20140803

私達の戦争 20: 銃がもたらすもの 4



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今回は、銃所持を強く支持する人々の意見を検討します。
彼らは、銃規制が無駄で、銃所持こそが暴力的犯罪を減らすと主張します。
検討していくうちに真実が浮かび上がります。



意見1: 銃所持が多いから殺人が増えるわけではない。
これを検証します。


世界と米国各州の銃所持率%と殺人件数/10万人

< グラフ1. 世界と米国各州の銃所持率%と殺人件数/10万人、by Zach Mortensen >

グラフ1を見ると、横軸の銃保有率と縦軸(対数目盛)の殺人件数は相関していないように見える。
青色の世界各国の分布は、むしろ銃所持率が増すと殺人件数はわずかに減るように見える。
茶色の米国各州の分布もそう思わせる。
しかし左端のワシントンDCは大都市で、ヴァージン諸島とプエルトリコはメキシコ湾の小さな島で、米国本土と犯罪状況がかなり異なる。
米国の大都市は一般に殺人件数(/10万人)が多く、銃所持率が地方より低いようです。
この三箇所を除外し、殺人件数でなく殺害された死者数でグラフにすると、前回のグラフ1になり、銃の増加は殺人の増加に関連していることがわかる。


米国10州の殺人と銃の所帯保有率

< グラフ2. 米国10州の殺人と銃の所帯保有率、2010年、by date of GunPolicy >

グラフ2を見ると、銃保有率の増加は殺人件数を若干増加させ、死者数をそれ以上に押し上げている。
この理由は不明だが、銃保有率が高くなると殺人事件1件当たりの死者が増えている。
このグラフで1件当たり死者数は2.0から5.7に増加しており、2010年の米国平均は2.9であった。
また、総べての殺人件数も増えているが、これは含まれている銃殺人の比率が大きいためです。


 主要国の銃所持率と銃による死者数/10万人

< グラフ3. 主要国の銃所持率と銃による死者数/10万人、2007年、by The American Journal of Medicine

グラフの両目盛は自然対数で、目盛46100231001、-2.30.1を示す。
図示されている27ヵ国は欧米と先進国が主で、死者数の最小は日本で、ついで英国、オランダが少ない、最大は米国と南アフリカ、ついでスイス、フィンランドが多い。
明らかに銃所持率と殺人による死者数は相関している。

結論
銃所持率が増加すると銃による死者数が増える。
以下に示す要因を考慮し、よく似た社会や国で比較すれば、相関は更に明確になるだろう。
闇雲に異なる社会状況を一緒に扱うと、見える現象も見えなくなる。

銃殺人に関わる様々な要因
       今回、データを示さなかったが、治安が悪い(暴力犯罪の多さ)、経済格差が大きい、内戦状態などの社会状況では、銃所持率が低くても殺人は増える、南アフリカのように。

       逆に、グラフ3の右下方にあるアイスランドやドイツのように銃所持率が高くても、殺人が低くなる国もある。このような国は猟銃が多いとか、銃所持は可能だが登録や管理が厳しいからです。米国の銃殺人の多くは拳銃(ハンドガン)で行われている。

       今回、データを示さなかったが、暴力犯罪の率と銃所持率が共に低い国を比較すると銃所持率が高くなるにつれて、急に殺人件数が増える傾向が顕著だった。これは前回のグラフ1でも同様に銃による死者が増加した。対象は日本、ポルトガル、ハンガリー、ポーランド、オランダ、アイルランド、英国です。暴行・強盗事件発生率が0.8~6.7%、銃の所帯保有率が0.6~8.6%で、銃殺人件数/10万人が0.03~0.38でした。

次回は、最も微妙な「銃が身を守る」について検証します。






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