20140812

私達の戦争 23: 戦争勃発

 
    

戦争はどのようにして始まるのだろうか?
そして何が起きるのかを簡単に見てみましょう。

戦争は突然起きるのだろうか?
突如、入道雲が湧き上がり雷鳴が鳴り響くように・・
それとも湿った風が吹き始め、厚い雨雲が空一面を覆うようになって・・
ここ百年間の主な戦争を見ます。

A. 1914年、第一次世界大戦
これは皇太子の暗殺に始まり、27ヵ国が二つの同盟に分かれ地球全域で4年間戦い、4000万人が死傷した。

B. 1937年、日中戦争と太平洋戦争
これは数発の銃声に始まり、さらに太平洋戦争へと拡大し、日本一国がアジア・太平洋地域で8年間戦い、死者1900万人を出し、日本の死傷者300万人となった。

    

C. 1939年、第二次世界大戦
これは突然の軍隊侵攻で始まり、世界60ヵ国が二つの同盟に分かれ地球全域で6年間戦い、6500万人が死んだ。


D. 1948年、パレスチナ紛争
昔からユダヤ人の帰還はあったのですが、この年のイスラエル建国によって、パレスチナ(アラブ人)の領土を奪い移住することが加速し、中東戦争と紛争が継続するようになった。

    

E. 1950年、朝鮮戦争
これは突然の軍隊侵攻で始まり、韓国・国連軍が北朝鮮・中国軍と4年間戦い、600万人が死んだ。

F. 1960年、ベトナム戦争
これは反政府軍が武装蜂起したことに始まり、このベトナム内戦に米と同盟軍が介入し、15年間戦い、800万の死者・行方不明者を出した。

G. 1982年、フォークランド紛争
これは無人島が占拠されたことに始まり、英国とアルゼンチンが3ヶ月間戦い、死傷者3千人となった。

    

H. 1990年、ルワンダ内戦
これは植民地時代に優遇・差別された二つの民族間の対立から内戦が勃発し、100万人が虐殺された。

I. 1991年、ユーゴスラビア紛争
これは90年の東欧民主化を切っ掛けに、ユーゴスラビア連邦内のから独立運動が相次いで起こり、やがて10年間の内戦となり、最後はNATOと国連の介入により収まった。
この紛争は主に5つの紛争からなり、内二つの紛争で11万人の死者が出た。

J. 2001年、アフガニスタン紛争、2003年、イラク戦争
これらは共に2001年の同時多発テロを切っ掛けに、テロ阻止を唱え米国と有志連合がアフガニスタンとイラクへ軍事侵攻したことに始まる。
アフガニスタンでは今も戦闘継続中で戦傷者6万人(?)。
イラク戦争は、8年間で戦死者6万人、民間死者10~60万人を出した。

    


戦争は如何にして起きるのか?
上記の戦争を私の考える動機や原因で分類しました。

    

これら原因の多くは戦闘当事者の一方や一部だけに強く影響し、双方で食い違うのが通例です。
多くの戦争は、上記のような動機や原因が複雑に絡まり、小さな事件や事故が引き金となるものです。
独裁者や軍部が戦争を始めようとしても、敵対国への憎悪や蔑視、領土や権益の喪失や回復がない限り国民は容易に従わないでしょう。
また政府は将来の脅威の芽を摘む為と称して侵攻し、抑止力の為と称して同盟を結ぶことがあるが、戦端を開き易くし、かつ余計に戦火を大きくすることもある。
一方で同盟軍や国連軍が助けになることもある。

重要なこと
何億人もの死傷者や難民を生む戦争は、権力者や軍部の独走、領土・権益確保、民族主義などが主な原因と考えられます。

次いで、他国や異民族への憎悪や蔑視こそが、戦争勃発と戦争継続への大きなエネルギーになっています。
これは年月と共に互いに増幅していくのが常で、自然に解消することはない。
残念なことに歴史的に見て、多くの人々は破局の後に、そのことに気が付くようです。

もう一つは、最近、抑止や戦争・テロを未然に防止するためと称し米国が主導する派兵が多いことです。
しかしこれは結果的に、放置するよりも大きな被害を生みだし、世界に武器と憎悪を蔓延させている。

戦争勃発は、ガソリン缶の周囲で火遊びしたり、炎天下にガソリン缶を放置したり、ガソリンを抜くためにドリルで缶に穴を開けるようにして起きるようなものでした。








20140808

A hot spring and a roadside station in Awaji island

 

< 1. a view from the hot spring “美湯・松帆の郷”, by the HP >

Today I introduce you to a hot spring and a roadside station in the northern edge of Awaji island.

今日は、淡路の最北端にある温泉と道の駅を紹介します。


< 2.  a full view of the hot spring and Akashi Strait Bridge >

The hot spring “ village Matuho”
It is a hot spring on the hillside in northern edge of Awaji island.
This maximum charm is to be able to look at Akashi Strait Bridge and the strait from an open-air bath.
It is good to be soaking in a bathtub along with looking at the ship that goes back and forth leisurely.
There are a restaurant and a souvenir shop in this hot spring.


美湯・松帆の郷
ここは淡路島の北端に突き出した山の中腹にある温泉です。
ここの最大の魅力は露天風呂から明石海峡大橋と海峡を眺められることです。
のんびり行き交う船を見ながら湯船に浸かるのは良いものです。
この温泉にはレストランと土産物屋店があります。


< 3. a view from the bathtub >

The roadside station “Awaji”
This view from here is also good, because this roadside station is just beside the biggest bridge. 
There are a restaurant, a souvenir shop, and a seafood shop in it.
This restaurant serves Japanese-style and western-style meals.
Recently, our liking is the bowl of rice topped with sashimi in the seafood shop.
In the back of the shop, there is live-box that sharp-toothed eel, octopus and other fishes swim in.
I took a fancy for eating fresh delicacies of the sea at ease.

道の駅あわじ
ここは明石海峡大橋の直ぐ横にある道の駅で、ここからの明石海峡と大橋の眺めも良い。
ここにはレストラン、土産物店、海鮮丼店があります。
レストランの海峡楼には和洋食が揃っています。
最近、私達夫婦が気に入っているのは海鮮丼の海鮮館です。
この店の裏には生け簀があり、ハモやタコ、魚が泳いでいます。
気軽に新鮮な海の幸を食べられるのが気に入っています。


< 4.  a full view of the roadside station >

< 5.  the seafood shop >

< 6.  the inside of the seafood shop >


< 7.  the bowl of rice topped with sashimi,焼穴子丼”, “しらすかまあげ丼 >

When you go to the shop, it is better to check to be able to eat wishing foods.

しらす等の魚介類は季節があるので、確認してから行くと良いでしょう。



















20140806

私達の戦争 22: 銃がもたらすもの 6

 
*1

なぜ人々は悲惨な結果を招く銃を無くすことが出来ないのだろうか。
武器を巡り繰り返す確執、深みにはまり抜け出せない社会がそこにあります。
米国を中心に見ます。

米国の状況



< グラフ1.  米国の犯罪と銃保有率の推移、by date of FBI and GunPlicy  

銃保有率(紺)は1993年の46%から2000年の34%へと24%減った。
それに連れて、暴力犯罪(黄)は33%減、殺人(ピンク)は42%減、窃盗(青)は24%減となった。
しかしその後、銃保有率は下がらず2010年の32%で下げ止まり、現在、銃の個人所持率は101%です。
そのためか死者数は2000年の10.2から2011年の10.3と微増した。
結局、英国同様、米国も銃規制がさらに深まることはなかった。



< グラフ2. 米国の銃規制に対する賛否世論の推移、by GALLUP

銃規制賛成派は1959年に60%あったが、現在下がって26%となり、銃規制反対が73%と完全に逆転してしまった。


*4

なぜ銃規制(改革)は進まないのか
経済力と政治が生む惰性
銃の製造額は年間1兆円程度だが、全米ライフル協会支援、銃規制反対キャンペーン、規制法案阻止のロビー対策等に、規制派に比べ潤沢な費用が使える。
長年、民主党は銃規制派で、共和党は規制反対派です。
共和党の支持母体に軍需産業と会員400万人の全米ライフル協会などがあり、どうしても選挙時、保守・タカ派色がより強くなる(巻頭写真は副大統領候補)。
ちなみに、米国の年間軍事予算70兆円、兵器製造額20兆円、兵器輸出額1兆円。
これらの事業継続の為に、世論操作や共和党側に潤沢な対策費が支払われることになる。
このメカニズムが社会を現状維持(保守)に向かわせることになる。

より重要な問題
それにしても、なぜ多くの人が規制賛成から反対に変わってしまうのだろうか?
一つには、人々の脳裏には大戦時の武器による悲惨さが鮮明であったが、やがて薄れていくことにある。
そこに多くの情報が危機や不安を煽ると、特にそれが直近で身近なものであればあるほど効果は絶大となる。
実際に、銃は蔓延してしまっているのですから。
ましてや膨大な情報により、銃規制の治安向上効果を否定され、それが先の事ならなおさらです。
この情報の大勢は上記の経済力と政治が生みだしたものです。
これは日本の原発賛否世論が広告宣伝費の大量投入で逆転していく様子と符合します。

最も重要な問題
人はどうしても、直近の大きな恐怖や不安に囚われてしまうと、前向きに先を見越した行動をとりにくい。
既に見たように、直感に反して銃の抑止力は社会全体から見れば無いに等しかった。
個々の場面では、銃は強盗を抑止出来たはずでしたが、社会全体から見れば攻撃力が抑止力を上回るからです。
問題は、人々がこの事に気が付かないのか、感情に支配されてしまっているからです。

なぜ気が付かないのでしょうか?
それは大きな認識の転換が必要だからです。
暴力や殺人を増大させた主原因は、無数の銃が無秩序に出回ったと言うことに尽きます。
日本が安全なのは、皆さんが銃を持つ警察を信頼し、個人が銃を放棄したからです。
危機と不安を解消させる解決策は簡単で、管理されている治安部隊だけが武器を持ち、他は禁止し、武器の総量を極小にすれば良いのです。
歴史的に見て、全人類(特に先進国)はこの方向ですべての安全保障(福祉、安全など)を向上させて来ました。

今一歩の踏み込みが必要なのですが、多くの社会(国家)は歴史(過去の経緯)に囚われてしまう。

得られた教訓
ここで銃を武器や軍備に置き換えてみましょう。

個々の自衛権を野放図にしてしまうと、むしろ逆に危険が増大する。
国々の安易な自衛権行使は、多くの紛争を生む可能性があり安全保障力を低下させる。
特に、多数の国が、互いに自衛権と称してつばぜりあいをすればより危険が増す。
本来、武器や軍備の「自衛」と言う概念はあやふやで、攻撃と防御の境界は定かではない。
同様に、武器や軍備の「抑止力」も実際には不完全で、直感とは異なる。
抑止理論は研究者でも定まらず、どちらかと言うと人類のユートピア的な概念です。


*5

米国の銃社会から派生する幾多の問題
銃が蔓延する米国から多くの弊害がもたらされています。

* 武器輸出と援助
米国の武器製造額と輸出額は世界のトップで、テロ撲滅を声高に言う一方で、合法不法による武器がテロ組織や内戦地帯に供給されています。

* 軍事行動の正当化
有りもしない銃の抑止力を正当化するキャンペーンは軍事産業に多大な貢献をすることになる。
なぜなら軍備や軍隊を増強するとき、合意を得ようと必ず抑止力の向上を唱えるからです。
国民は、銃の抑止力を信じることにより、漠然とした国家間の抑止力も信じやすくなります。
相互確証破壊理論による核開発競争、トルーマン・ドクトリン(共産主義封じ込め)によるベトナム戦争、J・ブッシュから始まった国家安全保障局による世界規模の盗聴(スノーデンが暴露)などは際限なき抑止力(攻撃力)を是認することから始まる。

* 集団的自衛権
民兵(個人間の集団的自衛権)は米国で現実の問題です。
イスラエルの元首相ネタニヤフ氏が言っている。

「機関銃を規制することは、自衛のために武器を持つ権利を否定していることにはならない。私的な軍隊の存在を否定しようとするにすぎない。重装備の反政府民兵組織が数千人規模で存在し続けるアメリカの現状は、市民の自由のグロテスクな曲解であり、・・」
ここで言う反政府民兵組織とは、伝統的な民兵テキサス・レンジャーから武装極右組織のことでしょう。

次回から、別のテーマで日本の「戦争と平和」を考えます。













20140805

私達の戦争 21: 銃がもたらすもの 5


     


今日も、前回に続いて銃所持推進派の指摘を検討します。
おそらくこの指摘が最も深層心理を突いているでしょう。
そこからは深い人間の葛藤と社会の闇が見えて来ます。

指摘1: 銃を規制すれば暴力犯罪が増える



< グラフ1. 英国の暴力・銃犯罪と登録銃の関係、19951999年、by Gun Facts >

このグラフからは、英国の1997年の銃規制によって犯罪が増えているように見える。
しかし奇妙なことに、暴力犯罪件数と登録銃の数が少なく、検討期間が短すぎる。



< グラフ2. England and Walesの暴力犯罪の長期推移、by Office for National Statistics

このグラフでは1997年の銃規制後、強盗を除いて暴力犯罪(暴行、傷害)が半減している。
GunPolicyによると、England and Walesの銃による死者数/10万人は1995年の0.39から下がり続け、2011年に0.22と半減している。
この間、殺人件数/10万人は0.05から0.06に微増し、1件当たりの死者数が7.8から3.6と半減している。
この1件当たりの死者数の減少は米国と同様で、銃による殺人の特徴が顕著です。
この間、銃を含む全殺人件数/10万人は1.3から2002年に1.8まで上昇し、その後低下し1.0になった。
この2002年の全殺人件数が増加した時でも、銃による死者は増加していない。
The guardian(メディア)によると、銃の総数は1996年を100として、2001年に92まで減り、反転して2009年の103に増えた。
英国の銃所持率は、米国の101%に比べで6.2%(2007年)と低く、銃殺人による死者数/10万人は10.3に対して0.22とそれ以上に低い。

指摘1の検討結果
明らかに、英国は銃規制を英断したことにより、暴力犯罪と銃による死者を減らした。
しかし残念なことに、途中から銃の総量が減らず、暴力犯罪の減少が進んでいないようだ。
グラフ1は、銃擁護の為に都合の良いデータを抜き出したのだろう。


指摘2: 銃こそが強盗を防ぐ



< グラフ3. 米国各州の銃の所帯保有率%と強盗件数/10万人、2010年、by date of FBI > 

銃保有率20~40%でバラツキが大きく信頼性は低いが、銃の保有率の増加に対して両強盗事件は共に、始め増加し後に減少する。
「すべての強盗」については、銃の保有率が高い方で犯罪が減少しているようだ。
グラフ2で、英国が銃を規制しても強盗だけはあまり減らなかったの同じだ。
おそらくこのことが米国の市民感情を最も捉えて放さない「銃の必要性」だろう。

原野の一軒屋、夜中、玄関の外で鍵をこじ開ける音がする。
あなたは「おれは銃を持っているぞ!」と、見えない相手に向かって怒鳴る。
この気持ち、わかるような気がします。


< グラフ4. 米国各州の銃の所帯保有率%と暴行件数/10万人、2010年、by date of FBI > 

婦女子への暴行(加重暴行)と銃使用による暴行は共に、銃の保有率の増加に連れて若干増加するように見える。

考慮すべきこと
ここで重要なことは、仮に銃所持が強盗への抑止力になったとしても、殺人と暴行犯罪を増加させていることです。
18話のグラフ、この3、4のグラフから、銃保有率の増加による被害の増減を予想できる。
10万人当たりで見ると、すべての強盗は75から50件に減るが、銃殺人の死者は5から15人に増え、婦女子への暴行は150から250件に増える(正確ではない)。
さらに他に銃に関わる自殺や犯罪被害が加わる。

つまり、すべての犯罪被害を勘案すれば銃所持にメリットはないだろう。

もう一つ検討すべき課題がある
銃で強盗を追い払えるとも言えるが、逆に銃が強盗を容易にしているのではないか。
同様に、あらゆる暴力犯罪を増加させている可能性がある。
第18話のグラフ、この3、4、5のグラフに共通している銃保有率の低い時の犯罪の少なさは、それを物語るのではないか。
銃は攻撃力であり抑止力であり、それが相殺されながら上記のグラフ結果になっている。
相殺の度合いに影響しているのが、様々な銃規制法や社会・治安状況、暴力の文化などだろう。


< グラフ5. 世界各国の暴行・強盗犯罪件数/10万人と銃所持率%、2006年、by REAL CLEAR SCIENCE

対象国は先進国のようですが、不明。
銃所持率と暴行・強盗の犯罪率との関係は大きくばらついている。
それでも銃所持率が0%から10%に上昇するにつれ、強盗事件が急激に増加している。
暴行事件と銃所持率の大小には相関が無いようだ。


< グラフ6.主要国の銃所持率%と全犯罪率/10万人、2007年、by The American Journal of Medicine

対象国は欧米と先進国が主で社会状況は似ているはずだが、それでもバラツキが大きい。一応、全犯罪率と銃所持率には弱い相関がある。
グラフ5、6から言えることは、犯罪の多寡は銃所持率にも影響されているが、それよりも、その国の社会や文化状況に大きく依存していると言える。

結論
別の言い方をすれば、銃が無くても起こる強盗や暴行傷害に極度な不安を感じ、それらの犯罪を増やす銃で犯罪を減らす考えは、それこそ矛盾(ほことたて)している。
結局、一時的な不安や恐怖感が銃規制への抵抗を生み、暴力犯罪を減らす機会を失っている。
それを実現し、世界の模範になり、リード出来るのは日本だけかもしれない。

次回は、米国がこの事実にどう向き合っているのかを見ます。
そこからは戦争を肯定する姿勢も見え隠れします。





20140803

私達の戦争 20: 銃がもたらすもの 4



*1


今回は、銃所持を強く支持する人々の意見を検討します。
彼らは、銃規制が無駄で、銃所持こそが暴力的犯罪を減らすと主張します。
検討していくうちに真実が浮かび上がります。



意見1: 銃所持が多いから殺人が増えるわけではない。
これを検証します。


世界と米国各州の銃所持率%と殺人件数/10万人

< グラフ1. 世界と米国各州の銃所持率%と殺人件数/10万人、by Zach Mortensen >

グラフ1を見ると、横軸の銃保有率と縦軸(対数目盛)の殺人件数は相関していないように見える。
青色の世界各国の分布は、むしろ銃所持率が増すと殺人件数はわずかに減るように見える。
茶色の米国各州の分布もそう思わせる。
しかし左端のワシントンDCは大都市で、ヴァージン諸島とプエルトリコはメキシコ湾の小さな島で、米国本土と犯罪状況がかなり異なる。
米国の大都市は一般に殺人件数(/10万人)が多く、銃所持率が地方より低いようです。
この三箇所を除外し、殺人件数でなく殺害された死者数でグラフにすると、前回のグラフ1になり、銃の増加は殺人の増加に関連していることがわかる。


米国10州の殺人と銃の所帯保有率

< グラフ2. 米国10州の殺人と銃の所帯保有率、2010年、by date of GunPolicy >

グラフ2を見ると、銃保有率の増加は殺人件数を若干増加させ、死者数をそれ以上に押し上げている。
この理由は不明だが、銃保有率が高くなると殺人事件1件当たりの死者が増えている。
このグラフで1件当たり死者数は2.0から5.7に増加しており、2010年の米国平均は2.9であった。
また、総べての殺人件数も増えているが、これは含まれている銃殺人の比率が大きいためです。


 主要国の銃所持率と銃による死者数/10万人

< グラフ3. 主要国の銃所持率と銃による死者数/10万人、2007年、by The American Journal of Medicine

グラフの両目盛は自然対数で、目盛46100231001、-2.30.1を示す。
図示されている27ヵ国は欧米と先進国が主で、死者数の最小は日本で、ついで英国、オランダが少ない、最大は米国と南アフリカ、ついでスイス、フィンランドが多い。
明らかに銃所持率と殺人による死者数は相関している。

結論
銃所持率が増加すると銃による死者数が増える。
以下に示す要因を考慮し、よく似た社会や国で比較すれば、相関は更に明確になるだろう。
闇雲に異なる社会状況を一緒に扱うと、見える現象も見えなくなる。

銃殺人に関わる様々な要因
       今回、データを示さなかったが、治安が悪い(暴力犯罪の多さ)、経済格差が大きい、内戦状態などの社会状況では、銃所持率が低くても殺人は増える、南アフリカのように。

       逆に、グラフ3の右下方にあるアイスランドやドイツのように銃所持率が高くても、殺人が低くなる国もある。このような国は猟銃が多いとか、銃所持は可能だが登録や管理が厳しいからです。米国の銃殺人の多くは拳銃(ハンドガン)で行われている。

       今回、データを示さなかったが、暴力犯罪の率と銃所持率が共に低い国を比較すると銃所持率が高くなるにつれて、急に殺人件数が増える傾向が顕著だった。これは前回のグラフ1でも同様に銃による死者が増加した。対象は日本、ポルトガル、ハンガリー、ポーランド、オランダ、アイルランド、英国です。暴行・強盗事件発生率が0.8~6.7%、銃の所帯保有率が0.6~8.6%で、銃殺人件数/10万人が0.03~0.38でした。

次回は、最も微妙な「銃が身を守る」について検証します。






20140801

私達の戦争 19: 銃がもたらすもの 3


*1

今回から、銃が社会の安全に不可欠だとする根拠を検証します。
前回、銃が米国において安全を脅かしている状況を確認しました。
しかし、米国も含め世界は銃を減らす方向に動いていません。
そこには根深い武器への信奉があるからです。


*2

なぜ銃が必要と言われているのか?
米国には民間人の銃所持が必要と強く主張する人々が居ます。

よく「銃所持は権利」と言われます。
合衆国憲法修正第二条(権利の章典、第1~10条、1791年確定)
「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保蔵しまた携帯する権利は、これを侵してはならない。」

私には、この法文をもって民間人が自由に銃を所持することを許することが合理的だとは考えられない。
規律ある民兵や州兵が武器を携行するのは当然であるが。
私は個人に自衛権はあるが、社会的利益―社会の安全を脅かす事態、と勘案して制約されて当然だと考える。


    

それには経緯がありました
合衆国憲法は、既に1988年に制定されていました。
この条文は、米国が英国と独立戦争(1775~83年)を戦い、独立後に基本的人権を追加した際に加えられた。
一方、この頃はまだ各州(邦)の独自性が強く、合衆国として一体化するのは1865年の南北戦争終結以降になります。

国民にとって武器を持つことは、国家の横暴(英国議会)に対して国民が革命(独立)を起こすために必要であった。
これは米国各州が連邦政府に対しても同様と考えられた。
米国では最初の入植時代(16世紀末)から西部開拓時代(1860~1890年)まで、入植者は銃によって先住民と戦って来た。
この二つが、銃(武器)を捨てられない発端と言えそうです。


    

これと似た例は日本にもあります
日本は憲法9条で戦争の放棄を謳い、戦力を保持しない、交戦権を認めないとしている。
そして現在まで、その演繹から集団的自衛権を認めないと憲法解釈されて来ました。
この経緯はいずれ見ますが、大事なことは憲法や解釈が草案当時の社会状況に強く影響されていることです。
憲法や解釈は、その時代の成功体験に基づく強い要請や、逆に失敗体験からの強い反省が込められているのです。

不思議なこと
いくら独立戦争や西部開拓時代に武器が重要だったとは言え、二百数十年から百数十年前の事を、デメリットがあるにも関わらず継承するのでしょうか?
米国は度々、憲法を追加修正し解釈変更を行って来たのに・・。

真の理由
そこには別の深い要因があると見るべきです。
一度、武器を持ってしまうと国民が合意して武器排除することはかなり困難があるようです。
たまたま日本は島国で侵略されることなく、かつ統一王朝が幾度も武器を放棄させて来たことが幸いしています。
日本では、身近に凶悪事件があっても、互いに注意を呼びかけるだけで、武器に頼らず警察に任せることになります。
そこに何の戸惑いもありません。

結局、武器の蔓延とそれへの不安が、さらに武器の所持へと悪循環を生む心理が問題なのです。

次回、武器所持推進派の根拠をデータで検討します。