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今まで、交通事故、銃殺人、戦争勃発、原発事故の脅威について概観しました。
今日は、さらに深刻で避けがたい脅威について考察します。
前者は現実にある脅威なのですが、後者は地球上初めて起こるであろう脅威です。
はじめに
2010年12月に「アラブの春」が起きて、中東アラブは騒乱の渦に巻き込まれました。
この背景にこの地域の困窮や政治腐敗、市民意識や情報網の発達がありました。
しかし、さらには地球規模の穀物の高騰があったのです。
エジプトは必要な小麦の半分を輸入していますが、2010年に小麦価格が6年前の約2倍になっていたのです。
ただでさえ貧困ラインすれすれの生活をしていた若者は、耐えられない状況に追い込まれたのです。
近年、頻発する穀物価格の高騰はなぜ起こるのでしょうか。
地球温暖化による異常気象の頻発で、2010年にはロシアで干ばつが起き、これが上記の価格高騰の理由でした。
しかし米豪でも干ばつが繰り返され、収穫量は低下傾向にあり、高騰は続いています。
< 2. 小麦価格の高騰 >
今、世界で何が進行しているのか?
一つは、地球の限界または自然サイクルの崩壊です。
前述の地球温暖化による穀物収量減はほんの一例に過ぎません。
最近、やっと科学的事実として認知され始め、世界が協力して対策を取り始めた。
しかしまだ、産業界(特に米国)は高コスト化を嫌い、発展途上国も実施には二の足を踏んでいます。
その間、温暖化は進み、再生手段が見つかっていない以上、取返しのつかないことになる可能性が高い。
世界の水産資源も自然の産出では賄えず、養殖の増産で不足をカバーしています。
地下資源の枯渇は目前で、価格の高騰で節約と代替えが進み、なんとか凌いでいます。
今、温暖化ガス排出の制限や食料増産技術の開発、代替えの鉱物資源とエネルギーの開発に本腰を入れることが出来ればまだ間に合うかもしれません。
このまま放置すればどのような事態が起きるのでしょうか?
現在、難民の大量発生が欧州の分裂を生んでいますが、やがて難民の規模は拡大し、さらにアジアや他の大陸でも同様な事が起きるのは間違いありません。
異常気象の連続で食料生産と生活が出来なくなれば、必然でしょう。
今一つ恐れるのは、枯渇資源の獲得を巡って国家や地域が戦端を開くことです。
これは世界的な規模で起こるでしょう。
それこそ各国に自衛権があるのですから(冗談)。
核戦争や原発事故も怖いが、この脅威の方が確実に迫っています。
< 3. 異常気象の影響 >
私達はどうすれば良いのでしょうか?
前述した対策を世界が協力して実施する以外に道はありません。
それこそが、破滅を防ぐ唯一の方法です。
しかし、これが絶望的なのです。
その理由は現在の社会や経済システムにあります。
例えば、穀物価格の高騰は干ばつだけが原因ではないのです、大量の投機資金がそれを煽っているのです。
本来、商品市場で先物が開設されたのは商品(石油や小麦など)を利用する企業が価格の乱高下から経営を守るためのものでした。
< 4. 増加の一方の投機資金額、多くが短期的な売買益を狙う >
しかし、有り余る資金の暗躍は想像を絶する脅威を引き起こしています。
端的な例は、1997年にタイで起きたアジア通貨危機でした。
これは一ファンドが数兆円の利益を得る為に仕掛けた通貨の空売りに始まりました。
こうして、東南アジア各国は大幅な景気後退、大量失業者の発生、それに続く厚生予算などの低減で、多くの底辺の人々が病気を悪化させ、死亡に至りました。
これを救う為に、世界と日本は約1兆円の支援を行いました。
また地球温暖化について言えば、米国は最大の二酸化炭素を排出していながら、京都議定書の批准を拒否し、米国内で盛んに温暖化は虚偽であるとのキャンペーンが行われている。
これは産業界からの政治圧力と支援によるもので、銃保有のキャンペーンも同様です。
また、20世紀前半、大戦後の欧米の経済復活の指針となったケインズの総需要喚起政策(労働賃金の上昇など)が盛んに否定されている。
それは、その後のスタグフレーションを解決したフリードマンの貨幣供給管理を信奉する人々が行っているのだが、その実、彼らは現在の金融政策の実りを最も得ている富裕層なのです。
民衆がマスコミを通じて、これら温暖化無視、銃保有、金融政策拡大のキャンペーンを真に受けてしまう可能性は高い。
この扇情を行う人々は圧倒的に政治力と資金を有するのですから。
< 5. 投機資金増加の理由 >
世界の富豪の人数と資産が急増している。
現在、富豪1400人の資産総額は5.4兆ドル(日本のGDPに相当)になった。
またトップ62人の資産は世界の下位50%(36億人)の資産と同額になりました。
つまり、何も無いところから災厄を引き起こすのも人間社会だが、自然災害を最小に出来るのも人間社会なのです。
後者をうまく機能させることが最重要で、これが破壊されつつあることが最大の脅威なのです。
いつの世にも繰り返されて来た事
今、示した脅威は絵空ごとに過ぎないのでしょうか。
その例はローマ帝国やイースター島の末路に象徴されている。
共に、数百年をかけて繁栄を築き、やがて半世紀あまりで滅亡した。
ローマは異民族に滅ぼされたと言うより、これは切っ掛けに過ぎない。
領土拡大で繁栄を築いたが、やがて限界が来て、巨額の軍事費と異民族の軍隊に依存していたことが内部崩壊を招いたと言える。
太平洋上に浮かぶイースター島では、長らく各部族が森林伐採を自由に行っていたが、ついには競争となり、最後には森林資源を枯渇させて島を放棄することになった。
多くの文明はその内に崩壊の要因を抱え、ある時、人々はその兆候に気付くことになるのですが、時は既に遅しで、雪崩を打って崩壊へと向かうようです。
次回に続きます。
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