前回までで、日本の経済状況が欧米先進国と較べてどうだったかを見てきました。
既に見たとおり、日本が将来に不安を残しているのは財政赤字でした。
今日は、一番重要な巨額の累積財政赤字をインフレで防止出来るかを中心に見ます。
< 1 各国の財政収支の推移 >
明らかに1990年以降、日本は他諸国に比べ財政悪化の一途を進んでいます。
ただドイツを除いた総べての国がマイナスで悪化傾向に突入しているように見えます。
< 2 各国の財政歳入・歳出の推移 >
上のグラフを歳入と歳出に分解したものです。
歳入のグラフでは日本を含め各国横這いです。
しかし歳出は日本だけが1990年から増加傾向にあります。
これが為に日本だけが赤字国債の発行を増やして行かざるをえないわけです。
ここから言えることは歳入が少なすぎることと歳出がやっと他諸国並になったと言うことです。
歳入が少ない理由は、税率の低さと不景気にありますが、今回消費税を上げました。
増税は必ず景気を冷やしますので、今後は景気を上げる必要があるわけです。
景気を上げるためには、つまり実質GDPを現状の0%から+2~3%にすれば良いのです。
これには公共投資などの財政出動と市中にお金を潤沢にする金融緩和があります。
しかし前者は過去数十年実施し、効果がなく赤字増に直結していました。
後者について日銀は長らく金利と国債売買で努力をしてきましたが、その効果はなく貨幣供給量(マネタリーベース)は増えませんでした。
効果がなかった理由はインフレにならないように日銀が慎重な政策を取り続けたからです。
ここで残る手段はインフレを誘導し景気を上げることに賭けるしか無いのです。
それではインフレになるとなぜ景気が良くなるのでしょうか?
良いインフレは円安、国内投資増、株価上昇、失業率低下、所得増、消費増、税収増、GDP増が連鎖的に生じます。
実はグラフ2上は、同じように見えているのですが日本以外はインフレで同じ税率でも税収額は10年で2倍になっているのです。
税収額は増えなくても日本は景気刺激策と公的保険の関係で歳出は増やさなければならないのです。
< 3 ドーマー条件 >
このグラフはリフレやインフレターゲット論を唱える学者の拠り所としているものです。
このグラフの条件ラインより上であればいつかは累積財政赤字が消滅するというのです。
理屈は簡単で、国債の金利よりGDPの成長率が高ければ現在の財政収支が赤字でも今後は必ず減って行くことを示しています。式として問題はありません。
ここで日本の大多数の経済学者と日銀、財務官僚がこれに対してなぜ懸念するかを考えます。
高橋氏の言うように単なる馬鹿だからだけではないようです。不安点だけを考察します。
上のグラフではインフレターゲット策を講じている国々がラインの上にあり、下にあり危険なのは赤点の日本と次ぎにドイツと言うことになります。
しかしグラフ1が示すように2007年を境にして状況は様変わりしており、先行き不透明感がましています。つまり財政収支が安定し続けるわけではありません。
通常、インフレが長く続くと金利が成長率よりも上昇する傾向もあります。
国債の金利が急上昇する可能性もあります。信用が失墜すればギリシャのように短期8%もありです。
日本の労働者人口減少はボデイブローのようにGDP成長率を押し下げる効果があります。
他の総べての先進諸国は移民を入れて労働者人口を増加させています。
つまりドーマー条件が破れる危険はいくらでも存在しますので、過信してはいけません。
最後に結論を書きます。
岩田氏はインフレターゲットを政府が宣言し、例えば2%を目標にし、日銀は貨幣供給量を増やし、3%は越えないように制御するべきだと言う。
出来ない時、日銀は責任を取る、この姿勢だけでも景気がよくなると言う。
危険なのは国債の金利上昇であるから、これを目安に金融緩和を制御するということになります。
私の感触では、取りあえずデフレよりインフレを目指す方向に舵を取ることです。
既に今年2月から日銀は微かに方向転換を計っています。
これが後退しないように皆さんも注視して下さい。
これで連載は終了します。どうもありがとうございました。
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