< 元安全保安院の答弁 >
今回の選挙には色々な争点、TPP、領土、原発、子供、社会保障、経済活性化、赤字財政などがあります。
個々の問題もさることながら、そこには幾つかの根本的な問題が潜んでいます。
一つの根本問題は日本の硬直化です。
社会の硬直化とは不明瞭なものです。
硬直化とは、大きく成長し固定化した組織や制度などが、社会や経済の変化に適応出来なくなった状態を指します。
1.
60年前、原発産業は零から始まり、今やGDPの1%(注1)を占める産業に育った。
2.
高度な技術と莫大な資本が必要で、大企業と政府が牽引する必要がありました。
3.
やがて継続と保護が優先され、自由化や安全、責任などは内輪でもみ消されます。
4.
利権を守る為に産官学と議員達は、自らの言動や教育、マスコミによって世論操作を行います。
5.
国民は、知らずに現状を追認するようになります。
注1、
業界の大きさを、売上げ/GDPで表すのは厳密には正しくない。付加価値が正しい。
この結果、何が起きたのでしょうか?
災害が起きて、実にずさんな安全体制、捏造、隠蔽、癒着が発覚した。
これは一部の利権グループが、他者に犠牲や無駄を押し付けることを意味します。
この非効率さと慣行が日本社会の停滞を推し進めているのです。
< 農業保護とTPP反対 >
ここで重要なことは、この硬直化が社会全体に広がっていることです。
この硬直化が生む弊害とはどのようなものかを農業で見てみましょう。
農業の国内生産高8兆円 (GDP比率1.5%、注1)、輸入額7兆円で、農業就業者で4.6%(内65歳以上61%、兼業農家込み8%)です。ここで国民が農業保護に費やしている額を見ます。直接税金で3.3兆円の農家保障、輸入障壁により2.8兆円(OECD発表、この内関税5000億円)高く買っており、合計6.1兆円になる。さらに国内生産分も考慮すると、最大合計7.5兆円になるかもしれない、これが毎年の食料自給率向上の代償になります。
< 畜産物と飼料穀物の関係 >
それでは自給率はどれほど深刻なのでしょうか。日本のカロリーベースの自給率が40%と低いのは食肉用の飼料にトウモロコシ、大豆、小麦を大量に輸入しているからです。実際は、米100%、野菜80、鶏肉70と自給率は高い。図からわかるように、直接安い牛肉や豚肉を輸入し、養殖漁業と果樹栽培を推進すれば自給率は上がる。これを妨げているのも保護政策です。
これで日本の農業が良い方向に向かえば良いのですが。一部に兆しはあっても、全体としては高齢者就業者が多いことでわかるように、保護がチャンスを奪い体力を弱らせているのです。このように保護が、自身の衰退に拍車をかけ、さらに経済全体にブレーキをかけることは、ギリシャの果樹栽培のように世界中に見られます。
このような保護政策による国民負担増、組織の維持費(官庁・農協)、輸入障壁の対抗としての輸出障壁は日本経済を大きく圧迫しています。これらの無駄は他の産業を含めると税収40兆の50%に到達する日は近いでしょう(農業で20%、原発で3%ぐらいでしょうか)。
参考図書 : 「日本は世界5位の農業大国」 浅川芳裕著
なぜこのような硬直化が蔓延するのでしょうか。
次回は、社会の硬直化を温存し、改革出来ない理由を見ます。