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前回、文明や帝国の崩壊、天災や金融危機について見ました。
今回は、複雑だが人類自身が生み出す危機について考察します。
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* 日本になぜ原子爆弾が落とされたのか?
日本は世界で唯一落とされた国ですが、これは日本が米国に戦いを挑み、最後まで負けを認めなかったからと言える(米国の主張)。
なぜ日本は経済力で10倍以上の米国に開戦してしまったのか?
これは猪突猛進した軍部独裁にあり、これを食い止められなかったことによる。
当時、ファシズムに走った国が数ヵ国しかなかった事からも異常さが分かる。
なぜ日本は軍事独裁化を防ぐことが出来なかったのだろうか?
いつの世も独裁が始まるとマスコミは封殺されるが、日本も徐々に進んでいた。
1918年、「大阪朝日」は、シベリア出兵を強行する内閣を非難する記事を掲載し、記事中に兵乱の前兆を指す「白虹日を貫けり」の一句があった。
警察はこれを「朝日」発行禁止の好機と捉え、新聞法(安寧秩序紊乱)に違反するとして「朝日」を告訴した.
(警察は、「白虹日を貫けり」が秦の始皇帝暗殺時の句だから天皇暗殺を連想させるとしたが、当時、軍と警察は徹底的に言論を抑圧していた。この状況は国民が選挙で選んだ政府の下で起こっていた。)
存続の為に、「朝日」の首脳と多くの執筆者が職を辞し、さらに「不偏不党公平穏健」に反すると自己批判した。
この後、政府批判の牙城(新聞)は崩れ、戦後まで立ち直ることはなかった。
この頃から御用・右翼系新聞が活気づいた。
また治安維持法と相俟って、国民は異論を唱えることも、真実を知ることも出来なくなった。
もし「朝日」と国民が今一歩、この時踏み止まっていれば・・・。
歴史を振り返ると、いつも悪化や衰退を食い止められたと後悔する節目があるものです。
* なぜ第二次世界大戦は起きたのか?
それは第一次世界大戦が災いしていた。
日本が先に他国に侵攻していたが、ドイツの参戦がなければ日本は米国に戦いを挑まなかっただろう。
それではなぜドイツが戦争を始めたのか?
ドイツは先の大戦による賠償金支払いで国民は巨大インフレと大失業で苦しんでいた。
1929年、さらに米国発の世界恐慌が追い打ちをかけた。
このことでドイツ社会は不安不満から相次ぐ暴力沙汰が頻発し、街は騒然となった。
そこにつけこんで国民の煽動に成功したのがヒトラーでした。
翌年、ナチスの国会の議席は12から107へと大躍進した。
彼の公約の一つが、かつての偉大な帝国への復活、つまり領土拡大だった。
こうして戦争への道をひた走ることになった。
日本も1920年代、3度の恐慌と関東大地震で疲弊し、世論は一気に活路を外地に求め、満州事変を起こすことになる。
それでは、なぜ世界を大戦へと向かわせた米国発の世界恐慌が起こったのか?
これは主に二つの要因があり、一つは先の大戦による軍需景気が初めての投信ブームを米国に起こしていた。
もう一つは、豊かになったことで米国が念願の金本位制に戻ったが、欧州から資金が大挙流入してしまった。
これがさらに株式ブームを過熱させ、遂にバブルが弾け、銀行救出の遅れもあり恐慌が巨大化してしまった。
実は、さらに遡る要因があった。
第一次世界大戦と日本の富国強兵は、英国の帝国主義が原因とも言える。
英国は19世紀後半、産業界が活力を失い、金融に生き残りを賭けていたが、立て続けに起こる恐慌も重なり衰退を逃れられなかった。
そこで英国は起死回生を狙いアフリカ市場へと向かい、多くの国も競って進出し(帝国主義)、やがて対立し第一次世界大戦となった。
この頃、日本はちょうど明治維新を迎えた頃で、エジプトと中国などで恐ろしい帝国主義の正体を目撃することになり身構えた。
こうして西欧と日本は、戦争への道を突き進むことになった。
こうして世界大戦が21年後に続けて起きた。
こうして見ると、恐慌と戦争がまた恐慌と戦争を呼び込んだように思える。まさに歴史は繰り返している。
* まとめ
幾つかの事例を見たが、天災、戦争、恐慌いづれも、その国の内部に災厄を大きくする要因があったことがわかる。
多くは治世者や支配階層の腐敗や暴走、または国全体の怠惰や驕りから安直な回避策に走ったことでした。
こうして近現代の国家は自ら繁栄と停滞で混乱するようなり、遂には自ら危機を招くようになった。
私にはそう思えてならない。
それでも現代なら、民主主義国家の国民が正しい情報を得られ、適切な判断が出来て、政治にこれが反映されるなら、これからの危機を救えるかもしれないが・・・
今の日本は世界はどうだろうか?
次回に続きます。