20190616

北欧3ヵ国を訪ねて 72: シェラン島北東部を巡る 4: 野外博物館 2





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今回は野外博物館の後半です。
三ヵ国の民俗家屋の野外博物館を見た感想も記します。




 
< 2.No.54の建物 1 >

上: 建物の説明書き。
この建物は、スカンジナヴィア半島南西部の海峡に面した所(現在スウェーデン)に17世紀建てられた。
この地域は数世紀にわたり、デンマーク領でした。
右上に示されているように住人は8人で多くの家畜がいた。
この農家はforest farmと書かれており、森林を利用して家畜を育て、穀物は家庭用に栽培された。
18世紀、この地域の木材は対岸のデンマークに小型ボートで輸出され、ユトランド半島東部の穀物と交換された。

下: 外側から見た。
中央に入り口が見える。


 
< 3.No.54 の建物 2 >

外観は古くてみすぼらしいが、中庭を囲むように四方に家屋が建っている。
二枚とも、中庭から見た写真。


 
< 4.No.54 の建物 3 >

古いが貧しい暮らしとは言えないようです。
内壁の板が縦方向で、外壁は横方向に並んでいるので、間に断熱の工夫がされているのだろう。


 
< 5.No.55 の建物 >

上: 建物の説明書き。
この建物も、スカンジナヴィア半島の最南端の(現在スウェーデン)に17世紀後期に建てられた。
この地域も数世紀にわたり、デンマーク領でした。
右上に示されているように住人は8人と7人の2家族です。
彼らは穀物栽培農家でした。
大きな家で、中庭を囲むように四方に家屋が建っている。



 
< 6.No.37-40 の建物 >

ここにはユトランド半島東側、デンマークの南端にあった4棟が集めらている。
皆、17から18世紀の農家です。


 
< 7.No.40 の建物 1 >

6人家族の農家で、豊かな暮らしをしていたようです。
外壁と竈兼暖炉はレンガ造りです。



 
< 8.No.40 の建物 2 >

多くの建具や家具は幅の広い板材が使用され、塗装もされている。




 
< 9. No.34の建物 >

上: 建物の説明書き。
ユトランド半島西側、ワッデ海のレモ島に1750年に建てられた建物。
この島は砂地で荒地です。
この島の多くの少年は水夫になり、大人になってオランダ捕鯨船のキャップテンになる者もいる。
この地では農業より漁業と航海が重要で、18~19世紀に繁栄をもたらした。

下: 左側の建物。



 
< 10. No.31の建物 >


上: 建物の説明書き。
ユトランド半島西側の南端に17世紀に建てられた建物。
此の農家は、最初オランダ商人が建て、賃貸されていた。

下: 特異な形をしている。
大きく高い屋根、小さな扉と窓が目立ちます。
中は暗いが大きな居間、納屋、家畜小屋がありました。


三ヵ国の野外博物館を見て

多くの農家は、木材が多用されていた。
ノルウェーは巨木が生かされていたが、他の建築材料に乏しい。
デンマークは木材に乏しく、豊富な土や草が補っている。
スウェーデンは両者の中間と言ったところでしょうか。

三ヵ国共に寒冷地なので、居間や寝室には大きな造り付けの大型の暖炉兼竈があった。
デンマークのように外壁レンガと内部は木張りにし、間に断熱効果を持たせれば、暖房効果は上がるでしょう。
その点、他の二ヵ国ではログハウスのような造りが見られるが、暖房に難点があるように思えた。

三ヵ国共に展示家屋の家族構成を見ていると、数世代にわたる大家族はなかった。
使用人や親族とは限らないような住人が共に暮らすことがあるようです。
デンマークでは家畜が多い。

これら野外博物館では農家の畑の様子、特に大きさと水源管理が分からない。
農地は穀物栽培の畑を柵で囲うだけのもので、東アジアの水田のような手間暇のかかるものではない。
また家畜も森林で飼育するようなので、人口密度の低いこれらの国では放牧地の維持に気をあまり使わないのではと感じた。


日本と比べて


氷河後退地の為、土壌が貧弱でさらに寒冷地なので、農業、特に集約農業が発展しなかった。
農業は麦などの穀物栽培なので、水管理も重要ではなかったようです。
生業としては日本のように農業中心ではなく林業、漁業、水運による交易などに多様化した。

これが東アジアとの家族制度の違いを生んだのだろう。
生業を多くの子供達に助けてもらう必要もなく、土地はどこにもあるので土地の相続でもめることもなく、親の権威が強化されることがなかったのだろう。

この結果として、貧弱な土地への執着がなく、水運を利用した移動と交易が相俟って、人々は外界への転出に抵抗がなかった。
むしろ発展と捉えたのだろう。
これは中国南部の山地に暮らす客家等の人々が、東南アジアや海外に進出することが飛躍だと考えているのに似ている。
古代ギリシャの植民にも似たところがある。

以下は、まったく私の感想です。
おそらく、親の権威が高まらなかった家族観、外界への転出意欲、土地への低い執着が、ヴァイキングを生み出した。
さらに千年の後の北欧の福祉国家の成功、短期間で貧しい国からの飛躍を可能にしたのだろう。

一方、日本の現状を見ると、山腹や小さな渓谷沿いの狭い土地を先祖伝来の地として守る姿が痛ましい。
美しい日本の原風景ではあるが、社会の変革を妨げる頑な姿に思えてしまう。


次回に続きます。


20190614

平成の哀しみ 59: 日本経済に何が起きているのか 22: 凋落の深層 3






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一人当たりGDPが伸びないのは問題か?



 
*2


三つの回答

1.国債発行で不足分を補っていくので大丈夫

経済紙、シンクタンク、世界的な経済学者は国債への過度な依存は危険と指摘。
世界でデフォルトにより困窮に陥る国は多い。

政府と民間に充分な資産があるので大丈夫との意見がある。
しかし政府資産の売却の話は起きず、民間の金融資産も所詮国民のもの。

最悪の事態は国債の金利が暴騰することで、1000兆円の年利5%で税収を越える年50兆円の利払いになる。
この危険性を零だと言い切ることは出来ない、為替レートやバブル崩壊が予測出来ないように。


2.経済成長に拘らず心豊かに暮らすべき

GDPは便宜的なものに過ぎず、幸福が最重要だが。
このままでは先進国並みの生活水準を維持出来ないので、幸福を優先しながらそれに見合った成長が必要です。

ちなみに北欧では人生をエンジョイし、かつ日本の1.5倍以上の所得を得ている。

*3


3.経済成長なくして少子高齢化を乗り切れない

少子高齢化で40年には医療介護費・年金の負担はこれまでの2倍以上にに膨れ上がる。
所得減少が止まらないので、これからの高齢者はとても負担増に耐えらえない。
質を落とせば別だが。

つまり道はこれしかない


次に続く


20190613

平成の哀しみ 58: 日本経済に何が起きているのか 21: 凋落の深層 2

*1


一番分かり易い深刻な問題とは

それはGDP国内総生産の停滞です


皆さんは日本のGDP成長率がここ30年ほとんど零だと言うことを知っている。
しかし多くの人は生活水準が維持されていると感じる。

その理由は下のグラフで分る。


 
*2

91年以降、3から8%への消費税増税と2度のバブルを繰り返しても税収は伸びなかった。

しかし国民生活を維持する為に国の歳出は増え続けている。
このギャップを次世代の負担になる国債発行で凌いでいる。

狂気の政府とエコノミストはこれでも百年は大丈夫だと言い切ります。


簡単に確認します。

以下二つのグラフは、一人当たりのGDPを見ている。

 
*3

このグラフから日本だけが取り残されているのがわかる。
今後、生産人口(15~64歳)が減少するのでさらに悪くなる。


 
*4

このグラフは購買力平価ベースで各国の順位を表したものです。
バブル景気を除いて凋落は確実です。
ここ数年のGDP上昇は好調な世界経済によるもので順位変わらず

日本は企業と国民に貯えがあり今までは凌げた。
しかし今後、国民所得が低下し始め、やがて貯えが大きく減ると、さらに少子高齢化による高負担に耐え切れなくなる。

既に政府は年金支給と退職年齢を延ばし始め、さらに続く。


次に続く




20190612

平成の哀しみ 57: 日本経済に何が起きているのか 20: 凋落の深層 1

 



*1

これまでバブルの悲惨さを見ました
これから日本経済の深刻な状況を見て行きます


バブルのまとめ
バブルはいつも歓迎され、崩壊が繰り返される
バブル崩壊は戦争を誘発し、経済を破壊し、社会を疲弊させる
バブルは投機家、金融業界、政府によって作られ続ける
バブルは経済学の限界を見せつける


今の日本は正に衰退の極み

それは経済の長期衰退が実際に起こっているだけでなく、多くの人が現状を維持すれば良くなると思い込んでいるところにもある。
この意識は悪い保守化の典型です。

この意識が益々強まり、自国の社会と産業の根本的な刷新を避け、従来の政策から抜け出せず衰退を深める。

この保守化は歴史上繰り返され、多くの悲劇を生み出した。


 
*2

よくて英国病ように、自国の産業過保護と海外投資に傾注し衰退を招く。
悪ければかつての日独伊のように、国内問題に目を背け領土拡張に向かい自滅した。

当然だが社会経済が悪化している時は、抜本的な改革か改善を繰り返さなければならない。
しかし保守化すると、体制維持ならまだ良いが過去の体制に戻ろうする。
こうなると悪化がさらに進み、遂には打開策が外国に向かってしまう。

これはトランプ大統領の言動に現れている。


次に続く




20190611

平成の哀しみ 56: 日本経済に何が起きているのか 19: 夢のバブル経済 9







 
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バブルで知る経済学の限界


 
*2

なぜ損をしてまで投資家は売り急ぐのか

株・不動産・商品の投機が過熱し価格が急上昇した後に急激な大暴落が起こるのが世の常でした。

投資家のほとんどは自己資金の数倍以上借りて投資する。
暴落が始まると、少しでも多くの返済額を確保する為に早く売り逃げようとし相場はパニック状態になる。
日本株の場合、頂点の1/2~1/4まで暴落し、全体で300兆円ほど値下がりする。

こうなると多くの投資家は借金を返済できなくなる。
当然の結果と言える。


ここで不思議に思うことがある。

よくエコノミストが理論的に大丈夫だからと政策に太鼓判を簡単に押す。
また多くのエコノミストは市場経済において参加者は合理的に行動し、
自由であればあるほど正常に機能すると説教する。

しかし、このバブル崩壊時の市場参加者の行動は合理的と言えるだろうか。
皆、損をするのが分かっていながら売って大損している。

しかも経済現象としては最も重大なものです。
経済学はこの現象の予測も制御も出来ない。

今の経済学は感情的な行動や完璧でない情報が絡む経済現象を扱えない。


 
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流行の経済学者や理論が過去、幾度も泡沫の如く消えた。
重大な結果には慎重に。




次に続く