< 保安院と東電 >
前回は社会の硬直化を確認しました。
今回はなぜ硬直化が進行し、改革出来ないかを見ます。
硬直化の始まり
政府が産業を牽引することは、戦後日本のお家芸で、世界から羨望の眼差しで見られた。通産省の長期プロジェクト、農林水産省の保護政策、大蔵省の護送船団方式等はその典型です。
復興期に大いに役立った、この手法も経済発展と国際化で陰りを見せます。護送船団方式などは早々と瓦解しました。過保護が改革のチャンスを奪い、向上意欲を失わせ、結果的に産業を弱体させた。
保護を請うために、政府との癒着を求める力は常に働き、規模が大きいほど強力になります。
なぜ巨大な無駄を生みだす硬直化を止めることが出来ないのか
放置すれば破局がやがて訪れることは帝国崩壊や企業倒産が示しています。
結果が見えているのになぜ行き着くところまで行くのでしょうか。
< 東京電力の広告費 >
三つの理由 戦後日本について
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巨大化する利権グループ : 巨額の資金と票田がその保持を可能にします。原発で言えば、電気事業連合会は広告宣伝費に毎年800億円を使い、原発世論を誘導することが出来ました。また経産省も外郭団体に教宣を依頼しました。これは国民の電気代や税金からです。農業保護を訴える農協の会員数は1200万人、人口の9%です。経済規模は日本の1.5%以下です。過去、農村部の一票の価値は大都市の約3~5倍あったので、議員には最重要な票田であった。選挙、議員、官僚、産業・組合、これが循環する形で利権は強固になっていく。
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浄化作用が効かない : 本来、マスコミが問題を追及し、国民の批判が起こり、政府や議員が動き出すのだが、それが作用していない。この百年間の戦争と原発の推進に関わった新聞は、同じ過ちを繰り返している。
戦後の問題は記者クラブです。これは官僚と報道の談合を意味します。官僚が望むコメントを流すことにより、記者は官僚に取り入り、個別に情報を早く取ることに心血を注ぐことになる。これが匿名報道中心、調査報道でなく速報重視になる理由です。
< 検察の暴走 >
例えば今回の小沢氏逮捕、郵政不正事件の村木氏勾留において、検察側の情報で世論を煽り、検察の暴挙を曝けなかった。こうしてマスコミは、官僚や政治家の仲間割れや追落とし、世論操作に利用されている。さらに新聞収入の半分は広告費で、原発のように大手の企業団体から圧力がかかると、原発反対から賛成に回ってしまったのです。
こうして社会問題の真相をスパ抜くことが出来なくなってしまった。
日本のマスコミは官僚・政府に近くなり、一匹狼的な記者や外国報道は蚊帳の外に置かれているのです。
この欠点は世界の報道マンから批判され続け、先進国(特に米国)では排除されています。
原発差し止め裁判のほとんどが敗訴になったことでもわかるように、原告側に立つ有力学者はなく、政府方針に逆らってまで踏み込んだ判決を出す裁判官もいなかった。これも社会の公器の役割を果たしていない。
参考図書 : 「官報複合体」牧野洋著、「ジャーナリズム崩壊」上杉隆著、「検察が危ない」郷原信廊著
次回は、三つ目の理由を見ます。
実はこれが一番曲者です。