< 1. 1941年、チャーチルとルーズベルト会談 >
太平洋戦争開始を日米、それぞれの側から見ます。
太平洋戦争開始の直近の経緯
1939年: 9月、ドイツ侵攻で第二次世界大戦開始。
1940年: 9月、日本が北部仏印進駐、日独伊三国同盟締結。
1941年: 6月、独がソ連侵攻。7月、米が日本資産凍結、日本が南部仏印進駐。8月、米が対日石油輸出停止。11月、米がハル・ノート提示。12月8日、日本が真珠湾攻撃。
< 2. 太平洋戦争地図 >
日本の思惑と動き
日本は1920年代より、国防方針で、最大仮想敵国をそれまでのロシアから米に変えていった。
その背景に第一次世界大戦、ロシア革命、日本では日英同盟破棄、満州・日中事変、軍部支配があった。
日本の軍部は多大な犠牲(国費、数十万人)を払って得た朝鮮半島や満州の権益擁護と拡大に戦争続行を当然と考えた。
その為には大陸の陸戦よりも米国との海戦が低費用で有利とし、資源(鉱物・石油、食料など)確保を中国と仏印(東南アジア)に求めた。
一方、突如起こったドイツ攻勢は欧州制覇から世界制覇を思わせた。
日本は手薄になったソ連東方と東南アジアを入手する絶好の機会と捉えた。
また、米は長年、交戦中の日中に対して兵器や石油を輸出し、中立の立場(孤立主義)をとっていたこともあり、日本は、開戦直前までそれを弱腰で参戦なしと捉えた。
この予断が、危険な三国同盟締結、さらなる侵攻、強気の外交につながった。
それが41年7月、関東軍特種演習と称して関東軍を35万から80万体勢への増強、仏印進駐となった。
< 3. 関東軍特種演習と仏印進駐 >
日米の差は資源産出力で数百倍、兵器生産力は十倍近くあったが、進めて来た開戦準備により、開戦当時には、日本の保有艦船は米を少し上回り、石油備蓄も1年以内の戦闘なら可能となっていた。
一方、米は40年から被侵略国向けに兵器増産を始めており、開戦が遅れれば遅れるほど、日本は勝つ見込みは限りなく零になる。
さらに造船工期は2年を要するので初期に米艦隊を叩き(奇襲)、1年以内の短期決戦なら勝利が可能とし、その時期は41年の出来るだけ早い時期とした。
開戦の年も、日本の方針は相変わらず定まらず、米を恐れながらも、「日米開戦に備え、さらなる資源と権益確保を推し進め、交渉決裂時は開戦をも辞さず」の矛盾した両論併記であった。
41年初頭から日米で和平を模索する交渉を始めていたおり、「中国からの撤退」は終始、日米互いに譲れない条件であったが、日本は楽観論と強硬論で揺れ動いた。
41年11月、ハル・ノートが米から提出され、日本軍の中国からの撤退要求は決定的となった。
こうして開戦を決意しながら日米交渉に挑み、呑むことの出来ない要求で決裂し、真珠湾攻撃となった。
米の思惑と動き
米も1920年代より、日本をオレンジ計画で交戦可能国の一つとして見なしていたが、国内世論もあり、欧州とアジアへの介入意志はなかった。
しかし、ヒトラーの動向(再軍備)、日中戦争勃発と枢軸国の膨張が続き、日独伊防共協定が締結されるに及んで、ルーズベルト大統領は37年に反枢軸国への援助を公言した。
まだ米国内では参戦への反発が強かった。
この後、日独の現実の侵攻、特に40年の日独伊三国同盟への制裁として、大統領は段階的に経済封鎖(ABCD包囲網)を行った。
日本はこの致命的な経済封鎖すら、米が実施しないと当初楽観視していた。
40年末、再選された大統領と米軍部は、欧州参戦を優先しながらも、日米開戦もやむなしと考えた。
この頃、日米の指導者達は共に、国民向けに強気の発言を行うようになっていた(牽制の為か)。
米は40年に日本の暗号解読を完成させ、秘密裏に画策していた日本の開戦意志と侵攻準備を無線傍受により事前に察知していた。
さらにヒトラーへの後手の対応への反省、日本の勢いづく侵攻拡大、高まる英ソの敗北危機、米は放置出来ないとし日本との戦争を不可避であるとした。
米は欧州戦線を優先しながら日本に対抗するには、日本軍が太平洋で戦域を伸ばした所を航空兵力で叩き、数年後の勝利が得策と判断していた。
日本は艦船を重視したが、米は太平洋戦では防御より航空機での攻撃が有利とし、開戦時で3倍、2年後で7倍も航空機を保有した。
< 4.艦隊戦力と航空戦力 >
米は長らく他国の紛争には関わらないモンロー主義(孤立主義)を貫いていたので参戦する場合、相手が先に攻撃し、国民世論が沸き立ってから、迎え撃つ態度をとり続けていた(両大戦共)。
こうして「リメンバーパールハーバー」は米国民を一気に参戦へと勢いづかせた。
最後に
これが第2話の中條氏の指摘「米は日本を戦争に追い込んだ」の真相です。
皆さんは、この両国の対応をどう見られますか?
次回、このような対応をした日本の指導者達の心理を重光氏の手記から読み解きます。
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