20171103

フランスを巡って 43: シャンポール城に向かう






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今日は、同じロワール地方にあるシャンポール城までの車窓の景色を紹介します。
走ったのは、2017年5月25日(木)の午後でした。


 
< 2.地図、上が北 >

バスがシュノンソー城を出発したのは13:20頃で、シャンポール城に到着したのは16:30でした。
この時も快晴で、雲一つなかった。
地図の青線は走行ルートを示しますが、この道を通過したかは確信がありません。
ただロワール川沿いを走ったことは確かです。

以下の写真のほとんど撮影順に並んでいますが、数枚は異なります。



 
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< 4. ロワール川 >

フランスの幾つかの大河沿いを走ったが、セメントでの護岸工事がなされていないことに感心した。
それは都市周辺でも変わらない。
そして河原の自然の緑が至る所、憩いの場となっていた。
 
なだらか地形がこの川の風景を許すのか、おそらく生活を楽しむ人々の思いが、この景観を守り育ているのだろう。
フランスの経済は良くはないが、国民はそれを凌ぐ生活の場を得ており羨ましい気がする。


 
< 5. ロワール川沿いの城 >



 
< 6. ロワール川沿いでサイクリングを楽しむ人々 >


 
< 7. 乗馬を楽しむ人々 >


 
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次回に続きます。




20171102

何か変ですよ! 81:  何が問題か? 4









 
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前回、日本の賃金が下がり続けている状況を知りました。
その一方、企業は空前の利益を上げ続けています。
それでは企業の好業績は私達に恵みをもたらすのでしょうか?


豊かになった企業は日本経済を救うのか?
政府は大企業が儲けなければ、庶民に恩恵が行かないと言う
今後、企業が賃金を上げ、設備投資をしてくれればそうなるのだが。
この可能性を調べてみましょう。







 

< 2. 豊かになった企業がしていること >


上のグラフ: 東洋経済 山田記者のグラフ。

労働分配率が長期低下傾向にあり、さらにリーマンショック後も低下し続けている。
こうして企業は労働分配率(付加価値に占める賃金)を下げ続ける一方で、内部留保を長期にわたり積み上げている。
もっともこの内部留保が設備投資に向かえば日本経済は浮上するのだが・・・・
そこで下のグラフを見てください。

下のグラフ: 日本政策投資銀行 田中氏のグラフ。
これは民間企業の設備投資額のGDPに占める割合を示している。
一目瞭然だが、企業は内部留保(資金)が潤沢にあるにも関わらず、設備投資を抑えている。
これでは生産性向上は見込めない(設備投資だけが生産性の要素ではありませんが)。

これでは踏んだり蹴ったりだ!


それでは企業のあり余った資金は何処に向かっているのか?




 

< 3. 企業が目指していること >

上のグラフ: 日本政策投資銀行 田中氏のグラフ。
これは企業家が抱く期待成長率と設備投資の関係を示す。

このグラフは、設備投資が少ないのは企業家マインドの冷え込みに起因していることを示している。

政府は声高に法人減税は景気浮揚策と説くが、どうだろうか。
米財務長官時、ポール・オニールは「まともな経営者は法人税が減税されたからと言って、むやみに設備投資を行わない。」とブッシュに進言していた。
企業や富裕層への大減税は米国のレーガンや子ブッシュの例が示すように、概ね赤字を増やしただけでした。
だがこの手の減税は米国主導により先進国は安売り競争の状態に陥っている。


下のグラフ: 内閣府の国民経済計算(GDP統計)より。
これは設備投資と財貨の輸出、海外からの所得の推移を示している。
このグラフから日本経済の成熟度、悪く言えば衰退の始まりが見える。

設備投資(青線)は横這いなのに、海外に資金(赤線)がドンドン流れ、そして海外に蓄積された資金のもたらす利益(灰色)がドンドン還流し、その傾向が益々強まっている様子が分かる。
(但し、このグラフの資金は家計と企業の分を含んでいる)

この状況を肯定するエコノミストもいるが、これが続けば企業は国内ではなく海外に投資し続けることになり、やがて国内産業が衰退することになる。
実は、これは19世紀、英国が衰退した状況と似ている。

しかし政府は意欲の萎えた企業に法人減税や公共投資、金融緩和で大量のカンフル剤(通貨供給)を大量投与し続けて来た。
一方で、消費者には消費増税、賃金低下、非正規雇用、低金利、円安(生活用品高)で負荷をかける一方です。

この結果、労働者減とも重なり消費が増えず、膨大な資金は実需に繋がらず、巨大な投機資金となって世界を駆け巡り、いずれどこかでバブル崩壊が起こり、金融危機が繰り返される。
こうして、軒並み先進国は膨大な累積赤字を積み上げ、破綻の道を進むことになる。


最後に日本経済を俯瞰してみましょう



 

< 4.GDPと消費と賃金の推移、内閣府の国民経済計算(GDP統計)より >

このグラフは、企業が所得と内部留保を増やす一方で、労働者が賃金低下によって貯蓄分を減らすことで消費を続けている状況を反映している。
この間、家計の貯蓄の伸び率はドンドン低下している。

国内総生産の半分を占める家計消費が伸びなければ、国内総生産は伸びず、経済成長はあり得ない。
さらに低調な設備投資が足を引っ張る。
21年間で賃金が10%低下するなかで、国民は家計消費を6%増やしたが、国内総生産は2%低下した。

皆さんは、何が問題なのかが見えて来たでしょうか?


まとめ
上記の説明は大雑把な説明ですが、大まかに日本が何をして来たか、そして何を重視し何を放置して来たかがわかったと思います。

今の状況を作りだしている三つの政治経済の潮流とは何か?
A: 1980年代からの米国主導による自由放任主義経済の潮流
B: ここ半世紀の与党の企業優先の政治の潮流
C: 2013年からのアベノミクスの潮流

今の日本の経済状況は、上記三つの潮流が合流したものですが、結局、この三つは米国の圧力(構造改革要求、プラザ合意など)と米国主導による自由放任主義経済で繋がっています。

日本国民としては、「先ずは企業が豊かになり、やがてトリクルダウンの恩恵を受ける」と言う政府の言葉を信じたいでしょう。
しかし、米国と日本の過去40年間の実績から、今後もバブルが繰り返され、賃金低下と所得格差の悪化は必然です。


私達は疑いの目を持ち、自ら検証する姿勢を捨てるべきではありません

次回に続きます。








20171101

何か変ですよ! 80:  何が問題か? 3







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前回、日本の失業率低下と賃金上昇の背景を見ました。
しかし、何らかの天井が賃金の上昇を遮っているようでした。
また、今回の景気好転には手放しで喜べない事情があります。


はじめに
前回、今回の失業率低下と賃金上昇はアベノミクスの効果と断定出来ないことを見ました。
また、この二つの指標は単に景気好転で決まるものでないことも見ました。

これから日本の経済状況を規定している三つの政治経済の潮流と、賃金の
上昇を抑えている正体を明らかにします。


景気好転の切っ掛け
前回のNo4のグラフから、失業率は2009年で、就業者数は2010年で底を打ち、その後上昇を始めました。
所定内給与は2010と2011年に上昇したが、2012と2013年に一度低下し、その後また上昇しています。
この背景を簡単に確認します。


 

< 2. 日本の輸出・輸入額の推移、日本貿易会HPより >

グラフ中の番号⑧で示すように、2010年にはリーマンショック後の景気回復が世界的に進んだことにより、貿易が急伸した。
しかし⑨で示すように、2011年から2012年にかけてはEUの金融危機と東北大震災で輸出が減り、金融危機回避による円安と復興需要で輸入額が急増した。

つまり、アベノミクスの効果を否定出来ないが、大きな流れとしては株価上昇や円安と同様に世界経済の立ち直り時期と一致したことが一番でしょう。

しかし実はこれが大きな不安要因でもあるのです。
今回の景気回復は、リ―マンショック後の米欧中による歴史的な巨額の貨幣供給が呼び水となっており、実体経済の10倍を越える資金が投機の為に世界中を駆け巡っています。

おそらく1~3年以内にバブルが破裂し、世界はより深い金融危機に見舞われ、日本は巨大な金融緩和の反動で今までにない倒産規模と大量の失業に見舞われるでしょう。
こうして、次のグラフ「賃金と企業所得の推移」の青の直線の延長が暗示するように労働者の賃金は更に低下することになる。
このことは、過去40年間の米国の所得の推移からも明白です。
この間のメカニズムは連載「日本の問題、世界の問題」で説明しています。

この世界的な不安要因は、三つの内で最も大きな政治経済の潮流、自由放任主義経済がもたらしたものです。



なぜ日本の賃金は天井につかえてしまったのか?
世界経済が好調で、欧米の中央銀行が金融緩和からの出口戦略を取り始めたと言うのに、日本の賃金はなぜほんの少ししか上がらないのだろうか?

何が災いしているのだろうか?
労働者の働きが悪いのか、それとも経営者の財布の口が閉まったままのか?


 

< 3. 日本の賃金はなぜ下がるのか? >

上のグラフ: みずほ総合研究所高田氏のグラフ。
日本と米国、ドイツの賃金の伸び率とその寄与度がわかる。

日本の賃金の伸び率は、2005~2010年に下降から上昇に転じたが、微々たるものです。
米独と大きく異なるのはインフレへの期待が低いことで、これはデフレだから当然です。
かつて世界に誇った日本の労働生産性は低下の一途で、これが問題です。
さらに2010~15年に関しては、労働分配率の低下が賃金を抑制している。


下のグラフ: 内閣府の国民経済計算(GDP統計)より。
左軸は賃金、右軸は民間企業の所得で、単位は共に10億円です。

このグラフから、国民の賃金はバブル崩壊の度に下がり続け、長期低下傾向にあることがわかる。
青の直線は賃金の線形近似で、概ね21年間で10%低下(約23兆円低下)している。
それに比べて、民間企業の所得は21年間で218%上昇(33兆円増加)している。

つまり答えは簡単で、民間企業は法人減税などの優遇策により所得を増やす一方、労働者は非正規などの解雇容易化で賃金を抑えられて来たのです。
(賃金低下のメカニズムはもっと複雑ですが、これが主要な要因でしょう)
更に悲しいことに、労働者は逆累進課税の極みの消費税でも苦しむのです。

この労働者軽視で企業優先の政策、つまり日本の長期政権による政策が二つ目の潮流です。

ところが問題はこれだけでは済まないのです。


次回は、この企業優先の政策がもたらす結果について考察します。






20171030

何か変ですよ! 79:  何が問題か? 2





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現在、日本や世界がどんな方向に進んでいるのか?
簡単に言えば、大多数の国民にとって国政は劣化し、生活は苦しくなっているのでしょうか?
これが把握出来ていなければ話にならない。


はじめに
ある人々は、日本は素晴らしい国だと言う。
逆に、このままでは日本は破局を迎えると言う。

また、この軍事的緊張にあって日本は再軍備に向かうべきだと言う。
逆に、このままでは日本は戦争に巻き込まれると言う。

どちらが正しいのか?
この認識の差は、どこから生じているのか?

人々は事実、社会や経済のデーターをどう見ているのか?
人々はそれぞれ保守的な脳や革新的な脳を持っている為なのか?
人々はマスコミや大きな力に洗脳され偏向してしまったのか?

いや、こんな高次元の話ではない。
単に、人々は分からない事、悩ましい事、どうせ政治はよそ事と考えているからこそ判断せず行動しないだけなのか?
いや違う、現状に満足しているからこそ変化を嫌い、政治的判断を保留しているのか?

ここである経済指標から日本経済の真の姿を追ってみましょう。


対立する経済への評価
ここに内閣府作成のグラフがあります。


 
< 2. 如何にアベノミクスは成功しているか! >

このグラフは現政権の成果を高らかに歌い上げています。
A: 失業率はドンドン下がっている。
B: パートの平均時給はドンドン上がっている。
C: 企業収益も少し上がっている。
(実はBとCのグラフは錯覚を利用しています。上昇率はどちらが高いでしょうか?)

ここで疑問が湧いて来ます。
こんなに経済指標が良いのなら、なぜ私達の周囲で景気の良い話が無いのか?
ひょっとしたら私だけが取り残された不運な人間なのかと思いたくもなります。

待てよ!
失業率が下がれば賃金が上昇するはずだが、現実にそうはなっていない。
何か裏がありそうだ!


 
< 3. 少し真実が見え始める >

上のグラフ: 内閣府作成のグラフ。
このグラフから三つの事がわかる。

一つは、人口減少による労働力人口減が効いて、2008年のリーマンショック時の不景気から2012年までの失業率低下を説明できる。
2012年以降は、後に説明する理由により就業者数が増えて失業率の低下を維持している。
もう一つは、団塊の世代の定年延長や働かねばならない女性が増えたことにより、労働力人口が増加し失業率の低下(人手不足)が緩やかになっている。


中央のグラフ: 第一生命経済研究所経済調査部永濱氏のグラフ。
上記の説明を裏付けているグラフです。

下のグラフ: 同上。
青線と緑線の差は非自発的離職者の率を示し、2009年よりその差は縮まっている。
非自発的離職者とは、辞めたくないのに会社を辞めざるを得なくなった失業者を指し、2016年ではまだ55万人以上が存在している。
これが企業が賃金を上げなくても人を採用出来る理由の一つになっている。

 
 
< 4. 失業率と賃金の関係 >

この二つも第一生命経済研究所経済調査部永濱氏のグラフです。

上のグラフ: 働きたくても就業環境が厳しい、適当な仕事がない、または出産や介護などで就職活動をあきらめている人を加算していくと失業率が上がって行く。
やむなく非正規で働き、正規採用への就職活動を諦めている人も加算していくと、広義の失業率は10%近くまで上昇する。

下のグラフ: すべてを加えた広義の失業率が低下してこそ賃金が上昇し、やっと経済学理論と一致することを、このグラフは示している。

また以下のことがわかる。

広義の失業率はここ8年ほどかけて低下し、安倍政権誕生前から始まっていた。
賃金上昇は安倍政権誕生(2012年12月末)の翌年から始まっている。
しかし今回の賃金上昇は前回(2005、2008年)より高い失業率低下にもかかわらず抑制されているように見える。

これらの事実は日本の経済政策のある実態を反映している。
次回、この謎に迫ります。