20121209

何か変ですよ 11 : その根源は何か


 保安院と東京電力

< 保安院と東電 >

前回は社会の硬直化を確認しました。

今回はなぜ硬直化が進行し、改革出来ないかを見ます。


硬直化の始まり

政府が産業を牽引することは、戦後日本のお家芸で、世界から羨望の眼差しで見られた。通産省の長期プロジェクト、農林水産省の保護政策、大蔵省の護送船団方式等はその典型です。

復興期に大いに役立った、この手法も経済発展と国際化で陰りを見せます。護送船団方式などは早々と瓦解しました。過保護が改革のチャンスを奪い、向上意欲を失わせ、結果的に産業を弱体させた。

保護を請うために、政府との癒着を求める力は常に働き、規模が大きいほど強力になります。


なぜ巨大な無駄を生みだす硬直化を止めることが出来ないのか

放置すれば破局がやがて訪れることは帝国崩壊や企業倒産が示しています。
結果が見えているのになぜ行き着くところまで行くのでしょうか。

 東京電力の広告費

< 東京電力の広告費 >

三つの理由 戦後日本について

        巨大化する利権グループ : 巨額の資金と票田がその保持を可能にします。原発で言えば、電気事業連合会は広告宣伝費に毎年800億円を使い、原発世論を誘導することが出来ました。また経産省も外郭団体に教宣を依頼しました。これは国民の電気代や税金からです。農業保護を訴える農協の会員数は1200万人、人口の9%です。経済規模は日本の15%以下です。過去、農村部の一票の価値は大都市の約3~5倍あったので、議員には最重要な票田であった。選挙、議員、官僚、産業・組合、これが循環する形で利権は強固になっていく。

 
        浄化作用が効かない  本来、マスコミが問題を追及し、国民の批判が起こり、政府や議員が動き出すのだが、それが作用していない。この百年間の戦争と原発の推進に関わった新聞は、同じ過ちを繰り返している。

戦後の問題は記者クラブです。これは官僚と報道の談合を意味します。官僚が望むコメントを流すことにより、記者は官僚に取り入り、個別に情報を早く取ることに心血を注ぐことになる。これが匿名報道中心、調査報道でなく速報重視になる理由です。


 検察の暴走

< 検察の暴走 >

例えば今回の小沢氏逮捕、郵政不正事件の村木氏勾留において、検察側の情報で世論を煽り、検察の暴挙を曝けなかった。こうしてマスコミは、官僚や政治家の仲間割れや追落とし、世論操作に利用されている。さらに新聞収入の半分は広告費で、原発のように大手の企業団体から圧力がかかると、原発反対から賛成に回ってしまったのです。

こうして社会問題の真相をスパ抜くことが出来なくなってしまった。

日本のマスコミは官僚・政府に近くなり、一匹狼的な記者や外国報道は蚊帳の外に置かれているのです。

この欠点は世界の報道マンから批判され続け、先進国(特に米国)では排除されています。


原発差し止め裁判のほとんどが敗訴になったことでもわかるように、原告側に立つ有力学者はなく、政府方針に逆らってまで踏み込んだ判決を出す裁判官もいなかった。これも社会の公器の役割を果たしていない。

参考図書 : 「官報複合体」牧野洋著、「ジャーナリズム崩壊」上杉隆著、「検察が危ない」郷原信廊著


次回は、三つ目の理由を見ます。

実はこれが一番曲者です。


















20121208

何か変ですよ 10 : 社会の硬直化


 元保安院の答弁

< 元安全保安院の答弁 >

今回の選挙には色々な争点、TPP、領土、原発、子供、社会保障、経済活性化、赤字財政などがあります。

個々の問題もさることながら、そこには幾つかの根本的な問題が潜んでいます。


一つの根本問題は日本の硬直化です。

社会の硬直化とは不明瞭なものです。

硬直化とは、大きく成長し固定化した組織や制度などが、社会や経済の変化に適応出来なくなった状態を指します。


原発問題に硬直化は端的に現れています。詳しくは「原発問題の深層」にあります。

1.        60年前、原発産業は零から始まり、今やGDPの1%(注1)を占める産業に育った。

2.        高度な技術と莫大な資本が必要で、大企業と政府が牽引する必要がありました。

3.        やがて継続と保護が優先され、自由化や安全、責任などは内輪でもみ消されます。

4.        利権を守る為に産官学と議員達は、自らの言動や教育、マスコミによって世論操作を行います。

5.        国民は、知らずに現状を追認するようになります。

注1、   業界の大きさを、売上げ/GDPで表すのは厳密には正しくない。付加価値が正しい。


この結果、何が起きたのでしょうか?

災害が起きて、実にずさんな安全体制、捏造、隠蔽、癒着が発覚した。

これは一部の利権グループが、他者に犠牲や無駄を押し付けることを意味します。

この非効率さと慣行が日本社会の停滞を推し進めているのです。

 農業保護とTPP反対

< 農業保護とTPP反対 >

ここで重要なことは、この硬直化が社会全体に広がっていることです。

この硬直化が生む弊害とはどのようなものかを農業で見てみましょう。

農業の国内生産高8兆円 GDP比率1.5%、注1)、輸入額7兆円で、農業就業者で46%(内65歳以上61%、兼業農家込み8%)です。ここで国民が農業保護に費やしている額を見ます。直接税金で3.3兆円の農家保障、輸入障壁により2.8兆円(OECD発表、この内関税5000億円)高く買っており、合計61兆円になる。さらに国内生産分も考慮すると、最大合計7.5兆円になるかもしれない、これが毎年の食料自給率向上の代償になります。

 畜産物と飼料穀物

< 畜産物と飼料穀物の関係 >

それでは自給率はどれほど深刻なのでしょうか。日本のカロリーベースの自給率が40%と低いのは食肉用の飼料にトウモロコシ、大豆、小麦を大量に輸入しているからです。実際は、米100%、野菜80、鶏肉70と自給率は高い。図からわかるように、直接安い牛肉や豚肉を輸入し、養殖漁業と果樹栽培を推進すれば自給率は上がる。これを妨げているのも保護政策です。

これで日本の農業が良い方向に向かえば良いのですが。一部に兆しはあっても、全体としては高齢者就業者が多いことでわかるように、保護がチャンスを奪い体力を弱らせているのです。このように保護が、自身の衰退に拍車をかけ、さらに経済全体にブレーキをかけることは、ギリシャの果樹栽培のように世界中に見られます。

このような保護政策による国民負担増、組織の維持費(官庁・農協)、輸入障壁の対抗としての輸出障壁は日本経済を大きく圧迫しています。これらの無駄は他の産業を含めると税収40兆の50%に到達する日は近いでしょう(農業で20%、原発で3%ぐらいでしょうか)。

参考図書 : 「日本は世界5位の農業大国」 浅川芳裕著


なぜこのような硬直化が蔓延するのでしょうか。

次回は、社会の硬直化を温存し、改革出来ない理由を見ます。

















20121206

何か変ですよ 9 : 守るか、変えるか1


 福島原発事故

< 福島原発事故 >

生活を守るのか、生活の悪化を予防するのか。

この視点で、少し日本を見てみましょう。


現状が良いと思われる方は現状維持を望まれるでしょう。

日本の素晴らしい点、誇るべき点は多々あります。

一方、現状に不満を抱いている方や将来を不安視する方は、社会を変えたいと望むでしょう。

両者の心情は尊重されるべきです。

今回は、既に問題が生じ、放置すれば深刻度を増す可能性について記します。


 日本列島 原発地図

< 日本列島の原発 >

原子力政策について

日本列島に配された原子炉はあまりにも危険過ぎます。

よりによって崖や海岸に近いのです、断層断裂や津波の危険性大です。

一基の爆発で損害10兆円、数万人の死・疾病者、数十万人の永久退去、農地放棄が起こる可能性があります。

さらに現時点で放射性廃棄物(ドラム缶85万本と高レベル分)の処理があります。

これを現在の科学技術で無害化することは出来ませんし、瓦礫処理でさえあれだけの反対があるのですから、継続すれば大問題となるでしょう。


それではなぜ原発停止に異を唱え、それに同調する人々がいるのでしょうか。

原発停止の問題点について

A.     事故の発生率は非常に低いから過度に反応し過ぎ : 自然災害の発生率は予測困難ですが、古いものを含む50基稼働では、数十年に一度の発生を否定出来ないのではないでしょうか。一番の問題は、安全神話の嘘で塗り固められて建設されて来たことです。また人災による事故発生は日常茶飯事です。現状のままでは危険極まりない。

B.     折角の原子力技術を捨てるのが惜しい : 人類は多くの危険な技術、時代遅れの産業を捨てて来ました。フロンガス、ロボトミー(脳外科手術)、有害薬品、日本の石炭産業、かつての夢の原子力・放射線技術等。不要な物は捨て、転換を図って来た、遅くなるほど傷は深くなる。

C.     代替エネルギーが未成熟 : 事実です。シェルガス掘削による公害対策、代替エネルギーのコスト低減など、解決すべき問題は多々あります。コストが高いことは資源やエネルギーを多く使用しているのです。早急に育てるべきだが、まだ安心出来ない。

D.    電力価格の高騰 : 計算にごまかしもありますが上昇する。莫大な廃炉・廃棄物処理費用と現在でも高い電力料金の上昇は経済負担を増す。電力自由化などにより改善し、幾分は我慢するしかない。

E.    経済にマイナス : 原発の経済規模、電力会社の原発関連電力は約4.8兆円(内原子力産業発注、約1.5兆)で、GDPの約1%に当たる。また政府は毎年、原発の立地と研究開発費に約4500億円を費やしている。原子力村の経済はこれらによっても支えられている。この産業と労働者、原子力村の転換が必要になる。かつて日本は幾度も産業の交代をこなして来た。これが抵抗の根源であり、政治的な調整、緩和策が必要。

F.     その他もろもろ : エネルギー自給率の低下、地球温暖化防止に逆行、停電による災害、核兵器拡散を招くなども言われています。これらの議論は信憑性に乏しい。


 炭坑争議

< 炭坑争議 >


まとめ

        原発はあまりにも危険なため全停止に向かう : 日本列島は大災害が起こりやすく、狭い国土では起きれば致命症となる。

        但し、転換策を講じる : 代替エネルギーの開発普及に国力を注ぎ、次世代産業を育てる。公害防止器、太陽電池、自動車排ガス防止器などで成功している。産業や労働者、原子力村が転換出来る施策が必要、炭坑廃鉱などで実績あり。移行期間を設ける。






20121205

何か変ですよ8 : 協調か、排他か


 地球

< 地球 >

少し日本と世界の将来を想像してみましょう。

そこから日本の選択すべき道が見えてきます。


将来起こる可能性の高い問題点を幾つか挙げてみます。

        地下資源の枯渇 : 地球全体では、限界が見えて来る一方、新たな埋蔵が発見され微妙にバランスを取っています。
 
        地球温暖化 : 地球全体では30年ほど前からバランスを崩し始めています。気温や大気、森林、天然の水産資源、農耕地は限界に達しました。

        食料不足 : 地球全体では単位面積当たりの収穫量増大で凌いでいます。後は人口増と技術革新とのシーソーゲームです。

        紛争 : 世界は紛争が耐えませんが、上記三つの理由でさらに頻発する可能性が高い。日本は近隣諸国との連携が不首尾な為、いっそう危険です。 

        グローバル化 : ここ半世紀、世界の連携は経済も含めて著しく普及し多様化してきました。その結果、善し悪しがそれぞれ際立って来ました。


 偏在するレアーメタル

< 偏在するレアーメタル >

ここで日本に将来起こる緊急事態を想定してみましょう。

        レアーメタル、小麦、天然ガス、銅等の輸入停止 : 日本は食料の60%、エネルギーの80%、主要金属の100~80%を海外に依存しています。制裁措置などで主要資源国が輸出停止したら、ひとたまりもありません。

        海外で難民、資源価格高騰、紛争が多発 : 地球到る所で、食料・資源・資金・人口が偏在しており、いつそれらを巡って紛争が起き、価格高騰や大量難民が発生するかもしれません。

        武力衝突 : 歴史的には近隣諸国との紛争が繰り返されて来ました。国力の差、憎悪、国内混乱、資源獲得を切っ掛けにして容易に武力衝突へと進みました。


 東アジア

< 東アジア諸国 >

あなたは日本が次のどの道を選択すべきだと考えますか?

A.    自給率100%を目指し、独立自衛を目指す。

B.    広く世界との協調体制を目指す。


Aを選択した場合 : 現実的ではありません。 食料については米食に戻し、贅沢な食材(飼料の高消費)を止め、農業改革と海洋資源開発を行えば、自給率はかなりアップします。しかし他の物は不可能です。現在、穀物の自給可能な国は42ヵ国のみで、陸地の20%以下です。スイスでさえ穀物自給率は51%で、まして地球の資源枯渇が進んでいます。

Bを選択した場合 : 理想的ですが、難門含みです。 ほとんどの低自給率の国は気候と国土の狭さで決まりますので、あらゆる資源を共同で開発し融通していくしかないのです。適切な協力体制と規制を設ければ、市場経済がその役割をある程度担ってくれます。それが貿易協定であり軍事同盟でもあるわけです。

しかし問題もあります。二つの両大戦は軍事同盟の威を借りて起こした側面もあります。また折角築き上げた経済協力体制が急激に崩壊し、戦争を招いたとも言えます。日本もかつて大東亜共栄圏(日本中心の自給自足体制)を掲げ、道を踏み外しました。

確かに経済や軍事の同盟は一朝一夕には行きませんが、いつまでも孤立主義の殻に閉じこもるのは良くない。ただ、一つ言えることは、日本やタイは今から百年以上も前に、大国相手に不平等条約の改正を行った実績があるのです。


最後に

出来るだけ早く近隣諸国との協調体制確立が不可欠です。

人類史を振り返れば、世界や社会はより大きくなっています。









20121204

何か変ですよ7 : 当てにならないエコノミスト


 レーガン大統領

< レーガン大統領 >

On this December 16, there is an important election in Japan.

Therefore, I am writing some report of the election to Japanese readers.

The Japanese report will continue several times.

Thank you for your continued help.




社会科学で最も当てにならないものは経済学でしょう。

流行った多くの経済や予測の本を読んだが、ほとんど外れた。

簡単に注意点を記します。



誤算、とんでも説。

    レーガノミックス : 1981年、米国大統領レーガンは、スタグフレーション(高インフレと経済停滞)から脱却するために、画期的な経済理論を掲げました。素晴らしい理論ほど単純で美しいと、当時もてはやされた。「減税すれば経済は復活する」と簡単なものでした。結果はさんざんでした。莫大な財政赤字が発生し、15年後のクリントンによって、何とか回復することが出来ました。この政策がバブルの要因になった可能性も指摘されています。


 日本のバブル崩壊

< バブル崩壊 >

    バブル崩壊 : 米国は約10年に一度、バブルを経験しています。問題はバブル全盛時のエコノミストの言動です。警鐘を鳴らす人は少数で、さらに彼らは馬鹿扱いされるの通例です。詳しくは「バブルの物語」ガルブレイス著。

エコノミストはなぜか気づかない、高々数年先が見えないのです。バブルが訪れる度に、米国では超富裕層がより豊になっています。同様に世界的に格差が開く傾向にあります。詳しくは「格差はつくられた」クルーグマン著。

勘ぐりたくはないのですが、多数派の経済学者は原発擁護学者と似ています。例えばニューディール政策を批判する学派は、意図的にその効果を貶めようとしています。彼らは当時の経済復活と賃金格差是正に効果をもたらした大規模な政府介入を認めたくないのです。


 投資家ソロス

< 投資家ソロス >

    規制か自由か : アジア通貨危機の元凶で、大儲けしたジョージ・ソロスが言っています。彼が若い頃(1956年~)、米国は金融規制がしっかりしていたが、やがて緩和が進行し、世界恐慌の記憶は薄れていったと記しています。

1997年、彼がタイのバーツを空売りしたのは、金融界の野放図が続けば、誰かがいつかやることになる。それで私は警告の意味で行ったのだ記しています。詳しくは「ソロスは警告する」ソロス著。

大事なことは、規制と緩和は両にらみで舵を取るべきです。

望むと望まないに関わらず世界経済は拡大の趨勢にあり、逸脱行為を規制する為に世界が結束しなければならない。

 
    エコノミストの言説は当てにならない : 日本はかつてのスタグフレーションを自ら解決出来たのでしょうか、違います。また日本が低経済成長に突入することを、高度経済成長期に予測した学者は希少だった。さらに現在の通信情報社会を担うパソコンやインターネットの普及を、兆候が無い時点で予測出来たエコノミストはいなかった。ほとんどの識者は中国の発展が5~10年前に終焉すると明言していた。EUの現在の混乱を、前もって予測出来た人も少なかった。現在、欧米で進行しているインフレと高失業率の併存をどう説明するのか、通常インフレは失業率を低下させる筈です。詳しくは「アニマルスピリット」ジョージ・A・アカロフ著。



結論は以下になります。

    気楽なことを言うエコノミストは眉唾もの。 多くのエコノミストは聴衆を惹きつける為か、何かを擁護する為か、あるいは反対する為に精力を注いでいるように見える。

    経済や金融政策には巧みな調整の継続が重要。 正確に予測出来ない以上、一発逆転は危険です、閣僚の一言で銀行破綻することはあっても。

    一国の閉じた経済で考えない。 世界経済の連携と情報を無視しない。


求められているものは、政府が適切な経済や金融政策が行えるように、私達自身が正しい判断力を身につけることです。

失敗を成功に生かすことが出来る、自浄作用を持つ国会を育成することが私達の子孫に対する責任です。


20121202

何か変ですよ6 : おかしな選挙の争点 1


 消費増税

< 消費増税のアンケート >

現在、日本では、各党首が口角沫を飛ばし夢のような政策を訴えています。

どうせ守れないなら何を言っても良いかもしれませんが。

国民は正しく理解していないと将来後悔することになります。


増税について

良く聞く、胸に突き刺さる警句があります。

「消費増税は景気を後退させる。1997年の消費増税がその例だ。」

これは応えます。これが真実なら、誰でも躊躇しますよね。

これを確認します。増税は必至なので触れません。



経済学の基本から

1.      国が支出(公共投資等)を2兆円増額すると、GDP5倍の10兆円増になります。

2.      国が2兆円減税を行うと、GDP4倍の8兆円増になります。

3.     国が2兆円増税し、その2兆円を支出すると、GDPは2兆円増になります。

この計算式は正しいものですが、係数の限界消費性向C(0<C<1)は0.8を使いました。

教科書的には、Cが変わっても3番の増税と支出増の組合せによるGDP増額は変化しません。

1980~2008年の家計の限界消費性向は0.7~0.8で、一方、公共投資の2001~2005年の限界消費性向は0.33でした(内閣府資料より)。

実はこの二つの値を使って、2兆円増税して公共投資を行った場合を計算すると、GDPはマイナス5兆円になるのです。通常、限界消費性向は同一値を使います。


公共投資の乗数

< 公共投資のGDP乗数、GDPは約500兆円 >

得られる結論はこうです。

        増税分を国民の消費に使うと景気にプラスになる。3番の計算例。

        ただ使い道を誤ると、マイナスになる。例えば借金返済や経済効果の劣る公共投資などです。

国の支出増は明確に景気増大をもたらします。しかし限られた財源で効果の薄い公共投資では借金を増やすだけです。それは過去30年の実績から明白です。なぜそのような見え透いた間違いをするのか、それは既得権益を維持する為だけとしか考えらえません。


 アジア通貨危機

< アジア通貨危機 >

1997年の消費増税は悪の元凶か。

この年の景気を悪くした真犯人は別にいるのでしょうか?

4月に消費税が3%から5%に上昇したが、この年に何が起きたかを見れば分かります。

        この年は巨大倒産が頻発した: 4月から始まる日産生命と三洋証券の倒産は、それぞれの業界で戦後初。北海道拓殖銀行、山一証券の巨額の破綻。

        7月に起きたアジア通貨暴落が経済危機を招いた : 10月には2日間で20円も円高になった。アジア各国の景気後退は、やがて日本の輸出に悪影響を与えた。

これら大型倒産は90年代のバブル崩壊の後遺症でした。アジア通貨危機は米国ヘッジファンドの利食い目的の空売りが始まりでした。

つまり消費増税が景気悪化を招いたのではないのです。

政府が緊縮財政(支出減)と増税を行い、大型倒産と後から通貨危機が襲った不運と言えます。


これで消費増税反対と公共投資復活の問題点が見えたと思います。

御用学者や権益擁護の議員達は、国民を平気で欺きます。

真実を隠し、利用できる些細で都合の良い事実を針小棒大にあげつらいます。

原発事故前後の、東電、原子力学者(ほとんど)や経産省・保安院の言説を思い出してください。

それら学者の著作や言説を鵜呑みにした人々も多くいたはずです。

なぜか彼らは反省や謝罪とは無縁な高貴な人々のようです。

同じ間違いを繰り返すのは止めたいものです。