20160712

Bring peace to the Middle East! 20: Israeli-Palestinian conflict 2: voices of the young 2


中東平和を! 20: イスラエルとパレスチナの紛争 : 若者の声 




 
*1

I again introduce the voice of youth living in Palestine and Israel.

回に続いて、パレスチナとイスラエルに住む若者の声を紹介します。


 

< 2.  Separation barrier >
< 2. 分離壁 >

Question,  What dyou think that Israel and Palestine become after 2,000 years?
The answers for it are greatly different between both sides.

Persons answering Independent is 18 cases of the Palestinians, and 4 cases of the Israelis.
The Independent of the Palestinians includes liberation, freedom, and we come back".
It of the Israelis includes liberation, opponent leaves, we rule".

Next, as for the answers of the Palestinians, there are each 3 cases of peace and  indistinctness,  2 cases of "destruction and the worst", and 1 case of continuation .

The Israeli opinions are split.
“destruction, atom bomb, and ruin”, “peace”, “continuation” are each 4 cases of the same number as “Independent”.
Next, there are each 3 cases of “ indistinctness” and coexistence, then each 1 case of Palestine” and which side only remains.

質問 「2000年後のイスラエルとパレスチナはどうなっていると思いますか?」
この回答は、両者で大きく異なる。

「独立」と答えたのは、パレスチナ人で18件、イスラエル人で4件でした。
この「独立」には、パレスチナ人の回答解放、自由、我々が戻る」を含めた。
イスラエル人の解放、相手が去る、支配」を含めた。

パレスチナ人の回答で次いで多いものを挙げると、「平和」と「不明」の各3件、「破滅、最悪」の2件、「継続」の1件です。

イスラエルの意見分かれている。
「破滅、原爆、廃墟」、「平和」、「継続」が「独立」と同数の4件で並ぶ。
次いで「不明」と「共存」が3件で、「パレスチナ」と「どちらの一方」が各1件ある。

There is same answer that means the result depends on God in common between both.
There are 3 cases of the Messiah” in the Israelis, and 2 cases of Allah and Koran in the Palestinians.

The Palestinian youths are stronger than the Israeli youths, as their intention for exclusion and independence.
Israel has expanded the rule area with the overwhelming power, but the youths don’t feel a sense of relief.
I guess it from the total contents that they are pessimistic about the future and cling to a thread of hope.

両者に共通して、成り行きは「神」に依るとする回答がある。
イスラエルでは「救世主」の3件、パレスチナでは「神、コーラン」の2件です。

独立または他を排除の意思はパレスチナの若者の方がイスラエルの若者より強い。
圧倒する力で支配を広げるイスラエルだが、その若者達に安堵感は無い。
全体の文面から推察して共に将来に悲観的で、かすかな希望にすがっているように思える。



 

< 3.  Camp David Accords in 1978 >
< 3.1978年のキャンプ・デービッド合意、平和条約 >

Question, "Please tell me likable countries and hateful countries."
I see the Palestinian answer at first.

As for the likable countries, the most is 12 cases of home country, next, 6 cases of Iraq, and 3 cases of the Arab and Islamic world".
As for the hateful countries, the most is 14 cases of U.S. A., next 13 cases of Israel, next, 3 cases of Europe, and 2 cases of the Arab and Islamic world".
Curiously, Palestinian youths most dislike the United States than opponent Israel.

I see the Israeli answer.
As for the likable countries, the most is 17 cases of home country, next, 5 cases of countries of other continents, and 1 cases of  indistinctness.
As for the hateful countries, the most is each 7 cases of the Arab and Islamic world"and  indistinctness, next, each 3 cases of “anti-Judea” and "Europe and America", and 1 case of home country".

The Israeli youths dislike the Arab and Islamic world" than belligerent Palestine again.
There is person that dislikes home country and criticizes himself, and we can look at this case in other answers.


質問 「好き国と嫌いな国を教えて下さい。」
先ず、パレスチナ人の回答を見る。
「好きな国」最多は、「自国」の12件、次いで「イラク」の6件、「アラブ、イスラム」の3件です。
「嫌いな国」の最多は、「米国」の14件、次いで「イスラエル」の13件、欧州の3件、「アラブ、イスラム」の2件です。
奇妙な事に、パレスチナの若者は交戦国のイスラエルではなく、米国を一番に嫌っている。

イスラエル人の回答を見る。
好きな国」最多は、「自国」の17件、次いで「他の大陸の国」(国名は割愛)の5件、「不明」の2件です。
「嫌いな国」の最多は、「イスラム、アラブ」と「不明」の各7件、次いで「反ユダヤ」「欧米」の各3件、「自国」の1件です。

イスラエルの若者は、ここでも交戦国のパレスチナより周辺のアラブ全体を嫌っている。
イスラエルの若者には、他の回答でも見られたが自国を嫌い、自己批判する者がいる


 

< 4. The Gulf War 
< 4.湾岸戦争 >

further note
I guess that the reason that Palestinian youths have a good feeling toward Iraq is a statement by President Hussein at the Gulf War in 1990.
He criticized President Bush that the United States had permitted Israel to invade Palestine but didnt permit Iraq to invade Kuwait on the other hand. 
In addition, the reason why the United States is disliked were various interference and big military campaigns against the Arab in the last half century, and Arabic people dislike likewise.


補足説明
パレスチナの若者がイラクに好感を持つのは、1990年の湾岸戦争前夜のフセイン大統領の発言にあると思われる。
彼は、米国がイスラエルのパレスチナ侵略を許すのに、クウェート侵攻を非難するのは片手落ちだとブッシュ大統領を批判した。
また米国が嫌われる理由は、ここ半世紀のアラブへの干渉や軍事行動にあり、アラブの民衆も同様に嫌っている。


 

< 5.  The current situation of West Ban. It could be over at any moment  >
< 5.ヨルダン川西岸の現状、パレスチナの自治は風前の灯火 >

Summary
This result shows the intention of the youths in ten years agobut I felt a bit of brightness.
They think that Europe and America, and Arabic countries invited this war, aggravate it, and neglect it. 
What is important is that Palestine and Israel dont press the responsibility of the war only on the belligerent, and dont dislike only it each other.
They love home country, but they seem not to think that they can pull themselves from this war.

handful of a settlement activity that began approximately 70 years ago caused extraordinary numbers of people as the dead and refugees before long.
The youths seem to want to back away from this war on a personal basis, but the both antipathy comes to be deepened as a group.
And the weak seems to be destined to fall before long, and it is just such as a Jew broke up once 2,600 years ago.


This continue the next time.


まとめ
この結果は10年以上前の若者の気持ちを示しているのだが、私は少し明るさを感じた
この若者達は、欧米とアラブ各国が紛争を招きこじらせ、放置していると考えている。
重要なことは、パレスチナとイスラエルが、互いに一方的に交戦国だけに戦争開始の責任を押し付けたり、憎悪の対象にしていないことです
しかし彼らは自国を愛する一方、絶望現状から抜け出せるとは思っていないようです。

70年ほど前に始まった一握りの入植活動が、やがて途方もない死者と難民を生むようになった。
当事者の若者達は、個人として戦争から一歩身を引いているように思えるが、集団として対立は深くなるばかりです。
そして、弱者はやがて滅びる運命のように見える、かつてユダヤ人が2600年前に離散したように

次回に続く。


20160709

地中海クルーズとカナリヤ諸島クルーズ 21: テネリフェ島 3




*1

今日は、テネリフェ島の最大都市、州都のサンタ・クルス・デ・テネリフェの街歩きを紹介します。
雨も上がり素晴らしい天気になり爽やかなひとときを過ごしました。


 

< 2. テイデ山からサンタ・クルス・デ・テネリフェへに向かう >
上の写真: かつては州都で世界遺産にもなっているラ・ラグーナ。
手前は飛行場の滑走路。

中央の写真: サンタ・クルス・デ・テネリフェの内陸側の街並み。
下の写真: 港に面した中心部のスペイン広場。

この街歩きは、2016年3月8日の14:30から約2時間、距離で約3km歩きました。
スペイン広場から始め、近くのスーパーに立ち寄り、公園を目指して上がり、後は下って、クルーズ船に乗船しました。


 

< 3.街歩き開始 >
街並みは、自然あふれる小さな島とは思えない立派で落ち着いた雰囲気があります。




 

< 4.ガルシア・サナブリア公園 に到着 >
下の写真: 公園に入ります。
垣根などはなく、入場はフリーです。


 

< 5.ガルシア・サナブリア公園 1 >
下の写真: 公園の中心部にあるモニュメント。



 


< 6.ガルシア・サナブリア公園 2 >
下の写真: 公園の見学を終えて休息をとったカフェ。
サービスや周囲の景観は良かった。



 

< 7.港に向かって下る  >
幹線道路に沿って下る。
花や木々が至る所に配された落ち着いた観光都市の趣があります。


 

< 8.港に到着  >
上の写真: Monumento a la victoria. 勝利の像。
この像は先ほどの道を下って、港に出た角にありました。

中央の写真: 私達のクルーズ船。
下の写真: 港に面した道路沿いの歩道。



 

< 9.いよいよお別れです  >
上の写真: この下に降りて、クルーズ船の送迎バスに乗ります。
奥にスペイン広場が見えています。

下の写真: 船上から見たテイデ山。
写真中央に少し雪を被った頂きが、私たちが通過して来た外輪山の東側です。
夕刻になると、また雲が出てきました。
これでこの島ともお別れです。

感想
私が当初期待した大航海時代を忍ばせるものに触れる機会はなかったが、予想もしていなかった大自然の美しさを見ることが出来た。

この島は、15世紀までベルベル系の先住民が暮らす島に過ぎなかった。
しかし、スペインが大航海時代初期にここを占領し、やがてアメリカ大陸への中継地として発展した。
後に、イギリスがこの地の支配を狙ったが、この攻撃を跳ね返した。
その後、自由貿易港として栄え、リゾート地として栄えている。

大西洋の火山島の歴史と自然と今を垣間見ることが出来た1日でした。



次回に続きます。




20160707

何か変ですよ! 49: 岐路に立つ


 


*1


今まで、日本と世界の危惧すべき状況を概観して来ました。
最後に、我々は何を目指すべきかを考えます。


先ず、問題点を整理します。

日本の問題としては、以下の三つが重要でしょうか。
A: 経済対策のリフレ策の継続。
B: 憲法を改正して軍備を強化し米国との軍事同盟を強化。
C: 原発の推進。

一方、避けられない世界的な脅威が迫っていました。
D: 異常気象を頻発させる地球温暖化。
E: 食料や資源・エネルギーの枯渇。
F: 各地の内戦(中東紛争など)と難民の増加。

さらに、世界的に進行している脅威がありました。
G: 強権的(非民主的)で排外主義(非協調性)の風潮が益々強まっている。


 
*2


何を優先すべきか
私は大惨事をもたらし、かつ一度始まれば加速して悪化する脅威に対処すべきだと考えます。

そのためには「世界の協力体制」を一層進めることです。
現実には、この21世紀になってから「対立する世界」へと悪化しています。


 
< 3.タックスヘイブン >

世界が協力しなければならない理由

* 経済面
端的に言えば、政治不信を生む硬直化した政治は極端な経済格差が招いた。
例えば経済格差が少ない国ほど投票率が高く、政治不信が少ないと言える。

これを是正するには、富裕層への適正な累進課税が必要だが、これが野放しにされる言い訳に、世界的な課税が不可能だと言うのがある。
現状は、各国がバラバラに富裕層や企業に優遇税制、直言すれば脱税(タックスヘイブン)に手を貸して、景気対策と称して無駄な競争を続けている。
これも銃の保有と同じで、回りまわって大半の国民にしわ寄せが及んでいるのが現状です。
フロンガス規制など、世界は少しづつ世界的な規制を可能にして来た。

また、各国が市場を閉ざすことは、いずれ経済を悪化させるでしょう。
但し、現在、批判されているような不平等な結果を招く経済行為(グローバル化)を世界が規制する必要がある。



 

< 4. 難民申請者数の推移、難民の実数は約2倍ある >

* 軍事面
端的に言えば、一部の大国の気ままな軍事侵攻が、世界各地に紛争を撒き散らしている。
確かに、一部では平和に貢献しているが、全体でみれば弊害の方が大きく、さらにその後遺症で世界は苦しむことになった。
冷戦時代の方が死傷者の多い代理戦争はあったが、今世紀になってから紛争地の拡大に伴って難民数はうなぎ上りです。
これがすべて軍事大国によるとは言えないが、恣意的な軍事侵攻、軍事や武器の援助、蔓延する武器が火に油を注いでいるのは疑いない。


* 政治面
現在、各国で排外主義や強権的な世論が沸き上がるようになり、世界は上記の問題を解決する為の協力体制を採ることが出来なくなりつつある。



 
*5

*全体として
地球全体で起きる食料や資源・エネルギー源の枯渇、地球温暖化に対処するには、世界の協力体制が絶対に必要です。


こうして見てくると・・・
確かに、日本の現状に不安材料-巨大な累積赤字、将来不安な福祉制度、継続的な社会発展などはあるが、さらに重要なことがある。
円安、株高、企業収益、経済成長もどちらかと言えば、その影響は短期的な波のうねりに過ぎないだろう。

一番のポイントは、今まで来た道、特に欧米の悪しき先例を追い求め深入りるのか、数年先を見据え、先手を打ち始めるべきかと言う選択です。
当然、欧米の良い先例もたくさんあるので、それを見習う手もあるのですが。


これで今回の連載は終わります。
ご拝読ありがとうございました。












20160706

何か変ですよ! 48: 最大の脅威 2



*1


前回、一握りの富裕層に世界の富が集中し始めている状況を見ました。
今日は、これが引き起こす問題を検討します。

なぜ富が一部に集中することが悪いのでしょうか
私が最も恐れるのは、民主主義と協力体制が崩壊することにより世界が大惨事に見舞われることです。
崩壊に至る大まかなシナリオを説明します。


 

< 2. 世界各国のジニ係数、赤ほど格差が酷い >

一部の富裕層が巨額の資産を保有することで、豊富な資金を使い政治家と世論の操作を可能にする。
彼らは、自らに都合のよい施策を行い制度を改悪し、富裕層はさらに豊かになり、しわ寄せは政治的弱者に向かう。
こうして格差は拡大し続け、行き着くところまで行くことになる。
このシナリオは世界各地で繰り返し起こっている古代から中世、現代に続く歴史的事実です。

これが進むと、次の三つのことが起こるだろう。

A: 大半の国民は、無気力になり、政治不信が蔓延する。

B: 大半の国民は、募る不満を手頃な打開策やスケープゴートに求める。

C: 大半の国民は、ついに民主主義的な解決を放棄する。

このシナリオを現実にはあり得ないと思われるかもしれません。
しかし、すでにAのBの兆候を見ることが出来ます。


 

< 3. 欧米の投票率 >


その兆候とは何か
A項の無気力と政治不信は欧米で30~40年前から徐々に始まっていた。

欧米と日本で共通して、投票率の低下や二大政党から多党化へ、浮動票(無党派層)の拡大が続いています。注釈1.
これは政治不信が深まっていることの表れです。
これは格差拡大によって起こったと言うより、大変革時代の後の保守的傾向、良く言えば安定の時代がもたらしたと言える。
この初期は、一部の富裕層だけでなく、中間層を自任する人々にとっても良い時代だった。
一方、取り残された人々や下層の人々には夢のない時代だったのでしょう。
それでもまだ全員が経済成長を享受できたのです。

しかし、社会の深層で変化が起きていた。
多くの中間層と一部の富裕層すら所得を減らす一方、超富裕層の出現が耳目を集めるようになりました。
米国では80%以上の国民の所得が下がり続けて、格差は拡大を続けています。
これに国民が気が付いた時は既に手遅れで、政治や選挙は大金(米国ではロビストなど)に左右されるようになっていた。
こうなると、国民の不満や要望は政府に届かず、破れかぶれで手頃な打開策やスケープゴートが求められるようになった。

こうしてB項の状態が出現することになる。
これが現在のトランプ現象であり、英国のEU離脱です。
この前触れとして、欧州のネオナチやタカ派のポピュリズム(大衆迎合主義)が盛んになりつつあった。



 
< 4. 崩れるかEUの結束 >


今はどの段階か
私はこのまま放置すれば、やがてC項の状態に至り、最悪、世界大戦が始まる可能性があると思います。

そのシナリオを語る前に知って頂きたいことがあります。

英国のEU離脱がわかりやすい例です。
話は遡るが、EUの誕生は第二次世界大戦の引き金になった独仏国境の石炭地帯を共同管理しようとして始まりました。
これは画期的な事でしたが、残念なことに各国は経済で協力するが、政治には干渉しないことで合意せざるを得なかった。
国家間の経済格差が大きい中での通貨統合は非常に困難なのですが、そのうえEU全体として管理出来ないのは問題でした。
そのことが、ギリシャの破綻などを招いてしまいました。
本来、米国のよう連邦制を執るべきだのですが、英国などは強く反対した。

つまり、EUの当初の目的は戦争回避だったのですが、いつの間にか共通経済圏に留まってしまったのです。

また今回の英国のEU離脱は、第二次世界大戦前に起こった世界恐慌を受けて各国が保護貿易に走ったことを連想させます。
この後、そのことにより世界経済は急速に悪化し、やがてファシズムの台頭を生む歪な世界へと変質していったのです。


 
*5

何が起きているのか
結局、多くの国民は見かけの経済成長から自分が取り残されていると気付き始め、訳も分からず不満を募らせることになった。
しかし、既に政治は彼らの意向を反映しなくなっていた。
この状況は先進国でもスェーデンやドイツ、日本と米国ではかなり違います。
さらに軽妙に語られる打開策はいつも不発に終わる中で、彼らは政治に不信を持つようになり、親から子へと不信感は伝染していった。

そして、現実に企業倒産や失業、難民の増加、福利厚生費の減額などに接すると、彼らは即効性のある打開策を求めるようになります。

このような不満が鬱積し信頼感が廃れた社会では、排外的で強権的な解決策を提示する指導者が好まれるようになります。
その理由は、短期的には他者を犠牲にすることであって、自分が不利益を負うことのない解決策だからです。
しかし、冷静に考えれば、これは回りまわって自らに降りかかる災厄となります。
これは、銃保持や前述の第二次世界大戦前後の教訓が示しています。

我々はこの状況にどう対処すれば良いのだろうか?
次回、考察します。



注釈1.
欧米の選挙や政党の動向について「絶望の選挙結果6、7:劣悪な政治文化4、5」で解説しています。




20160705

何か変ですよ! 47: 最大の脅威 1




*1


前回、地球温暖化と資源枯渇の脅威が迫っている事を見ました。
しかし最も恐ろしいのは人間社会の劣化です。
今日は、この事について考察します。


はじめに
不思議な事に、交通事故や銃犯罪、原発事故、戦争、地球温暖化、資源枯渇の災厄に共通するものがあります。
それはローマ帝国やイースター島の文明崩壊と同じように、人間社会が生み出し、かつ制御が問われる惨事なのです。

これは実に単純な事実です。
これらは自然の限界もあるのですが、冷静になって科学的な見地に立ってば解決出来るはずです。

しかし、このことが出来ずに多くの文明崩壊や大参事は起こっています。
しかも現在、私の見るところでは世界は勢いを増して悪化しています。




< 2. この世の天国、タックスヘイブン >


何が悪化しているのか
二つの悪化が目立ちます。

経済的な悪化: 1ファンドの投機買いに始まるアジア通貨危機よって東南アジアと東アジアは大参事に見舞われ、タイ一国だけで5万人の病死者が増加した。注釈1。

政治的な悪化: 米国の大統領候補トランプ氏の人気や英国のEU分離に見られる排外主義の横行です。


経済的な悪化の例

*パナマ文書に見られる租税回避。
これは富豪になればなるほど合法的に税逃れが出来ることを意味します。
おそらく世界の総資産の約10%(日本のGDPの約2倍)が隠され、税を逃れているでしょう。

*この30年間、米国を筆頭に欧州や日本でも進められている累進課税のなし崩し。
例えば、所得税の最高税率を低下させ富裕層を優遇して来たことなどです。

*グローバル化と自由競争の名のもとに巨大資本や大国の権威(正義、法、軍、情報など)を背景に、企業が後進国を食い物にし疲弊させている。
例えば、小麦や石油などの商品価格の操作などで、弱小国の産業や食料事情に打撃を与えている。

何が悪化をもたらしたのか
このことから直ぐ連想するのは、格差拡大とグローバル化でしょうか。
しかし、この理解は少し違います。

国内と国家間の格差は日を追って増し、格差拡大がさらなる拡大をもたらす社会要因(教育格差など)はありますが、結果に過ぎない。
その元凶は、既得権益層が巨大化し、世界や国家を方向付けるようになったことにあります。




< 3.1980年代から始まった所得税の最高税率の低下 >

しかも、その発端は最近のことなのです。
富裕層を優遇する施策は、高々ここ30年ほど前から欧米で始まったのです。
20世紀前半、労働者の権利擁護によって賃金上昇が進み、経済成長(ニューディール政策などで)が起こったのですが、インフレが高進し、社会は制御不能に陥りました。
これを貨幣供給量の管理で一挙に沈静化させ、新たな時代が始まりました(マネタリズム)。
この時に、それまでの反動として政治や経済で自由主義が謳われたのです(サッチャー首相)。

当時、欧米の多くの国民はこの方向転換に拍手喝采したのです(レーガン大統領、中曽根首相)。
つまり、最初は国民の合意の下で行われたのです。
しかし、それは経済格差(所得格差、資産格差)を徐々に引き起こしていたのです。


その後、国民はこれにどのように対処したのでしょうか?
あえて言えば、皆は追認か放置したと言えます。
なぜ、欧米と日本の国民は自分の首を絞めることになる施策を受け入れ続けたのでしょうか。
これも単純なのです。

はじめは徐々にかつ深く進行していきました。
しかし、富が一度集中し始めると、あらゆる投機手法で資産は20年間で5倍にもなります。
例えば、資産は年平均利回り8%の20年間運用で4.7倍になりますが、米国の大規模運用では利回り6~10%が実績でした。



< 4. 20年間の大富豪の資産増加率 >

そうすると、そのほんの一部の資金を政治や宣伝工作に使うだけで、政治家と世論を誘導出来ます。
金額に比例はしませんが、続ければ大きな影響を与えることが出来ます、日本の原発世論が反対から賛成に転換したように。
また2012年度の米国の大統領選挙と両院選挙の費用は総額約5000億円でしたが、これは数十人の大富豪が数%のポケットマネーを拠出するだけで事足りる金額です。

最近の米国の施策、富裕層への減税や一度成立した企業への公害規制法の破棄などをみれば一目瞭然です。
結局、豊富な政治資金(裏金、献金、広告費)を有する一握りの階層の誕生が元凶なのです。
これは企業の独占状態(カルテル)と同様の悪影響を及ぼすのです。

それでは国民はこの事に気がつかないのでしょうか?」

これは微妙ですが、むしろ次のスローガンに釣られてしまうようです。
「国を取り戻す」、「経済を復活させる」
これは最近の日本や英国のEU離脱派の専売特許ではなく、ヒトラー総統やレーガン大統領も使った心地良い、幾度も繰り替えされて来た謳い文句なのです。



< 5.格差拡大の状況 >
左図: 世界の経済格差(ジニ係数は1が最悪)は現在、高止まりしている。
右図: 主要国の国内の所得格差は猛烈に拡大中。


なぜこのようになってしまうのか?
一つには格差を告発し続けている経済学者ピケティやクルーグマンのように、既得権益の代表格である金融界から自立出来る学者は皆無に近いのです。
例えば、ホワイトハウスで金融政策を担うのは、ほとんどゴールドマン・サックスの人々です。
多くのエコノミストは政財界に繋がることで生きていけるのであり、同様なことが他でも見られます。
反権力を謳い文句に活躍できるのは少数で、貧弱な資金と情報、孤立に耐えなければならない。

その政財界側のエコノミストがピケティの世界的な累進課税や国内の所得税増税の提言について意見を聞かれたら、決まってこのように答えるでしょう。
「前者は現実に不可能だ。後者は、増税すれば富裕層が国外に逃げてしまい、結局は経済に逆効果だと!」
これを聞くと、多くの国民は、現行制度の延長でやらざるを得ないと諦めることになる。

また、わざわざ自国の格差問題を正直に公表する国はありません。
さらに感情に訴える御用新聞は偏向して伝えるでしょう。
一部のマスコミや研究者は真実を訴えるでしょうが、多くの人はそれに触れることはない。
これでは、国民はよほど悪化するまで気がつくことはない。

それにしても残念なのは、そのからくりを多くの人が知ろうとしないことです。
世界機関(国連、OECD)や海外の研究所などがインターネット上で分析結果を発表しているのですが。


次回に続きます。


注釈1
連載「ピケティの資本論 19: 今、世界で起きていること 2」