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今回は、日本の未来を考えます。
これはバラ色ではないはずです。
なぜなら日本は疲弊していく先進国と同じ道を辿っているからです。
はじめに
既に、私のブログで憂うべき状況を幾度も取り上げてきましたが、今回は若い人々の未来に焦点を当てます。
将来、日本で深刻度が増す問題
A: 年金と退職金の大幅な減額
B: 生涯賃金の大幅な減少
C: 介護費と医療費の負担増
多くの若い人は未来に不安を抱いていないように見える。
彼らは、今までもそうであったようにこれからもうまく行くと信じたいはずです。
まして現在、日本は好景気なのだから、きっとこのまま良くなって行くと期待さえしているかもしれません。
しかし、私の想定する40年後の未来(今の20~30才代の人が60~70才代になる頃)は生活がかなり苦しくなっているでしょう。
今の60~70才代に比べ、彼らが自由に使えるお金はおそらく2~3割減るでしょう。
当然、彼らのこれから受け取る生涯賃金もかなり減り、貯蓄は益々困難になり、老後資金はかなり不足するはずです。
聞きたくも信じたくもないだろうが、悲惨な結果を容易に予測できます。
この予測を行う前に、悪化が現実に起きている事を知ってもらいたい。
その先例が既に日本が手本とする先進国で起こっているのです。
先進国で今、起きていること
経済が豊かであるはずの先進国で今、何が起きているのでしょうか?
< 図2.米国のマルチ世代家族の人口比率と人口、by Pew >
上のグラフ: マルチ世代家族で暮らす人口の比率。
下のグラフ: マルチ世代家族で暮らす人口、単位百万人。
米国の総人口は現在3.2億人。
このグラフから米国のマルチ世代家族(祖父母と親子の三世代家族)の人口が1980年代から増え始め、この傾向が加速している様子が見て取れます。
特に2008年以降、急増しています。
皆さんの中には、これは移民が増えた結果ではないかと疑う人もいるでしょう。
< 図3. 米国の人種毎のマルチ世代家族の人口比率の変化、by Pew >http://www.pewresearch.org/fact-tank/2016/08/11/a-record-60-6-million-americans-live-in-multigenerational-households/
このグラフから、確かにマルチ世代家族は白人以外で多いが、むしろ白人家族の増加率は多人種より若干多いと言える。
この変化は人種に関わらず米国のすべての家族で起きていると言えます。
< 図4.英国で増え続けるマルチ世代家族数 >
“Multi-family households, 1996 to 2013, UK” by Office for National Statistics
これは英国のマルチ世代家族の最近の傾向を示しています。
ここでもマルチ世代家族の家族数の増加が見られます。
特に2008年と2012年には急増しています。
但し英国の場合、総家族数(2016年1890万家族数)に占めるマルチ世代家族の割合は直近で1.5%に過ぎない。
この米英で起きている現象は、ある重要な経済の変化と関りがある。
この背景にあるもの
< 図5. 米国の失業率の推移 >
このグラフから長期失業者が増加傾向にあることがわかります。
また1980年代前半と2008年以降(リーマンショック)は高失業率に見舞われています。
この時期と図2のマルチ世代家族の増加の時期はよく符合しています。
< 図6. 英国の失業率とGDPの推移 >
このグラフからリーマンショック以降、増加した失業率が高止まりしており、このグラフでは分からないがその余波は2012年まで続いた。
ここでも図4のマルチ世代家族の2回の増加時期が符合している。
つまり、マルチ世代家族が増えた背景には、失業率の増大があったのです。
失業者が増えると、その家族達が支え合うようになったと考えられます。
これを昔の温かい家族形態への回帰と諸手を挙げて喜ぶべきではないでしょう。
当然、所得の低下も起きています。
これには更に根の深い問題があるのです。
1980年代から英米で何が起きているのか?
< 図7. 米国の所得階層毎の所得の推移、by TheAtlantic >
このグラフはバブル絶頂期(リーマンショック前)までの所得推移を示しているが、所得下位の60%までは1979年から30年間で17~59%も所得を減らしている。
それも上位1%の層が309%増やしているにも関わらず。
ここで是非とも知って頂きたい事は、経済が好調になれば所得が一時回復し失業率も低下するのですが、バブル崩壊を繰り返す内に確実に益々多くの人が所得を低下させ、長期失業者が増えると言う現実です。
このことは図5と図7からわかります。
もしあなたが、2007年の時点で図7の所得推移を見ているとしたら、きっと未来は洋々とし復活が約束されていると思ったことでしょう。
しかし、現実は非情でした。
< 図8.米国の所得階層毎の平均所得の推移、by Business Insider >
リーマンショック後の2011年には下位90%(赤線)の人までが1970年代よりも所得を10%以上減らすことになった。
実は、このことはITバブル崩壊後の2003年(図7)でも同様のことが起きていました。
もし今の日本の好景気が世界のバブル経済に起因しているのであれば、確実にこの先、2008年のリーマンショックを遥かに越える金融危機が世界を襲うでしょう。
現在、大国(米国、ユーロ圏、日本、中国)は歴史的な貨幣供給を行って来ており、日本だけはまだ継続さえしている。
従ってバブル崩壊はほぼ間違いないでしょう、いつ起こるかは予測できませんが。
なぜこのような不条理が米国中心に起きているのでしょうか?
< 図9.高額所得者(1%)の所得シェアの推移、社会実情データ図録より >
このグラフから平等を守ろうするフランスを除いて、特に米英で高額所得者の所得シェアが1980年代から急増しているのがわかります。
残念なことに、日本も少し遅れて1990年代後半から格差が拡大しています。
この時期は日本政府が米国流の金融改革(金融ビッグバンなどの自由化)を1996年から始めたのに対応しています。
< 図10. 各国のGDPに対する社会的支出割合(福祉政策)、by wikipedia >
この図から各国の社会的支出割合(再分配)の程度が分かり、右の方がより高い。
米英でのマルチ世代家族数の違いは、所得格差を是正するはずの社会的支出が両国で違うことによるのでしょう。
米国は赤線、英国は茶色線、日本は黒線、カナダは左側欄外にある。
福祉国家と呼ばれる北欧とフランスを青線で示す。
まとめ
つまり英米で起きている家族形態の変化は、繰り替えされるバブル崩壊によって引き起こされた長期失業者の増大と国民の所得低下がもたらしたものでした。
そしてこの失業率の増大と国民の所得低下、逆に高額所得者の著しい所得増加は1980年代から起きている。
これは既に紹介しているサッチャーとレーガンによる政策「自由放任主義経済と金融重視」と「小さな政府による福祉政策(再分配)の切り捨て」への転換が始まりです。
前者の経済政策については、多くの先進国で大なり小なり実施されており、特に日本は益々その度を強めています。
後者の社会政策についても、多くの先進国が倣っていますが、逆に北欧やフランスのように強めている国もあります。
したがって、日本が現状の米国追従の経済政策を続ける限り、やがて米国と同じか、さらに急激な少子高齢化が重なり悪化は深刻化するでしょう。
つまり日本の将来は大多数の国民にとって経済的困窮が必然なのです。
しかし、一つだけ希望があります。
北欧は同じ資本主義国家でありながら、その経済・社会政策(福祉国家)により高い幸福度と高い経済力を維持していることです。
いずれ紹介します。
次回は、日本の勤労者の惨めな未来を予測します。
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