20210411

没落を食い止める! 31: 今、世界はどうなっているのか? 2: 国内では?

  

 



< 1.期待はすれど・・、元から断たなければ! >

 

今回は、新自由主義国の政治経済の全体像を漫画的に説明します。

細かく見れば複雑ですが、実は単純明解です。

他国とは少し異なりますが、日本を例に見ます。

 

 

 

< 2. 現在の政治経済の姿 >

 

この状況は1980年代の大転換から始まりました。

新自由主義国は小さな政府と規制緩和を目指し、労働組合を潰し、グローバル化を推進し、大規模に貨幣供給の制御を始めた(かつて労働者は規制・権利擁護によって守られていた)。

 

1. 中央の黒矢印A

最初の地盤崩壊は、2段目の労働団体の弱体化です。

 

政府は企業に有利なように労働組合を弱体化させ、非正規雇用を増やすなどを行った。

政府と経済界は、これまで様々な手段を陰陽に駆使して労働組合を弱体化させて来ている、現在も。

労働組合の弱体化は、労働者寄りの政党も弱体化させることにもなる(日教組の弱体が社会党の弱体に繋がったように、これは日本だけではない)。

 

2. 中央の黒矢印B

次の地盤変化は、1段目の金融業の隆盛です。

 

政府は景気浮揚策として、投機の規制緩和と金融緩和(低金利と日本銀行の貨幣供給拡大など)を行った(日本は破格規模の土木事業も続けた)。

 

これは本来目指したものではないが、経済が良くならないので仕方なく始めたが抜け出せなくなり、大きな災いを生むようになった。

 

 

3. 上半部の赤矢印CとD

相次ぐ政策で富裕層や企業が豊かになり、政府への影響力Cが増します。

遅れて、金融業(投機)の膨張は投機家(富裕層)の影響力Dが増します。

これは金融危機とグローバル化が進む度に強くなりました。

 

一方労働者(国民)、つまり大多数の国民の所得が伸び無くなり経済成長が鈍化し、デフレが続く事になり、格差の拡大もつづくようになった。

 

 

4. 大きなピンク枠「政府」

政府は、定着するデフレを克服する為に、益々規制緩和と大型の金融緩和で景気浮揚を目指すが効果が出ない。

 

一方、政府(議員)は選挙(資金と組織票)と経済政策の為に、大きく力を付けた経済界と富裕層と強く繋がることになった。

すると政府の規制緩和(商取引、金融取引、労働者の権利、業界保護など)は恣意的になり、つまり経済界と富裕層に都合の良いものになった。

 

法人税・相続税・所得税(高額部分)の減税と消費税増税もこの結果です。

金融緩和策(低金利と貨幣供給拡大、投機奨励など)なども同じです。

当然、大多数の経済学者も経済界と政府に癒着します。

特に一党長期政権が続く日本では腐敗が強く、政策はより偏向したものになった。

 

この結果、さらに格差拡大と低所得層の消費が減り、経済が落ち込み、また金融危機が繰り返すようになった。

 

 

5. 下部の矢印EFGH

かつては国民の声が、矢印Hのように選挙を通じて、国会に反映されたのですが、今は様変わりしてしまった。

 

新自由主義国、特に米国では富裕層が選挙に大きく影響するようになった。

この理由は規制緩和により、富裕層が莫大な資金力にものを言わせ身贔屓の候補を選挙支援するようになり、また公平性を持たない報道機関が扇動出来るようになった事が大きいい(金権政治)。

 

残念な事に日本では、政治社会意識を育てない学校教育と、政府の露骨なまでのマスコミ抑圧が、一層、国民を選挙から遠ざけ、政治を不毛にしている。

 

 

* まとめ

 

欧米先進国は概ね、新自由主義国になっており、米英日が先頭を走っている。

国によってバラツキはあるが、悪化の基本構造は同じであり、グローバル化で益々競争しながら均一化され、悪化の度合いを増している。

残念な事に、政治文化が遅れ腐敗している国は一層酷くなる運命にある。

 

一方先進国でも、比較的小さな国(北欧など)は別の道を歩み、新自由主義国のような格差拡大、分断、治安悪化から免れている。

さらに幸福度など社会経済指標は世界ランキングでいつも上位にあるのが羨ましい。

 

 

 

次回はグローバル化した経済を見ます。

 

 

 

 

 

20210410

没落を食い止める! 30: 今、世界はどうなっているのか? 1: はじめに

  


*1

 

 

新自由主義(放任経済)と金融偏重が、

国・国民・世界に犠牲を強いている状況をまとめます。

格差、賃金低下、失業、治安悪化も当たり前になり、

日本だけでなく多くの国で金権政治が進んだ。

しかし、この悪夢は始まったばかりです。

 

 

* 新自由主義国の哀れ

 

現状の経済を批判すると、必ず出て来る指摘がある。

「あなたは資本主義、自由主義、さらには民主主義を否定するのか」

 

もちろんそんなつもりはありません。

この指摘は洗脳によるか、短絡思考による勘違いに過ぎない。

 

例えば、19世紀後半に帝国主義に走った英国、20世紀前半に世界大戦の口火を切った日独伊、20世紀後半に世界中で紛争を拡大した米国、これらは紛れも無く資本主義国家で、しかも概ね民主主義国家でした。

 

至極当然なのですが、資本主義は完全無欠ではないのです。

 

更にこう指摘されるかもしれない。

「最新経済学による優れた経済制度に問題があるはずはない」

 

それを言うなら、1960から70年代の経済の方が、国民にとって良かったことをどう説明するのか?(当時、日本は希望に溢れていた)

また、強大化する金融危機に毎回悪戦苦闘し、財政赤字を増やし続け、経済成長率鈍化や失業率の増大、加えて格差拡大や社会の分断が進む現状を、政府や経済学者はどう説明し、さらには是正案を提示しているのか?

 

新自由主義国の政府は、いずれ良くなるはずだと毎回政策をぶち上げるが、この30年間、国民の生活はほとんど良くなっていない。

残念ながら主流である御用学者も言い訳し逃げているだけです(高橋や岩田が好例)。

 

せいぜい一部の反骨のエコノミスト、スティグリッツ、ジェフ・マドリック、ピケティ、藤井聡らが的確に現行の経済を批判しているに過ぎない。

綜合的に対案を提示しているのはMMT現代貨幣理論のグループぐらいではないでしょうか。

 

 

*2

 

バブルの度に国民は夢を膨らませたが、いずれも必ず悪夢が訪れた。

それでも国民は夢を繋いで生きている。

 

この現状に、私は人間社会の悲しい性を見る思いがする。

 

英国が世界最大の帝国から没落し始めた頃、国民はまだかつての栄華の余韻に浸っていた。

当時の英国ではグルメ、温泉、旅行、健康番組が大流行し、没落とは無縁だった。

覇権国を誇示できた英国、帝国主義国家の内実は、赤字続きで多くの若い兵士の血を砂漠に流しただけでした(植民地に投資した資本家だけは儲けた)。

 

自国の没落さえ気付かない見たくない人間が、共に多くの国も没落している状況で没落を自覚することは、至難の業と言わざるを得ない。

 

だが世界に目をやれば光明はある。

 

幸いな事に北欧4ヵ国は、20世紀後半から新自由主義国とは別の道を歩んでいた。

そして、新自由主義国が抱える数多くの問題点から、それこそ自由であり続けている。

 

また、あれほど絶望視されていた共産主義の中国が、予想を裏切って経済の大躍進を続けている。

コロナの対応を見ても一流国、少なくとも日本よりは格上の国である事を示した。

 

つまり現在の新自由主義国だけが進むべき道では無いことが証明されている。

 

 

次回に続きます。

 

20210409

没落を食い止める! 29: この先、世界はどうなるのか? 4: 格差がもたらす危機

  



*1

 

前回、移民と分断について見ました。

今回は、格差がもたらす危機について考察します。

格差は自由の証しなどではなく、社会を破壊する力になります。

 

* 最初に銃の問題を見ます

 

皆さんは銃と聞いて、最初に脳裏をかすめるのは、米国の治安の悪さではないでしょうか。

何が治安を悪くしているか種明かしをします。

 

 

< 2.各国の銃による自殺・他殺率 >

http://ble2j.blog.jp/archives/7035778.html

 

ポイントの一つは、銃による自殺(赤)が多いことです。

実は米国も日本も10万人当たりの自殺率は15人と20人で、米国はその半数弱が銃により、当然日本は銃以外です。

もし銃が無ければ、米国の自殺は半減するはずです。

 

主眼は、米国の銃による他殺(青)が他国を圧倒していることです。

これは銃の所持率の影響でしょうか?

次のグラフを見て下さい。

 

 

 

< 3. 各国の銃保有率 >

http://honkawa2.sakura.ne.jp/9365.html

 

折れ線を見ると米国とカナダの人口当たりの保有率は90と31丁です。

両国の保有率の差は3倍ですが、グラフ2の他殺率は約6倍で、この差は何を意味するのでしょうか?

 

 

< 4. 米国(赤)とカナダ(青)の州毎の殺人件数/百万人 >

How economic inequality harms societies by Richard Wilkinson2011

https://www.youtube.com/watch?v=cZ7LzE3u7Bw

YouTubeの 724秒後)

 

ポイントは、横軸の所得格差が高い州ほど縦軸の殺人件数が高く、両国の格差の最大と最小で比べると、優に16倍にもなる。

つまり殺人の多さ(治安の悪さ)は、銃保有率よりも所得格差が原因なのです。

 

従って、米国では治安が悪いために銃を護身用にと、銃規制に尻込みする人が多く、悪循環から抜け出せないのです(全米ライフル協会の扇動もあるが)。

 

 

 

 

< 5. 米国の犯罪件数の推移 >

http://honkawa2.sakura.ne.jp/8808.html

 

これを見ると犯罪件数が70から80年代に急増していることが分かる。

この時期は所得格差と移民が急増した時期です。

(90年代以降犯罪が減っている理由は不明)

 

 

* 格差が社会に及ぼす影響について

 

格差拡大が、犯罪・治安に悪影響を与えているのが分かりました。

だが、さらに格差は社会を蝕んで行くことになります。

それが既に紹介してきた文明の衰退を招いた要因でした。

 

 

< 6. 社会問題と所得格差の相関 >

先述 by Richard Wilkinson”

縦軸(社会問題)は、国際的指標の「平均余命」「児童の算数や読み書き能力」「幼児死亡率」「殺人発生率」「囚人の割合」「13~19歳の出産率」「信用率」「肥満率」「精神病率」「社会的流動性」を加算したものです。

 

このグラフは横軸の格差が大きいほど、縦軸の社会問題が大きいことを示している

(データが10年以上前で古く、また北欧が入っていないが日本は良好でした)

 

 

 

< 7.社会の流動性と格差の相関 >

先述 by Richard Wilkinson”

YouTubeの 825秒後

 

このグラフから、米英では裕福な家庭の子は裕福で、貧しい家庭の子は貧しいと言うことになり、北欧4ヵ国は英米とは真逆だと言うことがわかります。

これは民衆の絶望や不満を高めることになる。

 

 

 

< 8.他者への信用率 >

先述 by Richard Wilkinson”

YouTubeの 551秒後)

 

この「信用率」は単純に「大抵の人を信用できる」に賛同した人の割合です。

格差が小さい北欧4ヵ国では信用率は65%と高いが、格差が一番大きい国では人口の約15%しか他人を信用できない。

ここでも英米は低い方に位置している。

 

 

 

< 9. 米国の州毎の信用率 >

先述 by Richard Wilkinson”

YouTubeの 623秒後)

 

これを見ると、格差の大きい州(MSミシシッピ)では信用率が低く、小さければ(NHニューハンプシャー)信用率が高くなる傾向は明瞭です。

 

 

* まとめ

 

ここまで来れば、格差は自由の証しなどでは無く、社会が大きな犠牲を払い、かつ衰退や崩壊の要因になることを感じたのではないでしょうか。

 

ここで簡単に崩壊のメカニズムを説明します。

 

1. 社会が腐敗し格差が拡大し始める。

社会が腐敗していなければ、民主国家にあっては国民の意向で格差拡大を防げます。

しかし腐敗した政府(御用マスコミなど)によって格差は自由の証しなどと洗脳され、また不都合な真実は隠蔽される。

つまり社会が腐敗しだすと、雪だるまが坂を転がるように大きくなるのを止めるのは難しくなるのです。

 

2. 所得格差の拡大が社会を疲弊させる。

大半の所得が減り、低所得層の拡大と固定化が進み、治安が悪化し、民衆に絶望感と不満が高まります。

しかしここで、民意が適切に政治に生かされば良いのですが、残念ながら、既に特権階層が政治を操るようになっています。

 

3. そして暴発します。

多くの人は真実から遠ざけられ(愚民政策、マスコミ支配)、地域や国に対する信頼を無くしている。

そこに手短で魅力ある解決策を提唱する煽動家(フェイク男)が出現する。

こうなると一気に世論は熱狂し暴走を始める。

 

これがヒトラーであり、トランプであり、太平洋戦争前の日本でした。

 

おそらく今のまま格差が拡大して行くと、分断はより厳しくなり、米国は暴走を始め、世界は大きな災厄に見舞われるだろう。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

20210408

没落を食い止める! 28: この先、世界はどうなるのか? 4: 移民と分断について

  





*1

 

前回、戦争と恐慌の関係を見ました。

今回は、分断と移民について考察します。

身勝手な政策がやがてブーメランになって災いとなる好例です。

 

 

* なぜ国内に分断が起きるのか?

 

先ずは経済低迷による失業者増大、次いで経済格差の拡大でしょうか。

次いで分断に拍車をかけるのが移民や難民、民族や宗教の違いです。

 

米国の分断は80年代頃から勢い付いたように思う。

以下の図を見て下さい、当時の白人層が何を恐れていたかが予想できる。

 

 

 

< 2. 米国への移民と人口構成の変化 >

 

上図:

大戦後、移民が急速に復活するが、移民法の改訂を切っ掛けにして、白人以外が急激に大勢を占めるようになった。

不法移民は現在累計1000万人になり、多くが中南米からであった。

 

下図:

2050年には白人が50%を切り、さらに減っていくことになる。

 

トランプはこの危機感を捉えて、移民難民の排斥を訴えることで人気を得た(ヒトラーはユダヤ人と共産主義を)。

 

 

* なぜ移民難民は増えるのか?

 

意外と思われるかも知れないが、人類史は移民の歴史でした。

古代ユダヤ王国を造ったのはユーフラテス川流域からの避難民の群れでした。

現生人類に始まりゲルマン人、モンゴル人、女真族、オーストロネシア人(南太平洋)、アメリカ人も故国を離れ、長き移動の果てに新しい文明や国を造って来た。

 

確かに、数世紀前までは移民・難民は主に気候変動(乾燥)により故郷を発たなければならず、行先で血生臭い戦いの末に定住地を得ることになった。

 

それでは現在の移民難民は何に起因しているのでしょうか?

 

大きく二つの要因があり、一つは紛争です。

1億人にのぼる難民の多くはアフリカ・中東で生まれていますが、この多くは大国の干渉が発端の紛争でした。

主に植民地政策の残滓(アフリカ)、冷戦による米ソの代理戦争(ベトナム)、キリスト教とイスラム教の対立を煽った米国のイスラエル支援(中東)です(代表的地域を示す)。

 

今一つは貧困です。

20世紀前半、貧困はドイツや北欧、東欧にもあり、多くが米国に移住したが、彼らは白人でした。

しかし大戦後、アジアや中南米の人々が米国に向かった。

 

中南米はなぜ困窮したのか?

 

この地は、植民地からの独立を19世紀には終え、比較的順調な国もあった。

しかし多くは小国で少数の支配層(白人系)が牛耳り、産業は遅れ、格差も著しかった。

 

米国は、第一次世界大戦後、中南米で最大の投資国になって行きます。

その後中南米は、世界大恐慌、第二次世界大戦、オイルショックが起きる度に人口が増大する中で経済困窮に見舞われます。

やがて中南米で政変が頻発し、多国籍企業の国有化や民主主義・社会主義を目指す国が現れます。

すると米国は冷戦と自国企業保護の為に干渉を始め、時には国防総省とCIAが反政府ゲリラを育成し、政府を傀儡の独裁者に替えた(ニカラグア、コロンビア、ミキシコ、ペルーなど、ベトナムも同じ)。

(こうして中東と同じように中南米でも米国は嫌われた)

この結果、脆弱な産業基盤と温暖化が重なり困窮するようになった。

こうして陸続きの米国に向かった。

 

 

* 移民難民は先進国にとって災いなのか?

 

実は二つの相反する側面があります。

 

なぜ欧米は移民を受け入れて来たのでしょうか?

人道的見地で難民を受け入れる事もあるが、多くは労働力として移民を必要とした。

但し、これを欲するのは企業側で、彼らが安く過酷な労働に耐えてくれるからです。

政府も歓迎した。

先進国はどこも出生率の低下に悩み、移民受け入れは人口(労働力)減を補う手っ取り早い方法でした。

当然、これは国内労働者にとっては賃金低下を招くので迷惑だった。

 

しかし問題はほんの始まりに過ぎなかった。

それは移民労働者を低賃金で雇い続けた為に、その低所得家族の教育水準が劣悪になり、やがて所得水準の低い隔離されたスラム街が誕生する。

これが治安悪化を招き、周囲と険悪になり悪循環を生んだ。

こうして移民難民は排斥されることになる。

 

ところが、これらを抑制出来ている国がある。

例えばスウェーデンには移民が30%を越える都市が幾つもあるが、これまで問題はなかった(今後?)。

これは移民であっても、スウェーデン語か英語が出来て、職能を有していれば、その職業の最低賃金が得られる制度が機能しているからです。

当然、教育制度の充実は必要ですが、国内労働者にとっても治安についても、悪化要因を排除できます。

 

 

* まとめ

 

大国(多国籍企業、投資ファンドも)は往々にして身勝手に振る舞い、少数民族や小国を疲弊させることがある。

しかし、それが周り回って自国を混乱させることになる。

そして気付かない内に取返しがつかなくなり、回復が困難で、混乱と衰退は深まるだろう。

 

だから別の民族や他国と接する時は、人権を尊重することが身を滅ぼさない為にも重要です。

 

 

次回、国内問題の銃所持と格差が何をもたらすかを見ます。

 

 

 

 

 

20210406

没落を食い止める! 27: この先、世界はどうなるのか? 3: 危機の正体 2

  



*1

 

前回、文明や帝国の崩壊、天災や金融危機について見ました。

今回は、複雑だが人類自身が生み出す危機について考察します。

 

 

 

 

*2

 

 

* 日本になぜ原子爆弾が落とされたのか?

 

日本は世界で唯一落とされた国ですが、これは日本が米国に戦いを挑み、最後まで負けを認めなかったからと言える(米国の主張)。

 

なぜ日本は経済力で10倍以上の米国に開戦してしまったのか?

これは猪突猛進した軍部独裁にあり、これを食い止められなかったことによる。

当時、ファシズムに走った国が数ヵ国しかなかった事からも異常さが分かる。

 

なぜ日本は軍事独裁化を防ぐことが出来なかったのだろうか?

 

いつの世も独裁が始まるとマスコミは封殺されるが、日本も徐々に進んでいた。

1918年、「大阪朝日」は、シベリア出兵を強行する内閣を非難する記事を掲載し、記事中に兵乱の前兆を指す「白虹日を貫けり」の一句があった。

警察はこれを「朝日」発行禁止の好機と捉え、新聞法(安寧秩序紊乱)に違反するとして「朝日」を告訴した.

(警察は、「白虹日を貫けり」が秦の始皇帝暗殺時の句だから天皇暗殺を連想させるとしたが、当時、軍と警察は徹底的に言論を抑圧していた。この状況は国民が選挙で選んだ政府の下で起こっていた。)

存続の為に、「朝日」の首脳と多くの執筆者が職を辞し、さらに「不偏不党公平穏健」に反すると自己批判した。

 

この後、政府批判の牙城(新聞)は崩れ、戦後まで立ち直ることはなかった。

この頃から御用・右翼系新聞が活気づいた。

また治安維持法と相俟って、国民は異論を唱えることも、真実を知ることも出来なくなった。

 

もし「朝日」と国民が今一歩、この時踏み止まっていれば・・・。

歴史を振り返ると、いつも悪化や衰退を食い止められたと後悔する節目があるものです。

 

 

 

* なぜ第二次世界大戦は起きたのか?

 

それは第一次世界大戦が災いしていた。

 

日本が先に他国に侵攻していたが、ドイツの参戦がなければ日本は米国に戦いを挑まなかっただろう。

 

それではなぜドイツが戦争を始めたのか?

ドイツは先の大戦による賠償金支払いで国民は巨大インフレと大失業で苦しんでいた。

1929年、さらに米国発の世界恐慌が追い打ちをかけた。

このことでドイツ社会は不安不満から相次ぐ暴力沙汰が頻発し、街は騒然となった。

そこにつけこんで国民の煽動に成功したのがヒトラーでした。

翌年、ナチスの国会の議席は12から107へと大躍進した。

彼の公約の一つが、かつての偉大な帝国への復活、つまり領土拡大だった。

こうして戦争への道をひた走ることになった。

 

日本も1920年代、3度の恐慌と関東大地震で疲弊し、世論は一気に活路を外地に求め、満州事変を起こすことになる。

 

それでは、なぜ世界を大戦へと向かわせた米国発の世界恐慌が起こったのか?

 

これは主に二つの要因があり、一つは先の大戦による軍需景気が初めての投信ブームを米国に起こしていた。

もう一つは、豊かになったことで米国が念願の金本位制に戻ったが、欧州から資金が大挙流入してしまった。

これがさらに株式ブームを過熱させ、遂にバブルが弾け、銀行救出の遅れもあり恐慌が巨大化してしまった。

 

実は、さらに遡る要因があった。

第一次世界大戦と日本の富国強兵は、英国の帝国主義が原因とも言える。

 

英国は19世紀後半、産業界が活力を失い、金融に生き残りを賭けていたが、立て続けに起こる恐慌も重なり衰退を逃れられなかった。

そこで英国は起死回生を狙いアフリカ市場へと向かい、多くの国も競って進出し(帝国主義)、やがて対立し第一次世界大戦となった。

 

この頃、日本はちょうど明治維新を迎えた頃で、エジプトと中国などで恐ろしい帝国主義の正体を目撃することになり身構えた。

こうして西欧と日本は、戦争への道を突き進むことになった。

 

こうして世界大戦が21年後に続けて起きた。

 

こうして見ると、恐慌と戦争がまた恐慌と戦争を呼び込んだように思える。まさに歴史は繰り返している。

 

 

* まとめ

 

幾つかの事例を見たが、天災、戦争、恐慌いづれも、その国の内部に災厄を大きくする要因があったことがわかる。

多くは治世者や支配階層の腐敗や暴走、または国全体の怠惰や驕りから安直な回避策に走ったことでした。

 

こうして近現代の国家は自ら繁栄と停滞で混乱するようなり、遂には自ら危機を招くようになった。

私にはそう思えてならない。

 

それでも現代なら、民主主義国家の国民が正しい情報を得られ、適切な判断が出来て、政治にこれが反映されるなら、これからの危機を救えるかもしれないが・・・

今の日本は世界はどうだろうか?

 

 

次回に続きます。

 

 

20210404

没落を食い止める! 26: この先、世界はどうなるのか? 2: 危機の正体 1

  




*1

 

前回、世界は地球規模の危機に突入すること見ました。

今回、かつての危機は突然、それとも起こるべくして起こったのかを振り返ります。

歴史が私達に心構えを示してくれるでしょう。

 

 

結論から言うと、危機を招く下地が国や社会にあって、何らかの切っ掛けによって一気に破局に向かうと言える。

 

 

* 古代ギリシャはなぜ滅びたのか?

 

ギリシャ諸国はアレクサンダー大王の一撃で軍門に下り、歴史の表舞台から消えてしまった。

 

しかし遡ること150年前、大国ペルシアすら撃退していた。

古代ギリシャは千を越える都市国家の集合体で、この大勝利後、内部抗争を繰り返し、ほぼ毎年どこかで戦争をしていた。

この戦争は過酷さと残虐さを増していき、衰退を招いた。

致命的なのは、ついぞ大連合が叶わなかったことです。

 

もう既に外部からの侵攻になす術はなかった。

 

 

* 西ローマ帝国と中国の宋王朝はなぜ滅びたのか?

 

共に軽蔑していた異民族の侵攻によって崩れ去った。

 

この東西を代表する両大帝国は、かつて素晴らしい芸術や制度を生み出し、政治・経済・文化で他を圧倒していた。

ローマは巨大軍事国家であり、宋は優れた官僚国家でした。

 

両帝国は豊かにはなっていたが、富と権力は一部の層に握られ、政治経済は彼らの特権維持に費やされた(腐敗)。

こうしてローマは軍隊を傭兵に、宋は異民族に貢納することで平和をかろうじて維持していた。

 

もう既に自力で異民族に対抗する力はなかった。

こうして帝国は共に2百年ほどで盛衰を終えた。

 

 

* 三つの文明の衰退に共通することは?

 

民衆が意気軒昂で大きな力を発揮出来た時代は、文明や帝国を築くことになった。

しかしやがて中枢、経済と政治を握る層が腐敗し怠惰になると、自らの保身には躍起にはなるが、国や民衆を守る事を放棄するようになる。

(宋では、有力士大夫が自身の資産保全と引き換えに異民族に寝返った)

分断や内部抗争が頻発するのも同じ理由からです。

 

それでは身近な危機について見ます。

 

 

< 2.福島原発事故を描いた映画 >

映画「フクシマフィフティ」は原発の現場を活写し、「太陽の蓋」は混乱の全体像を描いている。)

 

 

* 福島原発事故は天災か?

 

大地震が予兆も無く突然襲い、大きな津波が大災害をもたらした。

 

しかし各地の港には古くからの津波の伝聞(石柱碑)が残っている。

まして原発事故は、以前から一部の研究者らによって大津波や電源喪失の可能性が指摘されていたが、電力会社側と政府によって握り潰され、対策は講じられなかった。

 

注意すべきは、当時の内閣や原発オペレーターの奮闘だけでは大事故が防げなかった事です。

結局、原子炉格納容器に偶然に穴が開き圧力が低下し、大爆発が起こらなかったからこそ半径200kmを越える大災害にならなかった(映画「フクシマフィフティ」でも一言セリフがあった)。

 

 

< 3.日本列島は巨大地震地帯 >

 

つまり事前の対策、むしろ原発不採用こそが必要です。

10年経った今でも多くの避難者を出している原発事故は、多くが手抜きによる人災と言えます。

 

 

 

< 4.アジアのコロナ感染者数 >

緑線が日本でインドに次いで2位(縦線目盛りは対数)

 

 

* 日本のコロナ禍は天災か?

 

コロナウイルスがなければこんなことにはならなかった。

 

しかし以前から疫学者は地球温暖化とグローバル化で巨大なパンデミックが人類を脅かすだろうと指摘していた。

 

一方、同じような発症率が予想される東アジア諸国に比べ、日本は人的・経済的な被害が大き過ぎる。

感染が確認されてからの医療体制の拡充、マスク手配、PCR検査拡大、ワクチン接種など、あらゆる政府の対応が他国より遅れに遅れている。

しかもオリンピックを控えて、他国より適切な対処が必要にも関わらず首脳は精神論を唱えるばかり。

 

 

< 5. 日本のコロナワクチン接種の遅れ >

1月14日時点で米国は1千万回、日本は3月26日で80万回、しかも停滞している。

 

結局、政府と官僚の日頃からの危機管理能力低下が災いを大きくしている。

 

 

* 1980年後半、日本は久々の好景気到来と浮かれていたが

 

当時余裕のある人で、これはやがて崩壊するかもしれないと用心し投機や浪費に走らなかった人は稀だったろう。

 

しかしバブルは弾け、周囲で羽振りの良かった人が株や土地転がしで大損し、ついには夜逃げする人も出た(半年ほどで数百兆円が消えた)。

バブルは麻薬と一緒で、人類は中毒症状(金融危機)を恐れながらも麻薬(バブル)を手放せないでいる。

なにせ著名なFRB議長すらバブルの火消し時期を見誤り続けている。

バブル崩壊の甚大な被害と、これを生み出しているのが金融・経済政策だと言うことは既に明白です。

 

つまり、これは人類が自ら生み出し、自らを害する典型的な現代危機の代表です。

 

 

* 原発事故、コロナ禍、金融危機に共通することは?

 

前の二つは、天災を切っ掛けにして怠惰な政治が災いを大きくしているケースです。

他国にも同じ状況があるにも関わらず、日本だけが酷い結果を招くのですから明白です。

(原発は世界にありますが、これだけ地震や津波に襲われる所はない)

 

バブルと金融危機は、正に人間社会が作り出した災厄です。

 

つまり、どれも私達、政府のあり方で危機の発生と回避が決まるのです。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

20210403

没落を食い止める! 25: この先、世界はどうなるのか? 1:はじめに

  



*1

 

これまで、世界が1980年代に道を誤った事、

お粗末な日本政府がさらに悪化させて来た事を見ました。

この先世界がどうなるかを考えます。

 

 

* 80年代に始まった転換策は次の四つに尽きる

 

A. 労働者の賃金を下げる

B. 市場を自由競争に任せる(放任)

C. 通貨発行減でインフレを終わらせる

D. グローバル化を進める

 

上記の政策で功を奏したのは、Ⅽのインフレを撃退した事、Dの世界貿易額が増大したことです。

AとBについては、フランス、ドイツと北欧などは抑制気味か別の道を選んだが、グローバル化には勝てず、苦戦を強いられている(スウェーデン)。

他の先進国ではAはほぼ完璧に、Bは恣意的に実施している。

 

 

* やがて災厄が先進国を覆うようになった

 

E. 経済成長率が低下した

F. 国内の格差が拡大した

G. 累積財政赤字が増大した

H. 金融危機が繰り返し巨大化した

I. 多国籍企業や巨大資本が世界を翻弄している

J. 莫大な資金を持つ超富裕者層が、国や世界を動かしつつある

 

これらは80年代の経済政策の帰結ですが、他にも深刻になりつつある問題があります。

 

K. 世界各地で紛争が絶えず、難民が増大し、人種や民族間の差別・分断が深まり、地球温暖化が厳しさを増し、地球資源の枯渇が迫っている。

 

 

ここで疑念を持つ人もいるでしょう。

世界は良くなっているはずだと!(特に金融業界で生きる人)

 

結論から言えば、発展途上国は概ね経済を向上させ、生活水準や衛生状態、政治も良くなっている。

だが世界的な危機が起これば、ひとたまりもない。

 

 

 

< 2. 1988〜2008年間での実質所得の伸び >

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd122130.html

このグラフから広範囲に発展途上国の所得が向上している一方で、先進国内で所得格差が拡大したことがわかる。

 

一つの誤解は「ファクトフルネス」です。

 

この本は、世界や社会を悲観的に見過ぎていることに警鐘を鳴らし、現実のデーターを見せて、その誤りを指摘しています。

この本は重要で、発展途上国自身の努力と相俟って、グローバル化に伴う経済発展と、人々が世界に関心を高めた結果として国際機関の援助や監視が功を奏したことを読者は実感できるでしょう。

 

指摘していることは正しいのですが、残念ながら一部しか見ていません。

著者は、「国境なき医師団」等の医師として世界の発展途上国を巡り活躍されていたので、関心が発展途上国に限定されており、地球規模の将来への視点(危険予知)が乏しい。

従って、現在起きているパンデミックや地球温暖化の影響、先進国内の分断や民族対立、経済問題については完全に欠落しています。

(著者に悪意はないが、政府に忖度し政府の悪い情報を隠蔽している日本のマスコミと一緒になってしまった)

 

思い出して欲しい、19世紀末から世界が巨大な侵略と戦争に巻き込まれたが、これを始めたのは当時の大国でした。

つまり、今、軋み始めている先進国こそが危機の元凶になる可能性がある。

 

残念ながら、この本はこの視点が欠如している。

 

 

* それでは将来どうなるのか?

 

前述のE〜J項がより悪化し、最悪の事態の引き金になるでしょう。

 

L. 経済成長しても、大多数の国民の所得は下落する。

M. 格差が昂進し分断が進み、超富裕層(資金)は国境を越える。

N. いずれかの国が財政破綻かハイパーインフレを起こし、世界に伝播するだろう。(以前は、国民を困窮させる超緊縮財政、経済を破壊するハイパーインフレを起こす財政破綻が起こると言われていたが、MMT理論は条件付きでこれを否定している。しかし一ヵ国でも起きると・・・)

O. 金融危機が巨大化し、最後には経済が破綻し、大戦の引き金になるかもしれない(歴史は繰り返す)。

P. 巨大化する資金が世界を混乱させ、益々一部の人々が政治・経済を牛耳ることになるだろう。

 

 

*3

 

 

* 実は、問題はこれからです。

 

上記のL〜P項が進むと、前述のK項(地球温暖化、地球資源枯渇など)との関連で世界は一気に破局へと向かうでしょう。

 

その最大の理由は国内の分断と多国間の対立が激しくなるからです。

経済破壊と格差拡大、民族差別感情の高まりは、ヒトラーやトランプのように国民の暴発を誘発するでしょう。

さらに、一部の超富裕層に政治と経済を握られると政治は国民から奪われてしまう。

 

そうなると世界的な危機である、パンデミック、地球温暖化(炭素税施行など)、資源戦争への協同対処が困難になる。

またグローバル化した自由主義経済の問題点(タックスヘイブンへの課税、国を越えた金融課税、各国の法人税減税と賃金削減競争など)を解決するには世界が一致して協力することが必要なのですが、不可能になるでしょう。

 

こうなると、行き着く先は地獄でしかない。

 

 

次回に続きます。