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今回は、大きな視点からコロナ危機を見ます。
歴史的に見れば、この災厄は古い体質を打破する好機です。
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* ペストと宗教改革 *
人類は誕生以来、病の克服に悪戦苦闘して来た。
病は、人の負の心理に深く作用し、宗教やタブーなどの形成に大きく関わって来た。
そして最悪のペストが、逆に宗教に大打撃を与え社会に転機をもたらした。
ペスト菌による伝染病は14世紀から16世紀にかけて、幾度も猛威を振るい、ヨーロッパの多くの町を全滅させ、全人口の30%以上の命を奪った。
当時、人々はどう対応したのか?
当然、まだ病因が菌だとは知らなかった。
多くは怪しげな行為、毒蛇の肉、香草、便所の悪臭などで避けようとした。
信仰心の篤い人は、これを神の怒りと捉え、身体に鞭打つ行者集団も現れた。
またユダヤ人が毒を撒いたとのデマが流れ、多くが虐殺された。
有効な処置は、発症者の隔離、渡航者の約1ヵ月の隔離、村の通行遮断ぐらいでした。
こうして人々は悲惨な状況が好転しないのを見て、神と教会への信仰に疑いを持ち始めた。
一方、ヨーロッパでは幾つかの要因が引き金となって、聖書を客観的に見る風潮(人文主義)や医学(外科)の萌芽が起きていた。
こうした中、神学者ルターが1517年、ローマ教皇を正面切って批判した。
これが当時、体制に不満を抱いていた農民や諸侯に火を付けた。
農民は一揆を起こし、暴利を貪っていた修道院などを襲い、また諸侯は守旧派(カソリック)の領地を奪った。
こうして百年に及ぶ戦争がヨーロッパに拡大し宗教改革も拡大した。
その結果、キリスト教はプロテスタントとカソリックの二派に分かれた。
プロテスタントの聖書の原点に戻る姿勢は、1500年もの間に巨大で強固になっていた教会制度と信仰形態(ミサ)を拒否し、また皇帝の上に立つ教皇の存在も否定した。
これは人々の意識に大変革をもたらした。
宗教改革後、欧米の人々は、より自由な生き方を求め、さらに理想の政体を求めるようになった。、
これがフランス革命や共産主義思想の誕生などに繋がった。
人々は伝染病に敗れはしたが、何が真実で何が無意味かに気付き、さらなる進歩を手に入れたのです。
一方、日本はどうでしょうか?
実は、日本は大きな変革のチャンスを失ってしまった。
大戦突入と言う大きな失敗に対して真摯に反省しなかった。
問題の要点を例えで説明します。
ブラック企業は勤める人にとっては悪夢ですが、まだ辞める手もあるし、告発することも可能です。
しかし、国の軍事独裁を一端許すと、逃げる手も正す手もありません。
つまり問題は敗戦より、何が独裁化と戦争突入を招いたかを理解することが重要です。
これなくしてはまた悲劇が再来することになる。
私達が力を合わせてコロナ危機を乗り越えた暁には、より良い社会を目指して政治を変えて行きましょう。
次回から、また本来の課題に戻ります。