20180327

何か変ですよ! 104: 未来の壁 2





*1



日本が先進国から滑落していく大きな理由の一つに性差別があります。
これは人権だけに留まらず日本の経済、環境、平和に大損害をもたらしている。
今日は、根深い「男尊女卑」の悪影響についてみます。


* 日本の代表的な政治家の本音

彼らの本音の発言を見ます。

A: 2003年、太田誠一衆議院議員。
「集団レイプする人は、まだ元気があるからいい。正常に近いんじゃないか」
大学生らによる女子大生集団強姦事件について。

B: 2014年、大西英男議員。
「子どもを産まないとダメだ」
衆議院総務委員会で女性議員が人口減少対策について質疑を行った際、ヤジを飛ばした。

C: 2015年、伊藤祐一郎鹿児島県知事。
「サイン、コサインを女の子に教えて何になる」
高校教育のあり方を議論する会議で。

D: 2001年、石原慎太郎前東京都知事。
「閉経してしまって子供を生む能力がない人間が長生きしているというのは地球にとって非常に悪しき弊害」
週刊誌のインタビューにおいて。

Bを除いて、彼らは立派な経歴を持つ日本を代表する政治家かもしれません。
残念ながら、彼らに共通するのは自民党です。

彼らの本音は日本の性差別そのものです。
これが政府中枢によるレイプ犯見逃しを生んだ。
この醜い本音に支えられている保守政治は日本に何をもたらして来たのか?




< 2. 性差別の日本のランキング? >

これは世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している性差別の指数です。
日本は、世界で最下位から数える方が早い。



* 何が問題なのか?

これは日本の文化だから仕方が無いと思われるかもしれません。
しかし、これがあらゆる面で日本に損害をもたらし、幸福度が年々低下していく大きな理由だとしたら・・。

誰しも未だに男尊女卑が蔓延っていることを感じているはずです。
人口の半数女性が差別の被害者なのですから深刻です
それでも我々は悪化し続ける性差別を放置している。

これこそが第二の未来の壁と言えます。





< 3. 日本の性差別の現状 >

図表1はジェンダー・ギャップ(性差別)の悪化を鮮明に示しています。
さらにアベ内閣の第一次(2006-2007)と第二次(2012-)、この指数は悪化し続けています。
これは単なる偶然ではない。

図表2は、ジェンダー・ギャップ(性差別)は健康や教育でこそ少ないが、経済や政治では劣悪であることを物語っている。

図表3は、男尊女卑の著しい日本と韓国では、女性の管理職の割合が低いことを示す。


* 経済への悪影響

男尊女卑がなぜ経済に悪影響をもたらすのでしょうか?
ポイントは二つあります。

・ 出生率が低下するから。
・ 女性が活躍出来ないから。



< 4. 合計特殊出生率の各国比較 >

この出生率が2.1を切ると人口減少が始まります。
日本の出生率は、欧米(フランス、スウェーデン)に比べて低いだけでなく、一度も上昇することなく長期低下傾向にある。

出生率低下による人口減少が進むと労働人口減と高齢化が起こり、その結果、GDP減少と福祉制度の破綻を招きます(注釈1)
日本の場合、高齢者の大量退職を若年層等でカバーすることになり一時的失業率低下が起こるものの、長期的な労働人口減によるダメージ大きく、これからじわりじわりと経済の凋落を味わうことになる

このため、欧米などは長年、出生率を上げる少子化対策を行い、かつ不足を埋め合わせる移民受け入れによって人口の安定成長を図って来た。
残念ながら、日本はどちらも無策でした。




 5. 北欧と日本の出生率の違いは?? >

日本の少子化対策はやっと始まりました。
保育所の増設、育児休暇などで進展がいくらかあります。
しかし前回の北欧事情で確認したように、日本はまだかなり遅れている。




< 6. 女性の社会進出の比較 >

日本の男女間の賃金と社会進出の差が歴然としています。


日本のように子供を生み育てることは女性の役割と考え、女性だけに負担をかけている限り、出生率は増加しない。
前述の差別発言を繰り返す男性らが支配する保守政治からは育児休暇や保育所の拡充、出産・育児期間中の給与保障の更なる拡充は生まれない。

北欧のように男女が平等に出産・育児を負担し助け合い、社会がバックアップしてこそ、出生率が増えるのです。

しかし、経済の問題はこれだけではない。








< 7. 男女の賃金格差 >

このグラフの数値は、女性の賃金が男性に比べ何%少ないかを示しています。
OECD平均15.6%ですが日本は26.6%です。

もう一つの経済への影響は、賃金格差に代表される労働に対する差別です。
女性の賃金が男性並みになればGDPは確実に上昇する。
また2017年の15歳以上に占める労働力人口比率は男性71%に対して女性51%なので、これを男性並みにするなら、労働力人口が増え、これまたGDPを増加させる。

労働での性差別を減らせば、間違いなく夫婦の収入はアップし、国の経済力もアップする。
その為には、女性の能力を発揮させ、共稼ぎを容易にする政策と企業、地域社会の手助けが必要です。

しかし、これだけではない。


* 環境への悪影響

女性が政治力を持たないから環境が良くならない。

唐突な指摘ですが、2011年3月の福島原発事故に対する世論の男女差を見るとこの理由が分かります。




< 8. 原発に対する世論 >

上の表: 同年4月にギャラップインターナショナルが世界の原発に対する世論を発表した。

この表から、当事国の日本を除いて、女性の社会進出が高い国ほど原発反対の世論が高いことがわかる(バラつきはマスコミのせいか)。
逆に、男尊女卑の著しい韓国と日本は事故前、大きく原発賛成になっている(日本はマスコミのせいも)。

下の表: 2012年の朝日新聞の世論調査結果です。

事故後1年の時点で、原発再開について圧倒的に女性の反対が多い。

これから、女性は環境の安全を経済より優先することが分かります。
これは万国共通なのです。
そして、日本など男尊女卑の国では女性の政治力や発言力が低いゆえに、女性の思いが政治に生かされないのです。

これが平和や育児・介護の問題に至るまで、日本を後進国並みに貶める大きな理由になっているのです。



* 現在のアベ政権を支えるもの



< 9. 内閣支持率 >

上のグラフ: 2015年の男女別の政党支持率。
一番左のピンクが自民党支持、右の青は支持政党なし。

自民党支持は男性40.8%で、女性29.2%でした。


下の表: 2017年7月のアベ内閣支持率。
この頃、加計学園問題で国会が紛糾し、支持率が急降下した時期です。

ここでもアベ政権支持は男性が高く、若い層に多い。
女性の支持は男性よりやや低く、50代の女性で特に低く、不支持が支持を上回る状況(赤地に白字)が早く起きている。

女性の方が、男性に比べ安全(原発、戦争)や腐敗に敏感で、経済的な妥協(損得勘定)を行わない傾向がある。
これが男性の欠点を補うのです。

女性が戦争を終結させる設定は、古代ギリシャ喜劇「女の平和」に出てくるが、これを実践したのがアフリカ最初のリベリアの女性大統領(ノーベル平和賞)でした。

つまり女性の政治参加は人類社会に不可欠なのです。


* 今がチャンス!



< 10. 投票率 >

現在、日本は政治不信に陥り投票率は低下する一方です(世界的傾向)。
これが自民党の本来の指示割合よりも多くの議席数を得ることを許し、現在の歪な政治状況を生んでしまっている(選挙制度の影響も)。

しかし、これがチャンスと言える。
男女の投票率の差はほとんど無く、女性の政治意識は高い。
しかし、支持政党が定まらず迷いがある。

ここで女性が立ち上がり、環境、平和、男女平等の視点で政党を選び投票すれば、投票率の低い今こそ、存分に女性の意見が議席に反映されることになる。
そうすれば、日本の政治史上、初めて幸福先進国並みになる道筋が付くことになる。


終わります。


注釈1.
2005年の総人口に占める生産年齢人口(15~64才)率が66%で、今後、出生率が減り、寿命が伸びると将来どうなるでしょうか。
2055年には総人口が13000万人から9000万人に減り(31%減)、生産年齢人口は51%に減ると予想される。
この間、生産年齢人口の全員が働き、同じ生産性だとして、GDPは46%減ることになる(実際の労働人口は多少増減する)。

さらに、この減った労働者人口で残りの人口を養うことになるので、福祉政策は行き詰ることになる。



20180325

何か変ですよ! 103: 未来の壁 1


 

< 1. 成長を支える?? >


このまま行けば、いつか日本は幸福な国々から取り残される。
我々はなぜ取り残されてしまうのだろうか。
これから、「我々の何が幸福を遠ざけてしまうのか?」を見て行きます。
今日は「働く」ことについて。


* はじめに

最近、日本の労働観をよく示す事件がありました。


 

< 2. トンでいる自民党の労働観 >

2018年3月13日、参院予算委員会の公聴会で自民党議員が、「東京過労死を考える家族の会代表」の公述人に、キツイ一発を放ちました。

「働き方改革をめぐる議論を聞いていると、『働くことが悪いこと』のように聞こえる、『週休7日が人間にとって幸せなのか』と述べた」注釈1.

これに対して、2008年にワタミ子会社で過労死した娘さんの両親が、彼は「何の反省もしていなかったとしか思えません」などとするコメントを発表した。

彼とは「ワタミ」創業者の渡邉美樹です。
彼は後に謝罪し、議事録からこの発言は抹消された。


 

< 3. 2016年の最悪社長 >

彼は立身出世の花形としてもてはやされたが、ブラック企業の代表としても広く知られている。
政治の世界では、橋下やアベらは彼を「時代を切り開く経営手腕を持つ逸材」と高く買った。
彼はアベ内閣で教育再生会議委員を拝命した。


おそらく国民の大半は、この一連の渡邉(橋下、アベ)の姿勢に不快感をもたないだろう。
この事実が、日本の壁の一つなのです。



* 周回遅れの労働観

気が付いて欲しいポイント。

A: 働く目的は何か?

B: 幸福先進国の労働時間と休暇は?


国民は未だに高度経済成長期の思い出に浸っており、政府はそれにかこつけ、古い労働観を鼓舞することで経済の発展を狙っている。
これは幸福先進国から見れば、周回遅れと断じることが出来る。



* 働く目的は何か?

団塊の世代に聞けば、ある人は「会社で働き甲斐を持ってて幸せだった」と語るだろう。
一方で「ワーカホリックを自認して会社に尽くしたが・・」と空しさを感じている人もいるだろう。
確かに団塊の世代からその親の世代は戦後の経済成長を支えた人々でした。

20世紀初頭、米国の労働者もよく家族の為に身を粉にして働いたそうです(ある経営者の米国視察記より)。
実は、逆に戦前、日本の労働者は転職を繰り返し、組合を結成しストにも参加した(倒産が多かったことも)。

働き方は時代と共に変わるのです。

唐突ですが、皆さんは遥か昔の方がよく働いていたと思いますか?
100年前まで世界各地の先住民は、その生活スタイルを少なくとも数百年は保持していた。
彼らは自然を相手に、毎日に働き詰めだったでしょうか?
人類学者の観察では、そうではありませんでした。
多くの狩猟採集民は、おそらく1日平均数時間も働くことはない。
彼らはのんびりと仲間とお喋りを楽しむのが日課なのです。

「企業で身を粉にして働くことこそが人生の最大の喜びである」と考えたのは、日本でもほんの一時の減少に過ぎないのです。
今の若い人には、これは古い説教としか聞こえないでしょう。
幸福先進国の人も、これを異常と見るでしょう。

ここで視点を変えて、時代背景を見てみましょう。



* ここ半世紀の日本の労働観を支えたもの

なぜ日本の政財界は「労働者は企業に身を捧げるべき」に固辞するのでしょうか?
これを簡単に説明します。

戦後の高度経済成長にあって人材を確保する為に、企業は従業員の福利厚生や退職金制度の拡充が不可欠でした。
これは成功し、日本の組織文化とも合致し企業と従業員は一体となり、大躍進を遂げた。

しかし、日本政府はプラザ合意(1985年)による円高で輸出に頼らない内需拡大を目指さざるを得なくなった(注釈1)。
この為に大幅な金融緩和を行ったが、これが途方もないバブル崩壊(住専破綻)を招き、これにより日本経済は長期衰退を余儀なくされた。

一方1980年代から、欧米は自由放任経済を目指し始め、労働組合つぶしが波及し、政府は経済活性化のために益々企業優先に舵をきります。

こうして、政府は首切りが容易で低賃金が可能な非正規雇用の普及、そして退職金の企業負担を軽減すべく確定拠出年金への転換など、労働の低コスト化を推し進めた(良い意図も一部にはある)。
しかし不思議なことに国民は我慢し続けた。

つまり、政財界は賃金、退職金、待遇などすべて切り下げておきながら、相変わらず全身全霊で会社に尽くせと労働者に押し付けているのです。
これが冒頭の渡邉自民党議員の発言になったのです。

実に、ばかばかしい偽善と言わざるを得ない。

当然、仕事に生きがいを持つことが悪いのではなく、本来、会社以外や家族にいくらでも楽しみや生きがいはあるのです。
しかし、中々生きがいを見つけられない人が多いのではないでしょうか?

ヒントは海外にあります。



* 幸福先進国と比較する

単純に、日本は遅れています。
日本の労働者は先進国と比べれば、時間当たりの収入が少なく、長時間労働で休暇も取れない。


 

< 4. 労働生産性の比較 >

労働生産性=GDP(購買力平価で換算)/就業者数
日本はOECD35ヵ国中22位で74315ドル(783万円、給与ではない)。
世界155ヵ国中なら32位となる。
ちなみにドイツは12位で95921ドルで日本より29%多い。



 

< 5. 年間労働時間の比較 >

日本の年間労働時間はOECD35ヵ国中、短い方から22位でした。
日本では長く働いている割りに収入が少ない。

別の資料から労働1時間当たりのGDPの多い国と日本を比較します。
上位3位のノルウェーは日本の2倍、5位米国1.6倍、6位フランス、7位ドイツ、8位オランダ、9位デンマークは1.5倍です。


 

< 6. 有給休暇も取れない >

日本の取得率は50%未満で9日しか過ぎない。


この冴えない日本の労働実体はさらに低下傾向にあります。



* 北欧と比べます



現在、スウェーデンをはじめとする北欧で1日6時間制が進んでいます。
現在、デンマーク人の労働時間は平均33時間になっている。

スウェーデンを中心に見ます。
若年失業者の為に、IT、医療、バイオ分野のスキル取得のプログラムが多数用意され、無料で受講できる。
また失業者に失業前賃金の80%が200日間給付される仕組みもある。

育児中、子供一人につき、父母それぞれ240日、両親で合計480日の育児休暇が取得出来る。
男性も取得するようになって来た。
育児休暇取得期間中は社会保険庁より所得の80%が保障され、さらに企業によって上乗せがあります。

一般的なスウェーデン人は年に33日の有給休暇をとっている。
スウェーデン国民で残業をしているのはたった1%しかいないという。



 

< 7.スウェーデンの帰宅後、参考 >

私が1984年に北欧(スウェーデン、デンマーク)の企業を視察した時、一番驚いたのは、定時の終了時間が来ると従業員は皆直ぐに帰宅したことです。

直接、従業員に聞いた話では、皆は真っすぐ家に帰り、夫婦や家族で過ごすと言う。
楽しみを聞くと、我が家を建てている人もいるとのことでした。


 

< 8. 職場の雰囲気、参考 >

製造工場でさえ日本のような制服はなく、流れ作業は既に廃止していた。
これは作業者の労働意欲を高める為だと管理者が言っていた。

本によると、ノルウェーでは16時頃から夕食をとり、夜7時、8時頃に夜食として簡単なサンドイッチを食べる。
夕食と夜食の間の時間に、散歩に出かけたり、冬にはクロスカントリースキーを楽しむ者も多い。


 

< 9. クロスカントリースキー、参考 >


* まとめ

結論は、日本の労働環境や労働政策、労働の文化は前世紀の遺物です。
そろそろ本来の生き方に目覚めるべきです。

国民は、経済の低迷を理由にこき使われる愚から脱するべきです。
答えは30ヵ国以上の幸福先進国にあります。

私は典型的な仕事人間であり、会社を好きにはなれなかったが技術者として誇りを持つことが出来た。
しかし、定年の10年前ほどに父が他界したの機に、北欧の暮らしぶりを見ていたこともあり、定年後の生きがいを模索し始めた。
そして定年退職後は毎日、目標に向かって励み、旅行を楽しみ、充実した人生を送っています。



終わります。



注釈1.
米国はドル高を嫌い、主要貿易相手国に協力を迫り、日本は円高の協調介入で協力した。
これにより円高が急速に進み、日本経済を急速に低下させ、大幅な金融緩和と公共投資を行わざるを得なかった。
これが最近までの日本経済落ち込みの転換点でした。