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前回、1980年以前は、
米英日の労働者にとって夢に近づいた時代でした。
それでは大転換で誰が得をしたのか?
彼らこそが今も没落に拍車をかけている。
* 憤慨した勢力は立ち上がった
彼らとは、半世紀前までは順風満帆だった富裕層や企業家、投資家でした。
俗に不労所得を得ていた人々です。
かつて投機に対する規制は緩かったが、世界大恐慌以降、規制は強化され、投機家の旨味は減っていた。
さらに二度の大戦は富裕層への累進税や相続税を著しく高めていた。
また企業家は、労働者や農民の権利要求と賃金上昇に頭を痛めていた。
そこに高インフレが10年以上も続き、富裕層の莫大な資産が見る見るうちに目減りして行った。
例えば、インフレ率10%が20年続くと現金1000万円は120万円に目減りするので、資産家は背筋が寒くなったことでしょう。
そこで一大キャンペーンが張られた。
「労働者の賃上げが、インフレを招き、国民の暮らしを圧迫している」と。
一方、大多数の国民(労働者)はどうだったのだろうか?
当時、概ね賃金はインフレ率以上に上昇していた。
例えば、持ち家を建てる場合、インフレによる高金利で借金しても、持ち家の価値が上がり、返済額もインフレで目減りしていくので、遅れて買うより早く買う方が得策でした。
当時、労働者の給与は上がり続け預金金利も高かったが、現在は給与は下がり続け預金は零金利でまったく増えない、まったく上手く出来ている。もっともインフレで実質増加はそれほではなかったが、今よりは良かった。
こうして経済成長は続いていた。
最後にはスタグフレーション(不景気とインフレ)が起きたが、いまのデフレ時代を長く経験すると当時が懐かしい。
当時、政府と経済界はしきりにインフレが悪夢だと喧伝しており、私も不景気を意味するデフレの方が良いのではと思うことがあった。
ところがアベノミクスではインフレが待望され、リフレ派はかつての好況を夢見たが、賃金低下をまったく無視していたので完全に失敗した。
如何にも間が抜けていて、天才と馬鹿は紙一重の好例です。
とにかく、憤慨し立ち上がった人々の狙いは、不労所得の減少を食い止め、かつてのように資本が資本を生み出す時代に戻すことだった。
しかし、これだけではなかった。
その後、富裕層が富を集中させるに伴い政治は国民から乖離して行った。
そして格差拡大と成長の長期減退が始まった。
さらに金融危機が繰り返すようになった。
これらの結果を、当時のトップや勢力が望んだと思わないが、今は既得権益を手放したくないので、国民を洗脳し逃げ切りに必至です。
国民が気付くまでは・・・。
* データーで大転換の実態を見る
< 2.所得格差の推移 >
赤矢印は大転換政策の時期を示す。
各国の上位1%、10%の所得階層の所得が全体に占める割合を示す。
すべて同じ1980年代より、上位階層の所得が急激に増加し、今も続いている。
上図: 大転換政策を率先した米英日で格差が拡大している。
下図: 米英では上位1%の所得上昇がさらに激しく、格差は歴然だ。
それに比べると北欧やフランスは格差を抑えている。
< 3. 最高所得税率の推移 >
青線はF.ルーズベルト、赤線はサッチャー政権の時期です。
米国と英国の税率の上下と、図2の格差の上下が逆向きに対応しているのがよくわかる。
< 4. イギリスと世界の資本の役割 >
ピケティ著「21世紀の資本」より借用。
赤矢印の濃い赤がサッチャー政権。
サッチャー登場の半世紀前は、世界的に労働運動が盛んで、
労働所得は上昇し、資本所得(不労所得)は減り続けていた。
上図: イギリスでもその傾向は歴然としている。
下図: しかし、サッチャーらが大転換政策を実施すると、資本所得の収益率が増え、それまで上昇していた成長率が逆に下がった。
これこそが大転換の狙いであり結果だったのです。
次回に続きます。
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