前回、国民が自由を奪われ困窮していく様子を見ました。
今回は、今後に関わる最も注意すべき問題を見ます。
* 2
忘れてはならないこと
誤って戦争が始まっても、本来、民主主義が機能していれば、国民は政府に和平へと向かわせることが可能だったはずです。
しかし一度、言論の自由と議会制民主主義が破壊されてしまうと、失敗を引き受けたくない為政者達は無謀な戦争を引き延ばすことが可能になる。
それは多くの戦争、特にアジア・太平洋戦争とベトナム戦争はその典型です。
次いで重要なことは、戦争で起きる虐殺が互いの憎しみを連鎖的に増幅させ、戦争拡大や次の戦争への呼び水に成ることです。
上記二つは表現すれば単純なのですが、残念ながら、この二つが絡み合い蟻地獄に落ち込んで行くのがほとんどの国家でした。
この悪循環を積極的に断ち切る意識と工夫、努力が必要です。
戦争は社会に後遺症を残し、次の災厄をもたらす
ほとんどの場合、上記の民主主義の破壊と復讐の連鎖は国家が戦争を意識した時から始まります。
しかし国家や国民が気づかない内に、次の争いの種を撒き散らし、戦争の芽を育てつつあるのです。
その多くは繰り返す紛争や戦争から生みだされるのです。
* 3
米国を例に見ます
このシリーズの「銃がもたらすもの1~6」で銃社会を考察したように、一度、銃や武器が蔓延し、軍需産業が巨大化してしまうと争いの種が増えて続け、減らすことが困難になります。
約190年前、米国はモンロー主義を掲げ他国の紛争に干渉しない外交方針であったが、2度の大戦を勝利し覇権国家となった後、益々、戦争をリードするようになっていった。
9.11事件後、大統領はテロ対策と称してマスコミ報道を統制し、外国だけでなく国民をも毎日大量に盗聴するようになった。
最初こそ、議会は秘密裏に実施することを承認したが、一度始まると誰も知らない内に、ホワイトハウスの一握り(NSA)によって米国も世界も透視され、報道は真実を語ることが出来なくなっていた。
これは前代未聞の事態であるだけに、先を予測することは困難だが恐らく大きな不幸、少なくととも一握りの人々に牛耳られる社会の到来を招くだろう。
そこには自国に降りかかる戦争を防止するためには、明確な戦闘行為以外の手段による他国への諜報活動(暗殺、武器援助、政府転覆・クーデター幇助など)は自衛の範囲と身勝手な解釈をしているからだろう。
しかしこれは非常に危険であり、別の項で説明します。
米国にはこれだけの灰汁が溜まり、増え続けているのです。
* 4
日本の例を見ます
前回、日本独特の下請け構造(二重構造)が日中戦争に始まる経済統制に起源することを見ました。
他にも色々あるのですが、今後に影響する最重要なものを一つ採り上げます。
見えにくいのですが、戦後のGHQ(連合国軍総司令部)の影響は、今も尾を引いている。
それは日本が戦後の大混乱を米国の腕力と経済力によって一気に処理し、自ら反省し乗り越える努力を放棄してしまったことにある。
それが起こり得たのは米国が日本を共産圏への防波堤にすることを望み、日本政府や民間もそれと引き換えに米国の腕力を望んだからです。
これは望んだ人々にとって、労働運動による混乱の早期鎮圧や経済復興には非常に有効だったろう。
しかし一番の懸念材料は、日本が米国追従から脱することが出来なくなってしまったことです(資1)。
相変わらず、米国の直接間接の抵抗に遭い自主外交路線を取れない政府・官僚・経済界・報道機関があるからです。
つまり米国の国益(日米同盟、反共産、貿易・金融・為替での米国追従)を犯すことが許されないのです。
現在変化しつつあるパワーバランスや世界の問題(資源枯渇、貿易協定、国連、核拡散など)に対して、日本は自ら最適な道を選ぶことが出来ないのです。
その始まりは、おそらく敗戦後の吉田首相の采配から生じたのでしょう。
* 5
最後に
戦争がもたらす災厄を概観してきました。
戦争がもたらすことで重要なことは三つです。
1.戦争は、想像を超える甚大な被害と困窮する生活を招き、自由と権利を奪う。
2.戦争は、一度戦闘が始まると際限なく突き進む性質を持っている。
3.戦争は、終戦後も後遺症を残し、再発の危機を孕むことになる。
戦争は計り知れない恐ろしさを持っているが、どん底の経験から反省し、乗り越えた国々も世界には存在します。
参考資料
資1:「戦後史の正体」孫崎享著、創元社、2012年刊
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