20140206

社会と報道 17: 報道特派員の苦闘 2

 ニュース番組「60minutes」

< 1.ニュース番組「60minutes

戦場の真実が伝わらない最大の理由は、政府や軍部の圧力です。
ベトナム戦争において、米国の特派員は比較的自由に取材出来たようです。
それでも真実は、米国民には伝わり難かった。


伝説のニュースキャスター、クロンカイト 

< 2.伝説のニュースキャスター、クロンカイト >

テレビ報道のエピソード
ある日、CBSの社長は電話の音で目を覚ました。
「フランク、おれに嫌がらせをするつもりかね。昨日の放送だが、君の所の若い者が星条旗をなぶるようなまねをするとはな。」
ジョンソン大統領からの電話だった。
後にその社長はその記者に含むところがあったと言われている。
この記者はCBSの有名ニュース番組「60minutes」のスタッフで、この番組が96年、タバコ産業の内部告発(本連載3~6)を放送することになる。

CBSの「イヴニング・ニュース」の有名キャスターのクロンカイトは仕事を終えると、度々大統領から電話を受けることがあった。
このクロンカイトが、682月、ニュースで、ベトナム戦争でアメリカは勝利しないと宣言した。
ジョンソン大統領は、「クロンカイトを失えば、アメリカの中核を失う」とその影響力を高く評価していた。

ここに報道への圧力と報道マンの良心が微妙にバランスしている様子が見える。


ジョンソン大統領と南ベトナム政府首脳 

< 3.ジョンソン大統領と南ベトナム政府首脳 >

新聞報道のエピソード
現地ベトナムの特派員は、南ベトナム政府、米使節団の抵抗に遭いながらも、本国に記事を送った。
そこでケネディ政権は、本国の編集陣の上層部に働きかけた。

63年、仏教僧が南ベトナム政府に抗議して焼身自殺した。
これを見て、南ベトナム大統領の義理の妹が「あれは単なる坊主のバーベキュー料理だ」とテレビで公言し、それを知ったケネディは激怒する。
その1年前、ある記者が、この悪名高い女性を、「極度に嫌悪された人物」と記事にした。
すると、ニューズウィーク紙は政府の圧力に負けて、替わりの特派員を送った。
その特班員はその女性を「かの美しく意志強気女性」と報じた。


戦時中の報道写真:サイゴン市内と郊外の様子

戦時中の報道写真:サイゴン市内と郊外の様子

< 4.5.戦時中の報道写真:サイゴン市内と郊外の様子 >

次ぎは、タイム紙の番だった。
63年、二人のサイゴン特派員が長い戦況報告を本社に送った。
それは「ベトナムでの戦争は敗北しつつある」で始まっていた。
この記事が掲載されたとき、この1行は消えていた。
そして「ベトナムの事態は好転しており、政府軍部隊はこれまでになく、よく戦っている」に替わっていた。
その二人の特派員は、記事の差し替えに抗議し、受け入れられず辞めた。

現地で必死に伝えようとする特班員と圧力に屈する本社編集部があった。


ホワイトハウス 

< ホワイトハウス >

政府は如何にして真実が漏れるのを防いだのか
特派員は都合の悪い記事(南ベトナム政府の腐敗や圧政の指摘、軍事顧問団の戦闘行為)を書けば、現地の官憲から忌避された。
また、現地の米軍報道官は本当の大失態を言わず、頻繁に起こる小さな失態だけを発表した。
一方、米国の編集者は、ホワイトハウスと国防総省の見解とベトナム特派員の記事が異なる場合、後者の記事を無視した。
後日、特派員が事実を書いていたことは、暴露されたペンタゴン・ペーパーズから判明している。

ホワイトハウスのある報道官が声明を出した。
「ベトナム発のニュース記事は感情的で不正確である」
国家安全保障担当顧問が残したメモから、上記発言の目的が読める。
「コミュニケ(声明)は何も言うべきではない。常に報道陣の目をくらませ、からかう術に長けるべきだ」

しかし、これら圧力に抗したケースもある。
ケネディはニューヨーク・タイムズの発行者に、ベトナムへの介入政策に反対する記事を書き続ける現地特派員を、配転するように依頼した。
その発行者は、それを拒否し、逆に記者の要求する休暇を取り消し、続投させた。

次回、特班員の葛藤を追います。
















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