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20260926

短縮版  迫る多難な危機  第三章 3-5,3-6

  


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

 

--- 目次  ---

第3章 我々が直面している危機

 3-5 荒稼ぎし逃げ回るマネー

ここ10年間で荒稼ぎする横暴なマネー

  横暴なマネーは逃げ回る 

 3-6 地球温暖化を防止しなければ    

     温暖化を実感させる5つの事実

温暖化の原因が温室効果ガス排出である5つの証拠

温暖化が進んだ場合の10の重大被害

   人類が取るべき対策

まとめ

 

 

 

 

第3章 我々が直面している危機

 我々に幾多の大きな危機が迫りつつある。それらには歴史上繰り返され来た危機や、まったく未知の恐ろしさ秘める危機もある。これらの危機を見極め対処しなければ、一国の疲弊や破綻に留まらず、遂には人類と地球に大きな損害を与えることになるだろう。数多くの危機の中から、最重要なものを選んだ。

 

 

3-5 荒稼ぎし逃げ回るマネー

 

ここ10年間で荒稼ぎする横暴なマネー

 

 2006年、米国のヘッジファンドAmaranthが、天然ガス先物取引の失敗により約60億ドル(約7,000億円)もの巨額の損失を出して破綻しました。同ファンドは、天然ガス価格が冬に値上がりすることを見越して大量に買い保有しました。同ファンドの運用資産の65%を注ぎ込みました。2005年は大型ハリケーン「カトリーナ」の影響で天然ガス価格が暴騰し巨額の利益を上げたが、2006年は予想に反して暖冬傾向となり、ガス在庫が積み上がったことで天然ガス価格が急落した。しかし損切が出来なかった。同ファンドの天然ガス先物市場のシェアは数割にのぼり、買い手が少なく無理して売れば、さらに暴落するのは確実でした。こうして同ファンドは最大級の規模で破綻した。

 

 2010年のフラッシュ・クラッシュ(株価の短時間の急落回復)では、超高速取引(HFT)を使った異常アルゴリズムの連鎖によりわずか36分間で約1兆ドル(約150兆円)の時価総額が消失した。当初は、光ファイバー回線や専用アルゴリズムを駆使し、一般投資家や年金基金が注文を出した「その1万分の1秒前」に注文を察知し、先回りして株を買い、数銭でも高く買い手に売りつける高頻度取引が行われた。現在はその速度は10億分の1秒に達しているが、透明性を持って行われ、全取引の約60%がこの手法で行われている。また予測シミレーションを行うためのAI導入が加速している。

 


 2021年、GameStop事件、歴史的な株価暴騰劇が起きた。発端はヘッジファンドが、業績不振の会社GameStopの株価が下落すると予測し、猛烈な空売りを仕掛けた。個人投資家たちは、この「過剰な空売り状態」に目をつけ、ネット掲示板で団結して一斉に株を買いました。株価が予想に反して急騰したため、同ファンドは損失を抑えるために「買い戻し(損切り)」を迫られ、この買い戻しがさらに株価を押し上げる連鎖が起き、株価は一時、数週間で数十倍にまで跳ね上がりました(ショートスクイーズ現象)。同ファンドらは数十億ドルの損失を出し、後に閉鎖になった。この事件は、投資家が企業価値とかけ離れて株価を操り、利益を得ている好例であり、また個人投資家がSNSにより集団で市場を動かした事例となった。

 

 2021年、ヘッジファンドArchegosが崩壊し、世界の主要金融機関に総額100億ドル(約1兆円以上)を超える巨額の損失を与えた。その仕組みは、金融機関(証券会社や投資銀行)が代わりに株を購入し、同ファンドはその株の値上がり益や配当を受け取る代わりに、金利を支払う契約「トータル・リターン・スワップ(TRS)」でした。同ファンドは複数の金融機関と個別にTRS契約し、同じ銘柄に、自己資金を何倍にも膨らませ投資した(過大レバレッジ)。こうして同ファンドの資産約15億ドル、エクスポージャー(株価総額)約100億ドルから、1か月以内に、約360億ドル、約1600億ドルに一機に膨張した。しかし突如、集中投資していた株が急落し、金融機関は追加の担保を同ファンドに求めたが、これが出来ずに破綻した。この問題は、同ファンドが個人資産を運用する会社であり、株の大量保有の情報開示義務を回避出来た事です。

 

2022年、暗号資産Terra/LUNA が崩壊し、数日間で約400億ドル(約6兆円)の時価総額が一瞬にして消失し、次いで暗号資産市場全体で4500億ドルが吹き飛んだ。この二つの暗号資産は互いに補完し信用を得るようになっていた。Terraはドルとの連動と年利20%をうたい、多額の資金が流入していたが、危険を察知した大口投資家が大量売却に出た。するとTerraを保障するLUNAの暗号資産プログラムは、買い支える為に、無限に自動発行し続け、結局大暴落した。これは、元々ドルとの交換も年利20%も不可能なシステムであって、詐欺行為でした。問題は、このような詐欺まがいの金融商品が、次から次と生まれては、儲ける人と損する人が群がることです。

 

 

 

横暴なマネーは逃げ回る

 


 これまで横暴なマネーを見てきたが、膨れ上がったマネーを富裕層や企業がタックス・ヘイブン(オフショア、租税回避地)に隠す状況を見ます。試算で異なるが、タックス・ヘイブンに隠された世界の富は約13兆ドル、世界GDPの約12.5%になり、税金逃れは毎年約5000億ドル(74兆円)に上ると見られている。

 

米国の巨大IT企業(アップル、グーグル等)がアイルランド、オランダ、バミューダ諸島など複数の国の子会社間に特許使用料を付け回し、海外利益の法人税率を実質1%未満にまで押し下げたスキーム。法改正で塞がれるまで10年以上使われました。アップル1社だけで海外に積み立てた未課税現金は2,500億ドル(約37.5兆円)。

 

 租税回避の巧妙な手口を要約すると、先ずタックス・ヘイブンにペーパーカンパニーを設立し、会社→信託→財団→別会社→別銀行……という構造を作って、誰が本当の所有者なのか分からなくし、税逃れをしていた。これは違法ですが、見つけるのが困難なので、手が打てない。一つの回避地、パナマではペーパーカンパニーが21万社あり、世界200以上の国から、企業だけでなく政治家、有名人が名を連ねていた。

 

 これらには三つの問題があり、企業を呼び込むために税の免除や低減を行う国々や地域の存在、多国籍企業に課税する世界的なネットワークが未整備、この規制を阻害し続けている米国がある。

 

 

 

 

3-6 地球温暖化を防止しなければ

 人類が最悪の状況になるとしたら、独裁者が始めた核戦争か地球温暖化によると予想します。差し迫っている地球温暖化の脅威、その論拠とデマ、そして莫大な損害と急がれる解決方法について説明します。


温暖化を実感させる5つの事実

 

* 過去11年間が観測史上最も暑い11年

 2025年の世界平均気温は、1850~1900年平均より約1.43℃高い水準でした。さらに海洋の熱量も2025年に観測史上最高となっています。

* 2024年の地球平均気温は産業革命前より約1.5°C高い  

 世界気象機関によれば、2005~2025年の20年間、海洋は毎年、人類が年間に使うエネルギー量の約18倍に相当する熱を吸収しました。地球全体が巨大な熱の蓄積体になっている。

* 氷河・海氷・海面が実際に変化している

 世界平均海面は、衛星観測が始まった1993年以降で約11cm上昇しています。気候変動に関する政府間パネルIPCCは、2100年までの海面上昇を、低い方で約28~55cm、高い方で約63~101cmと予想しています。左写真はスバールバル諸島の氷河の写真で、氷河が数キロほど後退し、景観はまったく変わってしまった。

* 異常気象が世界各地で頻発している  

 猛暑、豪雨、干ばつ、山火事、海洋熱波、サンゴの白化が増加・深刻化している。温暖化が進むと、地球の気流や海流に変化が起こり、各地に乾燥・湿潤の極端な変化が生じる為に、異常気象が起こる。世界のサンゴ礁はこの70年間で50%以上喪失し、今後20年間で70~90%が消滅するとされている。当然、魚類も死滅します。

* 温暖化の被害は既に世界を脅かしている

 干ばつや水害、気候の変化により、コーヒーや小麦など身近な農作物の収穫量減少や品質低下がすでに始まっています。IPCCによれば、現在すでに33~36億人が気候変動に対して非常に脆弱な環境で暮らしています。このまま温暖化が進むと米国中西部のトウモロコシの生産量が最大40%低下する恐れがあると予測されています。

 


  温暖化の原因が温室効果ガス排出である5つの証拠

 温室効果ガス(CO₂・CH₄)が地球を覆う「毛布」となり熱を閉じ込めることは理論的・実験的に確認されている。  

* CO₂が急激に増えている

 産業革命以降、大気中のCO₂濃度は約280ppmから420ppm超へ急増。少なくとも過去80万年間で極めて高い水準です。この増加は化石燃料の燃焼によるもので、同様のペースで気温が上昇しています。

* CO₂は人類が排出した

 大気中のCO₂増加分の炭素同位体比を分析すると、化石燃料由来であることが明確に示されています。

* 気候モデルの一致

 自然要因(太陽活動、火山活動など)のみを考慮した気候モデルでは、1970年代以降の気温上昇を再現できません。人間活動による温室効果ガスを加えたモデルだけが、観測データと一致します。

* 放射力の衛星観測

 CO₂などの温室効果ガスが増えることで、地球から宇宙へ逃げる熱放射が減少していることが直接観測されています。

 

 IPCC第6次評価報告書(2021)では、1850〜1900年を基準とした2010〜2019年の温暖化(約1.1℃)のうち、人間活動による分は中心値で約1.07℃と推定されています。

 

 

* 自然現象(太陽活動・気候周期)は温暖化を起こしていない

 1800年代以降の急激な気温上昇は自然変動では説明できない。太陽放射エネルギーに変化はなく、むしろ成層圏は逆に冷え込んでいるので、現在の急激な上昇幅を説明できない。今は過去2000年で最速の気温上昇ペースで、自然要因(火山・太陽黒点)ではむしろ近年は寒冷化方向の影響が多い(複数の国連科学報告の総合評価)。気候モデルで「人為起源の温室効果ガス」を除くと現在の気温上昇は再現できない(IPCCの主要結論)。

 


  温暖化が進んだ場合の10の重大被害

* 海面上昇による沿岸都市の浸水(東京湾・上海・ニューヨークなど) → 年間数千億〜数兆ドル規模の資産損失

* 巨大台風・豪雨の増加によるインフラ破壊 → 年間数千億ドル

* 干ばつによる農業崩壊・食料価格の高騰 → 世界農業損失:年間数千億ドル

* 熱波による死亡増加(特に高齢者)→ 医療費・労働損失:数千億ドル

* 水不足による紛争・移民の増加 → 社会的コスト:数千億〜兆ドル

* 森林火災の増加(カリフォルニア・豪州など)→ 年間数千億ドル

* 生態系崩壊(サンゴ礁消失・生物多様性喪失)→ 観光・漁業損失:数千億ドル

* 感染症の拡大(蚊媒介疾患など)→ 医療・経済損失:数千億ドル

* 海洋酸性化による漁業崩壊 → 年間数千億ドル

* 世界金融市場の不安定化(資産価値の急落) → 数兆ドル規模の損失 

 

 被害額は温暖化の上昇温度によって異なります。ある2024年の研究では、3℃の温暖化で世界GDPが約10%低下すると推計しています。世界のGDPが110兆ドルとすると毎年11兆ドル規模(1700兆円)になります。現在の状況が続いた場合、2050年に世界GDPが最大14%、減少すると推計している組織もあります。

 

 

人類が取るべき対策

排出削減 化石燃料の段階的廃止(石炭→石油→ガス)、再生可能エネルギーの大規模導入(太陽光・風力・水力)、2010年以降、太陽光コスト90%低下、風力70%低下、建物・産業の省エネ化(断熱・高効率機器)、電気自動車・公共交通の拡大、メタン排出削減(農業・廃棄物・化石燃料)。

 

吸収源の強化 森林保全・植林、土壌炭素の増加(農法改善)、CO₂回収・貯留技術(CCS・DAC)、

 

適応策 海面上昇対策(防潮堤・都市移転)、農業の耐暑化・灌漑整備、水資源管理(ダム・地下水保全)、災害対策(早期警報・避難インフラ)。

 

国際協力 パリ協定の強化、炭素税の普及、気候資金の拡大(途上国支援)、技術移転・国際研究協力。

 

 

まとめ

 我々は既に地球を元に戻すことは出来ない状況にある。問題は、我々がどの程度の悪化で留めて、住める地球を次の世代に残せるかです。その責任は我々にある。そして米国の気候温暖化防止に対する背信行為が、人類を危うくしている。米国は温暖化ガス排出が中国の次に多いが、中国はパリ協定を批准している一方、トランプになると2回とも離脱している。

 

 最も恐ろしいのは、このまま悪化させてしまうと、例え排出を停止しても、地球は二度と元に戻らないことです。その悪影響は自然の回復力を遥かに凌いでいるのです。

 

 

 

---全体の目次---

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

20260922

短縮版 迫る多難な危機  第二章 2-8,2-9

 


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

 

--- 目次  ---

 

第2章 人類は危機にどう対処したのか?

2-8 分断と対立を非暴力で乗り越えた社会があった 

   まとめ 

2-9 国家は対立・分裂し、また融和・統合を繰り返してきた 

   まとめ

 

 

 

 

 

第2章 人類は危機にどう対処したのか?

 人類は、初期には自然の猛威だけでなく、自ら作り出した災厄からも逃げ出すしかなかった。しかし、やがて工夫と協力で危機を乗り越えて来た歴史があります。失敗や成功の事例を見ます。

 

2-8 分断と対立を非暴力で乗り越えた社会があった

 

 歴史上、深い分断を乗り越え、暴力なしで国家や社会の統合に成功した事例を振り返ります。

 


 1930〜1960年代、米国はニューディールと公民権運動を成し遂げた。米国は、1929年の大恐慌による空前の失業率(約25%)と経済の崩壊に直面していた。また南部における露骨な人種隔離(ジム・クロウ法)など、階級や人種を巡る凄まじい分断があった。F・ローズヴェルト大統領は、労働者、農民、南部保守派、都市部の移民やアフリカ系アメリカ人を政治的に結びつける「ニューディール連合」を形成し、手厚い社会保障や経済的不安を緩和する公共事業を行った。彼は、社会・人種的に対立しがちな人々に「雇用」や「社会保障(年金制度など)」という実利を提供することで団結させた。この政策は、ケインズが説いたばかりの「有効需要理論」の最初の大きな成功事例でした。

 さらにケネディ大統領らが1960年代の公民権運動を支援し、法的な人種隔離を撤廃し、少数派を国家の枠組みへと統合するプロセスを進めました。

 

 1938年〜、スウェーデンは国家的な労使協調路線を創り上げた。1930年代の世界的不況の中、スウェーデンでも労働者側と資本家側の激しいストライキや暴力沙汰が相次ぎ、社会秩序が崩壊寸前でした。労使双方が政府の介入を待たずに直接交渉を行い、「サルツシャーデン協定」を締結。「労働争議におけるルール作り」と引き換えに、資本家側は雇用や賃金の安定を約束し、労働者側は経営権への不介入を受け入れました。これを機に「労働組合・経営者・政府」の協調体制が生まれ、世界最高水準の社会保障を支える強固な社会的連帯(国民の家構想)の土台となりました。この協定は、激しい労働争議を抑制し、協調的な関係を目指して労使双方が参加する共同の紛争処理・調整機関を作り、平和的解決を図る仕組みを整えた。このモデルは北欧各国に浸透し、今も高度な福祉国家を支え続けている。


 

 1990年代、南アフリカは平和裏にアパルトヘイトを乗り越えた。アパルトヘイト(白人による人種
隔離政策)の崩壊直後、白人支配層と被支配層の黒人、さらには解放を目指す黒人派閥間にも、数十年におよぶ弾圧と暴力による、修復不可能なほどの深い憎悪と分断が存在していました。黒人の解放活動家のリーダーだったネルソン・マンデラは、国際世論の後押しで白人政権から平和裏に政権を引継ぎ、大統領になった。しかし前政権支配層の加害行為、また解放方針の違いで敵対する黒人集団への対処が喫緊の課題でした。彼は、過去の人権侵害の加害者が公の場で真実を告白すれば刑事訴追を免除する「真実和解委員会」を設置しました。彼は、復讐に走り厳格な処罰を行えば報復合戦が始まり内戦に至ることを避けた。この道は、想像絶する苦難を伴いました。武装闘争で対立していた黒人グループが白人の支援を受け、マンデラ路線を葬るために、彼のグループを短期間に2万人以上殺戮していたが、彼は皆に耐えるように訴え、内戦勃発を防ぐことが出来た。

 

 1965年〜、シンガポールは独立時に多民族国家構築を成し遂げた。シンガポールは中華系、マレー系、インド系などの諸民族間で血生臭い人種暴動が発生した直後であり、国家として極めて脆弱な分断状態にありました。リー・クアンユー政権は、特定のマジョリティ優遇ではなく、英語を共通の行政・ビジネス言語としつつ、4大公用語(英語・マレー語・中国語・タミル語)を平等に扱い、すべての民族が等しく恩恵を受けられる住宅政策や義務教育を徹底しました。民族ごとの居住区の固定化を防ぐため、公団住宅に各民族の入居比率制限を設け、日常的な交流と融合を促しました。特定の民族優遇を避け、4つの主要宗教の祝日を平等に尊重する政策をとりました。民族に関わらず、能力と実績に基づいて評価・登用する仕組みを徹底し、国家の安定と経済成長につなげました。

 

 

まとめ

 人類は歴史を重ねる中で社会内部に多くの対立を生み出しては、紛争を招くこともあったが、上述のように融和策で団結を図り、次代の発展へとバトンを渡すことが出来た。

 

成功の要因。

l 一方が他方を力で抑え込まない。

l 異なるグループがそれぞれ公平な利益配分を得る為の制度的妥協点を見出す。

l 互いに合意出来る、対立を処理できる制度が必要。

l 多くの場合、優れたリーダーが牽引した。

 

 

 

 

2-9 国家は対立・分裂し、また融和・統合を繰り返してきた

 

 ここでは、紛争と公害防止以外の経済・社会・格差・健康などで世界が協力した事例を見ます。

 

 先ず世界最古の国際法とみなせるローデス海法がありました。古代ギリシャ・ローマ時代から7世紀頃まで採用された海上法規です。嵐の際に船を軽くするために積み荷を海へ投げ捨てた場合「救われた船や残りの積み荷の持ち主全員で、失われた損害を分担する」というルールを世界で初めて定めました。これ以前は、「漂着した難破船の財産は、その海岸の領主や住民のものになる」という略奪的な慣習がまかり通っていました。

 

1919年、ILO(国際労働機関)設立、加盟国187ヵ国。これは、第一次世界大戦後、世界の労働条件を改善することにより労働者の不満が社会不安や革命につながるのを防ぎ、労働者を酷使する国との国際競争で不利にならないようにする経済的な目的も兼ねていた。児童労働、強制労働、労働時間、結社の自由、最低労働基準、差別などについて国際基準を作ってきた。「1日8時間・週40時間労働」や「有給休暇」などの制度は、ILOのおかげで世界中に広まった。ところが、日本は基本条約の5件の内3件は批准せず、また米国の批准数はさらに少なく世界でも最低水準です。両国の労働者の権利が軽視されている証左でしょう。

 

1944~1947年、ブレトン・ウッズ体制からGATT誕生まで。これは、戦間期の保護主義と通貨混乱を二度と繰り返さないために、為替安定・短期資金支援を担うIMF、復興・開発資金を担う世界銀行

と国際貿易の自由化(GATT)を柱として構築された。GATTは、関税の引き下げと非関税障壁の撤廃などにより、貿易摩擦を解消し世界貿易量の爆発的な拡大を後押しした。世界は貿易ルールに従って経済的孤立から互いに経済的繁栄を目指した。これがグローバル化を成功させた。残念なことに米国は、80年前の禁じ手(関税)にしがみつこうとしている。

 

1980年、世界保健機関(WHO)による天然痘根絶。WHO(世界保健機関)の主導のもと、冷戦下であったにもかかわらず米国とソ連を含む世界中の国々が協力しました。資金提供、ワクチンの大量生産、世界各地での徹底した接種キャンペーンと監視活動を連携して行い、1977年、ソマリアでの発生を最後に、地球上から無くなりました。人類史上初めて感染症の根絶に成功しました

 

1987年~、Erasmusスタート。欧州連合(EU)が主導する大学生等の国際交換留学・教育支援プログラムです。目的は、ヨーロッパ圏内および世界各国との間で学生や教職員の流動性を高め、多様性の理解や国際的なキャリア形成を促進することで、累計参加者は1300万人を越えている。

 

2000年、国連ミレニアム開発目標(MDGs)採択。全加盟国によって採択され、2015年までに貧困・飢餓・初等教育・母子保健などを改善する8つの目標を掲げました。極度の貧困と飢餓の撲滅、普遍的な初等教育の達成、ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上、乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康状態の改善、HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止、環境の持続可能性の確保、開発のためのグローバル・パートナーシップの構築が目標でした。上記目標の「極度の貧困率の半減」や「栄養不良人口の割合半減」などは見事に達成されました。MDGs成果の一つとして、1990年から2015年にかけて10億人以上の人々が極度の貧困(1日1.25ドル未満での生活)から脱却することができました。これを引継ぎ、SDGsがスタートしました。MDGsが主に開発発展途上国を対象としたが、SDGsはすべての国を対象にし、17の目標でスタートし、2030年まで行われる。 。

  


2015年、パリ協定(気候変動対策)批准。190か国以上が批准した気候変動対策の国際枠組みです。       

  各国が自主的に温室効果ガス削減目標を提出し、5年ごとに見直す仕組みにより、事実上すべての国を巻き込む合意を実現しました。世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することを掲げています。しかし現状、国連環境計画の試算では、現在の各国の政策のままでは今世紀末までに2.6℃〜2.9℃の気温上昇が予測されており、1.5℃に抑えるための削減ペース(2030年までに約42%削減など)には遠く及んでいません。また温室効果ガス排出量世界2位の米国はトランプの意向によってパリ協定からの離脱・復帰を繰り返し国際協調を阻害している。

 

 

まとめ

  世界は、先ずヨーロッパ内での協力で始まり、第二次世界大戦後は、世界各国が協力するようになった。それはグローバル化と併走していた。明らかに一国の努力では解決出来ない課題が増えており、各国が協力しなければならなくなった。様々な国際機関を作り、機能させて来た。だが、うまく機能しているとは言えない。各国間の所得格差(貧困度)は緩和・縮小傾向にありますが、名目GDPで約800倍、購買力平価(実質的な生活水準)で約80倍の差がまだあり、経済的・技術的な協力には限界がある。また多極化が進み、南北問題から南の代表としてブリックスBRICSが影響力を高めている。さらにロシアと中国の独裁だけでなく、右派ポピュリズムが米国を筆頭に多くの国を内向きにさせている。ただでさえ国連は軍事・制裁の執行力を持っていないのに、拒否権により決議すらできないでいる。不安な状況が続いている。

 

 

 

----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

20260921

短縮版 迫る多難な危機  第二章 2-7

 



「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

 

第2章 人類は危機にどう対処したのか?

2-7 幾多のエポックが社会を変え、発展をもたらした             

まとめ 

 

 

 

 

 

 

第2章 人類は危機にどう対処したのか?

 人類は、初期には自然の猛威だけでなく、自ら作り出した災厄からも逃げ出すしかなかった。しかし、やがて工夫と協力で危機を乗り越えて来た歴史があります。失敗や成功の事例を見ます。

 

2-7 幾多のエポックが社会を変え、発展をもたらした

 

 人類の進化・進歩は、幾たびかの「大きなエポック(技術的・社会的転換)」を経て行われた。しかし社会内部では大きな対立と攻防がもたらされた。人類はこれらをどう乗り越えて来たのか? 四つのエポックが人々に何をもたらしたかを見ます。


 

 農業革命は約1万年前に始まり、それまでの採集から栽培・家畜化へ進み、定住と貯蔵が可能になった。そこから大変動が始まります。定住と土地の所有、食料の貯蔵が普及し人口が増えました。一方、不作になると他村の備蓄、家畜や土地を奪う事で生き残りを図るようになり、襲撃・略奪が増えた。やがて富の格差が生じ、支配者が生まれるようになった。青銅器時代になると戦争と都市化が加速した。紀元前3300年頃から始まり19世紀まで続く王権のスタイルが誕生し、強化されていったので、平民・奴隷は重税・賦役に耐える長い時代を生きることになった。生産効率を格段に上昇させた農業革命は、戦乱が平定され王権が安定すれば、平和が訪れて経済と文明の発達をもたらした。

 

 




 精神革命は紀元前800年~紀元前200年に、ユーラシア大陸の4つの地域でほぼ同時に興りました。ユダヤ教、ギリシャ哲学、諸子百家、仏教等の新しい哲学や宗教が誕生した。これらには以前に無い特徴があり、部族や小国を越えた広い地域に適用できる普遍的な真理や道徳を持つ思想や宗教でした。これが生まれた背景に、鉄器の普及により生産力と軍事力が向上し、大規模化する戦争が都市国家から大規模国家へと統合させたことがある。また交易網が発展し、異なる文化や異質な価値観が接触することで、自民族のローカルな神話を客観視し、より抽象的で普遍的な真理が生まれる土壌が育った。この過程で、敗れた王権の伝統的権威が失墜し、王宮の形骸化した祭祀(宗教)に批判が向けられた。一方で祭祀者(司祭)や軍の参謀らの知的エリート層の中から、新しい思想や宗教が生み出された。彼らの思想や宗教は、血縁や共同体の崩壊で混乱する民衆の心を捉え、大きな広がりを見せた。新しい帝国は、これらの宗教が社会に強い紐帯や安寧をもたらすとし国教と定め、押し広めた。こうして国家と普遍的宗教が強く結ばれるようになり、世界宗教として現在まで絶大な力を持っようになった。ギリシャ哲学でさえ、宗教(神)を否定することなく、神事は継承され都市民の絆として残った。精神革命は、社会の混乱の中から生まれた思想・宗教が民衆と国家に受け入れられ、その後も国家平定に役立ち続けた。

 


 商業革命は15世紀から18世紀にかけてヨーロッパで起きた。大航海時代を契機に世界規模の貿易ネットワークが形成され、金融制度・商業組織・社会構造が劇的に変化した。この過程で、為替手形等の金融制度が発展し、株式会社が誕生し、近代資本主義の原型が生まれた。また社会にも変化が起きた。商人・金融家は、港湾都市が発展すると、農業収入に依存していた封建領主に代り、巨富を築き、力を得るようになり、後の市民革命の担い手になった。新規なものに投資することにより富を築く事が可能になったことで、従来の身分や慣習に囚われない、自由な発想が商人を中心に広がっていった。こうした中、彼らの思いを代弁するような思想がいくつも生まれた。18世紀スコットランドのアダム・スミスの経済思想へと結実していきました。彼の言う「個人が自らの利益を追求して自由な経済活動を行えば、市場の価格メカニズム(見えざる手)によって、結果的に社会全体の富や便益が最大化される」が、現在も呪文のように唱えられている。

 

 16世紀の宗教改革の思想の一部には商業革命の影響も受けていた。カルヴァン派(プロテスタントの一派)が誕生し、西ヨーロッパの商工業者を中心に爆発的に広がり、後に英国から北米に植民するピューリタンとなり、今の米国の最大宗教派の礎を作った。ピューリタンは、中世カトリック教会が否定した金儲け・高利貸し行為に対して、「勤労による利益は神の恵み」と肯定するようになっていた。 

 


 

 英国の産業革命は、18世紀後半から19世紀前半にかけて、手工業中心の経済が、機械・工場・蒸気動力・大量生産を中心とする経済へ移行した大変化です。

 紡績織布の各工程の機械が1733~1779年に発明され導入されます。機械が大型化すると、動力としての蒸気機関が大幅に改良され、鉱山だけでなく工場・船舶・鉄道にも利用されるようになった。次いで製鉄・運河・鉄道が発達し、重工業化と輸送革命が進行した。

 

 工場が増えると都市化が進みましたが、労働者の住宅、上下水道、ごみ処理が不足し、人口過密と衛生問題が深刻化しました。工場では、女性や子供も多数働くようになり、また危険で長時間労働と事故が増えた。こうして産業革命の初期、労働者は悪条件下で賃金が低下し続けた。こうして資本家層の横暴が目立つようになり、宗教家・改革者・労働者の改革運動を背景に、1802~1842年にかけて議会は次第に労働者保護の規制を導入するようになりました。そして1871年労働組合結成、1906年スト権が合法化され、後に普通選挙を国民が手に入れることになった。やっと労働運動によって国民全体が産業革命の成果を得るようになり、賃金の上昇が始まった。

 

 産業革命において旧産業に働く人々は失業したはずだが、社会全体ではどうなったのだろうか? 学者らの推計によれば、全期間において平均失業率は1~3%程度と低いようだった。初期の農林業従事者が鉱工業・建設業とサービス業に向かい、新産業が旧産業の失業者を吸収した。しかし二つの問題があった。機械に仕事を奪われた職人は機械生産との価格競争に晒され、過酷で低賃金に耐えた。今一つは、資本主義経済が定着したことで、景気循環による恐慌が頻発し、失業率が10~20%になることもあった。

 

 産業革命は最終的に経済を発展させ国民所得を上昇させ、次の米国の自動車や電気産業の発展へと繋がっていった。そして資本主義経済と自由貿易体制が確立した。一方で、労働運動から民主主義(人権尊重、多数決)と社会保障の充実が進み、1970年頃まで中産階級は上昇し続けた。

 

 産業革命は今に通じる、科学尊重、チャレンジ精神、勤労習慣、自由と権利の平等、民主主義等の重要な国民の意識を育んだ。一方で、大航海時代より世界に植民地を広げる中で、白人以外への差別は無くならず、さらに産業革命終了頃からヨーロッパは帝国主義(植民地獲得)へと突き進み、各国が競争・武力衝突を繰り返し、第一次世界大戦の勃発に至った。

 

 

まとめ

 これまで4つの革命と一つの改革を見てきました。農業革命では、平等だった狩猟採集社会に終わりを告げ、戦争と国家を生み、軍隊を持つ王の下に階層社会が出来上がりました。

 精神革命では、文明の発展と経済圏の拡大により、戦争と国家の規模が拡大し、戦火で疲弊した社会を安定させる説得力を持った宗教が生み出され、より広大な領域に精神的な一体感が生まれた。

 商業革命では、武力だけが権力基盤だった社会から、商人が第二の権力を握れる貨幣経済社会が到来し、やがて封建社会が廃れることになる。また宗教改革で分離したプロテスタントは教会権力から、各人が神と対峙するという意味で、主体性と権力からの自由の意識を持つようになった。一方、神の救いは決まっているが不明とされたので、自分が選ばれることを望み、地上で勤労に励み、自由な経済活動を尊んだ。この革命が終わる頃には、ヨーロッパ人は自由と主体性を持ち得るようになった。しかし一方で、奴隷アフリカの奴隷黒人、新大陸の先住民の酷使、東欧の農奴化と、ヨーロッパ人による搾取と差別が地球規模で行われ、その後も大きな傷痕を残し続けることになる。産業革命は、資本主義経済(工場、金融、法制度、市場)と工業製品によるグローバル経済を確立した。都市化と鉄道等交通網が発達し景観が一変し、地主貴族、新興資本家(ブルジョワジー)、都市労働者(プロレタリアート)の新しい階層が生まれ、中産階級(商人・専門職・事務職)も拡大し、社会も一変した。この資本家と労働者の対立が激化する中で、国民には二つの道が示された。一つは、資本家の横暴を根絶するために労働者が政権を担う共産主義を目指す。もう一つは、労働者の要望を国の制度に反映し続ける福祉国家を目指す。英国は後者を選び、人権尊重や福祉制度が進んだ。20世紀前半まで、多くの欧米諸国はこの方向を目指し、北欧は遅れて福祉国家を選んだ。しかし、1980年以降、先進国は様変わりした。 

 

 残念ながら、現在は、これまで人類が築き上げて来た素晴らしい精神を反故にし、迷宮に迷い込み、泣き叫ぶだけになってしまったようだ。

 

 

----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。