*1
日本が先進国から滑落していく大きな理由の一つに性差別があります。
これは人権だけに留まらず日本の経済、環境、平和に大損害をもたらしている。
今日は、根深い「男尊女卑」の悪影響についてみます。
* 日本の代表的な政治家の本音
彼らの本音の発言を見ます。
A: 2003年、太田誠一衆議院議員。
「集団レイプする人は、まだ元気があるからいい。正常に近いんじゃないか」
大学生らによる女子大生集団強姦事件について。
B: 2014年、大西英男議員。
「子どもを産まないとダメだ」
衆議院総務委員会で女性議員が人口減少対策について質疑を行った際、ヤジを飛ばした。
C: 2015年、伊藤祐一郎鹿児島県知事。
「サイン、コサインを女の子に教えて何になる」
高校教育のあり方を議論する会議で。
D: 2001年、石原慎太郎前東京都知事。
「閉経してしまって子供を生む能力がない人間が長生きしているというのは地球にとって非常に悪しき弊害」
週刊誌のインタビューにおいて。
Bを除いて、彼らは立派な経歴を持つ日本を代表する政治家かもしれません。
残念ながら、彼らに共通するのは自民党です。
彼らの本音は日本の性差別そのものです。
これが政府中枢によるレイプ犯見逃しを生んだ。
この醜い本音に支えられている保守政治は日本に何をもたらして来たのか?
< 2. 性差別の日本のランキング? >
これは世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している性差別の指数です。
日本は、世界で最下位から数える方が早い。
* 何が問題なのか?
これは日本の文化だから仕方が無いと思われるかもしれません。
しかし、これがあらゆる面で日本に損害をもたらし、幸福度が年々低下していく大きな理由だとしたら・・。
誰しも未だに男尊女卑が蔓延っていることを感じているはずです。
人口の半数の女性が差別の被害者なのですから深刻です。
それでも我々は悪化し続ける性差別を放置している。
これこそが第二の未来の壁と言えます。
< 3. 日本の性差別の現状 >
図表1はジェンダー・ギャップ(性差別)の悪化を鮮明に示しています。
さらにアベ内閣の第一次(2006-2007)と第二次(2012-)、この指数は悪化し続けています。
これは単なる偶然ではない。
図表2は、ジェンダー・ギャップ(性差別)は健康や教育でこそ少ないが、経済や政治では劣悪であることを物語っている。
図表3は、男尊女卑の著しい日本と韓国では、女性の管理職の割合が低いことを示す。
* 経済への悪影響
男尊女卑がなぜ経済に悪影響をもたらすのでしょうか?
ポイントは二つあります。
・ 出生率が低下するから。
・ 女性が活躍出来ないから。
< 4. 合計特殊出生率の各国比較 >
この出生率が2.1を切ると人口減少が始まります。
日本の出生率は、欧米(フランス、スウェーデン)に比べて低いだけでなく、一度も上昇することなく長期低下傾向にある。
出生率低下による人口減少が進むと労働人口減と高齢化が起こり、その結果、GDP減少と福祉制度の破綻を招きます(注釈1)。
日本の場合、高齢者の大量退職を若年層等でカバーすることになり一時的な失業率低下が起こるものの、長期的な労働人口減によるダメージが大きく、これからじわりじわりと経済の凋落を味わうことになる。
このため、欧米などは長年、出生率を上げる少子化対策を行い、かつ不足を埋め合わせる移民受け入れによって人口の安定成長を図って来た。
残念ながら、日本はどちらも無策でした。
< 5. 北欧と日本の出生率の違いは?? >
日本の少子化対策はやっと始まりました。
保育所の増設、育児休暇などで進展がいくらかあります。
しかし前回の北欧事情で確認したように、日本はまだかなり遅れている。
< 6. 女性の社会進出の比較 >
日本の男女間の賃金と社会進出の差が歴然としています。
日本のように子供を生み育てることは女性の役割と考え、女性だけに負担をかけている限り、出生率は増加しない。
前述の差別発言を繰り返す男性らが支配する保守政治からは育児休暇や保育所の拡充、出産・育児期間中の給与保障の更なる拡充は生まれない。
北欧のように男女が平等に出産・育児を負担し助け合い、社会がバックアップしてこそ、出生率が増えるのです。
しかし、経済の問題はこれだけではない。
< 7. 男女の賃金格差 >
このグラフの数値は、女性の賃金が男性に比べ何%少ないかを示しています。
OECD平均15.6%ですが日本は26.6%です。
もう一つの経済への影響は、賃金格差に代表される労働に対する差別です。
女性の賃金が男性並みになればGDPは確実に上昇する。
また2017年の15歳以上に占める労働力人口比率は男性71%に対して女性51%なので、これを男性並みにするなら、労働力人口が増え、これまたGDPを増加させる。
労働での性差別を減らせば、間違いなく夫婦の収入はアップし、国の経済力もアップする。
その為には、女性の能力を発揮させ、共稼ぎを容易にする政策と企業、地域社会の手助けが必要です。
しかし、これだけではない。
* 環境への悪影響
女性が政治力を持たないから環境が良くならない。
唐突な指摘ですが、2011年3月の福島原発事故に対する世論の男女差を見るとこの理由が分かります。
< 8. 原発に対する世論 >
上の表: 同年4月にギャラップインターナショナルが世界の原発に対する世論を発表した。
この表から、当事国の日本を除いて、女性の社会進出が高い国ほど原発反対の世論が高いことがわかる(バラつきはマスコミのせいか)。
逆に、男尊女卑の著しい韓国と日本は事故前、大きく原発賛成になっている(日本はマスコミのせいも)。
下の表: 2012年の朝日新聞の世論調査結果です。
事故後1年の時点で、原発再開について圧倒的に女性の反対が多い。
これから、女性は環境の安全を経済より優先することが分かります。
これは万国共通なのです。
そして、日本など男尊女卑の国では女性の政治力や発言力が低いゆえに、女性の思いが政治に生かされないのです。
これが平和や育児・介護の問題に至るまで、日本を後進国並みに貶める大きな理由になっているのです。
* 現在のアベ政権を支えるもの
< 9. 内閣支持率 >
上のグラフ: 2015年の男女別の政党支持率。
一番左のピンクが自民党支持、右の青は支持政党なし。
自民党支持は男性40.8%で、女性29.2%でした。
下の表: 2017年7月のアベ内閣支持率。
この頃、加計学園問題で国会が紛糾し、支持率が急降下した時期です。
ここでもアベ政権支持は男性が高く、若い層に多い。
女性の支持は男性よりやや低く、50代の女性で特に低く、不支持が支持を上回る状況(赤地に白字)が早く起きている。
女性の方が、男性に比べ安全(原発、戦争)や腐敗に敏感で、経済的な妥協(損得勘定)を行わない傾向がある。
これが男性の欠点を補うのです。
女性が戦争を終結させる設定は、古代ギリシャ喜劇「女の平和」に出てくるが、これを実践したのがアフリカ最初のリベリアの女性大統領(ノーベル平和賞)でした。
つまり女性の政治参加は人類社会に不可欠なのです。
* 今がチャンス!
< 10. 投票率 >
現在、日本は政治不信に陥り投票率は低下する一方です(世界的傾向)。
これが自民党の本来の指示割合よりも多くの議席数を得ることを許し、現在の歪な政治状況を生んでしまっている(選挙制度の影響も)。
しかし、これがチャンスと言える。
男女の投票率の差はほとんど無く、女性の政治意識は高い。
しかし、支持政党が定まらず迷いがある。
ここで女性が立ち上がり、環境、平和、男女平等の視点で政党を選び投票すれば、投票率の低い今こそ、存分に女性の意見が議席に反映されることになる。
そうすれば、日本の政治史上、初めて幸福先進国並みになる道筋が付くことになる。
終わります。
注釈1.
2005年の総人口に占める生産年齢人口(15~64才)率が66%で、今後、出生率が減り、寿命が伸びると将来どうなるでしょうか。
2055年には総人口が13000万人から9000万人に減り(31%減)、生産年齢人口は51%に減ると予想される。
この間、生産年齢人口の全員が働き、同じ生産性だとして、GDPは46%減ることになる(実際の労働人口は多少増減する)。
さらに、この減った労働者人口で残りの人口を養うことになるので、福祉政策は行き詰ることになる。