20170507

何か変ですよ! 57: 今ある恐怖 2




*1


前回、米国で何が起きているかを見ました。
今、歴史上初めての変動と繰り返す災厄が力を増しています。
さらに、これらが世界を巻き込み、やがて大きな危機を招く可能性があります。



 
*2

はじめに
前回、指摘した米国で起きている状況を要約します。

A: 一部の金融資産家に都合の良い社会が到来しつつある。

国の富が彼らに集中し、また政府が彼らを支援することにより、益々、この状況は加速している。
一方、99%の国民は取り残され、政府への不信を高めているが、政治を変える有効な手段を持たない。

B: 不満を募らせた国民は益々煽動され易くなっている。

政治が国民の不満や不信に対処出来なくなると、国民は勢い短絡的で強権的な解決策に飛びつき始める。
扇動者はスケープゴートを強烈に訴えることで、大半の国民の心を掴むようになった。

Aの状況は、ここ30年の間に進行し、加速している。
一方、Bの状況はAによって誘発され、ここ数年で急に表面化した。

しかし、この問題は米国内に留まらず、世界を巻き込む大きな危機へと発展している。



 
< 3.ダボス会議 >

世界で何が起きているのか
私は世界が二つの段階を経て、混乱から危機に突入するように思える。

だがその説明の前に、米国で起きている事が世界とどのように関わって来たかを確認します。

ここ半世紀、米国が金融の規制緩和を牽引した結果、格差が拡大し続けている。
しかし、自由経済を標榜する国々も同時に熾烈な競争に巻き込まれ、規制緩和に突き進み、同様に格差が拡大している。

あたかも1970年代、英米を筆頭に同じ自由経済圏がスタグフレーションに巻き込まれたのと酷似している。
この時は、国民だけでなく、むしろ経済界の方が不満の声を挙げ、各国政府は対策を行ったが、今回は大きく異なる。
今の経済界や政界のエリートは現状に不満を示さず肯定的である。

それはなぜなのか?
最も明確な当時との違いは経済が拡大している中で貧富の差が拡大していることです。
この状況は富が集中するエリート(主に金融資産家と一連托生の仲間)にとっては天国だからです。

これを示す好例があります。
世界から選ばれた数千名の賢人が毎年集まるダボス会議があります。
ここでは学者やジャーナリスト、経営者、政治家などのトップが一堂に会し、議論を行っています。
しかし、ここから発信されるメッセージは概ね現状に肯定的です。
これは世界に「改革が必要ない」ことを間接的にアピールしているようなものです。

かって学者が主導したローマクラブの功績とは似て非なるものです。注釈1.
それもそのはずで、「地球上の富の85%をダボス会議の参加者が握っている」のですから。注釈2.
私は、このサロンに過ぎないエリートの集まりは「不作為の罪」を背負うことになると思う。
このような交流は必要だが富裕層やエリートに役立つだけだろう。

つまり、今起きている富が偏在するメカニズムは完全に世界を巻き込み、富の集中を享受する人々によってこのシステムは強化されつつあるのです。


 
< 4. 右傾化の背景 >

何がポイントなのか
グローバル化する世界にあって、自由経済の国が競争に晒されるのは必然です。
従って無為無策で競争を放置(自由に)すれば、経済を通じて社会に歪(失業や格差)が生じるのは当然です。

この時、国内の労働者や企業が競争力低位の産業から優位の産業にスムーズに転換出来ればその歪は少なくなるのですが、これがなかなか困難な現状です。
今、フランスや米国で起きている右傾化に賛同する農民や労働者達はこの犠牲者達です。
現在の指導者は、保護主義と自由貿易の板挟みの中で、制度的(規制など)な解決を放棄し、自己責任として労働者を自由競争の中に晒すだけなのです。
これでは世界経済の落ち込みが激しくなると、彼らの怒りは頂点に達するでしょう。
この危ない綱渡り状態が日本も含めた先進国で続いています。

自由競争を否定しませんが、違法まがいの弱肉強食により正常な競争が出来なくなっていることが問題なのです。

結局、現代のグローバル化した経済では、ほんの一握りの富裕者は益々富み、貧者は益々貧しています。
これは隠しようのない現実ですし、そうならざるを得ない経済的メカニズムが確立し、増殖中なのですから。
この歪は、今は目立たない国でも高進するのは時間の問題です。

これは主に、1980年以降の自由経済圏の大国が先導して来た政策によるものです。
この政策とは、グロ―バル化に向けた経済・金融・労働・産業に対する規制緩和、企業・金融・富裕者の活性化と称する減税、貨幣供給量と累積赤字の増大の是認、中央銀行の役割改変などです。
それに比べ、不思議なことに労働者の活性化云々の政策や保護はあまり聞かない。
この関係は複雑ですが、大きな流れは前回説明しました。
幾つかの国(ドイツや北欧など)は、危険を認識してこれらの政策採用を抑制気味だが、巻き込まれつつある。

実は、今の富裕者の減税は19世紀まで無税が一般的でしたが、20世紀になると政府が強力に累進課税や規制緩和を国民や国家の為に導入したのです。
ところが国民が浮かれ、よそ見している間に中世の社会に戻ってしまったのです。


 
*5

これから起きる悲劇とは何か
悲劇の第一段階は、B項の「煽動と右傾化」です。

もう既に起きています。
各国で差別的な言動を好む人ほど政府を信任していることからも頷けます。
これは数年前から、日本や欧米などで顕著になっています。

国民の不満が高まり、何ら改善出来ない政府への不信感が高まると強権的な解決を望む声が高まります。
そこで不満を上手く操る煽動家の出現となります。
これは歴史的に繰り返されて来たことで、必然と言えます。

今は、まだほんの始まりに過ぎない。
例えば、今回、北朝鮮の核実験やミサイル発射は何時から騒がしくなったのか。
それは米国のトランプ大統領の誕生前後からでしょう。
始めは、数匹の狂犬の遠吠えから始まったが、いつの間にか周りを巻きんで大合唱となり、ついには何処かの国の地下鉄まで止まりました。
一方の狂犬は脅しが効いたのですから喜んでいることでしょう。

実は、歴史上、戦争の始まりの多くはこのような些細ないがみ合いが嵩じて始まっています。
第二次世界大戦前の独仏の状況がその一例です。
両国は、ライン川を挟んで国土の奪い合いを繰り返していました。
フランスは先の第一次世界大戦に懲りて、ドイツの再軍備防止の為にドイツ経済を困窮させる莫大な賠償金を請求し、また賠償として炭鉱地帯を占領しました。
この手の敗戦国への仕打ちは一般によく行われることでした。

しかしこの二つの行為が、間接的にドイツ経済をどん底に突き落とし、ドイツ国民はヒトラーに不満を煽られ、軍事力で反撃することを選択するようになった。
一方、フランスはこれに対抗して右傾化して行きました。
こうしてまたも大戦が短期間のうちに再発した。

しかし私が恐れる悲劇は、これだけではありません。
私はまだ世界の良識に希望を持っており、多くの国民が直ちに戦争開始に応じることは無いように思います。

それでは何をさらに恐れるのか?



 
*6


私が想定する第二段階の悲劇
それは、右傾化とナショナリズムにより各国が交流を断ち始めることです。
つまりグローバル化と反対の方向に進むことです。
この結果、たとえ今すぐの戦争開始を逃れたとしても、最終的に世界は益々、混迷と対立を深め、ついには戦争から逃れられない状況に陥ることになるでしょう。

これは既に始まっています。
西欧国内のEU離脱運動の盛り上がりや一部首脳による挑発的で利己的な行動に顕著です。

EU離脱は、最も象徴的な例です。
EUは独仏が戦争回避を願って、大戦への反省から奪い合っていた中間地帯の鉱物資源を共有する為に始められたのですから。
EU統合の手法に問題があるにしても、EUの分裂は平和と経済に悪影響を与えることは明らかです。

さらに間違いが明確なのは、自国優先の為に各国が保護貿易に走り、世界貿易が縮小し、廻りまわって自国に不況の波がさらに大きくなって返って来たことでした。
第二次世界大戦を世界に拡大させてしまったのは、各国の保護貿易が恐慌の傷をさらに深くしてしまい、日独伊の国民が不満を募らせ扇動者の尻尾に乗ったことにある。
この手の危機の兆しはそれぞれの国内で20年ほど前からあったのですが、独裁と暴発は数年の短期間で決定的なものとなったのです。
このような悲劇を幾度も繰り返す愚は避けたいのもです。

益々、世界は経済や軍事、外交などで孤立と対立を深めていくことでしょう。
しかし、これもまだほんの始まりにすぎません。


 
*7


何が恐ろしい結末へと導くのか?
私が恐れるのは、世界の平和と繁栄に最も必要なものが反グローバル化によって破壊されることです。

皆さんは、グローバル化こそが金融資本家と多国籍企業の横暴を招き、世界の人々を不幸にしている元凶ではないかと思っているかもしれません。
今まで、私がそのように説明をして来たではないかとお叱りを受けそうです。
半分は正しいのですが、半分は問題があります。

例えて言うなら、琵琶湖周辺の人々が川に好き勝手に(自由に)汚水を流し、汚染が酷くなったので琵琶湖に流入する河川を遮断すべしと言っているようなものです。
本来は、すべての人々が汚水の排水規制を守れば済むだけのことなのです。
現在の問題は、この規制が無きに等しい為に起こっているのであり、一部の特権層による規制外しの圧力が世界を席巻していることです。


少し目先を変えて、以下の困難な問題をどう解決すれば良いか考えてみましょう。

A: 枯渇する地球の資源(鉱物、石油、水産農作物、水)の持続的な使用。
B: 北朝鮮やイスラム国(IS)などのテロ国家や組織の抑制・制圧。
C: 地球温暖化の防止。
D: 大国の横暴(軍事行動や占領、経済・金融政策)の制止。
E: 多国籍企業や金融家の横暴(タックスヘイブンやヘッジファンド)の規制と取り締まり。
F: 格差の拡大と富の集中を抑制する世界的な規制と税制。注釈3
D: 移民・難民の発生低減と保護、移住先の摩擦低減。

これらは手をこまねいている内に拡大し深刻の度を増しています。

例えば、どこかの大統領や首相のように国益を重視し、他国を敵視し、特定の大国との従属を深めるならどうなるでしょうか。
結果は明らかです。
上記7つの問題を解決するどころか、戦争へと発展する危険の方が高いでしょう。注釈4.

解決するには何が必要なのでしょうか?
それは世界の国々が等しく協力し合うことです。
解決を遠ざけるものは分裂と対立、そして大国の身勝手です。

私の連載「中東に平和を!」で紹介していますが、現在世界中で起きているテロや内紛、難民の多くはここ百数十年間の大国の身勝手に起因しています。
この因果関係と責任問題に関してまだ定説はありませんが。
また嫌われるグローバル化の汚点も、大国の庇護を受けた多国籍企業や金融家の横暴が背景にあります。
この問題が見過ごされるのは、世界が共有出来る法意識が未発達なのと、その形成を妨害する情報秘匿やデマの力が大きい為と考えます。
例えば、タックスヘイブンやヘッジファンドの横暴によって、日常的に世界の庶民は多大な害を受けているにもかかわらず、規制が無いに等しく、増加の一途です。


平和的に問題を解決する手段は、人類が生み出した民主主義を世界に取り入れる以外に道はない。
益々、地球はあらゆる危機に直面しているのですから。

残念ながら、これは非常に難しい。
半世紀前の東京裁判の折、インドのパール判事は、いつか世界が一つになり国家の不正義を裁く時代が来ることを願っていた、しかし、当時はまだ機が熟していないと判断した。注釈5.
「あなた方はいつまで惰眠を貪るのか?」とパール判事は悲しんでいることでしょう。


しかし皆さん、思い出してください!
世界や国内で格差が拡大し、国民が政府に絶望するようになった理由はどこにあったのでしょうか?

答えは先進国で1980年代から加速した富裕層の優遇策でした。
極論すると、それは規制緩和と税制変更が元凶でした。
そしてこれが自由経済圏の先進国から地球全域に蔓延していったのです。
この人間(エリート)が行った制度改悪を、人間(国民)の手でより良い制度に戻せば良いのです。

これは、各国が個々に解決出来るものではありません。
幾分はドイツやかつての日本、北欧など幾つかの国は抵抗して来ましたが、グローバル化した現在において無傷で難を逃れることは出来ない。

一番、目立たない問題ではあるが放置すると、徐々に世界の傷は深くなり、ついには良識が通用しない社会、衰退する地球になると予想されます。
これも歴史が示すところです。

残念なことに、危機を予測出来て解決策が見えても、これを世界が実行出来るかは皆さんの手中にあるとしか言えないのです。


以上で終わります。
どうもお読みいただきありがとうございました。




注釈1.
ローマクラブは当時、科学的に証拠をもって世界の地下資源が数十年後から枯渇し始めると警鐘を鳴らしました。
世界はこれに対応すべく省資源に取り組み、現在、地球の寿命が伸びています。

注釈2.
「世界一の会議」、斎藤ウィリアム著、p30より。

注釈3.
世界の貧しい下位50%(36億人)の総資産が富豪上位62人の保有資産に匹敵している。注釈2.

注釈4.
B項のテロ対策には軍事力が必要ですが、超大国に頼ることのメリットよりも、超大国の身勝手な軍事行動の方がマイナスです。

注釈5.
パール判事は当時、事後法の「平和に対する罪」で日本の戦犯を裁く事に反対しましたが、他の戦争犯罪については同意しています。
彼の意見は法律家としては正しい。
彼の意見と思いから学ぶべきは、「平和に対する罪」が裁ける世界になるべきだと言うことだと思います。


20170506

Bring peace to the Middle East! 77: Why was it exhausted ? 15: What happened in Congo ? 3



中東に平和を! 77 なぜ疲弊したのか 15: コンゴで何があったのか 3




< 1. White mercenaries hired by Congo >
< 1. コンゴに雇われた白人傭兵 >


In 1960, although the Congo was able to be independent, it had to go to a road of suffering afterward, too.
I will investigate why the Congo must be exhausted.
That is because the colonial occupation completely destroyed the society.


1960年、コンゴは独立したのですがその後も苦難の道を歩みます。
なぜコンゴが疲弊せざるを得なかったのかを探ります。
それは植民地下の仕打ちが、社会を完全に破壊してしまったからです。





*2


Introduction
Most countries except the West and Japan had become colonies in the last few centuries.
In ancient time, even the West was colonized or was ruled by different ethnic groups.

What of the colonial occupation in these centuries destroyed this society ?
I organize the problems.




はじめに
欧米と日本を除く世界のほとんどの国はこの数世紀の間に植民地になりました。
古くは欧米でさえ異民族に支配されたか植民地になっていました。

ここ数世紀の植民地政策の何が社会を破壊してしまったか。
問題点を整理します。




*3


A.  Monoculture:  colonial master compelled the colony to cultivate only a kind of  crop.

The reason was for importing cheap food and raw materials and exporting own industrial products.
As a result, the colony became impossible to be self-sufficient, and starvation caused by unseasonable weather could occur.
In addition, the industrialization of the colony became underdeveloped, and it became impossible to escape from dependence on the colonial master .
Even after independence, these colonies were exposed to dumping ( by various agricultural protection policies) of agricultural crops of major powers and many farmers were hard hit.

B.  An obscurantist policy: colonial education was kept to a minimum in order to keep costs down and to prevent awakening of indigenous people's political consciousness.

As a result, their literacy rate became lower, a modern political culture did not grow up, and  it became a factor hindering their democratization.

C.  Division policy:  colonial master gave important posts to one side of tribes and sects, and fanned the flames of hatred and distrust against each other, to prevent independence and rebellion by indigenous peoples,

This led to division and conflict after independence.

D.  Puppet regime:  colonial master preserved colonial exploitation regimes and made a puppet of the top or king in the interest of saving time.

The colonial master or multinational enterprise has supported the puppet regime being a dictatorship and prevented all democratic movements in order to securing interests (resource exploitation) even after the independence.





A モノカルチャー: 宗主国は植民地に単一の農作物だけを栽培させた。

理由は安価な食料・原料輸入と工業製品輸出の為でした。
これにより植民地は自給自足が不可能になり、天候不順による飢餓が発生し易くなった。
また植民地は工業化が未発達になり、宗主国からの依存から抜け出せなくなった。
独立後も、植民地は大国の農作物のダンピング(農業保護政策による)に晒され農民は大打撃を受けた。

B 愚民化: 植民地の教育は費用を抑え、先住民の政治意識の覚醒を防止する為に最低限度に留められた。

これにより植民地の識字率が低くなり、近代的な政治風土が育たず、民主化を阻む要因になった。

C 分断政策: 先住民による独立や反乱を防ぐ為に、部族や宗派などの一方だけを重用し、相互不信と憎悪を植え付けた。

これが独立後の分裂と紛争に結びついた。

D 傀儡化: 宗主国は手間を省く為に植民地の搾取体制を温存しトップを傀儡化した。

宗主国やグローバル企業は独立後も利権確保(資源収奪)の為に独裁者の傀儡政権を支え、民主的な動きを封じて来た。




*4


F.  Border determination: the border was determined by the convenience of some colonial masters, and the relation between existing tribes were broken.

Many tribes had been coexisting within the enforced border, and the borders were only an obstacle for nomadic people or farmers of jungle land.
Also during the Great War, many colonial masters added fuel to ethnic independence and eventually betrayed them, but this also became a source of internal conflict later.

The reason why a former colony being independent do not go well can be summarized in these, but it is still not enough.




F 国境決定: 国境は宗主国同士の都合で決まり、既存の部族間の繋がりが断ち切られた。

強制された国境内には多くの部族が共存していた、また遊牧民族や焼き畑農耕民にとって国境は障害だった。
また大戦時、宗主国は民族独立を煽り、最後には裏切ったが、これが後の内紛の火種にもなった。


かつての植民地が独立してもうまく行かない理由はこれらに集約出来るのですが、まだ不十分です。





*5



A deeper reason

"The Western countries that were once invaded are developing.
But the Africa and the Middle East still are exhausted.
Why are there different among these? "

This point is important.

Looking back on the war and domination among Western European countries since the Middle Ages, the aforementioned five problems were not as harsh as against colonies of other areas.
Furthermore, it was a few centuries ago that the Western Europe countries became national states.

So then, why was not it harsh?

They were the same Christians, and also belonged to the same civilization having similar languages and ethnic groups.
And they continued to evolve in the same way, and the military power almost had been held in equilibrium.
This affected ways of the war and domination.

In reverse, this thing resulted in a difference from colonial rule against the Africa and Middle East.

This continues to the next time.




さらに深い理由があります

「 かつて侵略された欧米は発展している。

  しかしアフリカや中東は未だに疲弊している。
  なぜ違うのか?  」

この指摘は重要です。

中世以降の西欧諸国間の戦争と支配を振り返ると、前述の5つの問題は他の地域の植民地ほどには過酷でなかった。
さらに西欧は現在の国民国家の形になって数世紀を経っています。

それでは、なぜ過酷ではなかったのでしょうか?

彼らは同じキリスト教徒で、言語や民族も似通った同じ文明圏に属していました。
そしてはぼ同様に発展し続け、軍事力でもほぼ均衡していた。
このことが戦争や支配の仕方に影響を及ぼした。

逆に、このことがアフリカや中東の植民地支配との違いを生んだのです。


次回に続きます。

20170503

何か変ですよ! 56: 今ある恐怖 1




  

< 1.米財務長官 >


今、私は漠然とした恐怖を感じている。
それは日本だけでなく米国、中国、ヨーロッパなど世界に通じるものです。
これから、この巨大で徐々に姿を現しつつある恐怖について語ります。


はじめに
日々のニュースから、私は日米欧先進国の社会で大きな濁流が起きているように思える。
しかも、それが益々巨大化しているにも関わらず、多くの人々はその兆候と恐ろしさに無頓着のように思える。
私はこの世界の行き着くところを想像すると恐ろしくなる。

歴史を振り返ると、まったく同じ状況は存在しないが、不幸へと突き進む同じメカニズムが働いているように思える。
それは一度、蟻地獄に落ちると、もがけばもがくほど抜け出せなくなる状況と似ている。

それでは幾つかの恐怖の正体を見て行きましょう。


米国で起きていること
如何に大統領が変わろうと、世界最大級の投資銀行ゴールドマン・サックスの幹部が必ずホワイトハウスで経済と金融政策を担当することになる。
クリントン、ブッシュ、オバマ、トランプなどが、選挙戦で如何に綺麗ごと―金持ちの味方ではなく庶民の味方だと、言っていても同じ結果になる。
それはなぜなのか、ゴールドマン・サックスの彼らが、ずば抜けて優秀で強欲だからか、それとも経済運営と選挙資金集めに不可欠だからか。

細かい解説は専門家に任せて、我々は全体を俯瞰することで米国の空恐ろしい状況を知ることが出来るはずです。
これから語ることは厳密さよりも大きな流れを感じることを目指しています。


 
< 2. 米国の大統領選挙費用の推移 >

選挙費用は年を追って巨額になっている。
集金能力の高い人か、はたまた自分のポケットマネーで選挙費用を賄える超金持ちしか大統領になれない。
結局、選挙を制するのは資金の多寡かもしれない。


 
< 3.ゴールドマン・サックスの業績 >

この20年間、この投資銀行の業績はうなぎ登りと言える。
この間、この企業は大きな問題だけでも、1998年のLTCMヘッジファンドの破綻、2007年のサブプライムローン、2010年のゴールドマン・ショックなどに関わって来た。
この手の金融企業大手(ビッグ・シックス)は、米国だけでなくメキシコ、ロシア、アジア、ヨーロッパなど、それこそグローバルに世界経済を危険に陥れる投機に走り、その都度ホワイトハウスに助けられ飛躍し、我が世の春を謳歌している。
尚、クリントン政権の誕生は1993年でした。


例えばヘッジファンドに限て見てみよう。注釈1.
米国のファンドマネージャーが2015年の1年で1700億円を稼ぎました。
これは一つの産業の売り上げではなく一個人の収入なのです。
米国のヘッジファンドの運用総額は300兆円弱あり、毎年の運用益10%、マネージャーの成功報酬20%として6兆円をマネージャーが山分けすることになります。
当然、投資・投機の運用総額はこれの数倍あり、これに釣られて強欲に走るのは無理のないことかもしれない。
誰かが監視すべきだが・・・・。

なぜ毎年運用益の実績が10%近くあるのでしょうか?
通常、莫大な資金を製造業に投資してこれだけの利益を出し続けるのは不可能です。
方法としては、画期的なコンピューター・プログラムで株等の自動取引を行い莫大な利鞘を稼ぐか、はたまた企業買収を繰り返す手があります。
しかし最も稼いだのは一国の為替取引やサブプライムローン(不良債権を紛れ込ました証券)の売買でした。
その売買はレバレッジ(担保なしの高額の借金)を利かせた先物取引等で行われます。

この一見合法的な取引の果てに、毎回、世界各国は金融危機に陥り、多くの失業者と命を縮めた人々を生み出して来たのです。
不思議な事に彼らが成功しても失敗しても、ほぼ同じ結果になります。
言い換えれば、そこには必ず強奪された莫大な資金か、強奪に失敗した莫大な借金があるからです。

彼らは優秀な頭脳によって日々新たな方法を開発し、儲かるとあればどのようなものでも互いに先を競って売買します。
その結果が国家や国民を如何に破綻に追い込むかは、彼らには無縁で、責めを受けることもほとんどありません。
金額が巨額なだけに失敗した時、国は必ず彼らを助け、多少見逃してくれるし、頼めば規制を取り除いてくれる(政治家に見返りが入る)。

しかし彼らが稼ぐ為に最も不可欠なものとは何でしょうか?
それは国が貨幣供給量を増やし続けることです。
一度、貨幣発行をゼロにすればその効果がわかるのですが、他の経済活動も停止してしまうので出来ません(恐慌)。
もっとも中国のように強引に投機資金を制御すれば別ですが。


 
< 4.米国の貨幣供給量 >

Ⅿ2(赤い線):現金通貨と国内銀行等に預けられた預金を合計したもの。
簡単に言えば、景気が良くて経済成長する時は赤線の貨幣供給量が増大します。
しかし増加し過ぎるとバブルが発生しますので、中央銀行は調整します。

現在、世界の多くが貨幣供給量を増やし続ける政策を採っていますが、中でも米国は際立って多い。
日本はアベノミックスの前までは、長らく貨幣供給量を押さえてバブル発生を抑えて来ました。


 
< 5.米国の商業銀行の収益 >

貨幣供給量が増え始める1980年代から、金利以外(投資・投機)による収入が増加しているのがわかる。
最近のデーターはないのだが、その後を予想することは可能です。
これが金融界に富をもたらし、この富によって大統領選挙を通じてホワイトハウスが支配され、さらに富が一部の金融家に集中するようになったと考えられる。
尚、この端緒は1981年のレーガン大統領誕生でしょう。

20世紀の始め、世界は米国発の大恐慌とそれに端を発する世界大戦を経験し、米国は先頭を切って元凶となった無謀な金融行為を禁止する法を制定した。
しかし米国の規制緩和、俗に言う金持ち優先の政策はその後、表面を繕いながら着実に進められて来た。
米国民はなぜこの経済・金融政策の転換を傍観して来たのか?
一つには、ホワイトハウスが「米国の経済・金融がグローバルな競争に生き残る為の規制緩和が必要」と説明して来たからでした(他にも理由はある)。
この1933年に制定されたグラス・スティーガル法(規制法)は、1999年ついに廃止された。


 
< 6.米国政府の債務 >

国民は米国の金融が世界をリードすれば米国経済は復活すると信じ込まされて来た。
国民は確かにバブル絶頂期の度にそれを確信することが出来ただろうが、必ず訪れるバブル崩壊後、また裏切られることになる。

この裏で、国民がおそらく実感していない深刻なことが起こっていた。
世界経済を幾度も破綻寸前まで追い込んだ金融家達を、ホワイトハウスは恐慌にしない為と言い、莫大な公的資金をつぎ込んで救って来た。
それは数百兆円の国債発行となって累積債務が膨らみ続けている。注釈2.
現在、一人で毎年数十億円を越える所得を得る強欲な金融エリート達が蔓延る一方、将来、その後始末として国民はその借金を広く負担することになる。
おそらくインフレか増税で、これは所得の低い人ほど厳しく圧し掛かる。

こうして、危険な博打うち(投機的な金融家)ほど高収入を得て、博打が失敗したら国が助け累積債務を増大させて来た。



 

< 7.米国の所得 >

一方、米国民が選挙で必死に選んだ大統領は何をしてくれたのだろうか。
馬鹿げたことに、1980年代から米国の富がほんの一部の金持ちだけに集まる仕組みをホワイトハウスが作っただけだった(税制と金融政策が大きい)。

これでは溺れるも者は藁をも掴むとの諺通りであって、トランプを選んだ人々を責めるのは酷かもしれない。
別の選択もあったかもしれないが・・・・。



 
*8


問題を要約してみよう
一つの問題は、あたかも地球が強欲な金融資産家らによって牛耳られるようになったことです。

この端緒は20世紀始めの米国に遡るが、1980年代より本格化し、欧米が自由主義経済圏の中で競っている内に、各国がこの泥沼から抜け出すことが出来なくなってしまった。

各国は競争の為に労働者の賃金や法人税、為替で叩き売りをせざるを得なくなった。
またあらゆる企業は巨大化し、規制を外すことで競争に勝たなければならなかった。

さらにインフレ退治と兌換紙幣の制約から逃れる為に、世界各国は自由な貨幣供給体制を選択し、自国の経済成長を自在に制御することを目指した。
この過程で、金融資産家が米国を筆頭に幅を利かせるようになっていった。
そして現在の状況に陥ってしまった。

この状況は、今までになかった新しいタイプの災厄だろう。

歴史を紐解くと、ロ―マの衰亡に似ているかもしれない。
ローマは初期に共和制だったが、軍によって領土拡大と成長を続ける内に軍が実権を掌握し、帝政へと変貌する。
しかし、軍の維持と特権層による富の集中(圧倒的多数になった貧困層)はやがて社会を疲弊させた。
そしてあれほど巨大さを誇ったローマは、いとも簡単に野蛮な民族に打ち破られた。

これからの米国は軍産共同体だけでなく、むしろ自己増殖する金融資産家らに益々支配されていくことだろう。
このメカニズムはまったくローマと一緒と言える。

つまり自己崩壊するか、他者により止めを刺されるまで暴走し続けるしかないのかもしれない。


もう一つ恐れていることがある
上記の状況分析は心ある学者により既に指摘され続けていたことで、私はこのブログで幾度も書いて来た。
一言で言えば、後ろから押されて崖っぷちに追い込まれているのに身動き出来ない恐ろしさです。

問題は、現代文明をリードする国民が、この自明とも言える状況を今まで何ら改善出来ず、むしろ加速させて来たことです。
そしてついにトランプと言う危険なカードを引いてしまった。
無害で済めばよいのだが。
米国の状況は今後、雪だるま式に歪が拡大することになるか、予想外に早く崩壊するかもしれない。
その引き金がトランプでなければ良いのですが。

なぜ人々は、この状況を変えることが出来なかったのか?
考えられるのは米国民がこの事実を知らないからか、またはカモフラージュされて見えていないからか。
それとも例え皆が知っていても、現状の大統領選挙制度等では国民の望む改善が出来ないと諦めているからか。


 

< 9. 米国のGDPと失業率 >

トランプが非難したNAFTA1994年の北米自由貿易協定)は逆に米国の失業を減らしているように見える。
失業を増やしたのはバブル崩壊です。


 
< 10. 米国の人種別失業率 >

このグラフからは、今回、トランプを選んだラストベルトの白人労働者が訴えた、移民によって職を奪われたと言うことを確認出来ません。
むしろ白人の失業率は低く、アジア人を除いてヒスパニックや黒人の失業率が拡大している。

つまりメキシコが悪の元凶だとは言えないのに、スケープゴートすることにより国民を真の問題から遠ざけているように思える。
そして大半の人々がその手に乗せられたと言える。

この状況で思い当たるのは、ナチスの行ったことです。
ヒトラーがドイツ国民を煽動する為に訴えたのは「ユダヤ人排斥、共産主義排除、軍事力による帝国の再興」でした。
この内、ユダヤ人排斥は帝国の再興に最も意味をなさないように思えるが、国民の憎悪を高め、国民を一つにまとめるには有効だった。
これでヒトラーは力を得たが、その一方で無実の人々が多数死んでいった。

歴史上、このような壮絶な例は他にはないだろうが、国内問題や真の問題から目を逸らす為に為政者はスケープゴートを繰り返して来た。
トランプの成功の一つは、この巧みさにあったと言える。
この手のまやかしが上手いことと、国民の為の政治を上手く行えることとは別です。

残念なことに、今、現代文明をリードする先進諸国で、あたかも共鳴するように同じ扇情、スケープゴート、が起こっている。

私はこの扇情に踊らされている状況を恐れています。


実は、世界はこれと関わりながら新たな恐怖に晒されつつあるのです。
そのことについて次回考察します。



注釈1.
「超一極集中社会アメリカの暴走」小林由美著、p76-79.

注釈2.
「大統領を操るバンカーたち」ノミ・プリンス著、p350.







20170501

海外旅行のすすめ 5: 初めてのヨーロッパ 4





< 1. ドイツの鉄道 >
おそらくはニュールンベルグからフランクフルトまでの移動に使った鉄道の駅にて撮影。


今日で、私の初めてのヨーロッパ旅行の紹介を終えます。
当時の写真がありましたので掲載します。


写真について
写真は1984年11月18日から25日までの間に撮影したものです。
記入の撮影場所はおぼろげな記憶にもとづいていますので参考程度です。



< 2.いざヨーロッパへ >

上の写真: アンカレッジ空港。
当時はヨーロッパに行くのにアジア大陸(ロシア)上空を飛べ無かったので、ここに寄り北極海上空を飛んだ。

下の写真: コペンハーゲンの駅。
コペンハーゲンで宿泊したホテルの直ぐ近くにあった。



< 3. コペンハーゲン >

上の写真: コペンハーゲンの河口。
ホテルから4km離れている。

下の写真: 街並み。





< 4. コペンハーゲン >

下の写真: おそらくは宮殿の衛兵の交代前後の行進。




< 5.北欧の郊外 >

おそらくはデンマークかスウェーデンの郊外の集合住宅。





< 6.スウェーデン >

上の写真: おそらくはスウェーデンのガブルの駅構内。
自由に入って撮影。

下の写真: おそらくはストックホルムからガブルへの北上途中。




< 7.ドイツ >

おそらくはニュールンベルグかフランクフルトのバスの車窓から撮影か。







< 8.ニュールンベルグ >

中央に見える円柱の建物はニュールンベルグ旧市街を囲む城壁の正門跡。
この門は旧市街の南東にある。




< 9.ニュールンベルグ >

上の写真: ニュールンベルグのマルクト広場に向かっている。
おそらく遠くに見える二つの尖塔は聖ゼーバルドゥス教会で、その手前に広場がある。

下の写真: おそらくニュールンベルグの通り。
写真を見ると、通りを行きかう人の当時の服装がわかって面白い。


私は初めて、ニュールンベルグでヨーロッパのマルクト広場を見ることになった。
中世の建物や荘厳な教会に囲まれた広い広場、そして溢れる賑やかさに私は興奮した。
時折、今でも当時の新鮮な感動を思い出すことがあります。

そこでは、かって市民が集まり決起する歴史的な事件があったことだろう。
この後、数多くのヨーロッパの都市を訪れ、その歴史に触れる度に胸が熱くなることがある。

私にとって海外旅行は、その都市とそこに生きる人々の葛藤や喜びを感じることが
出来ることです。
そこに立ち、歴史を知ることで、その共感はより深まります。

この都市で大戦後、ニュルンベルク裁判が行われた。
この旧市街が大戦時、連合国軍の空爆で完全に破壊された後の再建だとは当時知らなかった。
他のヨーロッパの旧市街を幾つも訪れたが、人々は諦めることなく、私は素晴らしい再建を行ってことに敬服した。




< 10. フランクフルト >

おそらく帰国時の飛行機からの撮影でしょうか。


これで初めてのヨーロッパ旅行の紹介を終えます。
次回から別の旅行を紹介します。