< 1. 成長を支える?? >
このまま行けば、いつか日本は幸福な国々から取り残される。
我々はなぜ取り残されてしまうのだろうか。
これから、「我々の何が幸福を遠ざけてしまうのか?」を見て行きます。
今日は「働く」ことについて。
* はじめに
最近、日本の労働観をよく示す事件がありました。
< 2. トンでいる自民党の労働観 >
2018年3月13日、参院予算委員会の公聴会で自民党議員が、「東京過労死を考える家族の会代表」の公述人に、キツイ一発を放ちました。
「働き方改革をめぐる議論を聞いていると、『働くことが悪いこと』のように聞こえる、『週休7日が人間にとって幸せなのか』と述べた」注釈1.
これに対して、2008年にワタミ子会社で過労死した娘さんの両親が、彼は「何の反省もしていなかったとしか思えません」などとするコメントを発表した。
彼とは「ワタミ」創業者の渡邉美樹です。
彼は後に謝罪し、議事録からこの発言は抹消された。
< 3. 2016年の最悪社長 >
彼は立身出世の花形としてもてはやされたが、ブラック企業の代表としても広く知られている。
政治の世界では、橋下やアベらは彼を「時代を切り開く経営手腕を持つ逸材」と高く買った。
彼はアベ内閣で教育再生会議委員を拝命した。
おそらく国民の大半は、この一連の渡邉(橋下、アベ)の姿勢に不快感をもたないだろう。
この事実が、日本の壁の一つなのです。
* 周回遅れの労働観
気が付いて欲しいポイント。
A: 働く目的は何か?
B: 幸福先進国の労働時間と休暇は?
国民は未だに高度経済成長期の思い出に浸っており、政府はそれにかこつけ、古い労働観を鼓舞することで経済の発展を狙っている。
これは幸福先進国から見れば、周回遅れと断じることが出来る。
* 働く目的は何か?
団塊の世代に聞けば、ある人は「会社で働き甲斐を持ってて幸せだった」と語るだろう。
一方で「ワーカホリックを自認して会社に尽くしたが・・」と空しさを感じている人もいるだろう。
確かに団塊の世代からその親の世代は戦後の経済成長を支えた人々でした。
20世紀初頭、米国の労働者もよく家族の為に身を粉にして働いたそうです(ある経営者の米国視察記より)。
実は、逆に戦前、日本の労働者は転職を繰り返し、組合を結成しストにも参加した(倒産が多かったことも)。
働き方は時代と共に変わるのです。
唐突ですが、皆さんは遥か昔の方がよく働いていたと思いますか?
100年前まで世界各地の先住民は、その生活スタイルを少なくとも数百年は保持していた。
彼らは自然を相手に、毎日に働き詰めだったでしょうか?
人類学者の観察では、そうではありませんでした。
多くの狩猟採集民は、おそらく1日平均数時間も働くことはない。
彼らはのんびりと仲間とお喋りを楽しむのが日課なのです。
「企業で身を粉にして働くことこそが人生の最大の喜びである」と考えたのは、日本でもほんの一時の減少に過ぎないのです。
今の若い人には、これは古い説教としか聞こえないでしょう。
幸福先進国の人も、これを異常と見るでしょう。
ここで視点を変えて、時代背景を見てみましょう。
* ここ半世紀の日本の労働観を支えたもの
なぜ日本の政財界は「労働者は企業に身を捧げるべき」に固辞するのでしょうか?
これを簡単に説明します。
戦後の高度経済成長にあって人材を確保する為に、企業は従業員の福利厚生や退職金制度の拡充が不可欠でした。
これは成功し、日本の組織文化とも合致し企業と従業員は一体となり、大躍進を遂げた。
しかし、日本政府はプラザ合意(1985年)による円高で輸出に頼らない内需拡大を目指さざるを得なくなった(注釈1)。
この為に大幅な金融緩和を行ったが、これが途方もないバブル崩壊(住専破綻)を招き、これにより日本経済は長期衰退を余儀なくされた。
一方1980年代から、欧米は自由放任経済を目指し始め、労働組合つぶしが波及し、政府は経済活性化のために益々企業優先に舵をきります。
こうして、政府は首切りが容易で低賃金が可能な非正規雇用の普及、そして退職金の企業負担を軽減すべく確定拠出年金への転換など、労働の低コスト化を推し進めた(良い意図も一部にはある)。
しかし不思議なことに国民は我慢し続けた。
つまり、政財界は賃金、退職金、待遇などすべて切り下げておきながら、相変わらず全身全霊で会社に尽くせと労働者に押し付けているのです。
これが冒頭の渡邉自民党議員の発言になったのです。
実に、ばかばかしい偽善と言わざるを得ない。
当然、仕事に生きがいを持つことが悪いのではなく、本来、会社以外や家族にいくらでも楽しみや生きがいはあるのです。
しかし、中々生きがいを見つけられない人が多いのではないでしょうか?
ヒントは海外にあります。
* 幸福先進国と比較する
単純に、日本は遅れています。
日本の労働者は先進国と比べれば、時間当たりの収入が少なく、長時間労働で休暇も取れない。
< 4. 労働生産性の比較 >
労働生産性=GDP(購買力平価で換算)/就業者数
日本はOECD35ヵ国中22位で74315ドル(783万円、給与ではない)。
世界155ヵ国中なら32位となる。
ちなみにドイツは12位で95921ドルで日本より29%多い。
< 5. 年間労働時間の比較 >
日本の年間労働時間はOECD35ヵ国中、短い方から22位でした。
日本では長く働いている割りに収入が少ない。
別の資料から労働1時間当たりのGDPの多い国と日本を比較します。
上位3位のノルウェーは日本の2倍、5位米国1.6倍、6位フランス、7位ドイツ、8位オランダ、9位デンマークは1.5倍です。
< 6. 有給休暇も取れない >
日本の取得率は50%未満で9日しか過ぎない。
この冴えない日本の労働実体はさらに低下傾向にあります。
* 北欧と比べます
現在、スウェーデンをはじめとする北欧で1日6時間制が進んでいます。
現在、デンマーク人の労働時間は平均33時間になっている。
スウェーデンを中心に見ます。
若年失業者の為に、IT、医療、バイオ分野のスキル取得のプログラムが多数用意され、無料で受講できる。
また失業者に失業前賃金の80%が200日間給付される仕組みもある。
育児中、子供一人につき、父母それぞれ240日、両親で合計480日の育児休暇が取得出来る。
男性も取得するようになって来た。
育児休暇取得期間中は社会保険庁より所得の80%が保障され、さらに企業によって上乗せがあります。
一般的なスウェーデン人は年に33日の有給休暇をとっている。
スウェーデン国民で残業をしているのはたった1%しかいないという。
< 7.スウェーデンの帰宅後、参考 >
私が1984年に北欧(スウェーデン、デンマーク)の企業を視察した時、一番驚いたのは、定時の終了時間が来ると従業員は皆直ぐに帰宅したことです。
直接、従業員に聞いた話では、皆は真っすぐ家に帰り、夫婦や家族で過ごすと言う。
楽しみを聞くと、我が家を建てている人もいるとのことでした。
< 8. 職場の雰囲気、参考 >
製造工場でさえ日本のような制服はなく、流れ作業は既に廃止していた。
これは作業者の労働意欲を高める為だと管理者が言っていた。
本によると、ノルウェーでは16時頃から夕食をとり、夜7時、8時頃に夜食として簡単なサンドイッチを食べる。
夕食と夜食の間の時間に、散歩に出かけたり、冬にはクロスカントリースキーを楽しむ者も多い。
< 9. クロスカントリースキー、参考 >
* まとめ
結論は、日本の労働環境や労働政策、労働の文化は前世紀の遺物です。
そろそろ本来の生き方に目覚めるべきです。
国民は、経済の低迷を理由にこき使われる愚から脱するべきです。
答えは30ヵ国以上の幸福先進国にあります。
私は典型的な仕事人間であり、会社を好きにはなれなかったが技術者として誇りを持つことが出来た。
しかし、定年の10年前ほどに父が他界したの機に、北欧の暮らしぶりを見ていたこともあり、定年後の生きがいを模索し始めた。
そして定年退職後は毎日、目標に向かって励み、旅行を楽しみ、充実した人生を送っています。
終わります。
注釈1.
米国はドル高を嫌い、主要貿易相手国に協力を迫り、日本は円高の協調介入で協力した。
これにより円高が急速に進み、日本経済を急速に低下させ、大幅な金融緩和と公共投資を行わざるを得なかった。
これが最近までの日本経済落ち込みの転換点でした。
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