんの一面に限れば正しい。

 

しかし世界史を見れば、侵略国のやることは、どこも似たものです。

独立を叶えると称して内乱を援助し、侵攻地域を攪乱するのは常套手段です。

また侵攻した国に資本投資を行い、後で資源と穀物、さらに税金を搾り取ります。

日本が侵攻した国が受けた損害は、与えた利得よりも遥かに大きいと明確に言える。

台湾やパラオでは日本への印象が良いが、歴史的な事情があり特別です。

 

しかし見逃してはならないことは、一連の戦争で失われたものです。

満州事変から太平洋戦争終結までの犠牲者は、日本側で約310万人、相手国・アジア諸国側で1,000万〜2,000万人以上とされています。

さらに、これとほぼ同数の傷病者数があったことでしょう。

百歩譲って聖戦だとしても、あまりにも無辜の命が失われた事実からは逃れられない。

 

 

もう一つの視点があります。

満州事変から太平洋戦争終結までの戦域拡大過程を見れば、その真実が見えて来ます。

初期の重大な戦域拡大は、2度とも出先の士官の思い付きで始まり、その後は右往左往しながら続いたと言えます。

通常、戦闘開始は中央政府が命じるものですが、現地派遣軍が秘密裏に事件を起こし、相手国のしわざと偽り、攻め込んでいる。

そして陸軍中央は、これをほとんど処罰せず放置した。

これが二回続き、日中戦争へと拡大してしまい、泥沼から抜け出せなくなった。

ドイツでさえ、必ずヒトラーの命令で偽装事件を起こし、侵攻の口実にしています。

 

初期には、日本の仮想敵国はロシアとされ、朝鮮半島の確保を目指したが、いつの間にか陸軍は、米国対決を想定する南進派とソ連対決を目指す北進派で対立を深めた。

この二正面作戦の不可能を前提にしていた当時は、まだ自国の戦力不足を自覚していた。

この後、既に見たように三国同盟の罠に自ら飛びついて、破局を招くことになった。

つまり、日本が掲げていた五族協和は、空念仏に過ぎなかった。

 

 

もう一つ重要なことがあります。

 

それは日本が侵攻した国の人々の思いです。

少なくとも相手を無視して日本に非がないとか、賠償済みとか、言い募らないことです。

戦後賠償などの交渉時期によっては、相手側に不利なことがあります(独裁者が受諾)。

日本はどうしても島国なので、他国との終戦交渉において、ヨーロッパに比べれば、経験不足は否めないと思います。

これは外交官だけでなく互いの国民にも言えることです。

ここは丁寧に行っていく必要があります。

ドイツが手本になるはずです。

 

 

戦争は正義とは無縁だった。

 


  

我々は過去の戦争を反省しなくても良いのか

 

ここまで日本の戦争を振り返って、まだ反省の必要が無いと言える人は少ないだろう。

単純に、悲惨な戦争を2度と起こしたくないと思うのは人情です。

さすれば、過去の戦争の経緯を知り、なぜ戦争に深入りしていったのか、なぜ途中で引き返せなかったのか、と疑問に思うのは自然です。

 

 

再発を防止する視点から簡単に原因を挙げます。

 

1. 政府(内閣と議会)

a) 軍部大臣現役武官制;明治末に導入された制度ですが、陸軍がこれを悪用し、戦争拡大を押し切った。

b) 統帥権の独立;軍の権限は天皇に直属し、政府は関与出来なかった。

c) 陸軍と海軍の対立;薩長閥に始まり、異なる養成制度が仇となり、予算の取り合いで対立。

d) 陸軍の統率力の欠如: 中堅が暴発しても処罰出来ず、抑えられない。

 

2. 二大政党制の機能不全;単純に民主主義が根付いていなかったとも言える。混乱すると薩長閥、明治の元勲、天皇の力を借りることになった。

 

3. テロ・暗殺の横行;軍の下士官が徒党を組んで幾度も起こしたが、単独犯や右翼なども関り、和平を唱える人物はいつも危険に晒されていた。

 

4. 世界恐慌;10年間で3度の恐慌と飢饉は、国民の不満を海外侵攻に向かうのを是認することになった。

 

5. メディアと国民世論の同調;発展途上のメディア、軍部による美談化・煽情、政府による言論統制(治安維持法等)が相まった。

 

 

戦争の再発防止策

 

l 軍部が独走しないように文民統制を確立する。

l 民主主義を未熟なままにしない。

l 日本の組織は内に纏まり外部連携が困難なので、注意が必要(タテ社会)。

l 金融危機など大不況に用心する。日本だけの弱点ではない。

l 民主主義の基本である言論の自由を、いかなる時も確保する(非常事態宣言等)

 

 

まとめ

 

つまり、戦争を反省するとは、上記の再発防止策を心がけることです。

かつての被侵攻国への謝罪とは別に、2度と戦争を仕掛けないという姿勢を相手国に示すことです。

これが互いに平和を維持することになります。

これが現代を生きる私たちの責任なのです。

 

 

--目次---

 

1話;悪化の責任は誰に

2話;皇軍が選んだ道

3話;独裁に魅了された人々

4話;皇軍の軍人魂とは

5話;日本の戦争を振り返る

6話;軍備と敵について

7話;戦争に向き合う

8話;米国民へのお願い

 

 

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

20260926

短縮版  迫る多難な危機  第三章 3-5,3-6

  


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

 

--- 目次  ---

第3章 我々が直面している危機

 3-5 荒稼ぎし逃げ回るマネー

ここ10年間で荒稼ぎする横暴なマネー

  横暴なマネーは逃げ回る 

 3-6 地球温暖化を防止しなければ    

     温暖化を実感させる5つの事実

温暖化の原因が温室効果ガス排出である5つの証拠

温暖化が進んだ場合の10の重大被害

   人類が取るべき対策

まとめ

 

 

 

 

第3章 我々が直面している危機

 我々に幾多の大きな危機が迫りつつある。それらには歴史上繰り返され来た危機や、まったく未知の恐ろしさ秘める危機もある。これらの危機を見極め対処しなければ、一国の疲弊や破綻に留まらず、遂には人類と地球に大きな損害を与えることになるだろう。数多くの危機の中から、最重要なものを選んだ。

 

 

3-5 荒稼ぎし逃げ回るマネー

 

ここ10年間で荒稼ぎする横暴なマネー

 

 2006年、米国のヘッジファンドAmaranthが、天然ガス先物取引の失敗により約60億ドル(約7,000億円)もの巨額の損失を出して破綻しました。同ファンドは、天然ガス価格が冬に値上がりすることを見越して大量に買い保有しました。同ファンドの運用資産の65%を注ぎ込みました。2005年は大型ハリケーン「カトリーナ」の影響で天然ガス価格が暴騰し巨額の利益を上げたが、2006年は予想に反して暖冬傾向となり、ガス在庫が積み上がったことで天然ガス価格が急落した。しかし損切が出来なかった。同ファンドの天然ガス先物市場のシェアは数割にのぼり、買い手が少なく無理して売れば、さらに暴落するのは確実でした。こうして同ファンドは最大級の規模で破綻した。

 

 2010年のフラッシュ・クラッシュ(株価の短時間の急落回復)では、超高速取引(HFT)を使った異常アルゴリズムの連鎖によりわずか36分間で約1兆ドル(約150兆円)の時価総額が消失した。当初は、光ファイバー回線や専用アルゴリズムを駆使し、一般投資家や年金基金が注文を出した「その1万分の1秒前」に注文を察知し、先回りして株を買い、数銭でも高く買い手に売りつける高頻度取引が行われた。現在はその速度は10億分の1秒に達しているが、透明性を持って行われ、全取引の約60%がこの手法で行われている。また予測シミレーションを行うためのAI導入が加速している。

 


 2021年、GameStop事件、歴史的な株価暴騰劇が起きた。発端はヘッジファンドが、業績不振の会社GameStopの株価が下落すると予測し、猛烈な空売りを仕掛けた。個人投資家たちは、この「過剰な空売り状態」に目をつけ、ネット掲示板で団結して一斉に株を買いました。株価が予想に反して急騰したため、同ファンドは損失を抑えるために「買い戻し(損切り)」を迫られ、この買い戻しがさらに株価を押し上げる連鎖が起き、株価は一時、数週間で数十倍にまで跳ね上がりました(ショートスクイーズ現象)。同ファンドらは数十億ドルの損失を出し、後に閉鎖になった。この事件は、投資家が企業価値とかけ離れて株価を操り、利益を得ている好例であり、また個人投資家がSNSにより集団で市場を動かした事例となった。

 

 2021年、ヘッジファンドArchegosが崩壊し、世界の主要金融機関に総額100億ドル(約1兆円以上)を超える巨額の損失を与えた。その仕組みは、金融機関(証券会社や投資銀行)が代わりに株を購入し、同ファンドはその株の値上がり益や配当を受け取る代わりに、金利を支払う契約「トータル・リターン・スワップ(TRS)」でした。同ファンドは複数の金融機関と個別にTRS契約し、同じ銘柄に、自己資金を何倍にも膨らませ投資した(過大レバレッジ)。こうして同ファンドの資産約15億ドル、エクスポージャー(株価総額)約100億ドルから、1か月以内に、約360億ドル、約1600億ドルに一機に膨張した。しかし突如、集中投資していた株が急落し、金融機関は追加の担保を同ファンドに求めたが、これが出来ずに破綻した。この問題は、同ファンドが個人資産を運用する会社であり、株の大量保有の情報開示義務を回避出来た事です。

 

2022年、暗号資産Terra/LUNA が崩壊し、数日間で約400億ドル(約6兆円)の時価総額が一瞬にして消失し、次いで暗号資産市場全体で4500億ドルが吹き飛んだ。この二つの暗号資産は互いに補完し信用を得るようになっていた。Terraはドルとの連動と年利20%をうたい、多額の資金が流入していたが、危険を察知した大口投資家が大量売却に出た。するとTerraを保障するLUNAの暗号資産プログラムは、買い支える為に、無限に自動発行し続け、結局大暴落した。これは、元々ドルとの交換も年利20%も不可能なシステムであって、詐欺行為でした。問題は、このような詐欺まがいの金融商品が、次から次と生まれては、儲ける人と損する人が群がることです。

 

 

 

横暴なマネーは逃げ回る

 


 これまで横暴なマネーを見てきたが、膨れ上がったマネーを富裕層や企業がタックス・ヘイブン(オフショア、租税回避地)に隠す状況を見ます。試算で異なるが、タックス・ヘイブンに隠された世界の富は約13兆ドル、世界GDPの約12.5%になり、税金逃れは毎年約5000億ドル(74兆円)に上ると見られている。

 

米国の巨大IT企業(アップル、グーグル等)がアイルランド、オランダ、バミューダ諸島など複数の国の子会社間に特許使用料を付け回し、海外利益の法人税率を実質1%未満にまで押し下げたスキーム。法改正で塞がれるまで10年以上使われました。アップル1社だけで海外に積み立てた未課税現金は2,500億ドル(約37.5兆円)。

 

 租税回避の巧妙な手口を要約すると、先ずタックス・ヘイブンにペーパーカンパニーを設立し、会社→信託→財団→別会社→別銀行……という構造を作って、誰が本当の所有者なのか分からなくし、税逃れをしていた。これは違法ですが、見つけるのが困難なので、手が打てない。一つの回避地、パナマではペーパーカンパニーが21万社あり、世界200以上の国から、企業だけでなく政治家、有名人が名を連ねていた。

 

 これらには三つの問題があり、企業を呼び込むために税の免除や低減を行う国々や地域の存在、多国籍企業に課税する世界的なネットワークが未整備、この規制を阻害し続けている米国がある。

 

 

 

 

3-6 地球温暖化を防止しなければ

 人類が最悪の状況になるとしたら、独裁者が始めた核戦争か地球温暖化によると予想します。差し迫っている地球温暖化の脅威、その論拠とデマ、そして莫大な損害と急がれる解決方法について説明します。


温暖化を実感させる5つの事実

 

* 過去11年間が観測史上最も暑い11年

 2025年の世界平均気温は、1850~1900年平均より約1.43℃高い水準でした。さらに海洋の熱量も2025年に観測史上最高となっています。

* 2024年の地球平均気温は産業革命前より約1.5°C高い  

 世界気象機関によれば、2005~2025年の20年間、海洋は毎年、人類が年間に使うエネルギー量の約18倍に相当する熱を吸収しました。地球全体が巨大な熱の蓄積体になっている。

* 氷河・海氷・海面が実際に変化している

 世界平均海面は、衛星観測が始まった1993年以降で約11cm上昇しています。気候変動に関する政府間パネルIPCCは、2100年までの海面上昇を、低い方で約28~55cm、高い方で約63~101cmと予想しています。左写真はスバールバル諸島の氷河の写真で、氷河が数キロほど後退し、景観はまったく変わってしまった。

* 異常気象が世界各地で頻発している  

 猛暑、豪雨、干ばつ、山火事、海洋熱波、サンゴの白化が増加・深刻化している。温暖化が進むと、地球の気流や海流に変化が起こり、各地に乾燥・湿潤の極端な変化が生じる為に、異常気象が起こる。世界のサンゴ礁はこの70年間で50%以上喪失し、今後20年間で70~90%が消滅するとされている。当然、魚類も死滅します。

* 温暖化の被害は既に世界を脅かしている

 干ばつや水害、気候の変化により、コーヒーや小麦など身近な農作物の収穫量減少や品質低下がすでに始まっています。IPCCによれば、現在すでに33~36億人が気候変動に対して非常に脆弱な環境で暮らしています。このまま温暖化が進むと米国中西部のトウモロコシの生産量が最大40%低下する恐れがあると予測されています。

 


  温暖化の原因が温室効果ガス排出である5つの証拠

 温室効果ガス(CO₂・CH₄)が地球を覆う「毛布」となり熱を閉じ込めることは理論的・実験的に確認されている。  

* CO₂が急激に増えている

 産業革命以降、大気中のCO₂濃度は約280ppmから420ppm超へ急増。少なくとも過去80万年間で極めて高い水準です。この増加は化石燃料の燃焼によるもので、同様のペースで気温が上昇しています。

* CO₂は人類が排出した

 大気中のCO₂増加分の炭素同位体比を分析すると、化石燃料由来であることが明確に示されています。

* 気候モデルの一致

 自然要因(太陽活動、火山活動など)のみを考慮した気候モデルでは、1970年代以降の気温上昇を再現できません。人間活動による温室効果ガスを加えたモデルだけが、観測データと一致します。

* 放射力の衛星観測

 CO₂などの温室効果ガスが増えることで、地球から宇宙へ逃げる熱放射が減少していることが直接観測されています。

 

 IPCC第6次評価報告書(2021)では、1850〜1900年を基準とした2010〜2019年の温暖化(約1.1℃)のうち、人間活動による分は中心値で約1.07℃と推定されています。

 

 

* 自然現象(太陽活動・気候周期)は温暖化を起こしていない

 1800年代以降の急激な気温上昇は自然変動では説明できない。太陽放射エネルギーに変化はなく、むしろ成層圏は逆に冷え込んでいるので、現在の急激な上昇幅を説明できない。今は過去2000年で最速の気温上昇ペースで、自然要因(火山・太陽黒点)ではむしろ近年は寒冷化方向の影響が多い(複数の国連科学報告の総合評価)。気候モデルで「人為起源の温室効果ガス」を除くと現在の気温上昇は再現できない(IPCCの主要結論)。

 


  温暖化が進んだ場合の10の重大被害

* 海面上昇による沿岸都市の浸水(東京湾・上海・ニューヨークなど) → 年間数千億〜数兆ドル規模の資産損失

* 巨大台風・豪雨の増加によるインフラ破壊 → 年間数千億ドル

* 干ばつによる農業崩壊・食料価格の高騰 → 世界農業損失:年間数千億ドル

* 熱波による死亡増加(特に高齢者)→ 医療費・労働損失:数千億ドル

* 水不足による紛争・移民の増加 → 社会的コスト:数千億〜兆ドル

* 森林火災の増加(カリフォルニア・豪州など)→ 年間数千億ドル

* 生態系崩壊(サンゴ礁消失・生物多様性喪失)→ 観光・漁業損失:数千億ドル

* 感染症の拡大(蚊媒介疾患など)→ 医療・経済損失:数千億ドル

* 海洋酸性化による漁業崩壊 → 年間数千億ドル

* 世界金融市場の不安定化(資産価値の急落) → 数兆ドル規模の損失 

 

 被害額は温暖化の上昇温度によって異なります。ある2024年の研究では、3℃の温暖化で世界GDPが約10%低下すると推計しています。世界のGDPが110兆ドルとすると毎年11兆ドル規模(1700兆円)になります。現在の状況が続いた場合、2050年に世界GDPが最大14%、減少すると推計している組織もあります。

 

 

人類が取るべき対策

排出削減 化石燃料の段階的廃止(石炭→石油→ガス)、再生可能エネルギーの大規模導入(太陽光・風力・水力)、2010年以降、太陽光コスト90%低下、風力70%低下、建物・産業の省エネ化(断熱・高効率機器)、電気自動車・公共交通の拡大、メタン排出削減(農業・廃棄物・化石燃料)。

 

吸収源の強化 森林保全・植林、土壌炭素の増加(農法改善)、CO₂回収・貯留技術(CCS・DAC)、

 

適応策 海面上昇対策(防潮堤・都市移転)、農業の耐暑化・灌漑整備、水資源管理(ダム・地下水保全)、災害対策(早期警報・避難インフラ)。

 

国際協力 パリ協定の強化、炭素税の普及、気候資金の拡大(途上国支援)、技術移転・国際研究協力。

 

 

まとめ

 我々は既に地球を元に戻すことは出来ない状況にある。問題は、我々がどの程度の悪化で留めて、住める地球を次の世代に残せるかです。その責任は我々にある。そして米国の気候温暖化防止に対する背信行為が、人類を危うくしている。米国は温暖化ガス排出が中国の次に多いが、中国はパリ協定を批准している一方、トランプになると2回とも離脱している。

 

 最も恐ろしいのは、このまま悪化させてしまうと、例え排出を停止しても、地球は二度と元に戻らないことです。その悪影響は自然の回復力を遥かに凌いでいるのです。

 

 

 

---全体の目次---

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。