20141011

私達の戦争 50: 未来に向かって4、最終稿




    

「隣国との融和」を取り上げ、この連載の最後とします。
長らくお読み頂きありがとうございました。

戦争と融和
攻守共、戦争には軍事力と、戦争に同意する国民の存在が不可欠でした。
この国民の同意は、相手国への恐怖や歴史的な遺恨が根になり、無知や無理解、先入感が相互に災いし、やがて雪だるま式に膨らんでいきます。
この悪循環を断ち切ることはなかなか困難なようです。

人類はここ数千年の間、身近な紛争を調停し予防する為に素晴らしい法体系(正義と罰則)を発展させて来ました。
さらには憲法を創始し、国家権力を制御することにも手をつけるようになりました。
しかし国家間の紛争の解決や予防には、二度の国際連合創設をもってしても不備な面が目立ちます。
世界は国家を越える紛争の解決と予防のシナリオや法体系を今だ模索中なのです。

さらに日本は他国から侵略された経験がなく、侵略後も反省を実感することなしに経済発展を成し遂げることが出来た。
後者は、一つには朝鮮戦争が起こったことにより、米国(GHQ)はそれまでの日本復活阻止と非武装路線から、反転して日本を赤軍への防波堤に育成することにしたからでした。
これは不幸中の幸いとも言えるが、大戦後のドイツとフランスとの融和、さらにEUへの統合を考えればチャンスを逃してしまった。

結局、融和が苦手な隣国と日本も、自ら融和を図らなければ戦争の危機は深まるばかりです。


融和を阻むもの: 無知・誤解・先入観・扇情



< 2.日中で、互いの印象の推移。言論NPO。 >
*紫線: 中国での、日本への好意的でない世論の割合
*赤線: 日本での、中国への好意的でない世論の割合

日本では、2006年まで嫌中感情は40%を切っていたが、2007年に急に悪化した。
中国では、2005年に高かった反日感情が2007年には低下し、2009年にはまた急増し、2013年には日中共に90%まで上昇した。
この期間、尖閣諸島を巡り台湾、中国、日本がつばぜりあいを行っていた。
2005年、日本は尖閣諸島の灯台を国有化した。
2007年、中国は尖閣諸島付近で海洋調査を始め、領有権を主張した。
2009年、日本は周辺海域に巡視船を派遣した。
2010年から12年にかけて、東京都知事の発言が切っ掛けとなり、日本は国有化を決定した。
ここで重要なことは、小さな島を巡る対立だが、互いに報復措置を繰り返している間に、両国民の嫌悪感が相乗して高まっていったことです。
この手の事例は、日露戦争後、日中間で幾度も繰り替えされて来た。



< 3.日中で、互いに軍事脅威を感じている割合。言論NPO2013年。 >

日本にとっての脅威は北朝鮮が一番であり、次いで中国となる。
中国にとっての脅威は米国が一番であり、次いで日本、私達が恐れる北朝鮮と韓国にはほとんどない。
これは、日米軍事同盟の強化が中国を非常に刺激する事を意味する。
さらに深読みすれば、北朝鮮は中国の懐にあるので中国次第で脅威が薄らぐこと示唆している。



< 4.日中で、「将来、日中間で戦争があるか?」との質問に対する回答。言論NPO2013年。 >
*左円が日本、右円が中国の世論。
*濃い青が数年以内、薄い青が将来に戦争勃発を予想している。
*赤と黄色は戦争が無いと予想している。

中国では、日本の軍事脅威53.9%相応に戦争勃発の可能性52.7%を感じているが、日本では脅威61.8%に比べ戦争の恐れを感じていない(23.7%)。
日本人は戦争勃発を甘く見ているが、中国人は切実なものと感じている。
この温度差を日本側が理解しておかないと、不用意に虎の尾を踏むことになる。
太平洋戦争開始時、日本の首脳が米国を甘く見ていたように・・。


< 5.世界のGDPシェアの推移。楽天証券。 >
今後、アジアの東部から南部一帯が世界経済の中心になることでしょう。



< 6.16年後、46年後の世界のGDPシェア。OECD。 >

日本国内で、長年、中国は経済破綻すると言われながらも、ついに日本を抜き米国に迫っています。
そして16年後、中国の経済力は米国の1.6倍になりそうです。
2013年の中国の軍事費は米国の1/5に過ぎませんでしたが、米国と同率の軍事費を使うとして逆に1.6倍の軍事費を持つことになります。
確実に中国の影響力は増しており、世界を牽引するアジアにあって中国とインドが中心になっていくことでしょう。


< 7.「世界に与える影響が良いか悪いか」を聞いた結果。BBC,2013年。 >
*世界22ヵ国で16ヵ国についての世論調査。

良い影響を与える国と世界が評価している順位は日本4位、中国9位、韓国10位でした。
嫌中・嫌韓でおとしめる風潮が強いが、世界は日本と同様に隣国も評価している。
ちなみに前年は日本が1位、中国が5位だった。

皆さんに質問があります―日本の常識と世界の常識の差
1.       中国に進出している外国資本で最大の国は何処でしょうか? 
2.       日本の貿易相手国で最大の国は何処でしょうか?

答え: 1.日本。2.中国。
日本と中国は経済的に最重要のパートナになっている。

3.       地球幸福度指数ランキングで中国??位、韓国68位、日本75位、米国114位。
     2009年度、英国の環境保護団体発表。持続可能性を考慮し、環境負荷と国民の満足度を評価。2006年度でも似たようなランキングでした。
4.       幸福度ランキングで米国6位、日本21位、韓国??位。 
     2013年度、OECD発表。中国は非加盟で無し。2011年度、米国2位、日本22位、韓国24位。
5.       人間開発指数ランキングで米国5位、韓国15位、日本??位。
     2014年度、国連発表。中国記載なし。2009年度、日本9位、米国13位、韓国26位。

答え: 3.20位。4.27位。5.20位。
評価方法と年度によりバラツキはあるが、大半の人が抱いている隣国のイメージとは異なるはずです。
それにしても韓国と日本は似た水準にあります。

6.       民主主義指数ランキングで米国17位、韓国??位、日本22位、中国136位。 
     2010年度、英国の研究所発表。
7.       世界報道自由ランキングで、米国46位、韓国57位、日本??位、中国175位。
     2014年度、国境なき記者団発表。

答え: 6.20位。7.59位。
この二つは戦争へと暴走させない為に、国民にとって重要な指標です。
中国は独裁国家に近いのですが、それでも遅ればせながら民主化への改革は進んでいます。
韓国も以前は軍事独裁の後遺症で民主度は低かったが、急改善し日本を追い抜きつつあります。

世界報道自由ランキングが2010年から2014年にかけて大きく後退しました。
この悪化は福島原発事故での民主党政権の対応のせいだと噂されています。
ここに日本が再び暴走しかねない深刻な理由が隠れているのです。
それは、日本の政治(官僚と政権)に都合の悪い情報を隠すことが良しとする体質があり、この悪弊は染みついたものです。
この報道ランキングの日本の順位は2002年から2010年まで26,44,42,37,51,37,29,17,11位、2012年から22,53,59位でした。
元々、日本の報道は先進国の中でレベルと自由度が低い上に、震災後、益々悪化しています。
これは機密保護法、NHK経営委員などの問題に呼応しています。
これは内部告発が出来ない日本の組織文化に由来し、原発の安全神話やかつての戦争推進に加担することになりました。

最後に
私達は、隣国の情報を残念ながら直接入手することが出来ません。
多くは隣国と言葉が通じず、友人もいないでしょう。
どうしてもマスコミなどのフィルターを通して知ることになります。
しかし政府や優勢な報道機関は、どうしても現状を支えている米国寄りになってしまいます。

私達は、疑いを持って、自ら広い範囲に情報と友人を求めて、隣国を正しく評価しなければ、将来の道を誤ることになるでしょう。

三ヶ月にわたる長期連載にお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
少しブログを休ませて頂きますが、また始めますのでよろしくお願いします。




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