20170805

何か変ですよ 66: 日本の問題、世界の問題 2: 金融の罠






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前回、日本企業の繁栄と労働者の衰退を確認しました。
これからバブル崩壊などの金融がもたらす災厄をみます。
これら三つは世界的な根で繋がっています。


 
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はじめに
実は、バブル崩壊など金融がもたらす災厄や善処策について語るのは厄介なのです。

その理由を以下に記します。

一つ目、日本において、学者から政府、国民に至るまで金融がもたらす災厄に対して無関心に近い。

二つ目、金融がもたらす災厄を研究する経済学者は少ない(特に日本)。

三つ目、現在、最も収益を上げている業界は金融業界で、かつ加速度的に巨大化している(特に米国)。

少し解説します。

ここ半世紀の間に、主に金融家による富の集中が起きた為、彼らは莫大な銭をばら撒き議員や政府、研究や広報を手玉に取るようになった。
ここで言う金融家とは、生産行為より資金を動かすことで利益を得る人々を指す。
これを米国が先導している

すると優秀な経済学者や研究所は自身が稼げる金融テクニックの開発か、金融家に都合の良い研究と報告書作成に躍起になります。
こうして金融行為で生じた社会の損害に目を向ける学者は少なくなります。
議員達は莫大な選挙資金を求めて、金融家に都合の良い規制緩和に積極的となり、政府も同様となります。

こうなると国民は金融行為による莫大な損失から目を逸らされ、政府は金融家がより繁栄する政策を推し進めることになった。

国民は当然の如く、バブル崩壊などの発生メカニズムに疎くなり、これによる巨大な災厄を運命の悪戯と捉え、泣き寝入りすることになる。
これが先進国中、とりわけ日本の現状でしょうか。


ここで金融がもたらす災厄を簡単に見ておきます
国民に大きな被害をもたらす金融的な破綻としては、銀行危機や高インフレ、通貨暴落、デフォルトがあります。
これらは経済的な災厄なのですが、現状では金融の罠とも言えるメカニズムが大きく関わっています。


 
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1. 銀行危機
これはバブル崩壊、金融危機、恐慌とほぼ同義語です。
最初に産品や株価、不動産などの価格暴落が起こり、次いで破産や失業が広がり、経済は急激に落ち込むことになる。

これが起きる前、銀行を介して貨幣流通量の増大(信用創造)が起きており、価格暴落を切っ掛けに、一気に貨幣の回収(信用収縮)が始まる。
この回収が出来ずに多くの企業や銀行が倒産し、失業者が大量発生し、消費の急減が起こり、この悪循環が一国の経済をどん底に突き落とすことになる。


 
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2. 高インフレ
インフレは物価が上昇し続ける状態で、貨幣価値の下落が起こっているとも言える。

インフレがおおよそ年率5~10%を越え、さらに大きくなればなるほど社会にダメージを与える。
高インフレが起きる場合、以下の弊害が起きる。
金融資産(預金や保険満期金、現金)は見る見るうちに減価していくことになる。
(10%のインフレが20年続くと、100万が15万円に目減する。)
通常、物価上昇が先行し賃上げが遅れるので、労働者の生活は苦しくなる。
インフレに乗じて、投機で儲けることも可能だが、多くはバブル崩壊で自滅することになる。
スタグフレーションと呼ばれるインフレと景気後退が同時に起ることもある。


3. 通貨暴落
通貨の対外的な価値(ドル/円などの為替相場)が急激に下がることです。

国や経済への信用不安が起きると、海外の投資家はこの国から資金を引き上げる為に通貨を売り急ぎ、通貨安を加速させる。

国内の発展を支えていた外資が途絶えることにより経済が急停止することになる。
また通貨安になることで外貨建て海外債務の元利払いは急増することになる。
(例えば日本国内の企業がドルで借金し、円/ドルが100円から120円への円安になると、この企業の1億ドルの借金は100億円から120億円へと増加する)
こうなると国の経済は大打撃を受けることになる。



 
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4.デフォルト(債務不履行)
ここでは国が国内外の債権者に元利の返済が出来なくなったことを指す。

債務は地方自治体や民間、個人にもあるが、ここでは中央政府が発行した債券(国債、ソブリン債)や銀行からの借入金について問題にする。
多くの場合、国はまったく返済しないのではなく、協議の上で返済条件の緩和を行い、返済し続けることになる。

デフォルトが起きる切っ掛けは様々だが以下のものがある。
累積債務の増大による信用不安が発生し、海外からの資金引揚げ(債務国が発行した外債の売りなど)が集中し、国は返済不能になる。
また発展途上国が産品輸出の好調などによる好景気時に、先進国の金融業から高金利で融資を受けていたが、産品価格暴落や先進国連動の金利高騰などにより、返済不能となる場合です。

この結果、さらなる債権発行や借り入れが困難になり、経済発展に必要な資金が枯渇することになる。
また信用低下により借り入れ金利が高騰し、新規・既発債権の負担が重く圧し掛かる。
こうして国は急激な信用収縮と急激な経済低下を起こし、さらに緊縮財政(福祉切り捨てなど)と増税が国民を襲うことになる。


 
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日本の著名な経済学者の認識
政府に近い経済学者は金融がもたらす災厄をどのように見ているのでしょうか?


1.以前、実業家兼経済学者の竹中平蔵がこのような趣旨の事をテレビのインタビューでが言っていったと思う。

「累積債務が巨大になったからと言って国家が破綻したことはかってない。」



2.経済学者の竹森俊平が2008年刊「資本主義は嫌いですか」でバブルについて書いている。

「その結論を要約すれば、『バブルの頻発』は世界経済全体の高い成長率を維持する為に、経済システムの『自動制御装置』が働いた結果であった。
高成長率の維持が難しくなる局面に来ると、民間や政府が、様々な手段を動員して高成長の維持を図る。
そのことが繰り返され、結果としてバブルが生まれた。・・・・

・・・。
バブルの発生に歯止めをかけるということに重点を置いた調整がなされるのである。
その結果、バブルの頻発もさすがにストップする。
その代わり、世界経済の成長率は低下する。・・・。」p4~5.

著者は、この一冊で長々とサブプライム危機を語っているが、私の見たところ、「バブルは調整の失敗に過ぎず、経済に必要不可欠なもの」とみなしている。


3.日銀総裁黒田東彦が2005年刊「通貨の興亡」でアジア通貨危機について書いている。

「・・・・・。

短期の外貨を取り入れて、それを為替ヘッジも十分せずに、内貨で長期貸しをしていたということも問題であった。
ジョージ・ソロスが為替投機を行ったといって批判されたが、為替投機は確かにあったかもしれない。
しかし、やはり本質的には、タイを中心に、経済にいろいろな問題がたまっていて、それが一挙に爆発したということだと思う。」p.78.

著者は、3頁ほどでこの通貨危機の原因と過程を簡明に述べているが、この危機がもたらした甚大な被害は念頭になく、当然、問題意識はないようである。


この三人の認識には、経済主体の一方である国民への眼差しが欠如しているようです。
彼らの念頭にあるのは経済成長などの成果であって、必ず起きている副作用(バブル崩壊の後遺症や格差など)には無関心なようです。
後に紹介する世界的に著名な学者に比べれば、彼らは本分を置き去りにした学者に思える。
さらに感じるのは、1980年代から米国の政治経済を支配している概念(今後説明予定)に憑りつかれ、まったく疑いを持っていないようである。

国民にとって重要なことは、国民が被る災厄への問題意識が欠如している人物が行う改革では、けっして良い結果は生まれないと言うことです。



 
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それでは皆さんに質問があります
過去200年間、世界の国々がデフォルト(債務不履行)をどれぐらい行ったかを想像して下さい。

答えは10回、50回、300回のいずれでしょうか?

「1800年から2009年にかけて、ソブリン・デフォルトは対外債務について少なくとも250回、国内債務でも68回はあった。」

つまり318回以上あった。
この記述はカーメン・M・ラインハート&ケネス・S・ロゴフ著の「国家は破綻する」(2011年刊)p.77にあります。

この事実は常識とはかなり異なるはずです。
まだ、これは金融的な破綻の一部に過ぎないのです。


次回に続きます。




20170803

フランスを巡って 31: ランスの大聖堂 3




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今日は、大聖堂の内部を紹介します。
様々なステンドグラスが私達を魅了します。
なぜランスが聖なる街になったかも見ます。




< 2.ファサードの内側 1 >

これらは正面中央の門を内側から見上げた写真。

上の写真: バラ窓。

下の写真: 扉の直ぐ上の円形のステンドグラス。





< 3.ファサードの内側 2 >

上左の写真: 身廊の正面側(拝廊)から主祭壇(内陣)を望む。

上右の写真: 身廊の中央からバラ窓を振り返る。

下左の写真: 身廊の正面側(拝廊)からバラ窓を見上げる。

下右の写真: 正面の北側の門の上のステンドグラス。





< 4.内部 >





< 5.側廊 >

上左の写真: 側廊。

上右の写真: 聖人ジャンヌ・ダルクの像。

下の写真: 側廊のステンドグラス。






< 6. 翼廊 >

北側翼廊の内外の写真。

上左の写真: 翼廊の三つの門の内、最も西側にある門を中央から見ている。

上右の写真: 上記の門を外から見たもの。

下の写真: 翼廊の三つの門の中央にあるバラ窓。





< 7.ステンドグラス 1 >

様々なステンドグラスを紹介します。
多くはフランス革命の動乱、第一次世界大戦で失われました。
中世からの残っていますが、私にはわかりませんでした。

上左の写真: 翼廊南側のバラ窓を見上げる。

上右の写真: 身廊中央から見た内陣の奥上部にあるステンドグラス。

下左と右の写真: 内陣を囲むようにして並ぶ礼拝堂のステンドグラス。
右はドイツ人芸術家による2011年制作のステンドグラス。





< 8.ステンドグラス 2 >

シャガールの1974年作の青色を基調としたステンドグラス。


 

< 9.ステンドグラス 3 >




フランスの起源とランスについて





< 10.フランク王国の誕生 >

5世紀、ゲルマン系諸集団がフン族に追われるようにして東方から西ローマ帝国に進入して来た。
451年、オランダ南部からベルギー辺りに住んでいたフランク族はローマ軍に徴用されフン族とカタラウヌムで戦った。
西ローマ帝国はフランク族や他の諸部族を傭兵とし戦わせ、彼らにロ―マ軍の装備や戦略を与えた。
これにより彼らは力を持ち王国を形成するようになった。

476年、西ローマ帝国はロ―マが蛮族に略奪されてことにより滅亡する。
482年、フランク族の王になったクロヴィス1世は領土拡大に向けて侵略を開始し、諸部族を併合していった。
511年、彼が死去した時には、現在のフランスとドイツの一部までを掌中にした。





< 11.クロヴィス1世のフランク王国 >

クロヴィス1世が掌中に収めたフランク王国の全領土は濃い緑色部と「Conquests of Clovis」の範囲です。





< 12.クロヴィス1世 >

左の絵: ランスでのクロヴィス1世の聖別戴冠式。
右の絵: クロヴィス1世。





< 13.ランスとクロヴィス1世 >

一方、ランス(Reims)はローマ時代に遡る古い町で、レミ族(Remis)の中心的城市で、この名が訛ったものです。
ランスは3世紀には司教区となっており、8世紀に大司教区となった。
481年当時のフランク王国の支配地は地図の青色部であった。
しかし、486年、クロヴィス1世は紫色部のローマ滅亡後も残っていたローマ帝国の軍司令官区に侵攻し、奪い取った。

こうして498年、クロヴィス1世は新たに手に入れたランスで、司教による聖別戴冠式を行った。
次いで508年、フランク王国(メロヴィング朝)はパリに遷都した。

ここにフランスのおおまかな形が出来た。
フランク族の語義は「自由な人」「勇敢な人」を意味し、英語で率直な性格を表す「フランク」の語源となった。


次回に続きます。




20170731

何か変ですよ 64: 日本の問題、世界の問題 1


*1


日本の現状を見ていると不安がよぎる。
社会や経済は徐々に蝕まれているが、多くの国民はその日暮らしに追われている。
この悪化の構造は世界に蔓延しており、放置すれば危険です。
この事について見て行きましょう。


はじめに
国民は日本の現状をどのように見ているのだろうか?

今、籠池や加計問題などで首相が責められ、東京都議選で都民による現政府への批判が示された。
しかし、これは一首相への人気が一時醒めただけのことかも知れない。
おそらく、多くの日本人は現在悪化が進行しているとしても、これは一過性で景気が良くなれば解決すると思っているだろう。
しがって根本的な手立てが必要とは考えない。



ここで内閣府の世論調査の結果を見ます


 

< 2. 2009~2013年度の世論調査の比較 >

これによると5年間で満足度が上昇しており、満足度が高いのは60歳以上と言える。
この時期、内閣は麻生、鳩山、菅、野田、第二次安倍と目まぐるしく交代した。
経済は、2008年のリーマンショックから立ち直りつつあるところに東北大震災が起こり、低迷していた。


今年2017年1月と2007年1月の世論調査を比較します。

*良い方向に向かっている分野について、今回第一位は「医療・福祉」で31.4%、10年前の第一位は「科学技術」19.7%で、「医療・福祉」は第三位で16・5%であった。

*悪い方向に向かっている分野について、今回第一位は「国の財政」で37.1%、10年前の第一位は「教育」36.1%で、「国の財政」は第四位で32.7%であった。

*現在の世相で、明るいイメージについて、今回第一位は「平和である」で61.6%、10年前も第一位は「平和である」で50.9%であった。

*現在の世相で、暗いイメージについて、今回第一位は「無責任の風潮が強い」で39.5%、10年前も第一位は「無責任の風潮が強い」で58.3%であった。


今年2017年1月と2008年2月の世論調査を比較します。

*社会で満足している点について、今回第一位は「良質な生活環境が整っている」で43.2%、9年前も第一位は「良質な生活環境が整っている」で29.0%であった。

*社会で満足していない点について、今回第一位は「経済的なゆとりと見通しが持てない」(43.0%)、以下「若者が社会での自立を目指しにくい」(35.5%)、「家庭が子育てしにくい」(28.7%)と続く。

9年前も第一位は「経済的なゆとりと見通しが持てない」(42.4%)、以下「家庭が子育てしにくい」(32.1%)、「若者が社会での自立を目指しにくい」(31.6%)と続く。

調査年の2007年1月は、第一次安倍内閣の時で、世界的に株価が上昇し好景気であった。
2008年2月は、福田内閣の時で、前年後半から株価が下がり、リーマン・ショックが起こった。

二つの比較から、現在の世論は前回に比べ「医療・福祉」で良い方向に向い、「国の財政」は悪化しているとなっている。
不思議なことに、現在はより「平和」で、「無責任な風潮」が後退していると思われている。

現在、「良質な生活環境」がより整っているとして満足度は上昇しているが、「経済的なゆとり」「子育て」「若者の自立」は依然として改善されていないと思われている。

以上三つの世論調査の結果から察するに、国民は特に悪化が進んでいるとみなしていない。


どこに問題が隠れているのか?
現在、景気が良くなった実感を持つ人はあまり多くはないだろう。
だが失業率や株価などは、景気がやや良くなっていることを示している。

ここ数年、海外の好景気もあり見過ごされ易いが、悪化は進行しているのだろうか?


 

< 3.家計貯蓄率 1 >
このグラフは2015年1月の東洋経済の記事の一部借用です。

データーは少し古いのですが、これから日本の長期衰退の元凶の一つが見える。

上のグラフ: 高度経済成長時、日本の貯蓄率は際立って高く、貯蓄が産業投資を可能にしており、好循環を生んだ。
しかし2013年、ついに貯蓄率は始めてマイナスになった。

下のグラフ: ここ20年ほどの各年の金融資産の動きが示されている。

ここから重大な構造的要因が見えて来る。
一つは、各家庭の貯蓄率が減少し、マイナスになる中、遂に国の資産は企業の内部留保増加分だけになってしまった。
(内部留保とは企業が税引後利益から配当金や役員賞与などの社外流出額を差し引いて、残余を企業内に留保すること。)

今後、家計の金融資産(各家庭の貯金や保険など)で国の負債(国債)を賄うことが出来なくなった(日本の2017年3月の累積家計金融資産は1800兆円)。

実に歪な経済構造になった。
国民は所得が少ないから貯蓄を食いつぶし始めた。
一方で、企業だけが収益を毎年内部留保として蓄え続けるようになった。

この内部留保を賃上げに廻せば、消費を促し景気は良くなるだろう。
またこの資金で設備投資を行えば、現在、低くなってしまった日本の労働生産性が向上し、これまた景気拡大に繋がるだろう。

結局、法人税減税などを行っても、企業が貯め込んだ資金は実需に向かわず、金融で稼ぐだけとなり、これがまたバブルや格差拡大の災いを招くことになる。

もう一つ気になることは、今後、国が国債を増発する為には、買い手である企業を益々儲けさせなければならないことです。

これは1980年代から、米国を筆頭に先進国で行われて来た誤った規制緩和と減税が世界に蔓延してしまったことと、日本のセーフティネットが遅れていることが起因している。


 

< 4. 家計貯蓄率 2 >

上のグラフはAllAboutの2015年1月の記事の一部借用です。
日本の貯蓄率が先進国の中で、際立って低下していることがわかります。

下のグラフは2015年1月の東洋経済の記事の一部借用です。
棒グラフの家計可処分所得(各家庭が消費に回せる金額)が日を追って低下し、それに連れて貯蓄率が低下しているのがわかる。



 

< 5. 企業の内部留保 >

このグラフはBlogosの2016年12月の記事の一部借用です。

青の棒グラフは資本金10億以上の大企業の内部留保の累積額で、2015年度は313兆円でした。
赤線は非正規率(雇用者数に占める非正規雇用者数の割合)と実質賃金です。

内部留保増と雇用者の状況悪化には因果関係が伺えます。
この悪化は政府がこれまで進めて来た、企業の競争力向上に名を借りた雇用規制緩和が招いたと言えます。
こうして得られ退蔵されている内部留保を正規雇用や賃上げに廻せるように政府が牽引すれば良いのですが、今のところその兆候はない。

例えば、ブラック企業で名高い電通ですが、2015年の内部留保は8098億円で、5年間で42%の増加でした(凄いですね)。
電通の社員は4万人ほどいるので、一人当たり2000万円の蓄えとなります(関係ありませんが)。


これらから見えて来るものがあります。

一つは、世界的な法人税引き下げ競争と非正規雇用の拡大がこの結果を招き、さらに日本がこの低所得層への対策を怠って来たことです。

日本の経済成長の低迷が問題にも見えますが、企業収益から見ると、偏った見方だと言えます。
この実例は米国のここ半世紀の所得格差が示しており、高い経済成長があっても多くの雇用者の所得はほとんど上がっていないのですから。

現在の低経済成長は、アベノミクスで改善を目指している、これまでの低い貨幣供給量と円高にも起因しているが、これがすべてではない。

他に長期的な労働人口の低下が大きく、既に紹介した様々な歪が災いしている。
今回見た内部留保増大と賃金低下は、明らかに低経済成長と所得格差拡大を招いている。

これまでの間違った政策の蓄積が災いしている。
但し、これを改めるには、ここ半世紀で作られた既成概念の打破と、世界が協調して事に当たらなければならない。


次回に続きます。