20180226

デマ、偏見、盲点 25: 何がバブル崩壊と戦争勃発を引き起こすのか? 4





*1


今、私達が陥っている劣化に気付くことが重要です。
これは最近のことで、この劣化から逃れる手立てはあるはずです。


* これまでの論点の整理

投資家の貪欲がバブルを生み、そして抜け駆けの心理がバブル崩壊を招いた。

恐怖心が軍拡を加速させ、疑心暗鬼が戦争勃発を招いた。

これらの感情が一度暴走し始めると制止は困難でした。

今、人々はこの災厄をもたらす感情の暴走に何ら疑念を持たなくなった。
この劣化はこの30年ほど、特にここ数年のことです。
なぜ人々はこの劣化に気付かないのだろうか?



*2


* 基本的な誤解について

一つは、怒りの感情について誤解があります。

人類は進化の過程で優れた適応力を得て、脳内ホルモンがそれを可能にして来ました。
人は怒りを感じるとアドレナリンが分泌され、体が興奮状態になり、外敵に即応できるようになっている。
皆さんは強い怒りを感じた後、爽快な気分を味わったことはないでしょうか?
敵意や怒りの感情は、人によっては常習性のある麻薬のようなものなので、爽快感をもたらすことがある(文明社会では後悔するのが普通)。

当人は国や正義を思っての怒りだと思い込んでいるが、単に欲求不満の解消か、未発達な精神状態に過ぎないことが多い。



*3


もう一つ、愛国心への誤解もあります。

多くの人は愛国心を素晴らしい美徳だと思っているようです。
愛国心は共感の現れの一つで、共感は社会や家族の絆を強める重要なもので、霊長類、特に人類で最も進化した(脳内ホルモンが関与)。

但し、これも手放しで喜べない。
その理由は、共感を抱く同胞の範囲が感情的な直感(無意識下)で決まるからです。
共感が強くなると、逆に範囲外(異なる宗教、人種、文化、国、階層)の人々に強い敵意を持ち易くなるのです。

人類は進歩の過程で他の社会と多面的で複層的な繋がりを発展させ、その範囲を拡大し来たが、時折、逆行してしまうことがある。
今がその時です。

注意すべき事は、この敵意と愛国心が政治利用され、社会が容易に暴発に向かうことです(マスコミの関与を注釈1と2で説明)。



* 何が社会に起きているか?

バブル崩壊で言えば、今さえ景気が良けれ良いのであって、先の事は考えないことに尽きる。
米国で繰り返されるバブル崩壊と格差拡大が、社会の分裂と絶望を生み、遂には突飛な大統領が選ばれることになった。
格差を是正する対策はあるのだが、国民は即効性を謳った甘い公約に吊られ、同じ過ちを繰り返しては益々深みにはまってしまった。

戦争勃発についても同様で、即物的(武器)で即効性(威嚇)を謳う策が人気を博し、益々泥沼に足をとられることになる。
特に酷いのは日米ですが、多くの先進国も同様です。

つまり社会は刹那的になり理性を麻痺させており、ここ数年の劣化が著しい。


* 刹那的になった背景

これは平和ボケと20世紀前半に対する反動でしょう(この平和ボケは右翼の指摘とは真逆)。

三つのポイントがあります。

A: 今の政治指導者世代は大戦を知らない。
まして指導者が戦時中に成功した人物の後継者であれば戦争への反省より美化に懸命になる(世襲化している日本で極端)。

B: 世界中が異文化に敵対的になっている。
ハンチントンが指摘したキリスト教とイスラム教の対立は、19世紀後半以降の欧米列強の干渉と軍事行動が主因です。
(「何か変ですよ! 84: 何が問題か? 7」で解説しています)

C: かつての格差縮小策への反動が起きている。
20世紀初頭まで貧富の差は拡大していたが、その後、欧米は格差縮小策を実行し是正が進んだ。
しかし1980年代に始まる自由放任主義とマネタリズムによって格差は戻り、さらに拡大している(米英が先行)。

今、起きている安易な敵意や貪欲の高まりは主にこれらが原因です。

しかし、これではなぜ多くの国民が刹那的になったのか、つまり国政の歪み(癒着や腐敗)に無頓着で、社会改革に無気力になってしまったかを説明出来ない。


さらに以下のことが考えられます。

D: 大戦後、先進国は一度豊かさを満喫し、今は下降期にある。
豊かさを経験した後、1990年以降の経済は少数の富裕層に恩恵を与えているが、格差拡大で大多数の所得は横這いか低下している(英米で顕著、日本も後を追う)。

E: この半世紀の間に政財官の癒着が起こり、国民は政治に強い不信感を抱くようになった。
こうして先進国は軒並み投票率を下げ多党化している(北欧を除いて)。

F: 多くの国民(中間層)は、豊かさがこのまま続くとして保守的(逃げ腰)になった。
19世紀後半からの英国の没落時に出現した刹那的で快楽的な社会状況と同じです(ローマ帝国衰退、ファシズム勃興にも通じる)。

こうして人々は選挙に行かず、政府が従来の政策を継続することに安心した。
毎回、見栄えのする政策に希望を繋ぐが、徐々に悪化するだけでした。
こうして国政は既存の政治屋に握られることになった(日本が酷い)。
結局、政治への信頼喪失が、益々、政治を劣化させている。


これらの結果、既得権益擁護のマスコミの扇情が、分裂社会と国際間の緊張の中で一部のタカ派を奮い立たせることになった(マスコミの敗北について、注釈1)。
こうして保守派とタカ派が強く結びつき、低い投票率にあって国家の帰趨を決するようになった。
この結びつきは日米トップの支援層に著しい人権無視や強権的な言動によく表れている。

しかし日本の問題はこれだけで済まない。
日本ではマスコミが偏向し報道の自由が簡単に無くなる文化と歴史があり、現在、世界が評価する日本の報道自由度は低下する一方です(日本のマスコミについて注釈2)。
戦後、教育の場で政治論議がタブー視され、歴史教育もないがしろにされたのが今、災いしている(北欧は盛ん)。
また米国の占領下にあって経営者側と労働者側の対話形成が阻害され、敵対的になり、さらに1980年代以降、政府により労働組合が弱体化した。
一党による長期政権が続いたことにより政権中枢へのタカリや癒着(パトロネージ)が深刻化した。


次回、この世紀末状況から抜け出す道を探ります。



注釈1
米国の主要マスコミはベトナム戦争当時、政府に果敢に挑戦した。
ホワイトハウスの圧力に屈せず、ベトナム戦争の真実を暴こうとした。
またウオーターゲート事件(1972年)でもマスコミは共和・民主系に関わらず大統領を糾弾した。

しかし、規制緩和が進んだ今の米国はそうではない。
その背景の一端を下記グラフが示している。


< 4. 超保守メディアの台頭 >

オレンジの棒グラフがFOXニュースの視聴者数で赤線が共和党員のメディアの信頼度を示す。
FOXが2001年の同時多発テロ事件で一気に視聴者を伸ばしている。
不思議な事に、FOXは保守的な報道(娯楽と扇情)でシェアを拡大しているが、共和党員の信頼を失いつつある。
それでも全米断トツ一位のシェアによって世論への影響は大きい。

トランプ大統領のロシアゲート疑惑を追及するマスコミ(CNN)に対して、FOXニュースは徹底的に擁護している。
このFOXは、共和党系でメディア王のマードックが所有しており、アメリカ同時多発テロ事件において愛国心を煽り、視聴者数首位の座を占めることになった。
これは米国で1980年代に始まった規制緩和、特にマスコミの自由化(1987年、放送の公平原則の撤廃など)が大きい。


注釈2
第二次世界大戦時、ドイツと日本では戦時情報を軍部が完全に握り、捏造と扇情が繰り返された。
日本は島国で領域外の真実を知る術は乏しかったので、最も騙され続けた。
一方、連合国は戦時中も報道の自由を一応守り続けた。

グラフからわかる戦争報道。


< 5.満州事変時の各新聞部数の伸び >

日本軍が満州事変を起こして以来、最も部数の増加率が大きいのは読売新聞でした。
(読売新聞の立役者は元警察官僚で、当時、御用新聞と綽名されていた)
朝日や毎日は軍部に批判的であった為、初めこそ部数を減らしたが、やがて方向転換し、部数を伸ばすことになった。
単純化すれば読売は戦争推進の姿勢が幸いし、朝日は大きく方向転換し、毎日は方向転換に躊躇したことで、それぞれ部数が決まった。
この状況を加速したのは国営のラジオ放送(NHK)の開始でした。

軍部もマスコミも愛国心を煽ることは容易であり、愛国心扇情はマスコミの業績向上に直結するのです。






20180224

デマ、偏見、盲点 24: 何がバブル崩壊と戦争勃発を引き起こすのか? 3


 
*1


前回に続き、怪しい戦争予防策を採り上げ、次いでバブル崩壊と戦争勃発に共通する要因を考えます。
これが今、社会に蔓延り、放置すれば取返しのつかいないことになる。



 
*2


* 危なげな戦争予防策

前回見た日独の事例だけでなく経済封鎖は往々にして逆効果を生むことがあります。
例えば、1991年の湾岸戦争後の長期の経済封鎖は、イラクを疲弊させ次の暴挙を生み出す背景ともなった。
(イスラム国ISの台頭を例に、様々な戦争の予防策がむしろ危険を増大させてしまったことを注釈1で説明します)

現実に即して見るなら、北朝鮮はなぜ核兵器や長距離ミサイル開発に踏み切ったのだろうか?
経緯から察するに、それは日本や中国が標的ではなく、米国の攻撃を抑止するのが目的と考えられます。
これはイスラエルの核保有に対抗したイランやイラクの核開発、インドとパキスタンの関係と同様です。(核拡散について、注釈2で簡単にみます)
それがこのまま進むと、片棒を担ぐ日本も北朝鮮の標的になる可能性が高まります。
これは当然の成り行きなのですが、問題にならないのが不思議です。

また海に囲まれた細長い日本列島においてミサイル迎撃がほとんど不可能なだけでなく、この防衛システムが整った段階で米国と中国、ソ連を巻き込んだ核ミサイル配備競争になることは間違いない(不可能な理由、注釈3)。
1962年の核戦争危機を招いたキューバ危機は、米国が1959年にソ連に隣接するトルコへのミサイル配備が発端になった。
つまりソ連はキューバへのミサイル配備で抑止力の均衡を図ったのです。
これもよく起こる軍拡競争のパターンですが、危険この上ないものでした。

数年前まで、日本の右派の評論家は口を揃えて、中国は北朝鮮への経済封鎖に協力しないと断言していたが、今はどうだろうか?
常識的に見て、これしか次善策は無かったのだが、嫌中が足枷となり大局を見誤ってしまった。

どちらにしても、平和維持は武器だけで出来るほど単純ではない(米国の銃蔓延が好例)。
だからといってまったく武器が無くても良いとは言えないが。
別の手段と知恵がより重要なのです。



*二つの破局に共通するもの

これまでバブル崩壊と戦争勃発のメカニズムを簡単に見て来ました。

バブル崩壊では、真っ先に崩壊の被害から逃れようとする心理が市場をパニックに陥れていた。
そして、崩壊の大きさは溢れた投機資金が多ければ多いほど巨大になりました。
さらに被害は、元凶の投機家だけでなく、一国に留まらず世界までを窮地に追い込むのです。

戦争勃発では、戦争を回避しようとして軍拡競争が始まり、これが疑心暗鬼を一層駆り立て、一触即発になるのです。
また様々な安易な戦争予防策(軍事援助、軍事介入、経済封鎖など)も、逆に火に油を注ぐことになった。

そして勃発の可能性と被害の甚大さは、軍事力の巨大化や兵器の拡散、軍事同盟、国民の疲弊(敵意増大)によって高まるのです。(軍備増強の落とし穴、注釈4)
さらに核兵器による戦争ともなれば被害は地球上すべてに及ぶことになる。


 
*3

* 破局を招く感情の暴走

上記二つの破局は、ある感情が広く社会を覆い尽くしてしまったことよる。

バブル崩壊では、投資家の旺盛で短絡的な金銭欲がバブルを生み、そして抜け駆けの心理が崩壊を招いている。
(短絡的な金銭欲とは、地道な生産活動ではなく賭博で儲けようとする心根です。抜け駆けの心理とは、他人が損をしてこそ自分が儲かる、つまりエゴであり公共心の逆です。)

戦争勃発では、恐怖心が敵意となって軍拡競争を加速させ、そして相手国への無知による疑心暗鬼が戦端を開くことになります。
軍拡などの威嚇合戦が始まると、敵意が増し相互理解がより遠のくことは社会心理学が明らかにしています。
民主国家間でもこの過程を経て、やがて戦争に突き進む可能性が増すのです。

問題は、金銭欲と抜け駆け、または敵意と疑心暗鬼の感情が社会で連鎖反応を起こし暴走し始めると制止することが困難になることです。
現在、人々はこれらの感情をありふれたものと見なし、この感情の暴走に何ら疑念を持たなくなってしまっている。
放置しておくと破局を招くことは既に見た通りです。

これこそが厄介なのです。
これら感情の暴走を止める必要があるのです。


 
*4

* この感情の暴走がなぜまかり通るのか

先ずは、この感情の暴走が危険であり、これを看過する今の社会が異常である事を認識する必要があります。

実は、この不感症さはここ数十年の間に生じたものなのです。
この間に、人々は刹那主義に陥り、理性を麻痺させてしまった。

バブル崩壊で言えば、金銭欲と抜け駆けの欲望は留まるところが無い。
ここ半世紀、自由放任主義(規制緩和と累進課税放棄)がもてはやされ、やりたい放題(累積赤字と格差の増大)なのです。
しかし、20世紀初頭から世界大恐慌後しばらくの間は、先進国(英米筆頭)においてこの欲望を制限して来た。
北欧は当初から別の手段(社会保障)によって、この難を逃れている。

戦争勃発で言えば、現在、敵意と疑心暗鬼の感情が益々剥き出しになっています。
現在はこの感情を抑制することが軽蔑の対象すらなる(平和ボケ、国賊と呼ばれる)。
大戦後しばらくの間は、反省からこの感情を抑制し平和の構築を目指していました(EU統合、国際連合平和維持活動が始まり、北欧の平和貢献は続いている)


次回はなぜ、今の社会が理性を麻痺させてしまったかをみます。



注釈1
イスラム国が誕生した背景に何があったかを簡単に見ます。

様々な要因が絡んでいるのですがポイントを振り返ります。

まず、直近は2003年のイラク戦争によるイラク社会と経済の崩壊でした。
特に米軍占領下で報復としてスンニ派で占められた軍人を大量解雇し、これがイスラム国に加担した(シーア派を敵とすることで一致)。

これに遡って米国はアフガン戦争において、中東イスラム圏からの義勇兵(アルカイダ)をソ連に対抗できる近代兵器を有する武装集団に育成していた。
これがアフガン戦争後、イラクやシリアに戻って来た。

既にイラクでは、1991年の米国主導の湾岸戦争とその後の経済封鎖で極度に疲弊していた。
またイスラエルとの中東戦争に介在した欧米、キリスト教国への憎しみが中東で蔓延していた。

これら欧米の施策がイスラム国の台頭を招いたと言える。
つまり安易な大国の戦争予防策が裏目に出てしまっている。


注釈2
イスラエルはフランスより核施設を導入し、米国が黙認し核兵器を保有することが出来た。
これを脅威としてイランとイラクは核開発(平和利用だけかは不明)を進めた。
これに対してイスラエルはイラクの核施設を空爆し、イラクは開発を断念した。
またイスラエルはイランの核科学者を多数暗殺し、研究工場と研究者を爆殺し、またイランも核開発を放棄した。
このイスラエルの犯行はモサドによって秘密裏に行われたので、確たる証拠はないが公然たる事実です。

インドとパキスタンの核兵器保有の発端は、中国と国境紛争を起こしていたインドが中国の核への対抗策として行ったと見られている。
そしてインドが保有すると、これまた国境紛争を起こしていたパキスタンが対抗して核兵器保有に走った。

こうして連鎖的に核拡散は進んだ。


注釈3
近海の潜水艦や偽装船から複数のミサイルによる攻撃が同時に行われれば完全な迎撃は不可能です。
これは単純な理屈で、日本列島はほぼ無数に近い迎撃ミサイルの配備と2~3分以内の発射が不可欠です。
攻撃側には楽な手段なのだが、防衛側には想像したくない悪夢となる。
かつての米ソの核開発競争も、このような状況を経て膨大な保有数となった。


注釈4
歴史上、戦争は巨大な軍事力を保有する国が始めるものでした。
次いで、それは経済力にとって代わられた。
しかし、ここ1世紀あまりの間に、状況は様変わりしている。

小国日本が日露戦争で勝利できたのは、実は巨額の外債発行が可能になったからです。(ユダヤ金融家がユダヤ人を虐待したロシアを憎んで斡旋)
かつてヨーロッパの大国は自国の富豪から借金し戦費を調達出来たが、日本では不可能でした。
今は、経済力が小さくても借財(国債)によって戦争を始めることが可能になった。
元来、借金は困難なのですが、何らかの取引条件(軍事同盟など)で合意できれば簡単なのです。

こうして現在は弱小国やテロ集団も軍事力を持つようになり、さらに軍事援助が加わり、戦火は至る所で起きているのです。



20180222

デマ、偏見、盲点 23: 何がバブル崩壊と戦争勃発を引き起こすのか? 2




*1


今回は、戦争勃発のメカニズムを考えます。


* 戦争勃発のメカニズム

戦争勃発までの経緯をここ1世紀半ほどの歴史から集約してみましょう。
初めに民主国家間の戦争を想定します。
独裁者が戦争を始める場合は後で検討します。

この場合、ほとんどの国は相手より少しでも軍事上優位を望み、仮想敵国同士が軍拡競争を始めます。
中立国で軍備を保有する場合はありますが軍拡競争に陥ることはない。

軍拡競争で劣勢に立たされた国は軍事同盟を求めて挽回を図ります。
やがて国々は二つの軍事同盟に収斂し、世界は対立する巨大軍事同盟による緊張状態に晒されます。
これがここ1世紀半の間に起こり、世界は二度の大戦と代理戦争に巻き込まれました。

これを避ける為に中立政策を採る国(北欧、スイスなど)があり、ほぼ戦火を逃れることが出来ました。
もっとも中立を宣言するだけで助かると言うものでもありませんが。
(中立国の軍備について注釈1で検討します)


上記のケースで、最初に戦端を切った国(侵略国)も初めは議会制の民主国家でした。
しかし日独のように軍拡競争に奔走する過程で民主主義を放棄し暴走することになりました。(ソ連も革命当初は議会制でした)
歴史上、一度軍拡競争が始まると暴走は必至であり、さらにその過程で軍部独裁が誕生し易くなります。
(軍拡競争と軍部独裁について注釈2で説明します)



*2


* 独裁国家の戦争

独裁者が牛耳る国の場合はどうでしょうか?
残念ながら今なお地球上に独裁国家が存在しますので、独裁者が狂気を帯びていると思えば不安は高まります。

ここでは二つの実例から、軍部独裁による戦争勃発の経緯を考えます。
独裁者や軍部が軍事権を握っていれば、例えばヒトラーや日本帝国のような場合はどうだったのでしょうか?

ヒトラーの台頭を許した要因に、初期のドイツ国民の絶大な期待、欧米列強の対ロシア牽制への期待があり、ドイツの軍備増強があまり危惧されなかったことがある。
これを放置し、融和策さえ採ったことが問題を大きくしたと言えるでしょう。
その後、チャチールのように強く出ても既に手遅れで、結局、ヒトラーを死に追いやるまでヨーロッパ全土は破壊と殺戮に晒された。

しかし、なぜ聡明なドイツ国民が暴虐で狂気のヒトラー(ナチス)に希望を託してしまったかが問題です。
様々な要因はあるが、発端になった最大の理由はフランスが報復的な経済制裁をドイツに課し、経済を疲弊させたことにある。
国民はどん底から這いがるためなら武力による他国侵略すら容認するようになり、国の指導者に剛腕な人物(見かけは清廉で内実は凶暴)を選んだのです。
こうなってからの融和策は手遅れでした。
(集団が外部に強い敵意を抱くように仕向けると、人々は人格的に問題があっても剛腕なリーダーを選ぶことが社会実験から知られています。逆に言えば、敵意を煽れば煽るほど下劣なリーダーでも人気が上昇するのです。この手の事例は特に最近頻出しています)



*3


日本帝国の膨張を考えます。
当初、欧米列強は海軍力の軍縮条約履行(軍艦保有量の制限)で日本の膨張を抑えられるとしていたが、日本の大陸進攻を契機にそれまでの経済封鎖を強化し、石油の禁輸によって日本の戦意を挫こうとした。
しかし、これが逆効果となったのは周知の事実です。
それは日本帝国が、石油が枯渇するまでに勝利すれば良いとして短期決戦へと踏み切ったからでした。

これらの例からわかるように狂気の前では、抑止力の設定(軍縮条約)と経済封鎖がまったく意味をなさないか、逆効果にもなったのです。
いずれにしても、このような客観的な判断が出来ない指導者を相手に、単純で通り一辺倒の策は役に立たないか、むしろ逆効果なのです。

多くの場合、相手国が正常なら軍縮条約と経済封鎖は功を奏し、安全で効率の良い方法と言えます。


次回に続きます。



注釈1.
戦争に巻き込まれない策として、中立政策があります。
簡単に見ておきます。

中立とは非同盟を指しますが、これは歴史的に軍事同盟が多くの戦争を引き起こしたと言う反省に基づいています。
つまり、我が国は自ら戦争をしないし、他国の戦争にも協力しないと言う宣言なのです。
これは相手国に敵意や脅威を与えないことを目的としています。


しかし、そうは言っても独裁的で狂気に走る国なら中立国に武力侵攻する可能性があります。
事実、大戦時ドイツとソ連は中立である北欧4ヵ国に侵攻した。
この時、スウェーデンだけは地政学条件と外交手腕によって、戦火から逃れることが出来た。
他の国は戦火にまみれたが、日独のように自ら膨大な軍事費と人命を浪費し、徹底来な破壊を被ることはなかった。
永世中立国のスイスも戦火を免れることが出来た。

このような経緯を踏まえてスイスやスウェーデンなどの中立国は専守防衛に徹した軍備を保有しています(先制攻撃力の保有は他国に脅威を与えるので中立国とみなされない)。
ただ小国(ルクセンブルグ、モナコなど)は大国や同盟に防衛を依存しています。

このテーマは非常に重要ですので、いずれ扱うつもりです。



注釈2.
軍拡競争と軍部独裁はなぜ起きるのか?

軍拡競争は抑止力とも関わるのですが、敵国同士が客観的に双方の軍事力を評価出来ないことに起因します。
当然、敵国は自国の兵力を秘密にする一方、相手に過大評価させようとします。

また、敵愾心が嵩じて来ると、軍事的に劣勢に立たされていても、多くの指導層は精神論を持ち出し、甚だしい場合には軍事力や経済力が敵対国の1/10であろうと勝利を確約します(かつての日本帝国)。
残念なことに、このような場合、国民もこのような指導層に期待していたのです。
これでは抑止力は無きに等しく、軍拡競争は行き着くところまで行くと、遂には弱小国は窮鼠猫を嚙むで、突飛な行動に出ます。

このような場合、概ね弱小国は軍事力を補うために軍事独裁に走ることになります。
実はすべての国がこうなるわけではなく、独裁者を仰ぎやすい精神文化を持った社会に起きやすいのです。
例えば長子相続の社会であり、ドイツと日本が正に適合していたのです。(エマニュエル・トッドの説)

大国は大国で安易な軍備増強の道を進みます。
これもまた歴史が示すところです。
理由は、一度得た権益―植民地や従属する同盟国での経済上の特権など、を守る為です。
この過程で、軍産共同体が台頭し政治力を持ちます。
そして軍事費の増大が、遂には国力を弱め、かつての帝国がすべてそうだったように衰退していったのです。(植民地政策や軍事大国の維持は一部の者の利益にはなっても、国家としては出費や損失が大きいいのです)

実は、北欧の経済が順調な理由の一つに、二度の大戦において中立を守り、軍事費増大と大きな被災を逃れたことがあるのです。



20180219

デマ、偏見、盲点 22: 何がバブル崩壊と戦争勃発を引き起こすのか? 1





*1


これから、二つの悲惨な結果に至るメカニズムを考えます。
バブル崩壊と戦争勃発はまったく異なるように見える。
しかし実は同じようなメカニズムが働いているのです。
三回に分けて説明します。


* バブル崩壊と戦争勃発について

なぜバブル崩壊が起きるのでしょうか?
誰かが裏でバブル崩壊を煽っているのでしょうか?
残念ながら経済学は崩壊をうまく説明できない。

概ね投資家達(市場参加者)はバブルを好調とみなし歓迎します。
しかし一方で彼らは破産に至るバブル崩壊を恐れます。
一部、間違いなく救済される巨大銀行や崩壊の先頭を切って売り逃げた投資家は別です。(毎回、自分だけは別だと夢想している)


*2

なぜ戦争は起きるのでしょうか?
誰かが裏で戦争を煽っているのでしょうか?
この手の話はいつも巷に溢れています。
しかし多くの真実は戦争が終わってからでしかわからない。
(これを第2次世界大戦とベトナム戦争を例に注釈1で説明します)

平和時であっても、概ね国家は戦争を避けようとして軍備を整えます。
まして緊張が高まると増強へと舵を切ります。
概ね指導者は膨大な人命と破壊が起きてしまう戦争を望まないはずです。
少なくとも国民は戦争が二度と起こらないことを強く望むはずです。
一部、戦争をしても被害の少ない大国や支持率が上がる指導者、莫大な利益を得る軍産共同体は別です。

バブルを煽る投資家達も軍備増強を推し進める国家も共にその悲惨な結果を恐れることでは共通しています。
それでは、なぜ望まない悲惨な結果が生じるのでしょうか?



*3


* バブル崩壊のメカニズム

バブルは経済好調と紙一重ですが、ほぼ確実にバブルは崩壊します。

これは投機家らが株価(金融商品)の高騰が続かないと不安を抱くことが引き金になります。
このタイミングは微妙です。
バブル崩壊の直前まで、多くの経済指標(生産高や失業率)は良好だったのですから。

一つ明確なことは、暴落する時、最初に売り逃げた者は利益を得るが、後になればなるほど投機家達は莫大な負債を背負う運命にあることです。
暴落が始まると、手のひらを返すように貸し手(銀行)が投資資金の回収を急ぎ、逃げ遅れた投機家は莫大な含み資産の所有者から一転して莫大な借金を背負うことになります。
(これを土地投機を例に注釈2で説明します)

この被害は投機資金のレバレッジが効いているほど、中央銀行によるマネーサプライが多いほど起き易くなります(巨額の借金を安易に入手出来る為)。

この時、投資家や金融業が破産するだけでなく、必ず国民も大不況の被害(不景気、失業、福祉カットなど)を長期に被ることになります。
これは銀行の倒産などに端を発する金融危機、つまり巨大な信用収縮が起きるからです。
この深い傷を放置すれば、過去のバブル崩壊(恐慌)後の景気後退のように、設備投資や消費が回復するのに何十年かかるかわかりません。
深刻だったのはヨーロッパの1857年から、米国の1929年から、日本の1991年からの二十年を越える景気後退でした。

このため崩壊後、政府と中央銀行は数十兆円から数百兆円を主に金融市場に投じるのです。
この金額で暴落時の全金融商品(株価など)の評価損を幾分なりとも補うのですが、悲しいことに国民が負担する税金と赤字国債で賄われます。

実はリーマンショック時の全金融商品の評価損はよく分からない。(不明な理由はシャドウバンキングの取引額が分からないためです)
しかし当時のクレジット・デフォルト・スワップ(金融商品の保険)の取引額が6800兆円に上っていたので評価損は見当がつきます(想像を越えますが)。

つまりバブルで儲け、崩壊を引き起こすのは投資家(市場参加者)なのですが、その結果、その痛いツケを強制されるのは傍で浮かれていた国民なのです。


次回は戦争勃発のメカニズムについて説明します。


注釈1
ベトナム戦争は誤解から始まり、深みに嵌った戦争の代表例です。

戦争の発端は第二次世界大戦後に始まる冷戦の敵対感情の高まりにあった。
さらに離れた大陸にあり、異質の文化を持った米国とベトナムは互いに相手国をまったく知らなかった。

初期の接触、ベトナムでの小さな戦闘でこじれたことにより、その後は疑心暗鬼から大戦を凌ぐ爆撃量になるまでエスカレートしていった。
そして米国では大統領が替わるたびに停戦を志向するが、選挙を意識し敗戦の将の不名誉を避けようとして益々深みに嵌っていった。
終わってみると、この戦争で800万人の死者と行方不明者が出ていた。

後に、両国の当時の最高指揮官達が会談して初めて互いの誤解に気づくことになった。
この会談は1997年、ケネディ大統領の下でベトナム侵攻の采配を振るったマクナマラ元国防長官が、ベトナム側に要請して実現したものです。
詳しくは私のブログ「戦争の誤謬 7、8: ベトナム戦争1、2」を参考にしてください。

第2次世界大戦を引き起こしたヒトラーは外部に凶悪な敵がいると扇情し国民を魅了した。
その敵とは主に共産主義者、ユダヤ人、フランスやロシアの周辺国でした。
しかし、やがてドイツ国民は真の破壊者が誰であるかを知ることになるのですが、それは戦争の末期になってからでした。
多くの国民は戦後10年間ほど、ヒトラーに騙された被害者であると感じていたようです。
その後、加害者の自覚が生じ反省と償いが本格化した。

一方、共に戦端を開いた日本では国民が軍部に騙されたと気づいたのは敗戦後でした。
しかもドイツと違って、未だに誰が真の破壊者であったかを認めない人が多い。
極め付きは、国の指導者でさえ相変わらず過去の美化に懸命です。

これでは誰が戦争を始めたかを理解出来ないので、当然、戦争を食い止めることなど出来ない。
おそらくは同じ過ちを繰り返しても気づかないでしょう。



注釈2
身近な企業経営者が1880年代のバブル時にハワイの別荘を買い、バブル崩壊と共に夜逃げしたことがありました。
この過程を説明します。

バブルが始まると最初に工場を担保にし、1億の手持ち資金で国内不動産を購入し、これが数年で2億の評価額になりました。
次いで、これを担保に借金し、別に買った物件がまた4億円に高騰しました。
これを繰り返して行くうちに、遂にはハワイの不動産を買うことが出来た。

絶頂期に彼は総資産20億、借金10億で純資産10億となったことでしょう。
(ここで売れば良かった!!)
しかしバブルが崩壊し、すべての不動産価格が購入時の半値になりました。
彼の総資産は1/4以下に減価し、不動産をすべて売却し返済に充てても借金5億が残りました。
こうして彼は破産しました。

金融商品投資でレバレッジを30倍効かせれば、暴落時の借金はこんな少額では済まない。
ここ半世紀、規制緩和でレバレッジが上がり、金融緩和でマネーサプライが巨大になって投機資金が膨大になり、その尻ぬぐいで累積赤字が天井知らずになっている(減税と公共投資も追い打ち)。

毎回のバブル崩壊で、このように土地、株、商品取引などの高騰と暴落が繰り返されている。
資本主義国だけでなく中国も不動産(マンション)と株で同様の高騰な続いています。




20180215

Walking around Higashiura, Awaji-Island in winter 1

冬の東浦を歩く 1




*1


Today, I introduce mountains, fields, and sea of Higashiura.
February 13th 2018, I walked for 12 km during snowing occasionally.
I wil introduce it in installments from now.  


今日は、東浦の山野と海を紹介します。
2018年2月13日、時折、小雪がちらつく中を12kmほど歩きました。
これを数回に分けて紹介します。


First
This area I walked is at about the center of old Higashiura-town.
This became a part of Awaji-city due to merging of cities towns and villages.
Higashiura is a warm land faceing Osaka gulf, and the most of it is hills with mautains behind. 
You can came from Kobe to here for 45 minutes by only an expressway bus.


はじめに
私が今回歩いた所は、かつての東浦町の中央部分になります。
ここは現在、町村合併で淡路市になっています。
東浦は大阪湾に面し、山を背にした丘陵地帯が続く温暖な地です。
神戸からは高速バスで45分で来ることが出来ます。




< 2.  walked trail >
< 2. 散策ルート >

Upper map:  North is upper.  The blue line shows walked trail.

Lower map:  North is right.  The blue dot line shows walked trail in a circle.
The distance is about 12 km, and the difference of elevation is about 70 meters.
I walked paths of hills along mountainside, paths along a river in basin, along sea shore, and through ports.
The yellow line shows the part introducing this time.


上の地図: 上が北。青線が散策ルートです。

下の地図: 右が北。青の点線が今回一周したルートです。
距離は約12km、標高差70mぐらいです。
丘陵地帯の山側と川沿いの道、そして海岸沿いと漁港を歩きました。
黄色の直線は今回紹介する部分です。





< 3.  Views from the walked trail >
< 3. 歩いた道 >

These are walked paths and ponds of nearby it.

これらは歩いた道と道の直ぐ横にある溜池です。





< 4.  bamboo woods >
< 4. 竹藪 >

The bamboo is always blue even among a lot of dead trees in winter mountain, so it  reminds me breathes life.
But the bamboo woods are expanding because bamboo has strong life and the woods are left uncontrolled due to village people are aging.

冬でも竹は青々としており、枯れ木の多い山野にあって息吹を思い起こさせてくれます。
ただ、竹藪は旺盛な生命力で他の木々を追いやり、さらに高齢化で竹藪が放置されているので、竹藪は拡大の一途です。






< 5.  these flowers and fruits could be seen from path >
< 5. 道端で見かけた実りと花 >

Among a lot of dead trees in winter, fruits in fruit farm, daffodils and field mustards blossom.

周囲の多くは冬枯れの景色ですが、果樹園には柑橘類、庭先には水仙や菜種の花が咲いていました。





< 6. lookdown on Osaka gulf in a southerly direction. >
< 6. 南側に大阪湾を見下ろす >

Higashiura is famous for flower-growing of carnation etc. and the hills are full of glasshouses.
Many holding ponds are scattered there.
These holding ponds were needed to irrigation of rice paddy fields that located in a steep slop, and the village people have made and controlled it together.
This seems to have made the unity of people strong.

東浦はカーネーションなどの花卉栽培が盛んで、その温室が丘陵部を覆っています。
また多くの溜池が点在しています。
溜池はこの急斜面の田んぼの灌漑には無くてはならいもので、古くから村人達が造り管理して来たものです。
これが村人の団結を育てることにもなったのでしょう。






< 7.  lookdown on Osaka gulf in an easterly direction.  >
< 7. 東側に大阪湾を見下ろす >

Upper photo:  Kariya-port is inside a breakwater.
Osaka is on the opposite shore.

Lower photo:  Terraced fields are scattered alomg paths.


上の写真: 防波堤が見える所が刈谷漁港です。
対岸は大阪です。

下の写真: 道沿いに点在する段々畑。


 
< 8.  lookdown on Osaka gulf in an northerly direction.  >
< 8. 北側に大阪湾を見下ろす >

The opposite shore is Kobe, and Suma on the left side.

対岸は神戸、左側は須磨です。


This continues to next time.

次回に続きます。