20200411

世界が崩壊しない前に 15: 18歳少女の戦い 2





*1

グレタさんは何故一人で立ち上がったのか?
彼女は世界に何を訴えたいのか?


 
*2

グレタさんの影響力

彼女の表情と言及は実に厳しく妥協がない。
現状の地球温暖化の取り組みには「希望がない」と言い、楽観論を否定する。
進まず後退さえする各国首脳の態度を非難する。

マスコミでよく取り上げられているのは、彼女の肉食拒否と航空機利用の否定「飛び恥」です。
このせいで、飛行機から鉄道や船に切り替える人が増え、航空会社の売り上げが目に見えて減った。


彼女は何を指摘しているのか!

地球の温暖化を抑制するには、二酸化炭素排出量を2030年までに世界全体で約30%減らさなければならないとされています。
2016年、一人当たりの二酸化炭素の年間排出量は日本9トン、米国15トン、中国7トン、アフリカ平均1トンでした。

米国の場合、一人の年間肉食量は100kgだから年間CO2排出は1.4トンになる(牛肉で計算)。
牛肉をすべて鶏肉に替えると排出量は1.2トン減り8%減となる。
また米国の航空旅客の一人年間平均排出量は3トンです(国民の平均ではない)。
確かに航空機を止めれば、利用者は20%減らすことが出来る。

私は節約する方なのでCO2排出が少ないのですが、年1回海外旅行をしているので航空機で約2トン増やしてしまっている。
弁解すると、鉄道と船ならCO2排出はかなり減るのだが、鉄道は不可能だし、船は日数と金額の点で無理です。

彼女の指摘は的を得ているが、生活や経済活動への影響が大きいので、彼女に反感を持つ人もいる。

しかし彼女のメッセージ発信によって世界は動き始めた。
航空会社(北欧)は鉄道との連携やCO2排出削減に取り組み始めた。
また2019年以降、世界の機関投資家や銀行の主要団体は、パリ協定の目標が不十分として、目標の引き上げと具体策を提言し、各国に迫るようになった。

実に、彼女一人の行動が世界危機への突破口を開いたと言える。


私には後悔がある。

彼女が一人で最初にストを行ったのは、ストックホルムの国会議事堂前で、2018年8月20日でした。
私はその頃、北欧を一人旅しており、少し前の6月1日、国会議事堂の付近を歩いていた。
残念なのは、つい最近まで彼女のストの場所を知らなかったことです。

是非とも、一人の決起が世界を目覚めさせた瞬間に立ち合いたかった。


次回に続きます。

20200410

桜舞い散る城下町、龍野を散策 1




 
*1

これから数回に分けて龍野を紹介します。
ちょうど桜が満開で、快晴にも恵まれました。
訪れたのは2020年4月7日でした。


 
< 2. 散策ルート、上が北 >4

上: 黄色の枠が今回紹介する龍野の城下町です。
揖保川がこの城下町のすぐ横を流れ播磨灘に注ぎます。
龍野市はこの城下町を中心にして、南は海岸に達し、東に姫路市、西に相生市で接しています。

下: 散策ルート。
歩いたのは概ね1km角の範囲で、歩行距離は約6km、標高差は100mぐらいです。

黒線が散策ルートで、下の駐車場Sから始め、番号順に進み、また駐車場に戻って来ました。
赤枠の観光スポット

: 龍野(川原町)観光駐車場
1: 常照寺、片しぼ竹
2: 龍野動物公園、市民グランド
3: 赤とんぼ歌碑、三木露風立像
4: 野見宿禰神社、展望台
5: 龍野神社
6: 聚遠亭
7: 龍野城、龍野歴史文化博物館
8: 三木露風生家
9: 醤油の郷、大正ロマン館
10: 圓光寺


 
< 3.龍野(川原町)観光駐車場を出発 >

上: 右が駐車場、左が揖保川の下流です。
駐車場は二三十台分のスペースがあり無料です。
道路から入り易く、トイレもあります。
コロナの関係で観光客が少ないのか、駐車場は空いていました。

ただ注意が必要なのは、駐車場探しです。
始め、町の中に入って中心部に停めようとしたのですが、道が狭いので戻り、ここにしました。
散策していると他にも駐車場がありましたので、十分に道を調べた上で行って下さい。

下: 揖保川の上流方向です。


 
< 4. 十文字(どじ)川に沿って進む >

下: 右が十文字川、左に片しぼの看板が見える。
片しぼ竹はマダケの変種で、国の天然記念物に指定さている。
私は見ていませんが。


 
< 5. 常照寺 >

上: 常照寺。
入口の桜が綺麗でした。
これを見て、この先で素晴らしい桜が見られると期待が膨らみました。

下: 古い門構えの塀の上に鯉の置物が見えました。


 
< 6.龍野動物園に来ました >

上: 十文字川から左に外れ、住宅地を抜けて公園に入り、さらに登って行くと動物園が見えた。
公園には数組の子供連れのお母さんがいたが、動物園には夫婦やカップルがちらほらいた。
花見や散歩のようです。


 
< 7. 桜 >

ほぼ満開のピークを過ぎ、風が吹くたびに花吹雪が舞っていました。
まさに日本の風情を感じることが出来ました。


 
< 8. 赤とんぼ歌碑 >

上: 三木露風が作詞した「赤とんぼ」の歌碑です。
彼はこの城下町で生まれ、東京の大学に行くまでここで暮らした。

下: 三木露風の立像です。


 
< 9. 野見宿禰神社に向かう >

上: 野見宿禰神社に向かって登り始めた道から下を振り返る。
三木露風の像を過ぎて直ぐ、小川沿いに登る道があった。

下: ここは国有林で、檜皮葺(ひわだぶき)の檜皮を採集する林だそうです。
周囲の林は、比較的整備されているようでした。


 
< 10. 野見宿禰神社が見えた >

上: 登坂中に上を望む。

下: 稜線に出た所から、神社を見上げた。
露風の像から、ここまで標高差は90mぐらいでしょうか。
この階段を昇る気がしませんでした。
反対方向に展望台があり、ここで弁当を食べた。


 
< 11. 展望台から >

上: 揖保川の上流側を望む。
木立で見難いが、この中央下側に、お城や聚遠亭がある。

下: 霞んで見えないが播磨灘が見える方向です。


 
< 12.「力水」と書かれている >

上: 展望台から下った途中で、振り返った。

下: 「第四十四代 横綱栃錦清隆 直筆「力水」」と記された看板が見える。
中央の石に「力水」と彫られている。


* 野見宿禰と龍野市の因縁 *

野見宿禰は日本書紀に出て来る怪力の持ち主で相撲の始祖と言われる。
出雲の人で天皇に仕えたとされる。
宿禰を祭る神社や墳墓は、関西から山陰に数多くある。

彼は出雲への帰郷途中でこの地で没した。
すると人々が川原からリレー式に石を運んで墓を作った。
その様が「一面の野原に人が立つ」から「立野」、そして「龍野」になったと言われている。
歴代の横綱が、神社に玉垣を奉納している。

なぜ野見宿禰がこの地に来たのだろうか?
それはこの地が奈良時代に遡る因幡街道上にあったからです。
この道は、山陰と上方を結ぶ重要な街道でした。
この道は姫路を出発して、龍野市の揖保川沿いの二つの宿場町を過ぎてから西に折れて、佐用町、美作、古い町並みを残す智頭宿を通り、鳥取に出た。
実は、美作の大原宿が宮本武蔵の出生地とされており、この龍野にも足跡を残している。

 
< 13. 「力水」からさらに下る >

上: 「野見宿禰塚」と書かれた石碑がある。
こちらの階段の方が、正式なようです。

下: 龍野神社。
上の階段を下ると、この神社の横に出た。

この神社には、江戸時代の脇坂家の始祖が祀られている。


 
< 14.龍野神社  >

 
*15

龍野神社の中段から眼下を見下ろす。
桜の花が輝いていました。

次回に続きます。






20200408

世界が崩壊しない前に 14: 18歳少女の戦い 1





*1

今回は、地球温暖化を強烈に訴えるグレタさんを紹介します。


 
*2


彼女は2018年末の「国連COP24」で訴えた。

「私は希望を語りません。
 何にもしないこのままではだめ!
 世界のシステムを変えなければならない。」

これに対してトランプやプーチンら首脳は、彼女の異常さを指摘し、操られていると嘲笑る。
日本にも同様の発言をする人はいる。


グレタさんについて

彼女は環境問題に関心を持つと自分で勉強を始め、やがてSNSで温暖化懐疑派に討論を挑むようになった。
感化された両親は、彼女に温暖化の現地調査や気候学者との対話の機会を与えた。

そして満を持して彼女はストックホルムの国会議事堂前で、一人でストライキを始めた。
彼女は幼少期より自閉症、強迫神経症があり、両親はストを始めるまで発作の再発を恐れていた。

彼女には始めるにあたり戦略があった。
先ず、SNSで実況中継を発信し続けた。
さらに緊張に耐えながら多くのメディアによるインタビューに答えた。

これらにより彼女の期待以上に、ストは世界に急速に知られ、彼女のメッセージの真意が世界に伝わった。
9月には161ヵ国で400万人が参加した地球温暖化ストップのストライキが行われた。
その後、彼女は数々の世界的な温暖化対策会議に引っ張り出されるようになった。

彼女の姿勢を示すエピソードがある。

ストライキ中に、ある男がベジタリアン用のバーガーを差し入れた。
(肉牛の飼育には多くの炭酸ガス排出が伴うので)
スト仲間は食べたが彼女は食べなかった。
彼女は、「あなたが差し入れを望むなら、次回から別の店のものを提供して下さい」と提案し、彼は二度と来なかった。
彼は便乗して自社製品を宣伝しようとしていた。


元々、北欧では小学校から環境問題を学習させ、中学校から政治の学習だけでなく政策についても討議させている。
国民のほとんどはボランティア活動を通じて、地域社会と密接に繋がり、政治意識が高い。

また北欧各国は「持続可能な社会」の実践で先行しているが、市民レベルでも取り組まれている。

つまり、スウェーデン、北欧から彼女のような警鐘を鳴らす人物が出ることは当然なのです。
おそらく日本からは望めないでしょうが。


次回に続きます。

20200407

中国の外縁を一周して 30: 唐へ誘う杜甫草堂




< 1. 杜甫(左?)と李白 >


今回は、唐の詩人杜甫(とほ)にゆかりの地を訪ねます。
杜甫は戦乱を逃れ、成都に4年間暮らしました。
当時の住まいが再現されている杜甫草堂を紹介します。


 
< 2. 杜甫の漢詩「春望」 >

杜甫(712―770年)は詩聖と呼ばれ、詩仙と称された李白と並ぶ唐を代表する詩人でした。
「春望」は、彼が長安で使えていた時、安禄山の乱に巻き込まれ軟禁されていた折に詠ったものです。
唐は誕生から百年が経ち絶頂期を迎えていたが、反乱でいとも簡単に、都の長安(西安)は陥落し、皇帝玄宗は蜀(四川省)に逃げた。
杜甫は妻と離れて暮らさざるを得ず、世の無常をこの詩に込めた。
杜甫は「春望」にも見られるように社会情勢や政治への思いを五言八行に込めました。


 
< 3.杜甫草堂 >

上: 入り口
下: 地図
とても広いので周り切れない。
この杜甫草堂は、木々で覆われた一辺500mの庭園内に数々の建物が散在している歴史テーマパークのようなものです。
杜甫がかつて住んでいた住まいが再現されています。


 
*4

雨がかなり降っていたので、写真を撮るのが難しかった。
広い敷地を、傘とカメラを持ち、多くの観光客を避けながらガイドについて行くのがやっとでした。


 
*5


 
< 6.少陵草堂碑亭  >

上: 中央の三角形屋根が少陵草堂碑亭
少陵は杜甫の号です。

下: 茅屋故居
杜甫の像らしき石像の左奥に見えるあばら家が、杜甫の再現された住まいです。


 
< 7. 茅屋故居  >

この狭い家屋内に多くの観光客が入っていたので、写真を撮るのに苦労しました。
机や台所が有り、他の部屋もありましたが、かなりみすぼらしい感じがした。
もっとも1300年前の話ですから、こんなものかとも思った。

実際、杜甫は科挙に失敗し、仕官も上手くいかず、さらに戦乱に巻き込まれ、流転と貧困に明け暮れた一生でした。
彼が悪いと言うより、隆盛ではあったが腐敗が進んでいた唐王朝において、彼の低い出自では出世が出来なかったのだろう。


 
*8

今回の中国旅行で、盆栽の起源は中国だとの意を強くした。
至る所で鉢植えの木の多いことに驚いた。


 
< 9.万佛楼 >

上: 漢詩の書が展示されている建物。
残念ながら読めないので、通り過ぎるだけでした。

下: 万佛楼が木立の向こうに見える。


 
< 10. 杜甫と唐 >

上: 右から玄宗、楊貴妃、安禄山。
中: 安禄山と唐の行軍。
赤線が安禄山の南下した侵攻経路、青線が唐軍の敗走経路。
玄宗は成都へ敗走し、皇太子は霊武に北伐を行い、後に長安を奪還する。

下: 太い黒線が杜甫の生涯の行路で、ほぼ当時の主要都市を巡っている。
Aは出生地鄭州、Bは長安、Cは成都、Dは逝去の地

私には「国破れて山河在り」は他人事とは思えない。
まさに今の日本を見ているようです。
杜甫の人生は、唐が絶頂期から崩壊に向かう時代と重なりました。

唐誕生から百年、玄宗皇帝の善政で唐は絶頂期を迎えます。
しかし彼は絶世の美女楊貴妃に溺れ、政治をないがしろにした。
政治は悪辣な宰相が握り、その死後、楊貴妃の血縁者が政治を牛耳った。
この血縁者は北辺を任されていた傭兵軍の総指揮官安禄山が反乱を起こす火種を作った。
そして755年、安禄山は蜂起し、1か月後には洛陽を、その半年後には長安も陥落させた。
玄宗は成都に逃げ、楊貴妃に死を命じ、北伐に向かった皇太子が皇位継承を勝手に宣言した。
唐は安禄山側の内紛や異民族の力を得て、どうにか切り抜けることが出来た。
この後、唐は中興の祖によって命脈を保ち、誕生から約300年後、内乱によって滅ぶことになる。

杜甫は、今の鄭州で地方官の子として生まれ、科挙を目指す。
各地を旅し、洛陽では李白と意気投合した後、長安に仕官を求める。
何とか一時、仕官は叶うが、安禄山の乱に巻き込まれ、逃避行を繰り返すことになる。
杜甫は蜀(成都)に逃れ、蜀の有力者が彼を支援した。
この時の住まいが杜甫草堂です。
支援者が死去すると、彼は家族を連れて南下し、かの地で死去した。
才能に恵まれ彼ではあったが放浪、逃避、貧困の内に人生を終えた。


広い庭園の為、1時間以内では、ほんの一部を覗くだけで、じっくり見ることは出来なかった。
それでも歴史的な佇まいを全体的にうまく再現しているので、見る価値は十分にあります。
もっとも時代考証が正しいかは分からないが。


次回に続きます。



20200404

世界が崩壊しない前に 13: コロナ危機対応で見えて来るもの 4





*1

コロナ対応から見える日本の危うさ
問題点を整理します。


主要な問題ではないが、今の日本の危うさを象徴する事例を紹介します。

最近、コロナ新規感染者に外国籍が含まれるグラフが出回っている。

 
< 2. 恐怖心がデマのグラフを作らせた >

これに添えて「病床は日本人の物であって、外国から逃げて来た奴などに与えるな!」と記されている。
また「外国人にコロナの現金給付は問題!」との発言もある。
これらの発言はウヨや与党議員から発せられた。

海外移入が増えているのは、空港での水際対策の不手際です。
実は、厚労省は国籍を区別していないので、これは誤解を基に意図的に作られたグラフです。

どちらにしても、今の政府を熱烈に支援する人々や、コロナ対策の要職を務める人には、この類の人が目立つ。



* 政府の何が問題か *

基本的な問題
² 感染症対策の不備(パンデミックを想定せず、病床を減らし続けた)。
² 上記前提で対策を講じた(検査をせず、一斉休校のみ)。
² この間、感染爆発への対策を怠った(感染症病床などの増設)。

さらに加えて
² 日頃の隣国敵視政策が災いし、中韓の成功例を受け入れられず、中韓の協力も得られず必需品の調達に支障をきたした。
こんな時ほど世界が連携しなければならないのだが。

² 対策は、データーによる論理的な説明もなく検証もない。
これまでの野党による国会追求での逃げと同じ。


* 何が最悪か *

危機を乗り越えるには、科学的で論理的な状況認識と不断の変革が不可欠だが、これが出来ない。

対応の拙さは福島原発事故と同じで、膠着した体制に根源があり、一人首脳の不出来だけに帰することは出来ない。
それは半世紀に及ぶ政治屋・官僚・産業と大半の学者・マスコミによる癒着にある。
この体制は、既得権益の維持と拡大に邁進し、時代の変化には閉じ籠り、危機に対しては想定外と言い放ち、事なかれを繰り返す。

これは日本が大戦に突き進んだパターンとも酷似する。
半世紀に及ぶ軍部による政治掌握、それを支える陸大出の参謀本部、軍令部のエリート、強硬派の陸軍から東条が首相に選ばれ、日米開戦と突き進む。
最優秀な知性と見識を備えた中枢は、いとも簡単に危険を冒し、途中、冷静に省みることなく敗北まで突き進んだ。

結局、日本は、幾度も同じ事を繰り返している。
今回、おそらく壮絶な結果になるでしょう。

日本が再生出来ることを願うばかりです。
今はコロナだが、これからは更にあらゆる世界的な危機が待ち受けている。


次回からは視点を変えて続けます。



20200403

世界が崩壊しない前に 12: コロナ危機対応で見えて来るもの 3








*1

コロナ対応から見えて来る日本の危機管理とは・・・


気になる事項を幾つか挙げます。

1. LINEによる16万人のコロナ症状調査(3/27~3/30)で東京都7.1%、神奈川・埼玉・千葉県6.5~5.7%が該当すると答えた。

これは正確な診断ではないが、現状のPCR検査では感染者を把握出来ていない証だろう。


 
< 2.感染経路 >

2. 政府は、3/2から春休みまで全国の小中学校、高校の一斉休校を要請した。

これは過去にも実施されており一定の効果はあるだろうが、誤ったメッセージを発した。

当時、ニュースを見る限り、感染に関わっていたのは圧倒的に小中高生でなく大人だった。
小中高生に発症者が出ていない段階で、彼らが感染させるとする根拠は薄かった。
(現在は状況が異なるので必要だろう)

本来最初に、一番感染に関わっている大人(大学生も)の外出・密集行動を制限すべきだった。
結局、経済ダメージの少ない安直な一斉休校に頼り、上記の制限を行わず、逆に大人は外出への緊張感を無くしてしまった。
このことが巨大人口を有する都市部で、その2週間後の3月中旬以降の感染増加になった推測できる。


3. 縮小されていた日本の感染症対策

国立感染研の人員や予算は減らされていた。
2009年から2018年の間に60億円から40億円に減額されていた。
既に満杯になりつつある感染症病床は全国で1871に過ぎないが、実は1990年から2009年にかけて、人口10万に対して9.9から1.4と激減していた。



 
< 3. 最近の主要国のインフルエンザ死亡者 >

それでは感染症対策の必要は無くなっていたのだろうか?

近年、エイズ、サーズ、マーズ、デング熱などが世界を騒がせ、インフルエンザはここ十年ほど猛威を振るうようになっている。
当然、世界の疫学者らは警鐘を鳴らしていた。
世界銀行は、2017年にパンデミック債の創設まで踏み込んでいる。

ところが、この2月も政府は大幅な病床削減を進めている。
これは日本の全病床数が先進国トップで、福祉予算切り詰めの為としている。
しかし日本の人口当たりの感染症病床数、長期療養病床数、臨床医数などは先進国では少ない方であり、変化に対応できないでいる。


 
< 4.日本の医療水準のランキング >

これは「防ぎ得る死をどれぐらい防げているか?」を評価したランキングで、珍しく順位は良いが、自慢できるものでもない。


実は、医療予算削減は日本だけではない。

繰り返すバブル崩壊後の超金融緩和策によって各国の累積赤字が増大している。
日本は断トツ最悪で嘆かわしいが。
それに加え、日米首脳に見られるように世界の右傾化が進行し、軍事費が上昇している。
不思議な事に、同時に企業や富裕層への減税も進み、更なる財政圧迫要因となり、日米を筆頭に当然のように国民の福祉予算の削減が進んでいる。

つまり国民の安全保障は、いつの間にか見栄えのするものに偏ってしまった。


次回に続きます。











20200402

世界が崩壊しない前に 11: コロナ危機対応で見えて来るもの 2









前回に続いて、コロナの感染爆発の可能性を探ります。


現在、東京で感染が拡大しているが、これとPCR検査との関係で意見が真っ二つに分かれている。
一方は「検査を少なくし感染を抑制している」、逆に「把握できていない感染者がやがて感染爆発を招く」と対立している。
前者は現状の日本政府と初期の米政府、後者はドイツや韓国の対応です。
残念ながら日本ではデーターによって論証する姿勢がない。

結論から言えば、検査を拡大させ初期に感染者を隔離してこそ感染爆発が防げる。
世界の感染推移のグラフ(前回のグラフ4)を見る限り、多くの国で、始めはゆっくり感染は進行しているが、やがて何らかの切っ掛けで感染爆発を起こしている。

当然、検査拡大時には、感染防止(ドライブスルー方式など)と事前の健康状態チェックによる選別は必要です。
実際、上記対策を講じて検査を拡大した国は、感染者数の割に死者が少ないか、終息を向かえつつある。
しかし日本政府はオリンピック開催と医療システムの不足・不備による医療崩壊を恐れて検査を増やすことが出来ないでいた。

今ままでは低水準だったが、前回説明したように対策の効果と言うよりは偶然の産物に過ぎないと考えて、検査拡大と共に、データーに基づいた抑制策(外出禁止など)が不可欠です。


日本の異常な推移を確認します。

 

< 2. 各国の感染データー >

横軸は累計感染者数、縦軸は1週間当たりの新規感染者数の推移。
横軸と縦軸の両方が対数目盛であることに注意。
上は3月3日、下は3月21日の値。
赤の矢印は、注目すべき米国、日本、韓国、中国を示す。

驚くべきは、世界各国がほとんど直線状に並び、感染の増加率(新規感染者/累計感染者)が一定だと言うことです(同じ病原体なので当然か)。
そして中国と韓国は、ある時点から抜本的な対策を講じたことで一気に終息に向かっている。

一方、米国は感染が発覚した時点で検査拡大を行わなかった為、上図のように平均的な線より下にあったが、感染拡大と共に検査による状況把握が進むと同じ結果になっているようだ。

一方日本は、未だに平均線より低い所でふらついている。
本当に日本だけが感染の増加率が低いのであれば、平均線を下にずらした緑色の線上を進んでも良いはずだが、そうではない。


もう一つ、不穏な状況を示すグラフがある。

 
< 3. 感染経路不明者の数 >

日本政府は感染クラスターを抑えているので問題無いと言うが、上記グラフの感染経路不明者と感染者の増加を見れば、否と言わざるを得ない。

しかし不可解な点もある。
/30現在、コロナの死者数が54名で、これと累計感染者数1420名からすれば比率3.8%は各国の平均より少し高い程度に過ぎない。
つまり死者数から、感染者数は妥当と言うことになる。

ところで日本の毎年の死者数は肺炎で95000人、インフルエンザで3000人(12月から5月が主)ほどいる。
推測でしかないが、死因の判別でコロナが洩れているのではないかと疑っている。

現状の日本の医療体制に、検査を拡大出来ない事情があるようだが、このままズルズルとやっていると取り返しのつかないことになる。


次回もコロナ危機を探ります。







20200401

世界が崩壊しない前に 9: コロナ危機対応で見えて来るもの 1






前回、急所を掴んでこそ危機を察知出来ることを見ました。
これから2回にわけて、全体を見ない狭量さが危機を招く例を見ます。


お粗末なコロナウイルスへの対応


 
< 2.フォックスニュースの虚言「コロナは嘘だ!」の検証ビデオ >


当初、米国ではトランプ大統領と保守系フォックスニュースが「コロナは問題無い」とか「民主党のデマだ」と盛んに言い立てました。
この間、米政府の検査体制は出遅れ、多くの人は危機感を持たず、感染拡大を引き起こした。

当初、日本政府は感染者がいる寄港予定のクルーズ船を寄港させなかった。
結局、船内で感染爆発が起きる状態のまま引き受けた。
この時に、船からの感染者隔離や国内対策に本腰を入れるべきだった。
政府部内の「中国の細菌兵器」「武漢ウイルス」の発言は、米国と根は同じだ。

彼らには稚拙な逃避行動-危機の矮小化と先送り、が見られる。
一番困るのは、両国の首脳が共に非科学的・非論理的だと言うことです。
二人は不安を煽り、目立つパフォーマンスで人気を得ていることでも共通している。

そうは言っても、日本のコロナの感染状況は、今まで世界に類を見ない低水準で推移している。
これは日本政府の感染対応が適切だからだと、多くの人は感じている。
これが正しいなら、今後、感染爆発は行らないだろう。

私は素人だが、いくつかのデーターから今後、さらなる危機が起こると予想している。
要約すれば日本の現状は、ある条件がたまたま幸いし感染のスピードが遅かったが、対策の不備から感染者が知らぬ間に増大しているらしい。


 
< 3.著しく低い日本の感染状況 >

この横這いに近い状態は、世界に類を見ない日本人の衛生意識の高さ、加えて閉ざされた島国、マスコミの危機報道が幸いしたと信じたい。
しかし別の方法で比べると違う状況が見えて来る。


 
< 4. 縦軸を対数目盛りにした >
高橋洋一(嘉悦大)、@YoichiTakahashi

破線の日本、台湾、シンガポールが何故か同じ感染速度が遅い傾向を示している。
最も低い台湾は、確かに素早く画期的な対策を講じたが、実は中国からの旅行客が去年9月以降半減していたことも幸いしている。
(中国は、台湾が香港デモを支援したとして報復措置を取った)

何か共通の要因があるはずだ。
しかし韓国の途中からの急激な拡大も気になる。


 
< 5. 感染者数と致死率、3月26日のデーター >

これを見ると、三角印の国(結核予防のBCG接種が行われている国)は武漢を除いて、すべてで低い。
BCG接種は世界157ヶ国で実施されているが、欧米の15ヶ国だけが停止か限定しており、今回、酷い感染状況になっている。
これが日本、台湾、シンガポールが同じ傾向になった理由の一つだろう。
しかし、同じBCG接種をしていながら韓国も武漢も、突如急拡大した。

つまり日本は、まだ安心してはいけない。
気付かない不安要因があるはずだ。


次回に続きます。