20150124

社会と情報 37: 新聞は誰の味方か 1


< 1. 著書 >

主要な新聞の事件報道を追うことにより、ある問題が浮かび上がってきます。
この問題を元日経記者の著作から見ます。

著書 : 「官報複合体」
著者 : 牧野洋。日経新聞と雑誌「日経ビジネス」の記者、海外駐在員、編集委員を経てフリーランス。現在、米在住。
出版社: 講談社。2012年刊。
補足 : アマゾンのカスタマーレビューの評価(23件)は4。



< 2. 記者クラブ >

はじめに
前回見た朝日の官僚臭さは願い下げだが、主要各社の報道記事を見ると、どれも同じ穴のむじなであることがわかる。
結論から言えば、共通の根がより大きな災いを生み、さらに別の問題も見えてくる。
3回にわたってみていきます。

共通の根とは著書が「官報複合体」と呼ぶ、日本が百年も引きずって来た悪習「記者クラブ」(全国に約800存在)が代表的なものです。
この著書から、各社の記事要約を引用し検討します。
簡潔にするため、私は引用文を大幅にカット&ペーストを行っていますので、ご了承下さい。
この著作を読んだ限りでは、著者は日本の新聞業界全般を批判しており、不偏不党であると思われます。

各社の事件報道から見えるもの
大手新聞二社については仮称ABで扱い、後で種明しします。



< 3. SPEEDIデーターの扱い >

     「原発事故で官僚が情報隠蔽」の報道
これは2011年3月11日の福島原発事故でのSPEEDIデーター公開が遅れた件です。
時を逆に追っていきます。

2011年8月、ニューヨーク・タイムズが報じた。
「日本は原発事故のデーターを隠蔽し、住民を危機に陥れた」
「拡散予測データーは中央官僚の判断で公開されなかった」

日本の報道はどうだったのだろうか?
遡って6月、「情報提供に及び腰な政府の姿勢が目立った」とA社が報じ、主要各紙も政府を批判した。

5月27日、B社が報じた。
「放射線測定値、バラツキなぜ、・・・、自治体任せ」

5月16日発売の週刊現代が最初に情報隠蔽を暴露した。
「あなたの町の『本当』の放射線量は実はこんなに高い―」

6月14日、この暴露を受けて文科省は都合の悪いデーター(各地の地上1mの放射線量)の公表を始めた。

ポイント: 主要新聞は、情報発信側(政府、省庁、団体)の情報を疑わず、虚偽を暴くことに消極的です。
しかし記者クラブに属さない雑誌各社は、時にその欺瞞を暴くことになる。
これは「記者クラブ」が情報発信側(この場合、文科省)と馴れ合い、癒着している為に起こる。



< 4. 村木被告と証拠改竄の検察官 >

*「郵便不正事件」の報道
2009年5月、厚労省村木元局長が逮捕され、翌年無罪、さらに大阪地検の証拠改竄発覚。

「キャリア官僚の逮捕にまで発展し、事件は組織ぐるみの様相を見せている。なぜ不正までして便宜を図ったのか。・・疑いを持たれてしまった事実は重い」
B社は逮捕1ヶ月後に社説でこう書いた。

2010年9月、村木に無罪判決。
B社はその11日後、主任検事の証拠改竄疑惑をスクープ、これにより最高検察庁が動き、上告されず冤罪事件を免れた。

ポイント: 逮捕当時、B社は検察の思惑をそのまま報じ、自ら調査報道せず被告を犯人扱いした。

この手の記事の多くは、誰(検察)の思惑かを明示せず、信頼できそうな噂話(笑い)として書かれる。
これだと誤報であっても責任逃れし易く、記者は取材努力をせずに又聞き情報などを容易に取り上げることが出来る。
さらに意図的な情報、例えば検察に都合の良い思惑を流して恩を売ることも可能になる。
これが匿名の情報発信元や記事が多い理由です。
しがって、TVで以下のセリフをよく使うコメンテーターはむしろ眉唾だと言える。
「私は情報筋から内々(匿名)でよく情報が貰えるので・・・」

B社は後に証拠改竄スクープで彼女の名誉挽回に貢献したとはいえ、汚点は消えない。
他社も同様であるが。
もし彼女が検察と徹底抗戦しなければ、また改竄事実が発覚していなければ、冤罪になっていたかもしれない。
日本は有罪確定率が非常に高いが、この官報複合体(警察・検察と記者クラブ)に一因があるのだろう。

次回、無罪でもハッピーエンドにならなかった例を紹介します。

種明し、A社は読売、B社は朝日です。



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