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20190706

映画「新聞記者」を見た感想




*1


注目を浴びている映画「新聞記者」を見て来ました。
今まさに日本を覆う暗雲、戦前の体制を思わせる映画でした。
感想を記します。

 
*2


* 始めの感想

期待が大きかっただけに見終わった段階では失望もあった。

・現政権全体の暗部、特にトップとの関わりがほとんど描かれていなかった。
・映像の中に不安を煽るためか、カメラを微かに揺らす映像があり、一部見づらかった
・主役の女性記者を演じるシム・ウンギョンに好感を持たが、少し違和感もあった。

これらを除いては、概ね良く出来ていたように思う。


 
< 3. 映画で暗示されている腐れ縁 >


* しかし、よく考えてみると深みがある映画だと思うようになった

映画では内閣情報調査室の暗躍と新聞記者の正義の戦いが描かれている。
私は、当初、これでは今の政府の暴走を描けていないと思った。

映画は前川元文部科学事務次官、伊藤さん準レイプ事件、加計学園問題を匂わせる事件でのデマ工作、隠蔽、マスコミへの圧力などを丁寧に描く。
その工作部隊が実在の内閣情報調査室で、主役の官僚演じ松坂桃李はその職務で苦悩する。

この映画が描いたのは自らを正当化し暴走し始める政府機関、それと戦う新聞記者には正義感だけしかないと言う現実ではないでしょうか。


* 今思うこと

やはりこの映画を世に出した人々への感謝が一番です。
これだけの政治批判を含む映画を製作興行するには、多くの障害があり、幾多の女優出演拒否、制作や宣伝拒否があったと聞きます。

松坂桃李シム・ウンギョンさんにはさらなる活躍を期待します。
原作者の望月衣塑子の活躍には頭が下がり、感謝しきれません。
日本の政治劣化に正面から取り組んでいるジャーナリストは彼女ぐらいでしょう。



 
*4


* 日本の宿痾

内閣情報調査室長を演じる田中哲司がはまり役なので、どうしても彼だけに目を奪われがちです。
しかし、この手の国民の裏で行われる姑息かつ悪辣な企みは今に始まったことではない。

日本政府は大陸侵攻前、国内の露払いを行った。
白虹事件1918年、治安特別法制定1925年、特別高等検察発足1928年と続いた。
ジャーナリズムと反戦運動弾圧が最初は国民の知らないところで、遂には堂々と行われるようになった。
そして満州事変1931年、起こるべくして起こった。

日本では、ヒトラーのような狂気の独裁者がいなくても、それぞれの組織(軍部、政府、民間)が、あたかも競争するように暴走して行った。
この現象は他の民族でも起こるが日本で顕著です。
これをセクショナリズム、同調圧力、帰属意識などで表現できるでしょう。
実に困った病理です。

現在、内閣情報調査室は170名程の体制だそうです。
これが諜報と世論誘導・攪乱などを行っていることになる。
だが、伊藤さん事件でもみ消しを行った警察官僚中村格(菅官房長官の元秘書官)の存在を考えれば、公安、警察も加担していることにもなる。
さらに小泉政権時の安倍官房長官時代に組織された電凸(電話攻撃部隊)も配下にある。

さらに危険なのは、今は政府のトップ自身が危険なことです。


* 最後に

映画を見終えて周りを見ると、ほとんどが初老の夫婦でした。
若い人はほとんどいなかった。
映画は、金曜日の午後4時から6時頃だったので、無理からぬことかもしれないが。

それにしても高齢の方々が、この手の政治映画を見に来てくれることに意を強くした。
まだ日本には心ある人々がおり、絶望するわけにはいかないと。


終わります。






平成の哀しみ 76: 改革を妨げるもの 11: 欲望の経済政策 3






この100年間の欧米の変化から
米国流の経済政策の問題が見えて来る


 


20世紀初頭、英米は労働者の権利擁護に向かいました。
これが賃金上昇を呼び、格差は世界史上初めて大きく是正された。

ルーズベルト大統領はニューディール政策で賃金上昇を奨励し、恐慌からの復興を成功させた(需要喚起)。
これがその後の欧米の経済政策を方向付け、高い経済成長を遂げた

しかし70年代になると、欧米はインフレと不景気の同時進行に苦しむようになる。
幾つかの要因はあるが、目立ったのは組合の大規模ストライキによる混乱でした。

1980年代、サッチャーとレーガンは賃金上昇が経済低迷の元凶だとし、公共企業体と組合の解体、賃金抑制に転じた。
さらに貨幣供給量を抑制することで劇的にインフレを退治した。

その後、欧米はこの自由主義と金融重視の政策に転換し、今に至る。

自由主義とは、自由放任下の競争で経済を活性化させる立場です。
逆に言えば、権利擁護や公共福祉の為の規制は自由競争を阻害するだけと考えます。

金融重視とは、中央銀行が貨幣供給量を自由に調整出来れば、インフレ退治も景気刺激も可能だとする立場です。


しかし欧米は新たな問題に苦しむことになる。


次に続く






20190705

平成の哀しみ 75: 改革を妨げるもの 10: 欲望の経済政策 2



 
*1

日米を比べると見えるものがある

 
*2

日本の経済政策は米国追従と、米国流の自由放任主義と金融依存が顕著です。

結果が良ければ米国追従でも良いのだが。

半世紀に亘る日本経済の凋落は政府や日銀が度重なる米国の圧力をうまくかわせず、傷口を自ら開いてしまったことにあった。


さらに日本の状況が米国と異なることに注意すべきです。

米国は移民流入により先進国中群を抜いて人口増加率(1%)が高く、経済成長が続く。
しかし日本は唯一減少(0.1%)に加え少子高齢化に突入した。

 
*3
 
*4


世界を席巻するGAFA各社、IT産業は米国から生まれた
しかし日本は家電・自動車に替わる次世代産業を生み出せていない。
また生産性は先進国中ランクを下げる一方です

日本は米国と異なり社会保障支出の大きな政府であり、財政赤字は先進国中群を抜いて大きい。
さらに先進国中、日本だけが勤労者所得を下げ、貯蓄も減り続けている。

つまり米国に比べても重要な成長要因が欠け、負の部分が増大している。



 
*5

さらに米国流の模倣には危険な面がある。

米国は巨大バブルの発信地であり、所得格差拡大でもトップを走る。
今のまま経済政策の物真似を続けていると、米国の悪い面だけが実現するだろう。


次に続く



20190704

平成の哀しみ 74: 改革を妨げるもの 9: 欲望の経済政策 1




  
*1


劣化する経済政策

財務大臣、財務官僚、日銀総裁のほとんどが法科出身。

ノーベル賞の受賞は多いが経済学賞の受賞はない

政策を担う経済学者は竹中氏のように米国経済界に近い人物が多い

この三つが日本の経済政策の貧しさと偏りを象徴している。


欧米の著名経済学者の本に触れると日本の経済学者は格下に思える。

私は、2冊の本「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」と「日本人の勝算」を読んで、その意を強くした。

前者は日本の労働経済専門家2人の執筆だが、分析は現状の追認に過ぎず、追及に深みがなく対策案も無い。
その一方、世界の実績を無視してまで、二つの小論で最低賃金アップを否定していた。
その理由は自由市場崇拝と米国が重視していないからに過ぎない。



 
*2

この本が日本経済新聞「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」で1位なので如何に低レベルかが分かる。




 
*3

後者は日本在住の英国人企業家の著述で、世界118人の論文を基に論を進める。
その追求は理論ではなくデーター、例えば最低賃金アップを行った社会の統計分析から妥当性を確認している。

日本の問題は米国盲従にもあるが、経済データーを分析して効果を議論する姿勢がないことです。


次に続く



20190703

平成の哀しみ 73: 改革を妨げるもの 8: 蔓延る官僚 4






官僚は悪人か




 



国会での官僚は悪人に見えない。
夜遅くまで働き、次官候補から外れたその他大勢は早々と辞めなければならない。

一方、森友や加計学園を見ていると官僚は知らぬ存ぜぬを平気で言う。
最近はニヤニヤと誤魔化すまでになったが。
省庁の書類の隠蔽、廃却、捏造で悪事は限りない。
そして首相を守り通せば立派な天下り先があてがわれる。

また両事件で多くの自民党議員が口利きをしていたことも明らかで、官庁に食い込み甘い汁を吸い続けている。



 


問題は半世紀に及ぶ自民党政権が、官僚の天下り先の確保と膨大な無駄を黙認し、共に寄生して来たことにある。
毎年千五百人ほどの天下り先を確保するために400兆円もの資金が別予算で維持されて来た。

この類を見ない破廉恥さは、個人が悪いと言うよりセクショナリズムが省庁の権益確保に向かわせ、悪事を自覚しない官僚の傲慢さによる。

もし特別会計の無駄を数%でも取り戻せたなら累計100兆円単位で国民に還元出来たかも。
しかし官僚と自民党は口を閉ざし続ける。

前回、改革を目指した野党は官僚の抵抗にあって敗退した。

だからと言って自民党政権が続けば、この放漫財政が終末を早める。


まさに行くも地獄、退くも地獄。


次に続く


20190702

平成の哀しみ 72: 改革を妨げるもの 7: 蔓延る官僚 3







*1


腐敗の極致は国の特別会計


 
*2


特別会計とは

官僚が特定事業を自由に執行
石油税、空港税、年金などが収入
総額400兆円(GDPの7割、一般予算の4倍)
実態を暴けない
官僚と与党議員が財布代わりに使う
数千社(職員150万人以上)の天下り先
世界に例がない


 
*3


何が問題か

官僚は国会審議を経ず毎年200兆円ほどを自由に扱う。
既に紹介した事例や、失敗したグーリンピア、赤字の空港、車が走らない道路の建設などが際限なく行われる。
周囲に瀟洒な公共建物が出来たら、官僚のお陰でまた無駄が増えた・・・
30兆円近くの埋蔵金(余剰)も隠していたが・・・

この端緒は戦時中にあり、連綿と続き拡大してきた。
行政改革が唱えられ、特殊法人の名称を変え統合しても財政規模は変わらない。
官僚の狙いは自分達の天下り先確保が一番。


なぜ続くのか
各省庁の一部官僚が予算を扱うが、特定秘密保護法制定のように現政権はさらに真相解明を妨害している。
官僚は本体の採算を零にし、実務と金を民間に出すことにより行政監査で暴けない。

かつて野党議員が暴こうとしたが刺殺された(民主党石井紘)。

一方、安倍政権と自民党は知らぬ振り。
それは天下り先からの政治献金と協力を失いたくないのと、官僚を従わせる為です。


次に続く



20190701

平成の哀しみ 71: 改革を妨げるもの 6: 蔓延る官僚 2






官僚は何をして来たか


 

振返ります

昭和の時代、官僚は有能な公僕と信じられ、世界からも称賛された。
高度経済成長期は官僚出の首相が活躍した。
通産省などが成長産業を育成した面もあった。


しかし90年代になると、その評価は崩れる。

バブル景気の崩壊後、よくマスコミでバブル崩壊を招いたとして官僚の責任が追及された。

しかしこれには裏がある。
本来このバブルの責任は日銀とそれを焚きつけた自民党政府にありました。
むしろ官僚は困難な火消しに失敗しただけ。
自民党は己の批判を回避するために官僚叩きを煽った。

ご存じの通り、大臣は各省のお飾りに過ぎず、法の立案と国会答弁問答集はすべて官僚が請け負う。
しかし国会に法案が提出される前に、自民党各部会は利権が絡む部分を骨抜きにしてしまう。
従って自民党と官僚は手が切れません。

さらにノーパンしゃぶしゃぶ事件が起きて、大蔵省と金融業界との癒着、過保護が露見した。


こうして国民は官僚への失望を深くした。

これを受けて09年、野党は「脱官僚」を掲げ政権を取った。
野党は公約の財源を官僚の埋蔵金(特別会計)から調達し、官僚の専横を除く行政刷新を企てた。

しかし野党は官僚の造反に完敗した。


次に続く





平成の哀しみ 70: 改革を妨げるもの 5: 蔓延る官僚 1






官僚は国民の味方か


 


経験から

税務署長の着任パーテイーで

新任の若者の浮世離れした抱負と年配経営者の胡麻すりに呆れた。
キャリアの凄さを見せつけられた。


ある業界の組合にて

この組合事務長は威張り、有名な参加企業の社長までが平身低頭でした。
この事務長は通産省からの天下りで、国から業界への補助金を握っている。


ある国営公園にて

ここには日本経済の縮図と言える悪弊が蔓延っている。

少数の第三セクターの職員が多数のボランティア、シルバー、パートを使って日々奮闘している。
その下で働く老若男女はすべて薄給と不安定な雇用に甘んじている。
さりとて職員の中にも非正規がいて、雇い止めに戦々恐々としている。

その頂点の所長は日常業務を部下に任せ、にこやかに暮らしている。
彼は国交省の天下りで巨額の公園予算を握っている。
職員は役立たずの所長の陰口を言い募る。


何が問題か

・ 高給取りはただ一人、大半は最低賃金か零
・ 一人を除いて、多くは不安定で将来が描けない
・ 目的は国交省の予算と見かけだけの目標を達成することで、それ以上も以下でもない


官僚が全国の天下り企業に蔓延り、労働者の低賃金と職場の生産性低下が進み、浪費と無気力が蔓延った。


次に続く

20190629

平成の哀しみ 69: 改革を妨げるもの 4: 無知こそ







国民の無知は亡国を加速させる



 

無知の三原則

自覚が生まれない
選択を誤る
無知は作られる


・ 無知だと現状の問題に気付かない

事例はいくらもある。

職場の問題解決を頼むとしよう。
無知な人は、先ず何が問題か分からないし解決法に至ってはさらに。

無知でも大過なく暮らせる。
しかし無知がゆえに日頃から問題を意識しない。

なぜか

多くは良し悪しの事例を知らず、それが問題になる事も分からない。
つまり自覚が生まれない。


・ 無知だとなぜ選択を誤るのか

先ほどの例で問題点が分かっても、示された解決法の良し悪しが分からない。

日頃から問題を自覚している人なら、過去の事例を考察しており、解決法の良し悪しを把握している。

しかし無知な人は単純で簡単か、突飛な解決法を選び易い。
これは労苦を惜しみ検証する習慣が無いため。


 


・ 無知は天然ではない

偽の為政者にとって国民の無知は最高の救いです。

一昔前の共産圏では自由社会の繁栄や生活ぶりを国民にけっして流さなかった。
かつて宗主国は植民地で教育制度を設け、民衆に自国の言語を教えたが社会意識を高めることを禁じ、分断も図った(愚民教育)。
こうして民衆を手なずけながら働かせた。

実は戦後の日本も同じでした。


次に続く








20190628

平成の哀しみ 68: 改革を妨げるもの 3: 亡国の時 






多くの国が衰退し滅んだ
何が起きていたのか


 

古代エジプト、ルイ王朝、清王朝、大英帝国など無数にある。

自然環境や経済の悪化、侵略が亡国の切っ掛けとして目立つ。

しかし中国王朝の千年間、ほぼ三百年毎で交代していることから別の理由に気付く。
王朝の亡国劇で中心的なのが、王宮での外戚、宦官、官僚、将軍の専横でした。

なぜ王宮内の専横が亡国に繋がるのか。

それは彼らが権力掌握の為に社会・軍事、特に経済制度を己に有利に改悪するからです。

その結果、格差が拡大し戦争が常態化し、特に経済力が著しく堕ちる。
格差と戦争の拡大は大多数の国民の体力・気力・財産を奪った。

制度の改悪が一支配層だけに利益をもたらすようになると、意欲ある新規参入者は無くなり産業交易の刷新が起きず、やがて経済は衰退する。
さらに賄賂(口利き)や買い占めによる値上げ、暴利を求める課税で庶民の暮らしは悪化する。

こうして農民一揆が起こるか外敵の侵攻で滅びる。
つまり3百年は腐敗が蔓延し弱体化する期間でした。

このサイクルが繰り返されて亡国が無数に起きた。

現在は腐敗の進行と周辺国の変化も早いので亡国のスピードは早い。
この亡国の兆候が日本で顕著なのです。


次に続く


20190626

平成の哀しみ 67: 改革を妨げるもの 2: 抵抗する人々 






いつも社会には
改革に抵抗する多数派がいる


抵抗勢力は絶大
             人口割合、抵抗力(推測)
1.既得権益層       10%、最強
2.中流意識層       50%、強
3.古い意識層       40%、強
4.無関心層        40%、?



説明

1.既得権益層
戦後、自民党の政策で恩恵を受け、改革によって立場が悪くなる人々。
自民党議員と支援者、官僚、経済・産業界、資産家、御用マスコミ、御用学者など。

2.中流意識層。
現状維持が無難だと感じる人々。
大手組合員、公務員、自由業など。

3.古い意識層。
男尊女卑や家父長制などを美徳と考える人々。
男性や保守的な人々。

4.無関心層。
政治や社会に無関心で日頃、選挙に行かない人々。
若い世代ほど多く、風潮や煽情により態度を変え易い。

ウヨは危機感を持つが強者の手先になり易い。
ヒトラーは労働者の味方を装いながら中流意識層を満足させ、裏で既得権益層と結託した。
突撃隊(右翼)はナチス拡大の力になった。


 

これでは絶望のようだが光明もある。

既得権益層の以外の人々は、正しく現状を把握出来れば改革に賛成する可能性がある。

なにしろ90%の人の所得と年金が下がり続け、相変わらず50%を占める女性が軽視され、さらに人口減少と少子高齢化が逼迫している現実があるのだから。


次に続く


20190625

平成の哀しみ 66: 改革を妨げるもの 1: はじめに




改革を妨げるものは巨大かつ広範囲に及ぶ



 

日本経済の衰退を止めるには賃金を上げることでした。

しかし事は簡単ではない。

日本の主流経済学で生きる者は、最低賃金上昇は経済を悪化させると反対する。

戦後、経済界と自民党は手を取り合って来たので、互いに旨味を手放し自らを追い込むことはしない。
たとえ他国で成功していようが、頑なに改革は労働者が身を切るべきだとしか言わない。
首相は「富裕者の税金をあげるなんて馬鹿げた政策」とまで言い切る。

国民にしても、「寄らば大樹の陰、会社人間」と自由世界から揶揄されようが、今さら会社から自立して生きられない。


正に進むも地獄、退くも地獄。

あらゆることが幸福先進国から見れば周回遅れで、とてもじゃないが一筋縄では行かない。

当然、日本にも良い所は多々ある。
しかし残念なことに、がむしゃらに働いた高度経済成長期の再来は不可能です。

少子高齢化、人口減、周辺国の経済力台頭が前提条件を変えた。

以前のように労働者が身を粉にして安く造るだけでは世界相手に生き残れない。
当然、一時の円安も気休めに過ぎない。


私達は大転換の必要性と、さらに途轍もない抵抗と障害を覚悟すべきなのです。


次に続く




20190623

平成の哀しみ 65: 日本経済に何が起きているのか 28: 凋落の深層 9






中小企業に鍵がある


 

私の親族に中小企業経営者がいる。
経営者が全神経を企業に注ぎ込む一方、身勝手さにも驚かされる。

日本の産業は大企業と下請け企業の二重構造で両者の待遇差が大きい。
この中小企業の急増は戦後の高度成長期でした。
大企業はこの下請け制度によってコスト競争を生き抜いて来た。


日本とヨーロッパの企業に大きな違いがある。

30年ほど前、北欧の従業員200名程の世界的メーカーを幾つか見ました。
これらの企業は世界に自らの営業所を持ち、またほとんど下請けを持っていなかった。
この職場では労働者が尊重され、日本の統制と画一化の異常さが際立っていた。

日本での従業員酷使は日常的で、従業員にしても家父長制の名残りで従順に過ぎる(ワーカホリック)。


もし高度成長期に最低賃金が高かったなら下請け企業の爆発的な増加はなく、労働者の賃金格差が起こらず先進国並みの水準になったでしょう。

最低賃金制が欧米で始まったのは1910年代だが日本は1959年でした。

多くの中小企業は低賃金が許されたからこそ存続出来たのであり、先進国で稀にみる多さになった。

要は、下請け企業が低生産性・低付加価値でもやって行けたことです。


次に続く



20190622

平成の哀しみ 64: 日本経済に何が起きているのか 27: 凋落の 深層 8







最低賃金を如何にして上げるか



 



以下の事を守りながら最低賃金を上げる

企業に国際競争力と生産性を高める経営刷新を促す
転職する労働者は再教育と生活保障が受けられる
賃金を払えない企業は統合で再生するか廃業も止む無し

戦後、多くの中小企業は大企業の下請けとして頑張り、日本の発展を支えて来た。
しかし、生産性の低さを薄給で凌いで来た中小企業労働者は今後益々低賃金化し、取り返しのつかないことになる。
ここは思い切り、産業構造の転換と生産性向上の為に、中小企業は統合などを含めて規模の拡大を目指すべきです。

経営者には厳しい言い方だが、日本の労働者の多くは既に厳しい状況下に追い込まれている。

しかし希望はある。

北欧では最低賃金を払えない企業や産業は淘汰されるべきとしている。
その為に国政レベルで労使が協議し、産業転換の方向性を決めていく。
当然、退職せざる得ない人々には転職の為の再教育と生活補償を行っている。

日本は遅れているが、このような手本があり幸いです。
労働者の質が高く、企業に充分な内部留保があるこの時期に始めるべきです。

国民は衰退の現実を見極め、惰性ではなく変革出来る政府を選ぶべきです。
手遅れになる前に。


次に続く



20190620

平成の哀しみ 63: 日本経済に何が起きているのか 26: 凋落の深層 7 Posting



*1

政府は経営者を甘やかして来た
これが日本が凋落した理由です


平成になってから政府は、国民によく自己責任を訴えるようになった。
しかし他では恐ろしい程身びいきしていた。

振り返れば、日本が大陸侵攻へと暴走したのは軍人を甘やかしたからでした(関東軍とクーデター首謀者)。
日本の金融が腐ってしまったのは大蔵省による護送船団方式でした。
今また経済界を労働規制の緩和で甘やかし続けている。

日本政府は労働者、ほとんどの国民に実に冷淡。
労働者には甘えるなと叱咤する一方で、経営者には不憫だと便宜を図る。
本当に日本は懲りない、反省しない政府と気付かない国民。

所得も幸福度も高い先進国ほど最低賃金は高い。
北欧は、一括の最低賃金を設けていないが各産業毎に設けている。
さらに見事なことに、条件はあるが移民労働者にもこれを適用し、賃金の低下を防いでいる(日本などはこの真逆)。

しかし最低賃金を一気に上げると、韓国のように混乱が起きるでしょう。
要は改革を促しながら世界水準まで持って行くことです。

日本の労働者の質は世界でトップクラスです。注1

欠けているのは経営者のチャレンジ精神―高付加価値開発と生産性向上の意欲です。注2


次に続く


注1.
日本の「人材の質ランキング」は「World Economic Forum2016」によるとOECD諸国中で第4位。

注2.
日本の「有能な経営者ランキング」は「IMP world Talent Ranking2017」によると世界58位。