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20261013

連載 国民の責任 8; 米国民へのお願い

   


国が戦争を始めた時、「国民に責任があるのか」、日本と米国について考えます。

 

今回は、米国について考えます。

 

既に連載「迫る多難な危機」の第4章で米国の混乱した状況を説明しました。

ここでは、米国民へのお願いと注意点を述べます。

 

米国民へのお願い

 

私が見る限り、世界は危機的な状況に突入している。

そして、これを止めるどころか増幅させているのがトランプ政権です。

ここ数年、プーチンのウクライナ戦争、AI革命、地球温暖化、米中対立等が加速している。

ここ1年半のトランプの采配で事態は悪化を深めているだけです。

トランプには、世界と米国を良い方向に導く意思と能力が無いのは明らかです。

一番の問題は、彼の独裁志向であり、虚言と悪事を厭わないことから見て、他国の独裁者と手を握る可能性が高い。

トランプ政権が倒れない限り、世界はより悪化する。

 

是非とも、良識ある米国民は、この中間選挙において圧倒的な勢いで民主党の議席を増やして欲しい。

これにより良識ある共和党穏健派の力を借りてトランプを弾劾して欲しい。

これが叶わなければ、トランプの独裁が完成し、世界から平和や民主主義は消えるだろう。

こうなれば米国は世界史に汚点を残すことになるかもしれない。

 

かつて米国は大戦への参戦以降、世界を救い、日本の再生にも尽力してくれた。

米国は素晴らしい発展を遂げ、アメリカンドリームは私たちの憧れの的でした。

しかし、今は変わってしまった。

 

 

注意していただきたいこと

 

米国の政治現状は、明らかに異常です。

これは半世紀の間、蝕まれて来たのを放置したからです。

この原因は複雑に絡まっているが、一言でいうと「驕りによる栄枯盛衰」でしょう。

米国社会の分断は致命的なまでに進んでいる。

これは放置された所得格差もあるが、差別と憎しみ合うように仕向けられた結果です。

ここ2年の間、私は米国の東西南北8州を1ヵ月以上かけて旅行して来ました。

町や人々は穏やかで、ホームレスにさえも親切な場面を幾度も見てきました。

私には、一部の米国民が煽られ、ヒステリックになり、政治利用されているように見えました。

 

そして、この分断は深刻なだけに、私は数か月前まで、米国が立ち直る事はないだろうと予測していた。

ちなみにエマニュエル・トッドは米国の再起は不可能と見ている。

しかし、9月中旬ぐらいから私の絶望は期待に変わり始めました。

だが今回、無党派層が反トランプに傾いても、共和党・トランプ支持層の支持率低下はあまり期待出来ないから、よくて上院下院の逆転止まりかもしれない。

 

そうなると中間選挙後に、次の苦難が待ち受けているように思う。

米国が再起するには、政治・社会・経済システムの一部改良ぐらいでは済まない。

根本的な改革―新自由主義からの脱却(金権政治・金融偏重・逆累進課税からの転換、労働権・福祉等公共の保護と規制の復活)が必要です。

これを実施するには、共和党との長く苦しい議会闘争が必要になり、目に見える成果の出現は10~20年後になるかもしれない。

経済格差が酷くなるのに、同じ年月を必要としたのですから、当然かもしれませんが。

米国民が、これを理解し耐えれるでしょうか?

なぜなら半世紀もの間、新自由主義が正しいと信じ込まされてきたのですから。

 

どうか、米国民に立ち直って欲しいと心から願います。

 


今一つ問題がある

 

それはMAGA派、福音派の問題です。

極論すれば、気の良い人々と信仰心の篤い人々が、半世紀をかけて大きなうねりを生んだ。

残念なことに、その方向は科学的な時代に逆行するものだった。

米国のクリスチャン白人層は、ヨーロッパと同じ出自であるにも関わらず、ヨーロッパに比べ世俗化が遅れている。

これは、彼らの想いと異なり、富裕層(既得権益層)とユダヤ人(イスラエル支援)に極上の恩恵をもたらした。

世俗化が遅れた経緯には、様々な理由があったでしょうが、結果だけを見れば、気の良い純粋な人々が煽られ利用されているとしか見えない。

 

これは非常に憂慮すべき状態であり、けして宗教だけの問題に済ませてはいけない。

中世ヨーロッパの魔女狩りと同様なことが大戦後に米国で起きました。

それは「赤狩り」の興奮が覚めても、その悪魔への敵意はベトナム戦争へに向かわせた。

かつて日本もドイツも、ファシズムの熱に浮かされ、すべての国民が飲み込まれ、破局まで突き進んだのですから。

 

私には、このMAGA派と福音派が持つ信念や熱量を、良い方向に向ける方法が思いつかない。

しかし、これらに対して危機意識を持つことは、社会をよくするために必要な事です。

 

米国民へ、厳しい事を書きましたが、かって日本も過ちを犯しました。

それへの反省の意味も込めて書きました。

どうか頑張ってください。

 

 

 

--目次---

 

1話;悪化の責任は誰に

2話;皇軍が選んだ道

3話;独裁に魅了された人々

4話;皇軍の軍人魂とは

5話;日本の戦争を振り返る

6話;軍備と敵について

7話;戦争に向き合う

8話;米国民へのお願い

 

 

これで、この連載を終えます。

お読み頂きありがとうございました。

 

 

20261012

連載 国民の責任 7; 戦争に向き合う

   


国が戦争を始めた時、「国民に責任があるのか」、日本と米国について考えます。

 

三つの隣り合う独裁国について

 

日本と戦争の可能性が最も高いロシア、北朝鮮、中国について考えます。

ロシアは最大の脅威です。

プーチンは狂気の独裁者で、隣国侵攻を繰り返している。

ウクライナ戦争の結果次第で、日本との戦争が起こるかもしれません。

ウクライナを支援し、ロシアへの用心を怠らないことです。

ロシアと中国がこれ以上他国へ侵攻しなければ、北朝鮮の危険性は低いでしょう。

日本にとって、一番重要なのは中国です。

私は、長年中国を旅行し見て来ましたが、ロシアに比べ暴発の可能性は低いと考えます。

国民は数十年にかけて非常に豊かになり、発展が全土に行きわたっています。

同じ独裁国家でも、ロシアに比べれば民度が向上し、それが経済や技術の発展に表れています。

 

つまり、日本は中国との外交交渉に力を入れるべきで、断絶は絶対に避けるべきです。

中国がロシアから離れ、欧米と敵対しないようになれば、安全保障上ベストでしょう。

ロシアも北朝鮮もさらなる暴挙に出にくくなる。

もしトランプと一緒になり、中国と対立を深めるなら、中国・ロシア・北朝鮮の同盟は強固になり、最悪となります。

米国は、共産主義を敵視し過ぎであり、特にトランプ政権下では身勝手で、独裁者に友好的なので注意が必要です。

トランプが大統領職を退けば、米国は良識を取り戻し、ウクライナと東アジアにとって良くなるはずです。

 

 

 

 

戦争を起こさない為に

 

最後に日本国民について考えます。

 

第5話で「戦争の再発防止策」を提示しました。

これらを達成するには、大きな障害を乗り越えなければなりません。

それは「タテ社会」「村意識」「高い帰属意識」「家父長制」で言い表される日本の基底文化と関りがあります。

これは日本の長所でもあり欠点でもあります。

 


 

 

第4話で「神風特別攻撃隊」について見たように、日本国民は周囲の状況に合わせ、自分を押し殺し、黙々と従う傾向が強い。

この傾向は、今も変わりません。

これは団結力を生むので長所となるのですが、組織全員がトップの方針に従い猪突猛進してしまうことになります。

天皇や社長の命令であれば、善悪は横に置いて、目標達成に一丸となって行動します。

この時、間違いを正すような行為は裏切りとみなされ、内部告発は粛清されます。

したがって他の組織とは、往々にして意見が合いません。

例えは陸軍と海軍、財務省と通産省、それぞれが自分の領分を守るだけで、全体を見ることが出来ない。

このような組織文化にあっては、組織に馴染む人間が、他から見て道を外した行為をしても、組織は彼らを守るようになります(ダブルスタンダード)。

軍の中堅が満州事変、五・一五事件、盧溝橋事件で無法な事をしても軽く済んだ理由が、これです。

 




 

 

当時も今も、日本では組織から国まで、間違ったまま突っ走り易い。

治安維持法や国家総動員令など、国民を統制する法律が安易に制定され、運用がどんどん厳しくなるのも、日本の精神文化のなせる業です。

日本には、民主主義が育ち難い土壌があるのです。

 

私達は、最低でも、この精神文化を理解し反省しながら、社会や国の運営に携わり、チェックする必要があるのです。

実は、この精神文化は、千年に及ぶ東アジアの農耕文化に起因しており、島国の日本が特に古い形で強く受け継がれて来たのです。

このことが、ロシアや中国が共産主義の独裁に、日本がファシズムに馴染んだ理由なのです。

 

 

 

 

 

天皇と日本の独裁

 


 

 

微妙な問題です。

卑近な例ですが、薬中の人が、禁断症状が出た時に、薬物に手を出すのと似ています。

平安末期から明治維新まで、天皇は政権交代時に、次の支配者に祀り上げられ、正当性表明に利用され続けた。

この手は海外でもよく使われるのですが、日本は海外(異民族)からの政府転覆が無かった為に、万世一系を唱え易く、非常に有効だったのです。

この事と、上述の日本の精神文化がうまく適合して、明治以降の政体が太平洋戦争まで続いたのです。

統帥権の問題は一例ですが、政府と軍は天皇を祀り上げ利用し、縋り続けた。

 

翻ってみると、日本の軍国主義には明確な独裁者はいなかった。

天皇から陸軍の東条まで、一人に権力が集中し権限を振るって戦争を始めたのではない。

どちらかと言うと、軍(歴代首脳と多数の中堅幹部)、内閣(歴代首相と多数の大臣)、そして数人の天皇が、逐次、戦争開始と継続に加担しており、一人の責任に特定できない。

逆に言えば、無責任体制こそが元凶と言える。

 

 

最後に

 

日本は素晴らしい国であり、自然や文化は誇れると私は思う。

しかし、国が大きく進むとか徐々に衰退する時、その方向づけや、コントールに国民も政治もうまく対応できない欠点を持っているように思う。

これらの欠点に気が付いて日本を良い方向に牽引してくれる指導者が出ることを心より願います。

 

--目次---

 

1話;悪化の責任は誰に

2話;皇軍が選んだ道

3話;独裁に魅了された人々

4話;皇軍の軍人魂とは

5話;日本の戦争を振り返る

6話;軍備と敵について

7話;戦争に向き合う

8話;米国民へのお願い

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20261001

短縮版 迫る多難な危機  第四章 4-2 後半2部

  


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。

Make the world and people happy again!

 

 

--- 目次  ---

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 4-2 なぜこのようなことが起きてしまったのか

   真実はどうして葬られたのか 1

    真実はどうして葬られたのか 2

    すがり続けた夢の果てに

    基本的な考え方

 

 

 


第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 

 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。米国で右翼ポピュリズムが、なぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日米欧等先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いています。さらに米国特有の病理(特徴的な宗教)が災いしています。

 

 米国が独裁化を回避し本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになり、また世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。

 

 

 

 真実はどうして葬られたのか 1

 

 いくら信仰心が高まっても、現代は科学の知見があまねく社会を照らしている。数千年前に遡る聖書の予言や格言に先進大国が振り回されるとは思いもよらなかった。実は、宗教のみが真実を覆い隠す役割を果たしたのでは無い。もう一つ深い闇が社会を覆いつくしているのです。

 

 


  分かり易い例があります。2017年、トランプ政権のスパイサー大統領報道官は、トランプ氏の就任式に集まった群衆の規模について「過去最大の人々が就任式に参加した」と主張した。しかし、メディアによる空撮写真や公共交通機関の利用データなどからは、前回のオバマ大統領の就任式時よりも少ないと指摘された。これについて、コンウェイ大統領顧問がテレビ番組に出演した際、「スパイサー報道官が示したのは嘘ではなく“代替的な事実(alternative facts)”である」と述べ、正当化していました。トランプの発言は虚言の方が多いのですが、虚実取り交ぜ、応援者には夢を与え続けて、批判に対しては報道機関と国民を煙に巻いてきました。実は、この煙に巻く事で、永らく米国民は真実と科学的知見から遠ざけられて来たのです。

 


 

 1950年代、喫煙と肺がんの因果関係が指摘され始めると、大手タバコ会社は共同で「タバコ産業調査委員会」などの偽装団体を創設しました。これは中立的な研究機関を装いながら、実際には業界に都合の良い偽物の専門家を雇い、科学的論争が未解決であるかのようなプロパガンダを流し続けたのです。さらに、あえてタバコと直接関係のない、癌の発生プロセスなどの広範な生化学研究に巨額の資金を提供し、因果関係の結論決定を遅らせる時間稼ぎを行いました。タバコ会社自身は、すでに「ニコチンには強い依存性があり、タバコは癌を引き起こす」という真実を突き止めていました。1980年代に受動喫煙の害が証明され始めると、タバコ会社は「お抱えの科学者」に資金を出し、「科学的な証拠が不十分である」とする論文を発表させました。この間も、真実のデータはすべて極秘とされ、1990年代の米連邦議会の公聴会でも、タバコ会社の最高経営責任者たちは「ニコチンに依存性はない」と宣誓供述をして嘘をつき続けました。しかし、あるタバコ会社の開発担当副社長は内部告発により解雇され、さらに会社とギャングから激しく攻撃された。しかし彼の証言などにより1998年、大規模な損害賠償請求訴訟において歴史的な和解(勝訴)が成立した。

 

 実は、この「確実な証拠がない」「議論はまだ続いている」という「疑念の製造」戦略は、今も形を変え蔓延し続けているのです。最も危険なのは、天然ガス・石油掘削会社と共和党による地球温暖化隠しです。他にも、保守系シンクタンクが様々な、「疑念の製造」戦略に加担しています。このような目くらましが、半世紀以上、巨額の資金をつぎ込んで垂れ流されているのですから、大半の国民は真実を見ることが出来なくなっている。一人一人が科学的論拠を確認するのは困難です。

 

 

 

真実はどうして葬られたのか 2

 残念ながら、21世紀、特に2010年以降は、さらに困難な状況に追い込まれている。単純だがトランプの前回の4年間で3万回を越える虚言は、史上圧倒的な量です。彼は1日に10~20回、虚言や紛らわしい言説を吐いている。選挙集会等で、自陣営の聴衆を喜ばすために、また報道機関から批判的な質問を受けると、彼はほとんど虚言か誇大な言説を連呼する。報道機関等のファクトチェックに膨大な手間と時間が掛かり、究明に追いつかない。さらに巧妙なのは、大手マスコミを毎回、フェイクニュースと罵り、トランプを絶賛するFOXや一部のインターネットニュースサイトのみが真実を報道していると付け加える。今も、トランプ氏支持者は頑強に彼を信じて疑わない。しかし、これはほんの序の口です。

 

 既に、インターネット上で嘘がこだまのように反響している事は周知の事実です。この状況を差す言葉、ポスト・トゥルース(Post-truth)が2016年に有名になりました。これは世論形成において客観的な事実よりも、感情的な訴えや個人の意見のほうが強い影響力を発揮する状況を指しています。イギリスのEU離脱(ブレグジット)やアメリカ大統領選でのトランプ勝利など、世界政治がデマで大きく動いた事例でした。このような状況が生まれた背景の一つに、SNSの普及によって、誰でも簡単に世の中に対して個人的な意見を表明することが可能となったと同時に、多くの情報を瞬時に流通・拡散できるようになったことが挙げられる。利用者が見たい情報だけを見る「エコーチェンバー」や「情報のサイロ化」(広く連携できない孤立化)が進んだことが大きい。SNSの普及は、個人的な考えの影響力を増殖させた一方で、フェイクニュースと呼ばれる事実と異なる情報が短時間で世界中に流布されてしまう状況も招いた。その結果、テレビやラジオ、新聞、雑誌といったオールドメディアの影響力は相対的に低下し、客観的事実が軽視されるようになった。このエコーチェンバーは、人間の心理(自分にとって心地良い情報を選択)とSNSや検索エンジンのアルゴリズムが、個々の利用者の興味(情報)を分析し、望みを叶えるように優先表示している事で、加速している。利用者はさらにこれが繰り返され、より狭い範囲の情報に閉じこもるようになる。この状況を巨大プラットホーム(Google、メタ等)が莫大な広告料欲しさに、コントロールし、トランプの1期の選挙から、選挙に有利になるように細工した可能性がある。当然、大統領就任後、リベラルが望むSNSの規制を反故にするのと引き換えを目指してのことのようです。この選挙時に、ロシア(プーチン)がトランプを勝たせるために、ヒラリー候補にダメージを与える為に、SNSで攻撃していたことが、ほぼ確実視されている。

 

 深刻度が増すポスト・トゥルース時代と混迷を深める経済・社会にあって、我々はどう対処すべきなのか? 

 

 

 すがり続けた夢の果てに

 米国民の多くがこの夢に幻惑され続け、さらに何割かの人が神の下に在り続けるなら、地上では諦めても良いと思っているかもしれない。その夢とは、新自由主義の単純すぎる例、トリクルダウンです。これは、シャンパングラスを積み上げ、最上段にシャンパンを注ぎ、やがて最下段にまで滴り落ちる例えで示されます。富裕層や大企業が豊かになることで、最終的に貧困層など社会全体にも富が浸透・波及するという考え方です。半世紀待っても、最上位のグラスが大きくなるだけで、下には零れませんでした。

 もっとも罪な経済イデオロギー「完全な自由市場こそが消費者に最大の利益をもたらす」は、自由主義の小さな政府と自己責任論と並ぶ三大テーマの一つです。このテーマの前者二つとマネタリズム(金融数量説)は、当時絶大な信頼を得ていたノーベル経済学者ミルトン・フリードマンが提唱したものです。半世紀も経た今となれば、どれも齟齬をきたしている。むしろ米国の災厄は、これら理論の呪縛から抜け出せないことにある。この市場原理(自由市場)については、共和党も民主党も共に推進し、他の小さな政府、自己責任論、マネタリズムについては、民主党は抑制気味でした。

 政府が規制をなくして市場を完全に自由にすれば、無数の企業が競い合って効率化が進み、価格が下がり、消費者が最大の利益を得ると考えたのですが、理想どうりにはならなかった。規制緩和が進んだ結果、予測とは逆に「勝者総取り(ウィンナー・テイク・オール)」の現象が起きました。規模の経済やネットワーク効果(IT大手プラットフォーマーなど)により、市場は競争が激化するどころか、少数の巨大企業による寡占・独占が進みました。その結果、価格支配力が強まり、中小企業の排除や、富の極端な集中(格差の拡大)という弊害が生まれた。

 

 当時、フリードマンが最も信頼されたのは、彼の金融数量説の採用によって、当時のインフレを抑制出来たことにあり、画期的でした。金融数量説の信奉から金融技術の進展が起こり、自由競争が重視された事と重なり、投機が巨大になり、実体経済と金融経済が乖離しました。そして巨額の利益は金融から生まれるようになり、投機が行き過ぎると、景気は加熱するが、やがて金融危機が繰り返すようになった。もう一つの問題は、多くの国で資金が投機に向き、本来の設備投資に向かなくなったことも長期的経済成長を抑えることになった。

 

 現在、多くの経済学者によって、現状の新自由主義による経済運営は、様々な問題を生み出しているとし、個々の政策について批判され、修正が求めらている。もつとも保守系、富裕層、大企業はこれに反対していますが。

 

 

 基本的な考え方

 

 現状の経済状況を観察すると、異常であることは疑いない。明らかな事は、貧乏人はより貧乏に、金持はより金持ちに、しかも固定化されて来ている。また社会保障等が先進国中遅れたままです。当然、これは人為的な政策による結果です。なぜなら1980年代以降、多くの経済・社会指標が急激に悪化して来たのですから。

 行き過ぎ積み重ねらた政策が問題でした。大幅な規制緩和による自由競争、徹底した自己責任への転嫁、富裕層や企業に偏った大幅な減税など大きい。これらの弊害については、個々に簡単に触れて来ました。ここでは要約と、考え方を提示します。

 

 先ず規制が必要です。私たちは長年に渡り、規制緩和こそが、良策と洗脳されて来ました。しかし、これは間違いです。一言で言えば、規制過ぎてもだめだが、規制が無いのも問題なのです。適切な自由競争を生むには、寡占を防ぐ規制が必要です。スポーツで言えば体重別の競技だからこそ良い場合があるように。自己責任を自覚してもらうことは勤労精神を育む上で需要ですが、個人の状況(健康、生まれた家庭、人種、失業)や不意の事故等で、その後のチャンスが閉ざされる事は、社会にとってマイナスです。この理解は難しい。特に共和党支持者は、これら逆境にある人々に、税金が盗まれていると思わされて来た経緯があります。富裕層の減税総額と逆境を支える福祉費の比較をしてみましょう。概算ですが、富裕層の課税を大戦前の税率に戻すと、年間数十兆円が国庫に入ります。さらにキャピタルゲインの優遇措置で富裕層は年間何十兆円も逃れています。もっとも米国は規制が緩いのでタックスヘイブンに多くは逃げてしまうでしょうが。民主党がよく行う雇用対策費用は年間20~30兆円でしょうか。つまり富裕層に税金を負担していただくと財政赤字を増やさず、まともな福祉政策が戻ってくるのです。

 

 重要な事は、政府の政策実施にあたって、適正なフィードバックが可能にしておく事です。現在は、明らかに間違っている政策であっても、変更、元に戻すことが出来ない。それは、富裕層と大企業が、豊富な資金力を使って、選挙などで優位に立ち、長年に渡り政府と国民を手懐けて来たからです。共和党は1980年代から急激に企業・富裕層優遇に舵を切り、民主党とは袂を分かっています。その政策は、法人税・所得税・配当税・相続税等の減税、規制緩和、労組への規制強化、企業補助等で、拡大の一方です。例えば、2025年の共和党の大型減税法案は、「年収100万ドル超の上位0.6%の1百万人が、年収10万ドル未満の1300百万人よりも大きな減税を受ける」とCenter on Budget and Policy Priorities(予算・政策優先事項センター)が分析しています。これが今の米国であり、トランプの実績なのです。

 

 どうか真実から目を逸らさないようにしてください。

 

----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

20260929

短縮版 迫る多難な危機  第四章 4-1, 4-2 前半

  


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

 

第4章 緊急に対処しなければならない危機

4-1 米国で起きている悲惨な状況

経済的な状況

    社会的な状況

     富裕層は一般市民に恩恵をもたらすか

    著しい所得格差がもたらしたもの

 4-2 なぜこのようなことが起きてしまったのか

   経済的な側面

 国民はなぜ悲惨な状況を改善できないのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 

 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。さらに悪いことに、米国の独裁化(右翼ポピュリズム)が完成してしまうと、世界の危機を防ぐどころから、より暴走させることになる。

 ここでは米国で右翼ポピュリズムがなぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日欧米等の先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いていることが分かります。米国が独裁化を回避し、本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになります。さらに、これによって世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。

 

 

4-1 米国で起きている悲惨な状況

 

経済的な状況

 一番分かり易いのは経済格差であり、ほんの一部の富裕者が膨大な富を有し、益々、その富は幾何級数的に増えて行く一方で、8割ほどの国民は生活水準が向上しないか貧困化し、不安定な状況に怯えています。さらに非白人や女性は賃金や待遇で差別されています。経済格差は、今や特別のことでは無くなったが、米国は先進国でトップを走り、格差拡大が止まらない。さらに、この格差が定着し、貧しい家庭からはほぼ裕福な階層に上昇することがなくなってしまった。詳しくは、第三章3-3で、グラフと数字で説明しています。

 

 

社会的な状況

 米国の中間層の賃金は、30年間、日本のように低下は無かったが横這いで、雇用状況が悪化し続けている。首切りが容易で、安定した生活を望めない。それに加えて、社会福祉が先進国中かなり貧弱で、医療費が高額、退職金や年金を当てに出来ない人も多い。高額な保険料が払えず、医療保険に加入していないので病気になっても高額な治療費が払えず病院に行け無い人がいる。妊娠した女性は、労働協約によっては育児休暇が取れない場合もあり、退職せざるを得ない。将来の為に、大学に行きたいと思っても、学費は非常に高額で、ローンを借りるか、諦めることになる。簡単に言うと、貧しい人はより貧しく、また何か災い(病気、首切り)に遭うと、どん底から抜け出せなくなる。これで若者は絶望し、薬物に溺れ、自殺も増えるようになった。また経済的な自立が出来ない若者は、親元に残り、結婚することも出来なくなっている。そしてこれらの状況は自己責任で片付けられる。ほんの一握りの人を除いて再起のチャンスや希望を持ちえない社会になっている。 

 

富裕層は一般市民に恩恵をもたらすか


  答えはNOです。富裕層の莫大な資金は、不動産、株式、アートなどの資産市場に流れ込み、資産インフレを引き起こします。さらに、富裕層が「いくらでも払える」ため関連の価格水準が上昇します。テレビなどの日用品は安くても、住宅・医療・教育という「人間らしい生活の基盤」のコストが、中間層には手が出ないレベルまで高騰してしまいます。良好な自然環境や景観が、一部の富裕層によって買い占められ、一般市民から切り離される現象が多発します。代表的な例として、カリフォルニア州の「マーティンズ・ビーチ」では、IT長者が海辺の広大な土地を買い取り、一般市民のビーチへのアクセスを物理的に遮断して長年の法廷闘争に発展しました。企業が河川を購入し、水利権を自治体に高額で売りつけ、住民の水道代が高くなるなどの被害がある。AIデーターセンター建設と同じ状況です。

 

著しい所得格差がもたらしたもの

 等しく皆が貧しければ絶望を感じないだろうし、さらに上昇のチャンスがあるなら、人は希望を持って生き続けるだろうが、そうではない。さらに悪いことに、一握りの富裕者達が政治と社会を操ることが可能になり、その度合いが日増しに強くなり、露骨にもなっている。貧しい人々がそれに対抗する策は益々少なくなっている。富裕者は莫大な資金を背景に政治献金、ロビー活動で直接、議員や議会を動かし、また草の根、宗教活動に肩入れし、大衆を動かしている。それだけでは無い。研究所を造り、研究者を雇い、マスコミを抱きこみ、世論を自らの目的に沿うように長年操作して来た。2000年頃からは、インターネットの巨大プラットフォームを所有する数社の企業は、ほぼ全国民を監視し誘導することまで可能となり、ホワイトハウスに協力する見返りに、規制を逃れようとしている。一部の富裕層は、隠すことなく大統領選挙に直接投資し、ホワイトハウスの要職を手に入れたり、便宜を図って貰うことを期待している。これはトランプ大統領に始まった事ではない。これらのことが半世紀あまりの間に、積み重なり、所得等への累進課税は逆進性を持つまでになり、また金融商品や投資の規制はことごとく緩められ、金融危機が再来するようになった。これらは富者を益々富ませることになっている。一方で労働組合は弱体化され、福祉政策は縮小されて来たので、多くの国民は不安定な状況に晒され続けるようになった。

 

 

 

4-2 なぜこのようなことが起きてしまったのか

 

 経済的な側面

 現在の大半の米国民にとっての悲惨な経済状況は、行き過ぎた自由競争が招いたと断言できます。市場での自由な競争は、生産と売買を効率良くし、生産者は工夫せざるを得ず、消費者は安く買えるはずでした。これが半世紀ほど主流となった思想であり、実際、多くの規制が葬られてきました。分かり易い例としては、公害、金融・投機、雇用、マスコミ等はかつて公益に失する事項については、事あるごとに規制法を定め、また監督機関を設けて、対処して来ましたが、現在はことごとく破棄されています。さらに加えて、国家の重要な役割だった公的サービスや再分配機能を放棄しつつあります。米国の場合は、初めから公的医療保険が貧弱だったのですが、改良は遅々として進まない。半世紀以上前なら、所得税は累進課税が当たり前でしたが、今や、巨大企業や超富裕層ほど税金を払わなくて良いようになっています。課税率の低下に加えて、様々な優遇税制が設けられ来たからです。階層の固定化が進んでいる理由の一つに、巨額の遺産を子孫に残せるように相続税等の減額もある。これらは、自由競争奨励の目的から離れています。実は、このような本来の競争奨励から離れて、結果的に大企業と富裕層を守ることになる数々の法律が創られて来ました。米国企業の薬価が高値維持できるように、工業所有権を強化したり、薬価決定に国の機関が関与出来ないとか、様々な小細工を繰り返して来ました。主に共和党がこれらの改悪を行い、後に民主党が修正を試みるのですが、焼け石に水です。グローバル化は共和党も民主党も共に、促進してきたが、国内の産業空洞化に対して、共和党は自由を標榜し手を打ったなかった。一方、民主党は、国内産業の構造転換に備え、高度知識社会を目指す大学進学を奨励して来た。残念ながら、状況の大幅な改善には至っていない。

 

 さらに米国は約20年ほど前から身勝手な振る舞いが多くなり、海外の先進国の協調体制を壊してきました。端的な例として、地球温暖化対策とタックスヘイブン対策があります。どちらも米国内の大企業と富裕層を守る為です。これらは回りまわって国民に損害と負担増を招いています。タックスヘイブンで富裕層の数割の資産が無税になっているのですから、国の税金不足に拍車が掛かり、サービス低下を強いる一方で消費税アップを図っています。まったく馬鹿げています。

 現在の悲惨な状況は、主に共和党が推進して来た、ほぼ規制の無い自由競争と、大企業・富裕層・金融取引優先によって、ほとんどの国民が放置され、保護も失われた結果と言えます。

 

 

国民はなぜ悲惨な状況を改善できないのか?

 これらの状況は1980年以降、徐々に深まって来た。大半の米国民はこの悪い状況に気が付いているが、真の原因から巧みに目を逸らされている。

 トランプの経済的な解決策で売りは、空洞化した産業を国内に戻し、労働者に就職先を与えると言うものです。関税を掛けて、相手国を脅し、相手国の資金で米国内に工場を誘致すると言う、画期的で米国民の懐が痛まない良策に思える。この策は、自国の多国籍企業化の推進からの大転換でした。しかし、問題が多すぎる。関税で米国消費者の購入額が上昇し生活が苦しくなる。また半世紀以上も生産技術や技能工を見捨てて来たのに、今さら工場が来たからと言って、うまく稼働するとは思えない。当然、品質も価格も思いどうりならないでしょう。どちらにしても10~30年のタイムラグがある。一番の問題は、米国自身(多国籍企業)の責任を棚に上げて、今になって相手国を犠牲にして、利を得ようとしている事です。まるで帝国主義の復活であり、じわりじわりと世界を20世紀前半のようにキナ臭くするだろう。少なくとも、互いに関税を掛け合い、貿易が縮小し、相手国の国内投資と労働者の職を奪い、世界経済にマイナスになる。

 

 これは、浅はかな目くらましの最たるものです。真の悪化原因は、空洞化を無制限、つまり自由化させて来たからであり、また何ら労働者への有効な対応策を行ってこなかったからです。それをあたかも一度に解決できると唱え、盛り上がる世情に問題がある。本来のあるべき姿は、北欧がやり遂げているように、高付加価値産業への構造転換を行うために、産業界と労働界が協議し、納得の上で、方向転換を図ることです。産業は必要な投資を行い、労働者は新たな技能の取得を目指します。このために労働者への転職支援(技能講習と休職保障)が不可欠です。こうして北欧は産業転換を図りながら、高い国際競争力と一人当たりGDPを維持しているのです。

 

 トランプと共和党の他の経済政策は、大半の国民(中間層以下)にとってそれほど経済的にメリットがないか、むしろ回りまわってマイナスになるものです。ほとんどは大企業や富裕層にメリットのあるものです。それでは、なぜ国民はトランプや共和党に期待するのでしょうか。我が身を振り替えれば生活の悪化か横這いが長期に及び、普通に考えれば政策の欠陥が分かると思うのですが、それが見えていない。確かに共和党の方が民主党に比べ景気刺激策に力点を置いてきたのだ、蓋を開けると、中間層以下の人々にとってマイナスだった。

 

 

 

----全体の目次-----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。