20141212

何か変ですよ 35: 困難な選択 3




    

前回、リフレ策を見ました。
今回は、私が最も危機感を持っている国の累積赤字を検討します。
これは増税とリフレ策に関わります。

累積赤字とは
国と地方自治体が長年借金し続けた1000兆円以上の残高で、元金返済と金利を払い続けなければならない。
日本の国民と企業が預けた資金を国が既に使ってしまい、この借金を将来誰かが工面して返済しなければならない。

なぜ累積赤字は増えるのか
今、国が返済すれば問題は無いが、むしろ急激に増加している。
その理由は、主に三つあります。
A.毎年の借金(国債発行)が増えている。
B.毎年の国債利払いが増えている。
C.毎年の税収が少ない。


< 2. 政府債務残高の推移の国債比較、「社会実情データ図録」より >

上記三つの要因を見ます
A.これは政府の体質に起因し、収入以上に浪費する癖がついているからです。
例えば、税収40兆円で80兆円の事業をするからです。
増税出来れば良いのですが、増税する前にすべきこと、増税の方法などに問題があり、進みません。
今回は省きます。

公共工事を例に見てみましょう
例えば、景気浮揚の為と言って、国民から毎年10兆円集金して土木工事をします。
これで税収が毎年1兆円しか増えないとしたら、その差は何で埋めるのでしょうか?
借金を毎年9兆円続けることになる、これで増税とは言えませんから。
減税の場合も同様です。
政府が、そんな詐欺まがいの事をするはずがないと信じたいはずです。
当初、そんな気はなかったはずです。
10兆円の事業で50兆円のGDP増になり、税収が10兆円あると思っていたのでしょう。
しかし、徐々に、その効果が低くなって、やればやるほど赤字が増えたのです。
ここ数十年の実績が、そのことを如実に物語っています。

なかには、国の事業は元を取る必要がないと言われるでしょう。
そうです、収入の範囲でやればよいのであって、景気浮揚の為と言って赤字を増やすのが間違っているのです。
これは景気浮揚に役立たず、何処かが差額の9兆円で潤っているだけなのです。

B.利払いが最悪の事態を招くかもしれない。
国と自治体は長期金利1%で、毎年10兆円返済しても、累積赤字1000兆円の元金が減らない。
住宅ローンを借りた人なら、この恐ろしさは判るはずです。
ここでリフレ策の手元が狂って、実質金利が5%になったらどうでしょう。
5%なら毎年50兆円の利払いになり、その上、元金の返済が必要です。
現在、毎年赤字が積み上がり、リフレ策で将来金利も上昇するでしょうから、問題は急速に大きくなるかもしれません。

それこそ、国の絶対安全神話は簡単に崩れてしまいます。

C.税収が少ないのは構造的です。

なぜ税収が少ないのか? 景気が悪いからだ。なぜ景気が悪いのでしょうか?
この問題は既に見ましたが、経済構造の不適応(陳腐化)が主因です。

2例挙げておきます。
既得権益擁護の為に規制、援助金、輸入規制などで過保護にし、生産性向上意欲が低下した(一部そうでないものもある)。
為替変動に対しても同様ですが、これはあらゆるものに蔓延しています。

もう一つは、国民の貯蓄がかつて企業投資へと循環し、高度経済成長を支えたことがありましたが、現在、その貯蓄は累積赤字に化けたことです。
結局、資金が投資効果の高い企業投資に向かず、投資効果の無い土木工事に食われてしまっている。
こうして経済が上向かず、税収は落ちるばかりなのです。

そこで始めは痛みを伴はないリフレ策に頼ろうとしているわけです。
この危険性は後で説明します


累積赤字は問題でない
大きく四つの指摘があります、これを検討しましょう。

A.国が赤字で破産することは無い
多くの王朝の終焉は、ほとんど赤字(または大増税)に陥ったからと言えるでしょう。
浪費や放漫経営が祟って、王朝は商人に莫大な借金をし、時には踏み倒し、税収権・商業特権を商人に譲り、また改鋳によるインフレ(貨幣増発)を招くことになる。
その結果、この王朝は見限られ、多くは革命か外国の軍隊により、終わりを告げます。
これを倒産とは言わないが、赤字が招いた結末です。

最近、デフォルトを宣言した小国では、世界が救援することにより国家破綻は逃れたが、国民は極端な窮乏生活に耐えなければならない。
大恐慌や終戦時には借金が棒引きされたりするが、一国の放漫経営ではそうはならない。
大国の場合、米国の赤字減らしの為のプラザ合意のように、世界が助けることになるだろう。
日本の場合、どれに該当するかわからないが、国民は甚大な影響を受けるでしょう。

B.景気が良くなれば問題は無くなる
確かに税収が増え続け、数十年返済を続ければ、可能性はあるかもしれないが、現実に成功している国がないのは、上記グラフから明らかです。
欧米の多くも、好況と不況を繰り返しながら、累積赤字を増やしています。
日本は百年でも無理ですが。

C.累積赤字を補う資産が日本にはある
もうすぐその累積赤字総額が資産総額よりも越えるでしょう(数年以内)。
国民や企業、国の資産を合計したところで、不動産はほとんど役に立たず、金融資産のすべてを国債購入に回せるはずもない。
現実に、信用不安が起きそうだから、国民に国債を買ってくれと言われて買うでしょうか?

D.とっておきの手
実は、この手を私は30年程前に予想していました、今回安部首相がそれをやろうとしています。
つまりインフレを起こし、累積赤字を数分の一にしてしまうのです。
年5%のインフレ(GDP成長率込み)が30年続くと、GDPの2倍の累積赤字はGDPの0.5以下に目減りしてしまうのです。
きっと将来、政府はこの巧妙な手(危険な手)を使うだろうと思っていました。

しかしいざ始まってみると、私の読みが間違っていることに気が付いた。
それは、そんな目減りする国債をわざわざ購入する人は誰もいなくなると言うことです。
つまり国は国債の金利を上げざるを得なくなります。
例えば金利5%で元の木阿弥で、もし7%にでもなれば逆に累積赤字は今よりも数倍になります。
インフレ時の金利水準を制御可能と言う学者もいますが、過去の例では難しい。
例えば、本当に景気が良くなれば益々国債離れが進み、金利は上昇します。

むしろ怖いのは、取り付け騒ぎのように、大衆の心理に忍び込む信用不安の広がりです。
これを予測し、抑えるのは難しい、何せ世界最大の累積赤字のだから。

最後に
累積赤字は日本の原発のようなものです。
「国民の為に赤字を増やすしか手はない。」
「日本は絶対安全だ!!」
一部の識者は、以前から原発は危険だと指摘していました。
しかし、政府、産業界、御用学者、マスコミは安全と宣伝してきました。
その裏で、事故が起きても責任や賠償が企業に及ばないように法整備をしていました。

結果、どうなったでしょうか。
欧米の原発対応はフランスを除いて、特にドイツでは、はるか以前から疑い、手を打っていたのです。

その差はどこにあるのでしょうか?



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