20140823

私達の戦争 29: 摩訶不思議な解釈



    

これから数回、軍隊や戦争にまつわる不思議な解釈について考えます。
今回は「人間は戦争をする動物である」を検討します。

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今まで取り上げてきた戦争の記事
連載「私達の戦争」
2~15 : アジア・太平洋戦争の実情を日本側からと侵攻を受けた国からみました。
17~22: 銃の普及が国や社会にどのような被害を与えているかをみました。
23   : 戦争がどのようにして始まるかを簡単にみました。
24~28: 戦争がどのように膨大な被害をもたらすかをみました。

他の記事
連載「戦争の誤謬1~23」   : 人類の戦争を多角的に取り上げました。
連載「人類の歩みと憲法1~17」: 人類が生みだした憲法と戦争防止の役割をみました。
「本の紹介『戦争と罪責』1~3」: 数人の日本兵による残虐行為の実態と心理をみました。
「図解ヒトラー総統の誕生」   : 15年間で一国を牛耳る過程を要約しました。
連載「社会と情報8~21」   : ベトナム戦争の舞台裏を米国中心にみました。

戦争を防止するには、知るべきことがたくさんあると思うのですが、更に大事なことはその先にあります。
そうは言っても、戦争を理解することに意味が無いと思っている方もおられるでしょう。
これから数回にわたり、戦争を容認し易い基本的な誤解を取り上げて検討します。

    

「人間は戦争をする動物である」について
戦争を否定すれば、「そんな無駄なこと、人類は戦争するように進化したのだから」とあざける人が出てくるものです。

確かに、動物で同類を徹底して殺すのはチンパンジーと人類だけです。
縄張り争いをする他の動物は、相手を噛むことはあっても殺すことは希です。
これは、強弱が判明すれば互いに深傷を負わない擬闘と呼ばれる行動です。
これは、毎回徹底的に殺し合いすれば双方が傷付き、結果、個体数の減少を招くからです。
こうして、この擬闘は進化の過程で定着したのです。
連載「心の起源8」が参考になります。

なぜ最も進化し地球を支配している2種類の大型類人猿は徹底した殺戮を行うのでしょうか。
定説はありませんが、おそらく感情(神経伝達物質分泌機能)と思考力の発達が根源でしょう。連載「憎しみを越えて」「心の起源」が参考になります。
上記二つの脳機能の進化は、帰属集団への共感を高め、集団社会を強化発展させ、長期的な展望を持った行動を生み、さらには文化・科学を育成・蓄積することを可能にしました。
一方で、このことは帰属集団以外を恐怖し敵視する副作用を生んでしまった。
このことが時に紛争、戦争を招くのです。

これは人類が旺盛な食料生産により、不適応の糖尿病を多発させてしまったようなものです。
これは人類の体が貧栄養状況に進化適応したからであり、糖尿病になるように進化したのではありません。
つまり糖尿病も紛争・戦争も不適応であり副作用なのです。

    

一方、人類は有史以前から紛争を調停し抑制する手段を生みだして来ました。
その原初状態はチンパンジーにも見られます。
人類が有するようになった初期の手段(サンクション)は、部族の掟や文化、宗教の戒律に巧みに配されています。
やがて文字の誕生と共に法制度が成熟していき、やがて憲法の誕生にもなったのです。

    

つまり人類は進化の過程で副作用として戦争も行うようになったのですが、その副作用を押さえ込む工夫も発展させて来たのです。
どちらに圧倒されるかは皆さん次第です。

いずれ連載「法の歴史」を始めるつもりです。






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