20210119

没落を食い止める! 4: はじめに 4: 抜け出せない悪循環

  






< 1. 教育行政を牽引?する人々 >

 

 

これまで悲惨な社会状況を見て来ました

これすべきですが、残念ながら不可能です。

回復を不可能にしている悪循環があるからです。

 

 

* 自浄作用を奪う悪循環!

 

日本の経済と社会は30年以上前から、明かに没落を始め、それは先進国でも際立っています。

本来なら、没落を招いている政府、少なくとも汚職や腐敗を嘘で取り繕う政府を信任出来ないと選挙で拒否しても当然なのだが。

 

政府は言い逃れに徹し、ほとんどの国民は我関せずで無視を続ける。

政府が自国の社会経済の悪化を示す数値や指標をいくら隠蔽し誤魔化しても、世界が公表する指標を少しでも見れば真実は分かります

 

それでは、なぜ国民は気付こうとせず、無視を決め込むのだろうか

 

確かにパトロネージュ、言い換えれば三バン(地盤・看板・鞄)に代表される我田引水型の政治文化からいつまで経っても抜け出せないのが大きい。

 

だが見方を替えれば、国民が政治に関心を持たず、政治に無気力だからです。

 

これは日本の投票率の低さに如実に表れています。

ちなみにスウェーデンの投票率は高齢者ほど高く、若者でも80%以上です。

北欧では中学時代から学校の授業で政治討論を始め、政治意識を高めることにより高い投票率と政治腐敗の無い社会を創ったと言えます。

 

それでは日本も教育改革を行い、若者の政治意識を高めれば良いではないかと皆さんは思うはずです。

それが出来ないのです。

 

 

*2

 

 

*3

 

日本国民の政治意識の低さは、政府の望むところなのです。

けっして日本文化のせいではないのです。

 

発端は、敗戦後、米国の指示もあり日本政府は国民が社会意識を持たないように仕向けて来たのです(エジプトなど世界中の植民地で広く行われた)。

これは米国が日本の共産主義化や労働運動を恐れたからでした。

残念ながら、日本では一党長期支配が続き、この教育政策は改まることがなかった。

 

日本人は、学生や一般人(特に女性)が政治談議することに違和感を覚えるはずです(昔は違ったが)。

実は、これが世界から遅れている証しなのです。

他の先進国ではデモは当然ですし、日本女性が北欧人と結婚すると、家庭で政治談議が出来ずに困る事にもなります。

 

さらに、最近はマスコミも政府の報道抑圧に飼いならされてしまっている。

 

つまり日本では、選挙を通じた自浄作用が働かないのです。

こうして国の中枢は腐敗し続けるのです。

いつかは国民も気付くでしょうが、後の祭りです(太平洋戦争と同じ)。

 

今の一党長期支配が続く限り、学校教育と低い政治意識の悪循環を断つことが出来ないのです。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

20210116

徳島の吉野川、剣山、祖谷渓を巡る 17: 旅行記の終わりに

  


*1

 

今回は吉野川の渓谷大歩危と池田うだつの町並みを紹介します。

最後に、今回の旅行の感想を記します。

永らくお付き合いありがとうございました。

 

 

 

< 2. 旅程、共に上が北 >

 

上: 赤枠が今回の旅行範囲です。

オレンジ枠は前回の旅行範囲、海部郡の海沿いです。

 

下: 上の赤枠を拡大した。

旅行記は青線のAから始まり、Fで終わります。

 

 

 

< 3. 大歩危 >

 

ここは吉野川の上流で、奇岩の渓流で知られている。

遊覧船やラフティングを楽しむことが出来ます。

写真は道の駅 大歩危から撮りました。

 

 

 

< 4. 阿波池田うだつの町 >

 

ここは本町通りで、撮影は三好教育センター辺りで行いました。

今回の旅行で訪れた脇町や貞光に比べ、残っている伝統的な家屋が少なく、昔の面影はほとんど無い。

1ヶ所、目を引いたのは阿波池田たばこ資料館だけでした。

 

 

< 5. 阿波池田たばこ資料館 >

 

かつてこの本町通りは、たばこの取引で栄えていた。

近くに、かつて吉野川の最上流の川湊があり、ここは交通の要衝だった。

この資料館は幕末から明治にかけて繁盛した刻み煙草の製造業者の建物でした。

 

 

* 今回の旅行を振返って

 

 

 

< 6. 脇町と沈下橋 >

 

: 脇町のうだつの町並み

良く保存されていた。

下: 吉野川の沈下橋

四十年の間、いつ来ても変わることのない穏やかな大河が迎えてくれる。

 

 

思いで深いのは、吉野川の水運と街道によって発展した商家の伝統的な町並み三ヵ所を見学出来たことでした。

 

脇町、貞光、池田のうだつの町並みを堪能しました。

 

脇町は、古くは戦国時代に端を発し、三好長慶(天下取りを争う)、次いで稲田家(蜂須賀家家老)が有数の城下町から川湊に面した商家街へと発展させた。

貞光は、剣山に源を発する渓流と吉野川の合流地で、山の産物の交易によって発展した。

池田は、吉野川最上流の川湊と、周辺のタバコ栽培によって、商いの町として発展した。

 

江戸時代に遡る古い商家が町並みとして保存されていることに感動した。

一方で、その町並みに暮らす人々やその周辺の寂れ具合にやり切れないものを感じた。

最近、日本の地方の街並みを見て回ると特に感じるようになった。

 

今回、これら三つの町が吉野川と旧街道、高い山からの支流、かつての居城の関りで発展した事を知った。

また「うだつ」の形成過程や地域による違いも面白かった。

 

 

 

< 7. 貞光と剣山 >

 

上: 貞光の元庄屋の家

町の中にある庄屋屋敷というのも興味深かった。

 

下: 剣山山頂から下山道を望む

私にとっては30年以上ぶりの登山で、二度目の訪問でした。

登り切れた事に感謝しています。

 

 

 

< 8.祖谷渓 >

 

上: 剣山リフト乗り場近くから祖谷渓を見下ろす。

 

下: 奥祖谷二重かずら橋

 

今回、奥祖谷と祖谷のかずら橋の両方を紹介しました。

私は祖谷渓には、五回以上は来ているでしょうか。

私はこの地に惹かれるものがある。

 

私の中学時代だったかもしれないが、この祖谷の平家落人を扱った映画を見た覚えがある。

それ以来、この陰影のある奥深い山里に、古く神秘的なものを抱くようになった。

 

 

 

 

 

< 9. 落合集落 >

 

今回は、妻と二人だけの旅行だったので、私の気の赴くままに、念願の平家の落人伝説を追うことが出来た。

想い始めて、50年を経て、やっと険しい路に入り込んだ。

この期を逃せば、後が無いと感じたからもしれない。

 

上: 落合集落

 

下: 近くの山里

 

この奥深く急斜面に広がる山村の人々の暮らしが気になった。

住まう人は減ってはいるはずだが、それでも畑作業中の姿を少しは見ることが出来た。

 

この山里の暮らし、特に作物、水源、交易について今回幾分理解出来た。

 

 

< 10. 安徳天皇ゆかりの地 >

 

平家の落人村は全国にあるが、安徳天皇に纏わる地は多くは無く、まして赤旗がある所はさらに少ない。

やはり少しは信じたくなってしまう。

 

それにしても、日本と言う国は不思議だ。

敵に追われて人里離れて逃げ込み隠れ住んだ人々が、後に、その血筋を尊び誇る姿に、何か違和感を感じる。

 

これがヨーロッパではどうだろうか?

英雄や奇跡を起こした人ならいざ知らず、負け組を誇るとは・・。

世界各地の先住民や少数民族も、多くはその過去に僻地への逃避行があった。

一方日本では、負け組の家系を誇りながら中央との交流も続ける。

 

対馬にも安徳天皇が逃れて来たと言う伝説があり、この天皇が当地を治めた宗家の祖先になったとされている。

日本は、いつの時代も「名」(家名や血筋)が重要なようです。

 

そんな不思議を感じる旅でもありました。

 

 

* 最後に

 

前回、徳島、海部郡の5ヶ所の漁港を訪れた。

今回の祖谷川沿いの山里や吉野川沿いの町並みと比べると、海部郡の漁港の寂れ具合が残念でならない。

 

この違いはなぜ起きるのだろうか?

本来、海沿いの方が便利で産業の立地にも適しているはずだが。

祖谷は自然と歴史の観光資源を上手く生かしたからなのだろうか?

それとも、漁業政策の拙さが災いをもたらしているのだろうか?

 

今回は、答えを得ることが出来なかった。

 

皆さん、ありがとうございました。

 

 

 

20210112

徳島の吉野川、剣山、祖谷渓を巡る 16: 二つの博物館

  

 

*1

 

今回は、東祖谷歴史民俗資料館と平家屋敷を紹介します。

 

 

 

< 2. 二つの博物館の位置、共に上が北 >

 

東祖谷歴史民俗資料館は東祖谷、祖谷街道に面して建っています。

武家屋敷旧喜多家や鉾神社への登り口の近くです。

 

平家屋敷は祖谷川から吉野川の大歩危に至る45号線沿いにあります。

深い谷に面した山の上にポツンと一軒建っています。

 

 

 

< 3. 東祖谷歴史民俗資料館 1 >

 

この展示館では、祖谷の暮らしと平家落人伝説の資料が展示されています。

 

 

 

< 4. 東祖谷歴史民俗資料館 2 >

 

民家の家財道具、農具、木こりの道具などが陳列されています。

大きい展示場ではないが、祖谷の暮らしが少し見えたように思えました。

 

 

 

< 5. 平家の赤旗と安徳天皇の路 >

 

上: 平家の赤旗(レプリカ)

この博物館で最も重要な展示です。

中央と右の旗、上部に八幡大菩薩とあります。

 

「平家屋敷阿佐家に伝わる大小二流の赤旗。

平国盛が屋島から奉持して来たと伝えれ、日本最古の軍旗と言われている。

大きい方は本陣用で、鳩文字で八幡大菩薩と書かれている。

小さい方は戦陣用で、二羽の蝶が描かれている。

大小二旗とも生絹を生地とし、800年以上の歳月によって色が褪せてしまったが、茜と紫で染められている。

所々に見える汚点は血痕、穴は矢で射抜かれた跡と伝わっている。

この赤旗は、阿佐家や村人にとっては神聖なもので、門外不出とされている。」

展示説明から引用。

 

阿佐家は、平国盛が阿佐の地に居を構え、代々阿佐氏を姓として現在に至っている。

 

平家の落人伝説の村は全国におよそ80ヶ所以上あるでしょうが、この赤旗が残っている村は数ヵ所しかないのではないか。

信憑性の高さを感じる。

 

下: 安徳天皇の路、赤線で示されている

左端が、前回紹介した御火葬場になっている。

右は祖谷川沿いに剣山へ向かっている。

 

 

 

 

< 6. 平家と天皇家の関係 >

 

平清盛と平教経(国盛)と安徳天皇の関係が分かります。

 

 

 

< 7. 平家屋敷外観 1 >

 

ここは山深い一軒屋です。

本家と蔵があり、後は山、前は立派な庭で、見晴らしも良い。

暮らし難い所だと思ったが、代々医者の家系と知って納得した。

 

祖先は安徳帝の御典医で、平家滅亡と共に祖谷に逃れ、薬草を採集し、医業を行っていた。

子孫は、祖谷一帯が蜂須賀公と戦った折、祖谷側に属した為に罰せられたが、許されこの地に居を構え、現在に至る。

 

 

 

< 8. 平家屋敷外観 2 >

 

 

 

< 9. 平家屋敷内部 1 >

 

中は展示品が雑然と並べられ、床は軋み、天井は煤で真っ黒でした。

漢方医の家系らしく、医療の資料も散見された。

 

 

 

< 10. 平家屋敷内部 2 >

 

あまり得る所は無かったが、二つほど印象に残ったことがある。

一つは、古い家族の写真があり、この山深い地の暮らしに真実味を感じたことです。

今一つは、無造作に置かれた家具と黒い煤が、更に生活感を漂わせていた。

 

次回に続きます。

 

 

20210111

没落を食い止める! 3: はじめに 3: 回避出来た国と出来ない国

  


*1

 

前回、米国の狂気を見ましたが、

何とか最悪の事態を逃れたようです。

もしこれが日本だったらどうでしょうか?

 

 

* 想像すると寒気がする

 

野党が総選挙で与党を上回る議席を獲得し、政権交代が起きそうになったら?

 

「不正選挙」がネット上に踊り、さらに数千の暴徒が選挙を正すとして議事堂を襲うかもしれない。

 

皆さんは起こらないと断言出来るでしょうか?

 

今回、トランプ再選を願う日本のウヨは、ネット上でかなり興奮していた。

彼らの激情は、自国であればなお更でしょう。

 

残念ながら日本には暴徒化した過去があります。

武装集団が官邸や議事堂を襲撃した五・一五事件と二・二六事件が1932年と1936年に起きている。

この後、日本は軍事独裁へと突き進んだ。

 

一方、米国で暴徒が国会議事堂に乱入した事件は今回が始めてでした。

死者は出たが、議事は粛々と進んだ。

 

ここに米国と日本の違いがある。

 

トランプ大統領が選ばれたこと自体が異常かもしれないが、米国には再選を阻止する良識があった。

 

前回の選挙では偏向した巨大ケーブルニュースと極右のネットニュースがタカ派の人気者を大統領候補に押し上げた。

タカ派の富豪らが彼を支援し、共和党首脳部はその人気に抗しきれず、遂には追従した。

 

しかし、今回の選挙では、多くのマスコミが一丸となって正論の報道を行い、大統領の扇動のツイートに対抗した。

またトランプの実態を暴いた暴露本が次から次と刊行された。

遅かったがツイッター社も虚言を絶つ英断を行った。

米国の言論界、マスコミは健在でした。

 

その一方・・・

 

 

< 2.共鳴、便乗、御用の果てに・・・ >

 

 

 

< 3. 身贔屓は身を滅ぼす >

 

* 翻って日本に暴走を阻止する良識があるだろうか?

 

日本では首相に対して、米国のように記者が質問攻めにし、テレビや新聞が虚言を暴き、暴露本を出し、映画やドラマで痛烈に風刺することがあるだろうか?

残念ながら御用新聞や御用・・・が幅を利かせている。

 

残念ながら無理。

 

それは政府による表裏からの報道抑圧、露骨な御用??の重用、電通の広告支配による報道抑制、国と馴れ合う記者クラブなどが、日本の報道の自由を奪っているからです。

 

日本だけを見ていると、この惨状を自覚出来ないが、世界報道自由度ランキングが示している。

 

2020年、180ヵ国中、最良は北欧4ヵ国で、米国は45位、日本は66位でした。

注目すべきは、米国は20年間で17位から、日本は10年間で11位から急落していることです。

既に日本は、正常化が進むアフリカ諸国と同列になってしまった。

 

日本の大半のマスコミは政府の汚点を隠し、報道しなくなって久しい。

それに偏向したネットとSNSが追い打ちをかけた。

 

政治意識が未熟な国民に立ち直るチャンスはあるのだろうか?

 

次回に続きます。

 

 

 

 

20210108

没落を食い止める! 2: はじめに 2: 荒れ狂う人々

  


*1

 

 

前回は、日本特有の悪弊について語りました。

今回は、米国発の狂気を見ます。

実は、これは日米に通じる社会危機を示しているのです。

 

 

* 共鳴する狂気!

 

今、共鳴する狂気が日米を席巻している。

これはトランプ大統領と安倍元首相で強まりました。

この二人は政敵を常軌を逸した手段で徹底的に貶めることで似ています。

大統領は二千ものフェイクで政敵を犯罪者に仕立て、一方で自己礼賛を行う。

彼は1億5千万票の選挙が不正だとし、陰謀論をまくし立て、選挙結果を覆す為に暴動を扇動した。

 

ところがこの騒動は日本でも盛り上がっている。

ウヨは今だに、トランプ側の流す不正選挙のトンデモ証拠に嬉々として、トランプ再選に希望を繋いでいる。

 

私には不思議でならない。

日本のウヨは、なぜ恥を晒してまでトランプ勝利に掛けるのか?

九分九厘、トランプのデマで決着する。

そうなれば、彼らは詐欺師の口車に踊らされたとして大恥をかくことになる。

 

あれほど擦り寄った安倍氏は沈黙する一方、ウヨの神様高須氏は今だにトランプに望みを託している。

良く出来たもので、高須氏の大村知事リコール署名で8割を越える不正が明かになった。

 

彼らには合理的な判断が見られない。

嫌悪するだけで、いとも簡単に相手を徹底的に叩き、かつ海を越えて一体感を持てる強さと恐ろしさがある。

これが人類を戦争に駆り立てる最大の理由です。

 

 

* トランプ現象の危険な兆候

 

この危険は、国民がいとも簡単に扇動され、国が一瞬にして暴徒化してしまうことです。

 

要点を挙げます。

 

トランプの高評価

A. 経済が良くなった。

B. 庶民の味方で、エスタブリッシュメントと無縁。

C. ビジネスの成功者であり、取引が巧み。

 

一方、悪評価

D. 品性下劣、虚言連発、女性蔑視、ブラックビジネスなど。

E. 政策や閣僚人事で一貫性・整合性が無く、身贔屓・非科学的。

F. 敵意を煽り分断することを常套手段とする扇動家。

 

米国でトランプを評価する人々が多いので、その判断を尊重すべきだろうが、冷静に上記の高評価を分析すれば大半は怪しい。

一方、悪評価は事実であり、彼は大統領に的確でないことは明白です。

例えば、トランプはこの12月に選挙結果を覆す為に戒厳令を検討していた。

 

ここで見逃してはならないことは、ポピュリズムの悲惨な結末は、ヒトラーやトランプだけでなく、安倍でも起こせることです。

今の日米、かつての独には、数十年に及ぶ分断(主に中間層の没落)があり、さらに政治家が分断を煽って勢力を得て来た背景があるのです。

 

人類は、怒りや恐怖に共感し、大集団で残酷な闘争に至る唯一の動物なのです。

 

次回に続きます。

 

 

20210107

中国の外縁を一周して 60: 中国と北欧、そして日本、これで最後になります

  


*1

 

 

続いて中国と北欧を比較し、最後の感想を記します。

今回で中国の旅行記を終わります。

有難うございました。

 

 

 

< 2.中国と北欧の観光ルート >

 

黒線が鉄道、赤線が航空路、青線がフェリーです。

番号とアルファベットが宿泊地や観光地です。

 

中国旅行は2019年10月15日~29日です。

北欧旅行は2018年5月31日~6月12日です。

 

 

 

 

< 3. 北欧の豊かさと発展 1 >

 

すべてスウェーデンの住宅です。

 

上: ストックホルム郊外の住宅

中央: ストックホルム郊外の建設中のマンション

下: 列車から見えた地方の住宅、スウェーデン

 

私は北欧三ヵ国の首都と郊外をそれぞれ数日掛けて、バス等で見て回りました。

そこで感じたのは、一般の住宅にはスラム街や古い家は無く、比較的新しい事でした。

これは地方を走る鉄道や電車の車窓からも言えました。

これまで世界35ヵ国ほど観光しましたが、これほど住宅に所得の格差が現れていない国は珍しい。

当然、都市部の鉄筋造りや石造りのビル、歴史を感じさせる豪邸は別です。

 

 

 

< 4. 北欧の豊かさと発展 2 >

 

上: スウェーデンの地方都市の景観

中央: セカンドハウスが並ぶオスロ湾の島

下: オスロのハーバーフロント開発区

 

北欧三ヵ国は中国ほど建設ラッシュではないが、都市の発展が停滞している感じでもない。

各国の都市部では大規模開発よりは、個々に改修を加え続けているようでした。

だがノルウェーの首都オスロに面した港湾は大がかりな開発中でした。

三ヵ国の開発に違いがあるのは、オスロが大戦による首都破壊がもっとも大きく、かつ石油で潤っているからでしょう。

 

 

北欧では、新旧の建築物が相俟って都市景観を構成するように企図されているようです。

彼らは、歴史的建物や景観を残そうとするあまり、新しい建物を拒絶し、都市機能を低下させてしまうことがないようにしているらしい。

一方で、新たに造られる建物は斬新なデザインが採用され、古風さを強調することがない。

むしろ斬新なデザインが市民にも観光客にも受け入れられている。

 

観光の為に、伝統的な都市景観保存に拘り過ぎると、その都市は発展出来なくなってしまうと私は思う。

この意味で北欧の進め方はベストだと考える。

 

 

 

< 5. 中国の大躍進 >

 

上: 麗江の別荘地

中央: 雲南省大理近郊の建築ラッシュ

下: 国内を網羅しつつある新幹線網

 

今回、私にとっては最終回と言えるほど端から端まで訪問して来ました。

そこで再確認出来たのは、中国の大発展が奥地まで浸透していることでした。

 

今まで、幾度か北京や上海、廈門を訪れて、高層ビルの乱立に目を見張らせ、桂林や西安の町並みが新しくなっていくことにも驚いていた。

しかし、奥地の蘭州や麗江、昆明などの賑やかさや大都会の様相は予想を越えるものがあった。

 

新幹線は日に日に延長され、瞬く間に全土が新幹線網で結ばれるでしょう。

それだけではない新幹線の車内は、私が乗った限りでは、すべて満員でした。

出来立ての巨大な新幹線駅周辺は、これまた凄い開発ラッシュでした。

多い所では数十から百棟ほどの高層マンションが建築中でした。

極め付きは、蘭州の空港近く、標高2000mの砂漠にビル等1000棟を越える都市が忽然と現れたことでした(グーグルアースで確認)。

まるで砂塵の遠くに蜃気楼を見る想いでした。

 

この中国の開発マジックには脅かされる一方、学ぶべき開発経済の新手法があるように思えてならない。

以前から、中国は中央も地方も莫大な借金でやがて破産するだろうと言われて来た。

しかしいつまで経ってもその気配は無く、大規模開発は続く。

 

中国の開発経済は欧米諸国と異なっている。

都市開発時、デベロッパーは政府から土地の使用権を購入する。

政府はその資金を公共投資などに当てる事が出来る。

立ち退く住民は、開発区に住まいと高額な補償金を手に入れる。

(ただ入居者の家賃は高騰しているようだが)

 

至る所で莫大な資金が必要になり、膨大な通貨が国から供給され続けるが、インフレは抑えられており、順調のようだ。

また海外から元建て中国国債の購入が拡大し、最近中国は外国通貨建て国債の発行を増やし、米国国債を売っている。

(なぜか逆に日本は米国債を買い続けているが、忖度か?)

 

とにかく中国経済は不思議で目が離せない。

 

 

 

 

< 6. 北欧の自転車 >

 

上: スウェーデン郊外の鉄道駅

線路の両側から緩いスロープを使って、自転車で行き来出来るようになっている。

 

下2枚: コペンハーゲンに溢れる自転車

 

街で一番驚いたのは自転車の多いことです。

西欧でも見たことはあるが、特にデンマークのコペンハーゲンが凄かった。

通勤や通学は車では無く、自転車で、それが当たり前だった。

私が30数年前にコペンハーゲンを訪れた時、自転車を見た覚えがない。

 

つまり、健康と持続可能な社会を目指して大転換を遂げていた。

単に自治体の整備ではダメで、国民の意識が高くないと出来ない。

 

 

 

< 7. 中国の移動手段 >

 

上: 昆明の交差点

交差点で、さすがに自転車を見ないが、バイクは多い。

北京ではバイクも自転車も見なかった。

 

中央: 廈門の新交通、バス専用の高架道路。

 

下: 北京のバス停のレンタル自転車の駐輪場。

北京や昆明をバスから見ていると、レンタル自転車が大量に放棄されているらしいのを幾度か見た。

 

実に中国らしい大発展と大転換がちぐはぐに進んでいる。

多くの都市は地下鉄の建設ラッシュでした。

新しい駅が出来て市民は便利さを享受している。

一方で、爆発的に拡大したレンタサイクルは曲がり角のようだ。

 

 

 

< 8. 文化 >

 

上: オスロの野外博物館

主に2世紀前からの実物民家の展示で、三ヵ国共にある。

 

中央: ロスキレのヴァイキング博物館

家族で船の工作を楽しんでいた。

この博物館や別の歴史博物館でも学生のヴァイキング学習風景を見た。

 

下: 開封のテーマ―パーク開封府にて

包拯による裁判シーン。

 

北欧と中国の観光で感じたのは、歴史と観光への捉えた方の違いでした。

 

北欧では観光で売り出している民俗芸能や史跡は多くない。

王宮と大聖堂だけは、西欧と同様だが、他は目立たない。

歴史が無いわけでは無いはずだが。

 

三ヵ国が共に民家の野外展示場を設けているが、歴史の捉え方に関心した。

歴史遺産を派手に演出するのでは無く、あるがままの姿を後世に残す姿勢が好きだ。

 

ただヴァイキングの博物館とテーマパークは多く、人気が高い。

北欧の人々は、非常にヴァイキングを誇りに思っている。

日本で言えば、倭寇や侍を誇りに思うようなものです。

日本人にとってヴァイキングは残虐な略奪者なのだが、彼れらには偉大な開拓者、冒険家、海洋航海者となっている。

 

略奪と言う負の行為を強調するのではなく、その冒険心を讃え、伝えたいとの想いがあるようです。

展示では残虐行為を隠さず淡々と表現していた。

確かに、ヴァイキングの略奪は、日本の武士団の抗争で起こった略奪と同列かもしれない。

当時、北欧にはキリスト教が伝来しておらず、異教徒の侵略に対抗する意図がヴァイキングにはあった。

 

 

一方、中国は豊富な歴史遺産を抱えていている。

しかし多くの建物は文化革命や戦乱で破壊尽くされ、コンクリートでの再建が目立つ、残念です。

 

中国では歴史的な物を華美に演出する傾向があり、鍾乳洞などのライトアップには辟易した。

だが、続々と出来る歴史テーマパークの多さと賑わいを見ていると、別の感想もある。

写真にあるような宋時代の政治家包拯(ほうじょう)の人気を見ると、歴史が身近なものとして生きているようです。

これはテレビの歴史ドラマの影響もあるようですが。

 

中国はヨーロッパと異なり、歴史遺産は観光で儲ける所であり、国民も楽しむ所と割り切っているところがある。

その意味で麗江古陳の夜の賑わいがその最たるものでした。

 

それぞれ地域によって大きく異なる反応があるのもです。

 

 

 

< 9. 変わる中国 >

 

上: 昆明の市中トイレ

中央: 桂林で見た電動バイク、2015年

下: 蘭州に向かう車窓から見た風力発電機の製造

 

ここでは中国の知られざる進展を紹介しておきます。

 

一つはトイレの整備です。

古くから中国を旅行している人にとって、中国で困るのはトイレでした。

使用に、かなりの決断が必要なことがありました。

ところが今回、都市部に関しては快適なトイレが多く出来ている。

ヨーロッパの少なさが際立つことになった。

 

奥地にある桂林に行った時でした。

公害を出さない産業団地が造られ、朝の散歩で見たバイクは電動でした。

 

中国は、結構先進的な取り組みを一気に行うことが多い。

電動車以外にも、滴々出行などのカーシェアリング、銀行を介さないスマホ決済、自動運転などがどんどん進めらている。

 

実はこの事は、他の共産主義国から見れば不可能に近いのです。

それは既存産業を競争に晒し、衰退を受け入れることになるからです。

これは日本の発展が進まない理由と同じで、既存産業を守るために政府が規制しているからで、優秀なIT技術者の有無が最大の理由ではない。

 

風力発電の世界的なメーカーがスウェーデンにありますが、これを中国の山地で見た時は驚きました。

 

本当に中国は既存の大企業や公的企業を過保護する事がなく、どんどん新しい事に国の指令で進める凄さがある。

普通は官僚制で癒着が進み、弊害が大きくなるのですが。

 

むしろ日本の方が、守りに徹し過ぎている。

 

 

 

< 10. チグハグナ中国と各国の比較 >

 

上の写真は、中国らしい光景で、新幹線の写真です。

新幹線の乗客には、経済的に豊かそうな人から、行商帰りのような風采の人も居ました。

数時間も乗っていると、清掃係員が幾度も車両の床を掃きに来た。

ちょうど、一人高齢の男性がピーナッツの殻を食べながら床に捨てていた。

彼は、掃除が目の前で行われていても、捨てることを止めない。

掃除婦も誰もとがめない。

 

中国では、若い人ほどマナーが良く親切でしたが、歳を取るにつれて悪くなる傾向があった。

北欧は概ね逆でした。

 

急速な発展をしている国と、発展が落ち着いている国では、このような逆転が生じるのかもしれないと思った。

 

 

下の表は、日本と各国を比較したものです。

 

幸福度、男女平等で日本が如何に低いかがわかります。

一方、貧困は米国に次いで日本が多いのがわかります。

日本はGDPと成長率が低い。

 

概ね、すべての指標で中国も低いのですが、男女平等では日本を上回っている。

特に知って欲しいのは、このままの日本であれば、一人当たりのGDPすら中国に抜かれることです。

 

 

 

* 最後に

 

私は、二つの旅行を通じて、北欧に国の理想像、また中国に発展のダイナミズムと世情を確認して来ました。

 

結論から言えば、それぞれ予想を越える素晴らしいものを感じて得るものがあった。

 

どうか皆さん、マスコミや言論界に毒されず、自ら北欧と中国に足を運んで下さい。

 

きっと狭く偏見に満ちた感覚から解放されるはずです。

 

広く世界の社会・経済・歴史を見れば、今の日本の本当の現在地が見えて来るはずです。

 

長い間、お付き合いありがとうございました。

今年は、カナダと米国を訪問し、また報告したいと思います。

 

これで旅行記を終わります。