20141006

私達の戦争 47: 未来に向かって




    

今まで、私達の身の回りで起きた戦争や軍備について考察しました。
連載を終わるにあたって少し未来に目を向けます。

振り返って
この連載では、日本が経験した今次の大戦を振り返り、また戦争や軍備の基本的な概念(自衛、抑止、銃、核攻撃など)を見て来ました。
私が皆さんにお知らせしたかったことは、戦争が如何に起き易く、想像を絶し広範囲に及ぶ悲劇が待っていることです。

一度、不用意に足を突っ込むと、当初、国民に戦意が無くとも、また指導者がたとえ避けようとしても、やがて開戦から泥沼へと突き進む可能性が高いのです。
このメカニズムは複雑ですが、太平洋戦争に至る過程を極論すれば、引くに引けない指導者達、熱に浮かされる人々、信じて付き従う人々がそこにはいたのです。
それは半世紀を超える軍事大国邁進の帰結であり、それは数千年の間、人類が繰り返して来た「戦争の甘い罠」でした。

今、私がひしひしと感じるのは、戦後半世紀が経ち、悲惨な体験が忘れ去られ、またもや一昔前の熱に浮かされ初めていることです。
その切っ掛けは、超大国の陰りと猛追する大国とのパワーバランスの変化、資源問題に端を発する国境問題などにあります。
しかし、このような転換点は姿かたちこそ変われいつの世にもありました。
人々が、そのことで簡単に踊らされてしまえば、また同じ轍を踏み、何年か後に深い悲しみ包まれることになるかもしれません。

    

戦争はなぜ起きるのか
私はこの連載で詳しく説明しませんでしたが、本連載の「戦争勃発」や「連載、戦争の誤謬」で扱っています。
色々な要因が重なって起きるのですが、一つだけ断言出来る事があります。
戦いは人間が主体であり、悪感情が災いしていることです。

たとえ狂信的な指導者が戦争を煽っても、国民が冷静であれば容易に戦争に突き進むことはないでしょう。
しかし恐怖心や嫌悪・蔑視感情を煽られると、人々は容易に賛同し始めます。
当然ながら、指導者がこの手を使うからこそ起きるのであって、多くの民主国家が起こす戦争のパターンと言えます。

例えば、あなたに隣国で言葉が通じる友人が沢山いて、隣国のことを良く知っていれば、あなたの反応はどうでしょうか。
隣国と戦うことに国益があるとか、恐怖の根を断つためとか、名誉のためとか、言われても・・・・。
隣国への無知、無関心、無理解が大きな障壁になっているわけです。
理解が進むようになれば、多くの戦争原因である国益の奪い合いでオール・オア・ナッシングではなく、フィフティ・フィフティの妥協が可能になります。

    

異論を唱える人もいるはずです。
何も好きこのんで戦争をしたいわけではない。
隣国が先に仕掛けてくるから、隣国が挑発するから、弱みを見せてはならないから、逃げずに行動するのだと・・・。
この問題については既に説明して来ましたが、これも隣国への無知、無理解が拍車をかけている可能性があります。

概ね、戦争防止に何が必要かわかっていただけたかと思います。

    

ここで注意して頂きたいこと
それでは誰が敵意を煽るのでしょうか?
もし善意ある指導者や国民ばかりであれば、戦争は起こらないのでしょうか?
実は、このような場合にも戦争が起きる可能性はあります。
あまり説明していなかったことを一つだけ取り上げます。

それはマスコミの影響です。
現在、過去の戦争を否定的に報道するマスコミが一方にあり、同じ愚を犯してはならないと警鐘を鳴らし続けています。
一方で、過去の戦争を肯定的に報道するマスコミがあり、隣国を非難し続けています。
これは自由な言論の範疇に収まっているのでしょうか。

問題点だけ指摘しておきます。
過去に、後者のマスコミ報道が世論を席巻し、戦争に突き進んだのが半世紀から1世紀前のことでした。
それこそほとんどの報道や言論界が、徐々に好戦的になって行きました。
この手の報道は、政府と同調する時、いっそう勢いを得て危険度が高まります。
この問題を避ける一手として、欧米はヘイトスピーチの禁止や、虐殺事件などの否定報道の禁止を定めているのです。
最近、日本の元駐中国大使の弁によると、日本のマスコミ全体が中国の悪い事だけを報道する傾向にあるそうです。

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しかしもう一つ問題があります
それは明確に表面化していないのですが、日米関係です。
日本が今あるのは米国のおかげであり、その影響力は経済・金融・外交・防衛に深く根付いています。
米国にとって、日本は東アジアに対する防波堤であり橋頭堡であり続けています。
日本が米国から離脱し、東アジアと一体になることは、米国にとって最大級の危険要因です。
当然、これを阻止する為にはあらゆることが裏で行われるでしょう。
そのような例はGHQ以来、日米の密約、世界でのCIA暗躍などに見られます。

次回に続きます。





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