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前回、銃が社会に蔓延していく状況を想定しました。
その悲惨な予想と共に、現在政府がよく使う軍事用語(自衛権、抑止力、集団的自衛権)が出て来ました。
正に、銃社会は小さな戦争の世界なのです。
銃と社会の関係とは
実は、社会学者などは銃所持率と犯罪率の相関を決めかねています。
例えば、銃の所持率が高くても銃殺人の発生率が低い国があり、世界を見れば、その関係に大きいバラツキがあるからです。
これは他の複数の要因が大きく影響しているからです。
しかし、それで終わってしまっては安直に過ぎます。
大事なことが三つあります
一つは、前回仮定した想定が、実際のデーターで確認出来ることです。
次いで自衛権や抑止力、集団的自衛権、軍拡などの概念を、銃社会から学ぶことが出来ます。
最後に、悲惨な暴力を生む社会と暴力を抑制出来る社会の違いを知ることです。
これらのことが、銃社会を分析することで見えて来ます。
それでは現実のデータを見ましょう
グラフ1: 米国の各州の銃保有率と銃による死者率、年度不明、by Mother Jones.
グラフの見方
横軸は州毎の銃の各家庭保有率。
縦軸は銃殺人による人口10万人当たりの死者数。この数には銃による自殺者と他の凶器による死者を含めない。
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説明
グラフ上部右端のワイオミング州は、死者率18人/10万人、銃保有率63%で、
左端のハワイ州では3.5人、10%となる。
米国では市民の個人銃保有率は101%(2012年,by GunPolicy.Org)で人口よりも若干多い。
米国の家庭銃保有率の平均は34%(2012年,by GunPolicy.Org)。
2012年の銃による全米の死者数は32,163名で、10.3人/10万人(by GunPolicy.Org)。
ちなみに日本の個人銃保有率は0.6%で、全ハンドガン数は77丁(1999年)、他は猟銃のようなものだろう(by
GunPolicy.Org)。
この保有率は少ない方から178ヵ国中14番目です。
日本の銃による死者数は2008年で11人、米の3/10000になる。
このグラフを見ると、明確に銃保有率と銃による死者率は比例している。
全体としてバラツキはあるが、よく見ると銃保有率が20%以下では保有率の上昇に伴い急に死者率が増加している。
地図1: 州毎の銃保有率と銃による死者率の分布、年度不明、 by P.A.P.-BLOG
// HUMAN RIGHTS ETC.
地図の見方
左図 : 銃携帯を許す条例の4段階、一番厳しく許さないのが赤色、一番自由なのが紺色。実際には、州毎にさらに細かく銃規制が異なる。
右上図: 銃保有率の4段階、一番多いのが45%以上で濃い色、一番少ないのが25%以下で薄い色。
右下図: 銃による死者率の4段階、一番多いのが12人/10万人以上で濃い色、一番少ないのが8人/10万人以下で薄い色。
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説明
この地図からも、銃保有率は銃携帯が制限されている州ほど低く、かつ銃による死者数もほぼ少ないことが分かる、南部のアラバマ州を除いて。
グラフ1で最も銃による死者率が高い州であったワイオミング州をWY、ルイジアナ州をLAで表記している。
両州を中心として中西部と南部の州に銃保有と銃殺人が偏っているように見える。
それはなぜなのか?
一つには、中西部(ワイオミング)は米国の中でも人口密度が最も低い地域になる。
一方、南部のルイジアナやミシシッピ、アラバマの人口密度は48州の中頃に位置している。
南部には心理学者ニスベットが指摘する暴力に訴えても名誉を守る文化がある。
概ね、この二つが理由のようだ。
地図2: 2012年11月、オバマ大統領選の選挙人獲得の分布、古村治彦の酔生夢死日記より。
地図の見方
赤色が共和党のロムニー氏が獲得した州、青色が民主党のオバマ氏の州。
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説明
地図1と比べると、銃規制が厳しいか、銃保有率が低い所は概ね民主党の支持州が多いと言えそうです。
ただ獲得票の差はわずかなので、厳密な色分けとは言えない。
また民主党は都市部や人口密集地で得票が多い。
両党の銃規制に対する政策は、民主党が銃規制、共和党が銃所持奨励です。
判明したこと
1. 銃保有率が高い州ほど銃による殺人が多い。
2. 銃保有率は、州の銃規制条例におおよそ関係している。
3. 銃規制の違いは二大政党の政策に関係している(次回詳しく)。
4. 低い人口密度では銃保有率も銃殺人も増える(理由は不明)。
5. 暴力を容認し易い文化では銃保有率も銃殺人も増える。
次回は、銃所持奨励派、逆の立場からデータを見ます。