< 1. 映画の恐怖シーン >
戦争を減らす為には、最も困難な問題をクリアしなければなりません。
< 2. 硫黄島記念碑、米国の星条旗 >
最大の難関、それは恐怖心と愛国心です。
ヒトラーが独裁者に成れたのは、国民の不安と恐怖心に応える形で、極悪非道な敵を指し示し、それを愛国心と圧倒的な軍事力で屈服させ、民族の栄光を取り戻すことを約束したからです。
日本が軍事大国を目指したのは、最初は強大な敵国への恐怖心からで、大陸進出の大きな理由は、防衛策として橋頭堡を造るのが目的でした。
やがて大陸との間に摩擦が生じる度に、互いに愛国心が沸騰し、為政者、知識人、報道もそれを煽るようになった。
それが明治維新から太平洋戦争敗戦への道筋でした。
戦争開始の多くは為政者(軍部)の意向であって、当初は大多数の国民にとって隣国は、敵でも何でもなかった、むしろ個々には友人でもありました。
そのような例はコソボや多くの内戦の国で見られます。
いざ戦端が開かれると、やがて人々は愛国心と復讐心に燃え、国や民族、宗教毎に一丸となって邁進した。
なぜ抑止論に信憑性が無いのか、それは恐怖心と敵意によって合理的な判断が出来なくなるからです(合理的な判断が抑止効果を生む)。
< 3. ライオンの闘争 >
その心理の正体は・・・
皆さんは人間が戦争を望む動物だと思いますか?
動物は進化するほど縄張りを作り闘争するようになりました。
多くは擬闘と呼ばれる、優劣が決まれば弱者が去り、殺さない闘い方です。
しかしチンパンジーと人間だけは、部外者と見なせば団結して相手を全滅させることがあります。
そこでは異常なほどの恐怖心と憎悪が支配しています。
この残忍さと裏腹なのが、身内への強い愛着心と共感で、これは強力な団結力を生みます。
人類はこの相反する習性を強く持っている。
< 4. チンパンジーが共同で威嚇 >
それでは戦争が無くならないのでは・・・
幸い人間は、本能的な他者への恐怖心や敵意を自制することを会得した。
その初期の一例が聖書の「善きサマリア人のたとえ」です。
イエスは、ユダヤ人に嫌われていた隣人(イスラエルの血をひく異教徒サマリア人)をも愛すべきとした。
これが民族の垣根を越え世界へ共感を広げる手助けをした。
仏教や墨家、イスラム教にも狭い愛からより大きな隣人愛を目指す姿勢がある。
これには当時の遠方交易の発展が寄与しました。
< 5. 爆弾三勇士の像、グリコの景品 >
愛国心とは・・・・
社会への愛着心は人間の本源的な感情で、美しく清廉さを感じさせます。
しかし愛国心は、往々にして敵意を増大させ災いをもたらします。
愛国心は、属する社会によって愛着心(帰属意識)がより強化されたものです。
例えば、人々は忠臣蔵や爆弾三勇士などに涙し共鳴し、語り継ぎ、文化として定着します。為政者は概ね愛国心を煽り強化します、国内がまとまり都合が良いからです。
一方、愛国心で一体になる社会規模は時代共に変化しています。
それはより大きな領域を包み、異なる民族や言語集団も吸収していきます。
身近な中国、ベトナム、タイ国内にはそれぞれ30近い民族が同居しています。
欧米もしかりです。
4万年前から1千5百年前までは、日本も多くの民族が流入していたのです。
九州やその離島、沖縄などの人にとって海外交流や移住はごく自然だったのです。
< 6. 能面の般若、嫉妬と恨みの表情 >
私達は、敵意を招く恐怖心や愛国心を乗り越えることが出来るはずです。
次回は、如何に進むべきか、私の提案をまとめます。