20210406

没落を食い止める! 27: この先、世界はどうなるのか? 3: 危機の正体 2

  



*1

 

前回、文明や帝国の崩壊、天災や金融危機について見ました。

今回は、複雑だが人類自身が生み出す危機について考察します。

 

 

 

 

*2

 

 

* 日本になぜ原子爆弾が落とされたのか?

 

日本は世界で唯一落とされた国ですが、これは日本が米国に戦いを挑み、最後まで負けを認めなかったからと言える(米国の主張)。

 

なぜ日本は経済力で10倍以上の米国に開戦してしまったのか?

これは猪突猛進した軍部独裁にあり、これを食い止められなかったことによる。

当時、ファシズムに走った国が数ヵ国しかなかった事からも異常さが分かる。

 

なぜ日本は軍事独裁化を防ぐことが出来なかったのだろうか?

 

いつの世も独裁が始まるとマスコミは封殺されるが、日本も徐々に進んでいた。

1918年、「大阪朝日」は、シベリア出兵を強行する内閣を非難する記事を掲載し、記事中に兵乱の前兆を指す「白虹日を貫けり」の一句があった。

警察はこれを「朝日」発行禁止の好機と捉え、新聞法(安寧秩序紊乱)に違反するとして「朝日」を告訴した.

(警察は、「白虹日を貫けり」が秦の始皇帝暗殺時の句だから天皇暗殺を連想させるとしたが、当時、軍と警察は徹底的に言論を抑圧していた。この状況は国民が選挙で選んだ政府の下で起こっていた。)

存続の為に、「朝日」の首脳と多くの執筆者が職を辞し、さらに「不偏不党公平穏健」に反すると自己批判した。

 

この後、政府批判の牙城(新聞)は崩れ、戦後まで立ち直ることはなかった。

この頃から御用・右翼系新聞が活気づいた。

また治安維持法と相俟って、国民は異論を唱えることも、真実を知ることも出来なくなった。

 

もし「朝日」と国民が今一歩、この時踏み止まっていれば・・・。

歴史を振り返ると、いつも悪化や衰退を食い止められたと後悔する節目があるものです。

 

 

 

* なぜ第二次世界大戦は起きたのか?

 

それは第一次世界大戦が災いしていた。

 

日本が先に他国に侵攻していたが、ドイツの参戦がなければ日本は米国に戦いを挑まなかっただろう。

 

それではなぜドイツが戦争を始めたのか?

ドイツは先の大戦による賠償金支払いで国民は巨大インフレと大失業で苦しんでいた。

1929年、さらに米国発の世界恐慌が追い打ちをかけた。

このことでドイツ社会は不安不満から相次ぐ暴力沙汰が頻発し、街は騒然となった。

そこにつけこんで国民の煽動に成功したのがヒトラーでした。

翌年、ナチスの国会の議席は12から107へと大躍進した。

彼の公約の一つが、かつての偉大な帝国への復活、つまり領土拡大だった。

こうして戦争への道をひた走ることになった。

 

日本も1920年代、3度の恐慌と関東大地震で疲弊し、世論は一気に活路を外地に求め、満州事変を起こすことになる。

 

それでは、なぜ世界を大戦へと向かわせた米国発の世界恐慌が起こったのか?

 

これは主に二つの要因があり、一つは先の大戦による軍需景気が初めての投信ブームを米国に起こしていた。

もう一つは、豊かになったことで米国が念願の金本位制に戻ったが、欧州から資金が大挙流入してしまった。

これがさらに株式ブームを過熱させ、遂にバブルが弾け、銀行救出の遅れもあり恐慌が巨大化してしまった。

 

実は、さらに遡る要因があった。

第一次世界大戦と日本の富国強兵は、英国の帝国主義が原因とも言える。

 

英国は19世紀後半、産業界が活力を失い、金融に生き残りを賭けていたが、立て続けに起こる恐慌も重なり衰退を逃れられなかった。

そこで英国は起死回生を狙いアフリカ市場へと向かい、多くの国も競って進出し(帝国主義)、やがて対立し第一次世界大戦となった。

 

この頃、日本はちょうど明治維新を迎えた頃で、エジプトと中国などで恐ろしい帝国主義の正体を目撃することになり身構えた。

こうして西欧と日本は、戦争への道を突き進むことになった。

 

こうして世界大戦が21年後に続けて起きた。

 

こうして見ると、恐慌と戦争がまた恐慌と戦争を呼び込んだように思える。まさに歴史は繰り返している。

 

 

* まとめ

 

幾つかの事例を見たが、天災、戦争、恐慌いづれも、その国の内部に災厄を大きくする要因があったことがわかる。

多くは治世者や支配階層の腐敗や暴走、または国全体の怠惰や驕りから安直な回避策に走ったことでした。

 

こうして近現代の国家は自ら繁栄と停滞で混乱するようなり、遂には自ら危機を招くようになった。

私にはそう思えてならない。

 

それでも現代なら、民主主義国家の国民が正しい情報を得られ、適切な判断が出来て、政治にこれが反映されるなら、これからの危機を救えるかもしれないが・・・

今の日本は世界はどうだろうか?

 

 

次回に続きます。

 

 

20210404

没落を食い止める! 26: この先、世界はどうなるのか? 2: 危機の正体 1

  




*1

 

前回、世界は地球規模の危機に突入すること見ました。

今回、かつての危機は突然、それとも起こるべくして起こったのかを振り返ります。

歴史が私達に心構えを示してくれるでしょう。

 

 

結論から言うと、危機を招く下地が国や社会にあって、何らかの切っ掛けによって一気に破局に向かうと言える。

 

 

* 古代ギリシャはなぜ滅びたのか?

 

ギリシャ諸国はアレクサンダー大王の一撃で軍門に下り、歴史の表舞台から消えてしまった。

 

しかし遡ること150年前、大国ペルシアすら撃退していた。

古代ギリシャは千を越える都市国家の集合体で、この大勝利後、内部抗争を繰り返し、ほぼ毎年どこかで戦争をしていた。

この戦争は過酷さと残虐さを増していき、衰退を招いた。

致命的なのは、ついぞ大連合が叶わなかったことです。

 

もう既に外部からの侵攻になす術はなかった。

 

 

* 西ローマ帝国と中国の宋王朝はなぜ滅びたのか?

 

共に軽蔑していた異民族の侵攻によって崩れ去った。

 

この東西を代表する両大帝国は、かつて素晴らしい芸術や制度を生み出し、政治・経済・文化で他を圧倒していた。

ローマは巨大軍事国家であり、宋は優れた官僚国家でした。

 

両帝国は豊かにはなっていたが、富と権力は一部の層に握られ、政治経済は彼らの特権維持に費やされた(腐敗)。

こうしてローマは軍隊を傭兵に、宋は異民族に貢納することで平和をかろうじて維持していた。

 

もう既に自力で異民族に対抗する力はなかった。

こうして帝国は共に2百年ほどで盛衰を終えた。

 

 

* 三つの文明の衰退に共通することは?

 

民衆が意気軒昂で大きな力を発揮出来た時代は、文明や帝国を築くことになった。

しかしやがて中枢、経済と政治を握る層が腐敗し怠惰になると、自らの保身には躍起にはなるが、国や民衆を守る事を放棄するようになる。

(宋では、有力士大夫が自身の資産保全と引き換えに異民族に寝返った)

分断や内部抗争が頻発するのも同じ理由からです。

 

それでは身近な危機について見ます。

 

 

< 2.福島原発事故を描いた映画 >

映画「フクシマフィフティ」は原発の現場を活写し、「太陽の蓋」は混乱の全体像を描いている。)

 

 

* 福島原発事故は天災か?

 

大地震が予兆も無く突然襲い、大きな津波が大災害をもたらした。

 

しかし各地の港には古くからの津波の伝聞(石柱碑)が残っている。

まして原発事故は、以前から一部の研究者らによって大津波や電源喪失の可能性が指摘されていたが、電力会社側と政府によって握り潰され、対策は講じられなかった。

 

注意すべきは、当時の内閣や原発オペレーターの奮闘だけでは大事故が防げなかった事です。

結局、原子炉格納容器に偶然に穴が開き圧力が低下し、大爆発が起こらなかったからこそ半径200kmを越える大災害にならなかった(映画「フクシマフィフティ」でも一言セリフがあった)。

 

 

< 3.日本列島は巨大地震地帯 >

 

つまり事前の対策、むしろ原発不採用こそが必要です。

10年経った今でも多くの避難者を出している原発事故は、多くが手抜きによる人災と言えます。

 

 

 

< 4.アジアのコロナ感染者数 >

緑線が日本でインドに次いで2位(縦線目盛りは対数)

 

 

* 日本のコロナ禍は天災か?

 

コロナウイルスがなければこんなことにはならなかった。

 

しかし以前から疫学者は地球温暖化とグローバル化で巨大なパンデミックが人類を脅かすだろうと指摘していた。

 

一方、同じような発症率が予想される東アジア諸国に比べ、日本は人的・経済的な被害が大き過ぎる。

感染が確認されてからの医療体制の拡充、マスク手配、PCR検査拡大、ワクチン接種など、あらゆる政府の対応が他国より遅れに遅れている。

しかもオリンピックを控えて、他国より適切な対処が必要にも関わらず首脳は精神論を唱えるばかり。

 

 

< 5. 日本のコロナワクチン接種の遅れ >

1月14日時点で米国は1千万回、日本は3月26日で80万回、しかも停滞している。

 

結局、政府と官僚の日頃からの危機管理能力低下が災いを大きくしている。

 

 

* 1980年後半、日本は久々の好景気到来と浮かれていたが

 

当時余裕のある人で、これはやがて崩壊するかもしれないと用心し投機や浪費に走らなかった人は稀だったろう。

 

しかしバブルは弾け、周囲で羽振りの良かった人が株や土地転がしで大損し、ついには夜逃げする人も出た(半年ほどで数百兆円が消えた)。

バブルは麻薬と一緒で、人類は中毒症状(金融危機)を恐れながらも麻薬(バブル)を手放せないでいる。

なにせ著名なFRB議長すらバブルの火消し時期を見誤り続けている。

バブル崩壊の甚大な被害と、これを生み出しているのが金融・経済政策だと言うことは既に明白です。

 

つまり、これは人類が自ら生み出し、自らを害する典型的な現代危機の代表です。

 

 

* 原発事故、コロナ禍、金融危機に共通することは?

 

前の二つは、天災を切っ掛けにして怠惰な政治が災いを大きくしているケースです。

他国にも同じ状況があるにも関わらず、日本だけが酷い結果を招くのですから明白です。

(原発は世界にありますが、これだけ地震や津波に襲われる所はない)

 

バブルと金融危機は、正に人間社会が作り出した災厄です。

 

つまり、どれも私達、政府のあり方で危機の発生と回避が決まるのです。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

20210403

没落を食い止める! 25: この先、世界はどうなるのか? 1:はじめに

  



*1

 

これまで、世界が1980年代に道を誤った事、

お粗末な日本政府がさらに悪化させて来た事を見ました。

この先世界がどうなるかを考えます。

 

 

* 80年代に始まった転換策は次の四つに尽きる

 

A. 労働者の賃金を下げる

B. 市場を自由競争に任せる(放任)

C. 通貨発行減でインフレを終わらせる

D. グローバル化を進める

 

上記の政策で功を奏したのは、Ⅽのインフレを撃退した事、Dの世界貿易額が増大したことです。

AとBについては、フランス、ドイツと北欧などは抑制気味か別の道を選んだが、グローバル化には勝てず、苦戦を強いられている(スウェーデン)。

他の先進国ではAはほぼ完璧に、Bは恣意的に実施している。

 

 

* やがて災厄が先進国を覆うようになった

 

E. 経済成長率が低下した

F. 国内の格差が拡大した

G. 累積財政赤字が増大した

H. 金融危機が繰り返し巨大化した

I. 多国籍企業や巨大資本が世界を翻弄している

J. 莫大な資金を持つ超富裕者層が、国や世界を動かしつつある

 

これらは80年代の経済政策の帰結ですが、他にも深刻になりつつある問題があります。

 

K. 世界各地で紛争が絶えず、難民が増大し、人種や民族間の差別・分断が深まり、地球温暖化が厳しさを増し、地球資源の枯渇が迫っている。

 

 

ここで疑念を持つ人もいるでしょう。

世界は良くなっているはずだと!(特に金融業界で生きる人)

 

結論から言えば、発展途上国は概ね経済を向上させ、生活水準や衛生状態、政治も良くなっている。

だが世界的な危機が起これば、ひとたまりもない。

 

 

 

< 2. 1988〜2008年間での実質所得の伸び >

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd122130.html

このグラフから広範囲に発展途上国の所得が向上している一方で、先進国内で所得格差が拡大したことがわかる。

 

一つの誤解は「ファクトフルネス」です。

 

この本は、世界や社会を悲観的に見過ぎていることに警鐘を鳴らし、現実のデーターを見せて、その誤りを指摘しています。

この本は重要で、発展途上国自身の努力と相俟って、グローバル化に伴う経済発展と、人々が世界に関心を高めた結果として国際機関の援助や監視が功を奏したことを読者は実感できるでしょう。

 

指摘していることは正しいのですが、残念ながら一部しか見ていません。

著者は、「国境なき医師団」等の医師として世界の発展途上国を巡り活躍されていたので、関心が発展途上国に限定されており、地球規模の将来への視点(危険予知)が乏しい。

従って、現在起きているパンデミックや地球温暖化の影響、先進国内の分断や民族対立、経済問題については完全に欠落しています。

(著者に悪意はないが、政府に忖度し政府の悪い情報を隠蔽している日本のマスコミと一緒になってしまった)

 

思い出して欲しい、19世紀末から世界が巨大な侵略と戦争に巻き込まれたが、これを始めたのは当時の大国でした。

つまり、今、軋み始めている先進国こそが危機の元凶になる可能性がある。

 

残念ながら、この本はこの視点が欠如している。

 

 

* それでは将来どうなるのか?

 

前述のE〜J項がより悪化し、最悪の事態の引き金になるでしょう。

 

L. 経済成長しても、大多数の国民の所得は下落する。

M. 格差が昂進し分断が進み、超富裕層(資金)は国境を越える。

N. いずれかの国が財政破綻かハイパーインフレを起こし、世界に伝播するだろう。(以前は、国民を困窮させる超緊縮財政、経済を破壊するハイパーインフレを起こす財政破綻が起こると言われていたが、MMT理論は条件付きでこれを否定している。しかし一ヵ国でも起きると・・・)

O. 金融危機が巨大化し、最後には経済が破綻し、大戦の引き金になるかもしれない(歴史は繰り返す)。

P. 巨大化する資金が世界を混乱させ、益々一部の人々が政治・経済を牛耳ることになるだろう。

 

 

*3

 

 

* 実は、問題はこれからです。

 

上記のL〜P項が進むと、前述のK項(地球温暖化、地球資源枯渇など)との関連で世界は一気に破局へと向かうでしょう。

 

その最大の理由は国内の分断と多国間の対立が激しくなるからです。

経済破壊と格差拡大、民族差別感情の高まりは、ヒトラーやトランプのように国民の暴発を誘発するでしょう。

さらに、一部の超富裕層に政治と経済を握られると政治は国民から奪われてしまう。

 

そうなると世界的な危機である、パンデミック、地球温暖化(炭素税施行など)、資源戦争への協同対処が困難になる。

またグローバル化した自由主義経済の問題点(タックスヘイブンへの課税、国を越えた金融課税、各国の法人税減税と賃金削減競争など)を解決するには世界が一致して協力することが必要なのですが、不可能になるでしょう。

 

こうなると、行き着く先は地獄でしかない。

 

 

次回に続きます。

 

 

20210402

没落を食い止める! 24: 日本が没落せざるを得ない要因とは 5: ふるさと納税 3

  



*1

 

前回、ふるさと納税が消費を減少させていることを確認しました。

ところが実害はさらに深刻です。

問題点を洗い出します。

 

 

< 図2.ふるさと納税寄付者の利得  >

 

図の説明

前回検討した金の出入りを、一人の寄付者で確認します。

 

寄付者は手数料2千円を支払い、ふるさと納税を申告すると、特例により納税すべき20万円をまったく納める必要が無くる(減税)。

さらに寄付先の自治体から市場価格で16万円(80%)の返礼品、多くは食品が届きます(限度30%だが還元率は遥かに高い)。

すると寄付者の世帯は、生活費(食費)を8万円(50%)節約するでしょう。

また減税20万円の内、予定外の購入に平均5万円(25%)使い、残り15万は預金(投資)などに充てるでしょう。

 

 

 

< 図3. 減税と納税の関係 >

 

図の説明

今度は全体像を掴むために、500人の寄付者で確認します。

ふるさと納税が行われると、寄付総額1億円を別の国民の納税1億円で補わなければなりません。

赤字国債発行でも良いが、本質は誰かが補わないと税収不足になるからです。

(税収1億円の国で1億円減税出来るだろうか?)

 

 

< 図4. ふるさと納税前後の全体の消費 >

 

図の説明

上図は通常の納税で、下図はふるさと納税後です。

通常、寄付予定者5百人は1億円、他の国民も1億円を納税し、計2億円が国民に直接サービスされていた(後で減税を考慮する為)。

 

ふるさと納税になると

国民へのサービス(消費)は都市から地方に移り、2億円が7千万円に減ります。

地方の返礼品業者は3千万円の売上(消費)を増やします。

寄付者は、2千5百万円を新たに消費し、4千万円を返礼品で消費を減らします。

すると都市部の返礼品(代替え)売上が4千万円減り、全国で合計1千万円減ることになる(図中の注意1)。

 

結局、合計消費は2億円から8千5百万円7+3+2.5-4=8.5)に減った。

しかも、国民への直接サービスは1億3千万円も減った。

 

 

< 図5.ふるさと納税前後の全体の流れ  >

 

上図: 通常の税制では、寄付者5百人と国民は合計2億円を納税し、国民に2億円が広く支出される。

シンプルで、国民全体が潤っています。

 

下の図: ふるさと納税が行われると大変な事態が起きた。

既に見たように、消費が減り、国民サービスが減り、減税で納税額が減り、結果、赤字なので増税される。

 

 

* まとめ 問題点の整理

ふるさと納税前後を比較する。

 

消費が減る。

2億円から合計8千5百万円に減る。

 

実は、こんな事をしているから経済が没落するのです。

数年以内に、ふるさと納税額は1兆円に達します。

すると前述の試算値から、毎年1兆1千5百億円の消費が減り、経済の足枷になります。

これを防ぐ為に1兆円の増税をしなければならないが、するとまた消費が減り、経済はダウンする(消費増税は最悪)。

結局、こんな無駄を繰り返している限り、日本は浮かばれない。

 

市民サービスが減る。

2億円から7千万円に減る。

政府は市民サービスを減らすことに無頓着です。

 

徴税は逆進性になり、かつ減る。

結局、今後も毎年、寄付者(高所得者)には1兆円減税、一般国民(低所与得層)には1兆円増税か赤字国債発行になる。

これも格差を拡大させる。

 

 

* まだ深刻な問題がある

 

ふるさと納税は、さらに自治体を疲弊させる。

支出は幾分増えるが変動があり、長期的な支出に使用出来ない。

結局、自主性のある経営を志向できない。

今の制度では、自治体は寄付金獲得競争で赤字すれすれまで返礼品業者に寄付金を注ぐだろう(表向きは出来ないが、少しでも収入増になる)。

 

本来、中央政府の徴税権をもっと地方に移管し、交付金のような自主性を阻害する税制を改めるべきです。

 

未だに政府は需要喚起策が分かっていない。

土建中心の公共工事や富裕層・法人への減税しか頭にない。

一部官僚は問題を理解しているが、今の政府では胡麻すりが横行し諫言出来る状況にない。

政府(与党議員)は選挙目当の人気取りと業界保護から 抜けられない。

これは明治期からの古い体質、そして自民党長期政権の弊害の最たるものです。

 

マスコミや経済学が機能しておらず、国民に正しい判断材料が提供されていない。

2008年に、諮問を受けて「ふるさと納税研究会報告書」が提出されているが、一部を見ただけで絶句した。

言い出した人物(菅)への忖度で、地方活性化の嚆矢になると讃え、細かい点を指摘しているだけで、私が指摘して来た重要な視点はまったく無い。

私は小さな地方自治体の諮問委員のようなことをしているが、これが実情です。

 

これも長期政権による癒着が災いしている。

 

「ふるさと納税」の基本的な欠陥は、通常の寄付行為の所得控除を「全額税額控除」に替え、商品を提供できる自治体を「寄付先に認定」したことです。

 

* 最後に

 

このような害悪を垂れ流す政策が堂々と行われ続けているからこそ、日本は没落せざるを得ないのです。

これは日本政府の愚かさが如何に無駄を生み出すかの典型例です。

このシミレーションは、結局、減税と増税の問題に尽きます。

私は経済専門でないので、ミスがあるかもしれませんが、ご容赦のほど宜しく。

 

 

次回に続きます。

 

20210401

没落を食い止める! 23: 日本が没落せざるを得ない要因とは 4: ふるさと納税 2

  

 



*1

 

前回、ふるさと納税の現状を見ました。

今回は、納税から消費への流れを追い、

如何に馬鹿げているかを説明します。

 

 

* 通常の税の流れ

 

 

< 2. 通常の税の流れ >

 

先ず基本から

 

例えば、年間収入300万円の人は、幾つかの所得控除(配偶者31万など)を差し引かれ、課税所得額が100万円になり、これに所得税と住民税の合計30%(所得で異なる)30万円を国と自治体に納めます

この税金は広く国民に使われます(消費

 

 

彼が「国境なき医師団に10万円寄付していたらどうなるか

 

 

< 3.普通の寄付行為 >

 

図の説明

寄付者確定申告すれば2.9万円還付され、彼の実質負担は7.1万円になる[(10万円-手数料2千円)x税率30%=2.94 

この2.9万円は結果的に他の国民の納税か赤字国債支払われる。

 

 

* ふるさと納税の金流れ

 

規模感を掴むために、大きな集団を想定します。

 

年収1200万円の5百人が各20万円ふるさと納税を行う。

それは都市部から地方の自治体への総額1億円の寄付になる。

彼らが4人家族とすると、ふるさと納税の全額控除の上限額は20万円なので全額還付される。

 

この結果は図のようになります。

 

 

 

< 4.金の流れ 1 >

 

図の説明

地方の自治体に千万円返礼品業者に千万円が入る(返礼品上限額は寄付金の30%)

寄付者の住む都会の自治体は、税金1億円を支出し、国が最高75補填し、最低でも2500万円の赤字になる(手数料2000円/件だけ入る)

国は最大7500万円の赤字になる

これらの赤字1億円を他の国民の納税か赤字国債で補う。

 

 

 

< 図5.返礼品無しのふるさと納税 >

 

この場合を見ると、返礼品の無い方が幾分良いように見えるが、実は国民と市民へのサービスが半減している(寄付者への還付で税が減る為)。

 

ここで異常に気付かれたかもしれないが、さらに問題がある。

 

 

* 返礼品がある場合、寄付者が消費を増やすかを検討

 

ポイントは二つあり、一つは返礼品がある事による消費減、もう一つは還付金による消費増です。

 

はじめに、返礼品による消費減を検討します。

 

 

< 図6. 返礼品人気ランキング >

 

返礼品の多くは魚介・肉・果物・パン・米・鍋セット・惣菜・加工食品・酒類等の食品で占められている。

すべて日常的に消費しているものです。

残りの家電・日用品なども、同様で多くは再度買う必要がないでしょう。

返礼品の実勢は、市場価格で寄付金の65〜109%(還元率)で手に入り、平均を少なめの80%と仮定した(還元率は「ふるさと納税ガイド」サイトで参照)。

 

ゆえに寄付した500所帯は寄付額の80%、8000万円相当の返礼品(魚介と肉など)を手に入れると推測する。

 

彼らは返礼品で食品を手に入れたら、日常購入している食品を減らし、返礼品が贅沢品なら、日常の物は安くするだろう。

例えば返礼品の肉1kgを食べて、日常食べている1kgを500gに減らすと想定する(もっと減らす可能性は高いが)。

 

従って500所帯は返礼品の市場価格8000万円の50%、4000万円(80%x50%=40%)を節約すると推測する(追記で詳細説明)。

 

 

次は、還付(減税)による消費増を検討します。

 

 

 

 

< 図7. 所得減税効果と定額給付のアンケート >

 

上図

右の棒グラフの青は給付金のGDPに対する経済効果で、1年目に23%の効果が出ている(2年度以降は通常の消費でも効果があるので省く)。

左の消費減税の方が2倍以上効果がある事に注意。

 

下図

これは定額給付を受けたら、国民が消費するかどうかを聞いたアンケート結果です。

結果は、20%の人が、新たな消費をするだろうと応えている。

ふるさと納税は年収1千万円以上の人に多いが、彼らでは30%になっている(別資料)。

 

これらを勘案して、還付金1億円の25%、2500万円を新たに消費するとした。

 

 

* 結論

 

現状のように返礼品が手に入る場合、寄付者は寄付額の40%を節約し、一方で新たに25%消費し、差額15%の消費減となる。

結果、1億円の15%、1500万円の消費が減ると推測した。

 

 

次回、この消費減を含めて、ふるさと納税が如何に経済をダメにしているか説明します。

 

 

追記: 減る消費額の推定

 

総務省: 2018年の総世帯(平均世帯人数2.33人)の食費は月平均62,819円(外食11,724円、酒類2,667円を含む)。

外食と酒類を除外した月の食費は48,428円になる。

 

総務省のふるさと納税: 2018年の一人平均年間寄付金額118,000円、他の資料より、寄付は平均6件に分けられおり1件当たり平均19,667円となる。

 

 

< 表8. 寄付者の消費行動 >

 

図の説明

毎月の食費は、前述の平均世帯のものとした。

返礼品額は還元率80%(寄付金の80%)で、前述の19,667円x80%=約1.6万円とした。

上表は返礼品を6回に分け、下表は3回に分けた。

 

返礼品を得た月は返礼品の半額を節約すると推測し、赤字で示した。

返礼品がまったく無い状況と比べると、節約することが理解できるはずです。

 

返礼品があるのに返礼品と同額・同量の食品を日常的に購入する可能性は零だろう。

つまり消費が増えることはない、減るだけです。

 

贈答用に返礼品を使うとしても、状況はあまり変わらないだろう。

常々送る先に返礼品の贅沢品を送り、さらに通常の贈答品を加えるよりは、購入を控えることになるだろう。

つまり消費は減ることになる。