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今回は、賃金が上がらない理由を考えます。
* 身の回りで起きている怪奇現象
1. なぜ株価は乱高下するのか? 前回
2. なぜ賃金は上がらないのか? 今回
3. なぜ物価は上がらないのか? 次回
4. なぜ政府の累積債務は増え続けるのか?
5. なぜ経済は良くならないのか?
< 2.日本と米国の所得推移 >
上: 日本で、10分割した所得階層毎の所得推移(青線)をみると、下位2分位と5分位は下がっているが、9分位は急上昇している。
下: 米国では下がってはいないが、下位59%以下の所得層の所得はほぼ横ばい。
* なぜ賃金は上がらないのか?
先進国では、ここ30年以上、約40~80%の国民の所得は横這いで、日本だけは低下している。
それでもGDPが伸びているのは、一部の富裕層の所得がそれを上回って上昇しているからです。
先進国では上位所得層の所得が数倍以上伸び、所得が多いほどその倍率は著しく高い(英米、次いで日本で顕著)。
つまり格差拡大と共に、大多数の国民の所得が伸びないのは先進国に共通している。
賃金が上昇しなくなった理由は大きく二つある。
労働組合の弱体化と非正規雇用・個人事業家などの雇用形態の悪化です。
労働組合が機能していれば、単純に恣意的な解雇を減せ、賃金も上がる。
しかし、各国政府と経済界は団結して労働組合を弱体化させて来た。
(産業構造の変化もあるが、影響は大きくない)
政府は公共事業体を潰し、民営化と称して職員を切り、替わりに身分不安定な非組合員が同じ仕事をするようになった。
また全国的に様々な組合活動を制限する規制、一方で雇用主には労働条件の緩和(働き改革や労働契約法による首切り、賃金カットと非正規雇用拡大)を行って来た。
例えば、組合が無く、首切りが自由になれば従業員は雇用主の脅しに泣き寝入りする。
日本の労働者にとって転職は不利なので、これも賃金低下の理由になる。
柔軟な転職は産業転換に不可欠ですが、以下の条件が整ってこそです。
つまり職業別最低賃金、労働市場、転職時の失業保障と再教育制度、労働者の生涯学習意欲です。
もちろん政府だけが悪役を演じたのではない。
経済界とこれに繋がる主流の経済学、御用マスコミも、労働組合の非効率と横暴を罵るキャンペーンを続け、国民もやがて洗脳されていった。
労働界は圧倒的に資金力が劣るので、負けるのは必至だった。
上記の動きは、日本だけでなく、多くの先進国で今も勢いを増している(後に説明)。
御用学者は言う。
「企業は世界相手に厳しい競争に晒されており、企業が生き残るには、柔軟な労働市場=素早い首切り、競争力向上=賃金低下による価格低下、が絶対だ!」
概ね、国民はこの手の説明を散々聞かされてきた。
しかしこの説明は一部正しいが、大きな間違いを犯し、没落の最大理由の一つになっている。
その反証は、現在の北欧や、かつてのF・ルーズベルト時代の米国、高度成長期の日本にある。(後に説明)
かつて日本は世界から羨望の的だった。
高度成長期、米国から「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と賞賛された。
この三つの社会に共通しているのは、格差が少なく、賃金が上昇し、経済が好調だったことです。
残念な事に、日本には経済効率を下げ、さらに賃金を下げる日本固有の悪弊が蔓延っている(後に説明)。
< 3.各国の賃金と日本の所得格差 >
上: 日本だけが1997年から8.2%下がっている。
別のエコノミストは言う。
日本の賃金が安いのは、生産性が低い中小企業が多いからで、これを刷新しなければならないと。
確かに日本の生産性の伸びは鈍化している。
一部正しいが、根本を見逃している。
なぜなら生産性が上昇している国でも同じだからです。
生産性の低い業界では淘汰が必要ですが、倒産を増やさないように最低賃金を徐々に上げて、体質改善を促すしかない。
しかし輸出産業でない限り、低賃金が生産性の低さで決まるわけではなく、別の要因がある(介護職など)。
最も重要な事は、付加価値の高い産業を国内に生み出し、そこに雇用を吸収させ、低賃金産業の縮小を補うことです。
現在、政府と経済界は労働者に負担を強いるだけで上記の対策を怠っている。
(生産性が高いとは、同じ物を安く造ること。付加価値が高いとは、高く買ってくれる物を提供することです。)
* まとめ
日本が、かつての賃金上昇時代から急速に低下時代に突入した理由は、世界的な経済の動き(悪い経済システムとグローバル化)が労働組合弱体化と雇用形態の悪化を招き、これに加え、日本固有の悪弊が災いしたからです(後に説明)。
次回に続きます。
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