20170815

何か変ですよ 69: 日本の問題、世界の問題 5: バブル崩壊 3





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前回、バブル崩壊のメカニズムと被害についてみました。
これが繰り返されることにより先進国社会の深部が蝕まれています。
今回、この状況を確認します。



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第一章 はじめに
これまで3回にわたり、世界各国が如何に経済的な破綻に見舞われて来たかをみました。
お読みになった皆さんは、おそらく世界が金融的な破綻に益々晒されつつあると感じたはずです。
先進国、資本主義国に何か変調が起きているとも感じられたことでしょう。

一方で、一気に世界を巻き込むバブル崩壊は必然だとも思ったに違いない。

そうであればこそ、バブルが過熱しないようにするしかない。
この為にはバブルを過熱させる要因を世界から取り除くしかない。
この要因は各国政府が、ここ40年ほどで作り出して来たものです。
所詮、作り出したものですから取り止めることが出来るはずです。

傍観している内に、我々の世界は大きな濁流に飲み込まれるはずです。





< 3. 米国のマネーサプライと負債 >

上のグラフ: 青線はマネーサプライM2の推移、左目盛り、10億ドル。
マネーサプライが急伸しているのがわかる。
(マネーサプライは中央銀行(FRB、日銀など)や金融部門全体から経済に対して供給される通貨の量で、一般の事業会社や個人、地方公共団体などが保有するお金の量を示し、国や金融機関が持っている現金は除きます。)
黒の破線は下のグラフの合計負債額/GDPの推移、右目盛り、%。


下のグラフ: 家計(青色)、非金融(赤色)、金融(緑色)の部門毎の債務残高/GDPの推移、%。
金融の負債がサブプライムローン危機の折に威勢よく上昇している。
しかも三部門の合計額は優にGDPの2.5倍になっていた。
この合計額がGDP(100%)を超えたのは、規制緩和とマネタリズムが隆盛になった1980年後半以降で、その後急伸している。


第二章 現在、バブル崩壊時に繰り返されている事
ここ40年ほど、先進国はバブル崩壊時に、金融危機の拡大を防ぐために莫大な救済金を金融機関に拠出して来ました。

この救済を行わない選択肢もあるのですが、しなければ1929年のウォール街大暴落に始まる世界大恐慌のようになります。
この時、米国の一人当たりの国民所得は最大35%低下し、元に戻るのに10年を必要としました。
失業率は一時約25%まで上昇した。
これがドイツや日本を経済的な窮地に追い込み、第二次世界大戦の引き金にもなりました。






< 4. 世界大恐慌時の米国 >

上の写真: 当時の取り付け騒ぎ。
下のグラフ: 米国民一人当たりのGDP推移。


それまでの恐慌では多くの場合、政府は銀行の倒産を放置し、不良な銀行を淘汰することが良策と考えていた。
しかし、この放置策では恐慌による傷が深まるので、現在は政府と中央銀行が、大規模な金融機関を集中的に救済するようになった。

このことは、当初、国民から反発があったものの、現在では受け入れられるようになった。
しかし、これが二つの深刻な問題を引き起こし、社会を歪める大きな要因になってしまった。

このポイントは二つある。

一つには、この救済資金が政府の累積財政赤字の急伸を招いている。
これを前回、見ました。

いずれこの負債を国民が広く負担せざるを得なくなります。
言い換えれば、バブルで救済される一部の大規模金融機関と大資産家を、犠牲になった国民が等しく救済することになる。


注意すべき事!!
リフレ策(アベノミクスなど)によって、累積財政赤字が霧散すると断言するエコノミストもいるが、私にはむしろ大きな破綻を呼び込む可能性があると考える。
世界のどこかでバブル崩壊(金融危機)が起きてしまうと、金余り(緩和マネー、溢れるマネーサプライ)が多ければ多いほど崩壊の被害は甚大になる。
つまり、ヘリコプターマネーによる膨大な金余り状態が最も危険だと言える。
現在、日本では、行き場を失った緩和マネーが株式投資、不動産投資、サラリーマン金融に向かっている。




< 5. 日本の不動産の値上がり >

上のグラフ: 値上がりは東京だけでなく全国に広がりつつある。
下右のグラフ: 銀行の不動産向け貸し出しの増加が値上がりに繋がっている。


二つには、救済されるのが大規模な金融機関に限られていることです。

救済される金融機関ほど、バブルの中核であったとも言える。
一方、救済対象から外されるのは圧倒的に大多数の被害者です。
かつて日本では自己責任が声高に叫ばれたことがあるが、これは真逆です。

崩壊と救済が繰り返される内に、以下のことが慢性化し深刻さを増しています。
特に米国において。

金融機関や資産家、特に大規模であればあるほど「モラル・ハザード」(倫理感の欠如)が浸透しています。
救済されることが分かっている彼らは悪辣な手で暴利を貪り食うことを厭わなくなりました。
金融機関は更なる大規模化を目指し合併を繰り返し、大資産家もこれに群がります。

大規模金融機関と大資産家は、バブル崩壊で失業し賃金低下に苦しむ大多数の人々をしり目に、救済策で破産を逃れます。
しかしそれだけではない。

景気刺激と金融安定化の為の大規模な金融緩和策で、崩壊後いち早く所得を増大させることになります。
これが繰り返されることにより顕著な所得格差が生み出されました。
これは米国の所得格差拡大の要因の一つに過ぎないが、根は一緒で、次回説明します。


さらに富を蓄え政治力を持つようなった大規模金融機関と大資産家は、国際競争と経済活性化と称する金融の規制緩和を政府に実行させて来ました。
1929年の世界大恐慌への反省から制定された規制が、なし崩しに廃止されて来ました。

こうしてここ40年ほどの間に、金融セクターが世界の繁栄を掌中に収めるようになったのです。
例えば、1950~1980年の間、米国の金融セクターは総企業収益の10~20%であったが、2001年には46%に成長している。注釈1.
その後、サブプライムローン危機で平均32%に低下している。


これが所得格差の元凶であり、結果であり、今後もバブル崩壊が繰り返さずを得ない理由なのです。



第三章 データーで確認します




< 6. 米国の所得の推移 >

上のグラフ: トップ1%の所得(赤)と平均賃金(青)の推移。
平均賃金は生産性(緑線)よりも伸びが低い、つまり正当な分配とは言えない。
一方、トップ1%の所得は鰻登りで、バブル崩壊の度にその差は開いていく。

下のグラフ: 年収5分位の年収推移。
上位になればなるほど上昇し、下位になればなるほど伸びなくなり、両者の差は開くばかり。
この格差は規制緩和とバブル崩壊のみで起こっているのではなく、逆累進課税や労働組合の衰退、法人優遇なども影響している。





< 7. 日本のマネーサプライと所得階層別の所得推移 >

上のグラフ: 緑線がマネーサプライ(マネーストック)、青線がマネタリーベース、赤線が名目GDP紺色線が東証時価総額です。

通常、マネーサプライを増やせば、インフレや景気刺激を可能にし、抑えれば逆効果となります。
しかし不思議なことに、マネーサプライが続伸しているにも関わらず、GDPは増えず、停滞を続けている。
このGDPマネーサプライのギャップ(緩和マネーの増大)が気になります、米国で起きたサブプライムローンの前兆を感じさせる(図3のグラフ)。

日銀が金融緩和などでコントロールするのはマネタリーベース(民間の金融機関が預金準備率に従って中央銀行に預けた貨幣総額)で、その何倍かが市中に出回るマネーサプライになる。
中央銀行がマネタリーベースをコントロールしたからと言って、マネーサプライを確実に調整することは出来ない。

ただここ数年の日銀のマネタリーベースは各段に多いので、株価を押し上げている。
株価上昇は日銀や政府機関が株購入していることも影響している。


下のグラフ: 赤線が下位90%の所得の推移で、橙色線は最上位0.01%の所得です。
下位90%の所得は3回のバブル崩壊で低下していったが、最上位0.01%の所得はバブルの度に上昇している。
米国ほどではないが、同じ傾向が見て取れる。


次回に続きます。



注釈1.
スティグリッツ著、「これから始まる『新しい世界経済』の教科書」2016年刊、p75より。

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