20140815

私達の戦争 25: 戦争は何をもたらすのか 2



    

前回は人的損出を見ました。
今回は経済的損出を見ます。


    

最初に知って欲しいこと
戦争を始める為政者がよく使う台詞に、「我が国の国益や人命が奪われることは耐え難い」があります。
皆さんには、戦争によって得るものと戦争によって失うものを冷静に比べていただきたい。

米国の南北戦争で82万人が死にました。
後にある経済学者が試算しました。
「もし南部の奴隷所有者から国が奴隷を買い取り、その奴隷に土地と家畜を買い与えたとしても、その費用総額は戦争で失ったものよりも少なかった。」

ヒトラーは国民に、失った広大なドイツ帝国の領土を回復し、経済を飛躍させると約束し、軍事侵攻を正当化しました。
日本の為政者も、中国の資源と市場を得ることで、低迷する経済から脱することを企図しました。
その結果は、さんざんなものでした。

為政者が始める多くの戦争に共通していることは、「戦争を楽勝と見て、損出を無視し、かつ得るものは不明朗で、強いて言えば名誉など」ではないでしょうか。

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驚くべき戦争コスト
スティグリッツの「世界を不幸にする戦争経済」から戦争のコストを見ます。
詳しくは「戦争の誤謬 15: 戦争による損出」にあります。

開戦直前、米国の国防長官は「必要なイラクの戦費は550億ドル(7兆円)」と言った。
(以下、2001年の為替レート125円で換算します)

イラク・アフガン侵攻による米国のコストを見ます。
総額58110億ドル(726兆円)にもなる。
これは2001年、米国の歳出18632億ドルの3.1倍になる。
また2001年、日本の実質GDP477兆円の1.5倍になる。

*4

コスト内訳(2007年までの計算で、実際はさらに膨らむ)
1.     2001~2007年の実際の支出   : 6460億ドル  (81兆円)
 ここで既に12倍にもなっており、如何に矮小化しているかが分かります。 
2.     将来必要な撤退、武器交換などの費用  : 9130億ドル (114兆円)
3.     退役軍人の医療、障害補償、社会保障費用: 7170億ドル  (90兆円)
4.     その他軍事費(隠された国防費など)  : 4040億ドル  (51兆円)
5.     利息コスト(ほとんどが借入金)    : 8160億ドル (102兆円)
6.     費用見直し(低い兵士補償額など)   : 4150億ドル  (52兆円)
7.     マクロ経済の損出           : 19000億ドル(238兆円)
 戦争による原油高が世界の景気低迷を招き、米国の輸出を減らしGDPが低下し税収が減る。さらに莫大な戦費の出費により国の負債総額が増えた。このような機会損出額は計り知れなく大きい。

この結果、米国と世界が得たものは・・・
私の知る限り、世界も米国も得たものは無かった。
安全保障は向上したでしょうか?
益々、米国は憎まれ、テロを誘発することになる。
イラクとアフガンは平和になったでしょうか?
予想以上に、混乱が続き、先は見えません。

米国の効果としては、J・ブッシュの一時的な人気と反テロへの熱狂、軍事産業の活況でした。
しかし、これは更なる災厄をもたらすことになった。
テロ対策として、アメリカ国家安全保障会議を中心に情報産業、マスコミ、議会が一体となり、無差別の情報収集(盗聴)と情報管理が秘密裏に進行されることになった。
これを告発したのがスノーデンでした。

    

まとめ
多くの戦争指導者は、当初得るものが多く、失うものが少なく見えるようです。
一つには、小競り合いだけで終わるとか、楽勝で勝利すると思いたがるようです。
いま一つは、目先に囚われて先の事を考えないか、反戦感情を生む詳細な被害予測など不要なのでしょう。

おそらく戦争をしたがる為政者は、政治力に長けているのでしょう。
彼は、真意を隠しながら自分の望む方向に持っていくには、国民に何を訴えれば良いのかが誰よりも理解出来、タイミングよく出来る人なのでしょう。
一方、そのような人は、俗に言う大局(?)は見えても、国民の痛みや先の損出は見たくないようです。
多くの戦争がそのことを物語っています。





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