20140902

私達の戦争 33: 摩訶不思議な解釈5

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今日は「国益」について考察します。
不思議なことに、「国益」は発言する人により意味がかなり異なります。
実例を挙げて見ていきます。

国益を巡る報道
2014年8月31日、各紙で「国益」を検索し、上位から目立った記事を取り上げます。


    

産経新聞
1.2014年8月、防衛庁長官時代から自衛隊を“軽侮”していた加藤紘一氏
内容:「加藤氏は『国益を損なう政治家』の最たるもので、防衛長官時代に自衛隊を軽視し、共産党と朝日が好きだ」と書いた本の紹介。 

2.2014年8月、『中国の大問題』丹羽宇一郎著 習政権のもろさから今後を分析
内容:「民間出身で中国をよく知る元駐日大使が、『中国の弱みに石を打て』と書き、経済的な国益を最優先に考えるべき」と書いた本の紹介。

3.2014年8月、慰安婦報道「事実ねじ曲げた朝日新聞」「日本の国益や先人の名誉傷付けた」 
内容:「朝日が慰安婦報道で、嘘の慰安婦証言や吉田証言を取り上げ、事実を歪曲し日本の国益や先人の名誉が傷つけられた」とする講演を紹介。

ポイント
三つの記事から言えることは、国防を軽視することや日本国と先人の名誉を損ねることが国益に反し、中国を非難し、経済的国益を優先することが重要だとする立場が強調されている。
補足すれば、丹羽氏の「中国の大問題」は良書であり、記事「2.」の指摘は著者の主張全体とは逆になっています。

    

読売新聞
1.2014年4月、日米TPP、来週閣僚会議
内容:「菅官房長官は2日の記者会見で『国益をかけた最後の交渉をしている』と述べた」と報道。

2.2014年3月、『日ロ現場史』本田良一朝、書評
内容:「北海道根室漁民の拿捕との攻防を描き、北方領土問題を棚上げしておくことの愚策、また何を「国益」とみなすかも時代によって変化する、などの指摘」に評者は共感している。

ポイント
政府要人がここで言う「国益」はおそらく経済が主でしょうが、他の意味も含まれているでしょう。
後者では、領土問題が最たる国益であり、それを自ら勝ち取る姿勢こそが重要だとする立場が強調されている。

    

朝日新聞
1.2014年8月、戦争体験踏まえ反戦訴え
内容:「イラクから帰還した米兵が毎日18人前後も自殺する。『安倍首相には戦争の傷痕の大きさを考えたうえで、国益を考えてほしい』」とする講演を紹介。

2.2014年8月、米、シリア上空へ偵察機 「イスラム国」空爆拡大を検討
内容:国務省のサキ報道官は会見で、「米国の国益を守るときに、空爆にあたってアサド政権の承認は求めない」と述べた。

ポイント
戦争によって大いに国益が損なわれるが、その被害を被るのは主に国民であるとする立場が強調されている。
これまでの中東政策から察すると、ここでの米国の国益は、自国の将来に関わる安全保障が主であり、かつ経済的事由も含まれるでしょう。
もし世界平和を強調するなら、米国は「国益」の表現を使わなかったでしょう。

    

THE HUFFINGTON POST(日本版)
1.2014年5月4日、イギリスにおける国家機密と報道の自由について(3)
内容:記者はスノーデンによる米国の国家安全保障局NSAの機密暴露事件で「キャメロン首相は国益を損なうと非難した」を取り上げ、国民のプライバシー保護との関係を論じている。

2.2013年11月、小池百合子氏の「首相動静」発言をどう読むか?
内容:論者は「小池元防衛相のマスコミによる首相動静報道が、知る権利を超え、国益を失っている」の発言を批判し、問題無しと論じている。

ポイント
英国首相がここで言う国益は、米国との同盟堅持と英国の安全保障に関わっている。
この国益は、国民の権利―世界中の人々が不法に盗聴されプライバシー侵害を受けていること―よりも重要だとしている。
後者の発言は、公人の動静報道が安全保障上の障害か重要人物のプライバシー侵害を招くと指摘しており、国益とは安全保障か政府要人に関わっている。

要点
これで概ね傾向が掴めました。
国益とは、国体、政府、国民、国民の権利などがあり、具体的には領土、経済がありました。
しかし、中には過去の名誉から未来の安全保障(防衛)までも含んでいました。

次回、もう少し海外紙を紹介し、国益の意味をまとめます。





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