20190710

平成の哀しみ 82: 改革を妨げるもの 17: 腐敗する政治 2







*1


自民党の劣化は進んでいたが
今や腐敗と暴走は極致に達した


 
*2





確かに自民党の政治手腕は野党と比べ物にならない。
議員の団結力、経済界と米国との連携、各分科会・族議員と業界・官僚・地元との連携が力の源泉。

しかし一方でタガが外れている。
選挙に勝つためなら手段を選ばず信義もない、金と利権。
それこそ頼りは広範囲な国民よりも金と力を持つもの、そして人気取り。
行政の現場では口利きと賄賂・献金で事が決まる。

さらに安倍政権になってからは露骨かつ傲慢になった。

国会での言い訳は一昔前のアフリカ社会を思わせる。


 
*3


「証人は職場が変わったので無関係となり出席出来ない」
「証人は海外転勤になったので出席出来ない」
「私人なので証人喚問できない」

これらはいままで幾度も難局を乗り切った手だ。

「省庁からの資料を受理しないので、無いものは審議出来ない」
新たに、この手の馬鹿げたもみ消しを頻繁に閣議決定するようになった。

危ない資料、議事録、面談録等は始めこそ隠蔽と黒塗りで済ましたが、遂には捏造から即破棄するようになった。


政府や官僚の答弁に酷いものが増えたが、特に安倍首相は酷い。
まともに答えられない(ご飯論法)、長々と自説を語り逆上する。
座れば口を尖らして野次を飛ばす。

残念ながら、一部の人はこの姿勢に頼りがいがあると見做す。


次に続く



20190709

平成の哀しみ 81: 改革を妨げるもの 16: 腐敗する政治 1





*1


改革の最大の障害である日本の政治を見て行きます


安倍政権は改革に積極的に見える。
しかし国民の為ではない。

確かに安倍首相は様々な規制緩和と史上最大の金融緩和、また軍備拡張と情報規制(裏で抑圧)を矢継ぎ早に実施して来た。

日本の経済・金融に関する政策は、ここ半世紀、欧米に蔓延った自由放任主義と金融重視の踏襲にしか過ぎず、近年はむしろ突出している。

つまり欧米が陥っている負の連鎖―巨大化するバブル崩壊と累積債務の増大、格差拡大による社会の停滞と不満の増大、が更に日本を追い込むことになる。

アベノミクスでバブルを煽り、円安で延命した企業は利益を海外投資に振り向けるだけ。
所詮、一時栄華を享受する企業と富裕層も国内経済の衰退のあおりを受けることになる(英国の二の舞)。

言い換えれば、糖尿病患者がインシュリンを投与しながら暴飲暴食を続けるようなもの。
このまま行けば、取り返しのつかない体になる。

日本は出来るだけ早く、官僚を含めた行政と経済・産業を改革するために政府の刷新すべきです。

 
< 2. 飛んでる世襲王国 >

 
< 3. 汚職のデパート >

政治の何が悪いのか?

・ 傲慢で国民目線の無い世襲の政治屋
・ 利権と金権で止まない腐敗
・ 米国追従の経済・軍拡路線
・ 懐古趣味と強権志向
・ 自民党と官僚の癒着
・ 野党の弱体化


次に続く

平成の哀しみ 80: 改革を妨げるもの 15: 欲望の経済政策 7







*1

これまで日本と米国の経済政策を概観しました
まとめます

 
< 2. 陰るOECDの経済成長 >

日本の経済政策は米国の言いなり、かつ米国の模倣。
これは強者に振り回される弱者がさらに強者の悪い所だけを真似ているようなもの。

80年代以降、米英が先導し多くの先進国は金融・市場・企業に大きな自由を与えて来た。
中央銀行は初期こそインフレを見事に収めたが、その後は経費の掛からない景気刺激策として大量の通貨供給行い、バブルの元凶になってしまった。

あらゆる規制がどんどん取り除かれ、強欲な投機家と経営者は自由を謳歌し、バブルは過熱し高額所得者が増えた。
また米国企業の巨大化とグローバル化は瞬く間に世界に波及し、米国流から逃れなくなった。




 
< 3. 国によって異なる格差 >

富みが少数の超富裕層に集中し、99%の所得が伸びなくなったことで、貧富の差が拡大するだけでなく、成長力は陰り、失業率も高止まりした。
さらに規制緩和でマスコミが弱体化した。

この結果、国民は政治の蚊帳の外に置かれ、政治家に不信感を抱き、過激な言葉に煽情され易くなった。

まさに日米欧は亡国の末期症状を呈している。


しかし光明はある。

日本の国別ランキングは、一人当たりGDPで31位、幸福度で58位と凋落しているが、世界には多くの指標で毎年10位内に入るスイス、ベネルクス、北欧などの国がある。

全てが癌化し腐っているわけではない。
まだ模範とする国が多くある。


次に続く







20190708

平成の哀しみ 79: 改革を妨げるもの 14: 欲望の経済政策 6



< 1. FOXニュース >


自由放任主義と金融重視は亡国の末期症状


最悪の病状は繰り返すバブルと所得格差の拡大でしたが、むしろ癌化の進行こそが恐ろしい。

米国を例に挙げます。

大統領選挙では数千億円が動き、候補者側の資金の多寡がテレビのネガティヴキャンペーンなどの宣伝を左右する。

バノンとFOXニュースはトランプ大統領誕生の立役者です。
バノンのニュースサイトは保守の資産家に支えられている。
FOXは、ニュースを娯楽化した保守のメディア王が所有。
また共和党の躍進を担うティーパーティー運動も保守の資産家の資金が不可欠です。

つまり選挙と政治は資産家の意向が左右する。

当然、資産家は現状の経済政策を断固維持する。
この理由は下記グラフから一目瞭然です。



< 2. 米国資産家の所得増加と株価の推移、対数目盛 >

80年代以降、株価(金融商品)の上昇と共に資産家は急激に資産を増やしている。

しかしもっと恐ろしいのは、この状況が癌細胞の増殖と同じだからです。



< 3. 世界を支配する超富豪家達 >
https://www.newscientist.com/article/mg21228354-500-revealed-the-capitalist-network-that-runs-the-world/#bx283545B1
金融機関147社が世界の多国籍企業43000社の富の40%を支配している、2011年時点で。


企業統合や資本集中が進み、少数の資本家が共同で世界中の大半の企業を所有するようになった。
独占が進み、国だけでなく世界経済、さらに政治すら動かように成って来ている。
ホワイトハウスの財務金融のポストは金融会社ゴールドマン・サックス出身者が多い。

米国経済は成長しているが、実体は1%の超資産家の所得が増えるだけで、ここ40年間ほど90%の国民の所得は横ばいに過ぎない。

こうして米国民は政治経済を牛耳るエスタブリッシュメントに失望した。
そこでトランプが彼らを排除すると豪語し大統領になった。

しかしホワイトハウスの主要ポストはより怪しいエスタブリッシュメント(共和党と実業家)で占められた。

まさに民主主義が根元から蝕まれている。



次に続く


平成の哀しみ 78: 改革を妨げるもの 13: 欲望の経済政策 5



*1


政策転換には裏があった


 
*2


80年代の経済政策転換は米国の戦争と経済の陰りが引き金でした。

米国はベトナム戦争出費などによる財政赤字と製造業衰退による貿易赤字の重なる増大に耐え切れなかった。
米国は71年に金兌換を中止し、また為替の変動相場制に移行した。

古くから世界は金本位制によって貨幣の自由な発行を抑制して来た。
だが戦費が嵩むようになると、国は金との兌換を保証しないで貨幣の増発を行い、その結果、インフレと恐慌を招いた。
この反省から金本位制に戻る努力が幾度も繰り返されて来た。

さらに米国はイスラエルに肩入れし中東戦争が拡大していた。
これに対して市場を支配する中東産油国は団結し、イスラエルを支援する欧米に対して石油減産で対抗した。
これにより70年代に石油価格はそれまでの10倍へと一気に暴騰し、インフレが世界を襲った。


 

< 3. 1970年代のインフレと石油価格高騰 >


そこで各国労働者は賃上げのストを頻発させた。
また英米は経済成長著しい日独に押され気味で打開策を模索していた。

そこで英米政府と経済界は協力して、「労働者の賃上げと怠惰がインフレと不景気の元凶である」との一大キャンペーンをはった。

この英米の論理には飛躍があるのですが、富裕層や保守層(米国共和党など)にとって半世紀ぶりの天国奪還の好機だった。

つまり「金持ちはより金持ちになれる」チャンスを得たのです。
そして、これ幸いと規制緩和<ビジネスと言うより金儲け>を連呼するようになった。

日本も右に倣えとなった。


次に続く




20190707

平成の哀しみ 77: 改革を妨げるもの 12: 欲望の経済政策 4



*1

1980年代以降
日欧米経済はどうなったか








< 2.二つの経済政策がもたらしたもの >
赤枠がルーズベルトによるもの、青枠がサッチャー、レーガン、中曽根によるもの。

 

< 3. 80年代以降の経済政策がもたらしたもの >
ピンクの縦線は米国発のバブル崩壊、茶色は日本独自のバブル崩壊。

日米で顕著なのは、バブル崩壊が起こると、せっかくの景気刺激策の効果が帳消しになって失業率が上昇していることです。
これを抑える為に、下のグラフのように累積赤字を増大させてでも更なる景気拡大策を採り続けている。

 

インフレは治まったが低経済成長と高失業率が定着し、バブルが繰り返し、所得格差が拡大した。


なぜこのようになったのか

様々な要因中、最大の理由は自由放任主義と金融重視です。
「自由に金儲けをさせて景気を良くしよう」に尽きる。

先ず、資本・金融関係の規制緩和が一気に進みました。
これにより経営者の大幅な所得アップが可能になり、短期に利益を求める経営が横行するようになった。
投資を促すために金融機関の大幅な規制緩和を行い、膨大な借金を可能にし、また投資実態の把握が困難になりました。

そして政府が財政出動(公共投資など)、さらに中央銀行は貨幣供給量増大(金利操作も)で景気刺激を行うようになった。

この結果、バブルと崩壊が起こり、さらなる景気刺激策が不可欠になり、より巨大なバブルが繰り返すようになった。

自由主義は弱肉強食を良しとし、累進課税を否定します。
法人税と富裕層への減税を繰り返し、不足は低所得者に負担の多い消費税でカバーします。
こうして格差が広がった。

拙いことに、米国がこの策を採るとグローバル化で他国も追従しなけらばならなくなった。

こうして財政赤字と所得格差の拡大が世界に蔓延した。


次に続く


20190706

映画「新聞記者」を見た感想




*1


注目を浴びている映画「新聞記者」を見て来ました。
今まさに日本を覆う暗雲、戦前の体制を思わせる映画でした。
感想を記します。

 
*2


* 始めの感想

期待が大きかっただけに見終わった段階では失望もあった。

・現政権全体の暗部、特にトップとの関わりがほとんど描かれていなかった。
・映像の中に不安を煽るためか、カメラを微かに揺らす映像があり、一部見づらかった
・主役の女性記者を演じるシム・ウンギョンに好感を持たが、少し違和感もあった。

これらを除いては、概ね良く出来ていたように思う。


 
< 3. 映画で暗示されている腐れ縁 >


* しかし、よく考えてみると深みがある映画だと思うようになった

映画では内閣情報調査室の暗躍と新聞記者の正義の戦いが描かれている。
私は、当初、これでは今の政府の暴走を描けていないと思った。

映画は前川元文部科学事務次官、伊藤さん準レイプ事件、加計学園問題を匂わせる事件でのデマ工作、隠蔽、マスコミへの圧力などを丁寧に描く。
その工作部隊が実在の内閣情報調査室で、主役の官僚演じ松坂桃李はその職務で苦悩する。

この映画が描いたのは自らを正当化し暴走し始める政府機関、それと戦う新聞記者には正義感だけしかないと言う現実ではないでしょうか。


* 今思うこと

やはりこの映画を世に出した人々への感謝が一番です。
これだけの政治批判を含む映画を製作興行するには、多くの障害があり、幾多の女優出演拒否、制作や宣伝拒否があったと聞きます。

松坂桃李シム・ウンギョンさんにはさらなる活躍を期待します。
原作者の望月衣塑子の活躍には頭が下がり、感謝しきれません。
日本の政治劣化に正面から取り組んでいるジャーナリストは彼女ぐらいでしょう。



 
*4


* 日本の宿痾

内閣情報調査室長を演じる田中哲司がはまり役なので、どうしても彼だけに目を奪われがちです。
しかし、この手の国民の裏で行われる姑息かつ悪辣な企みは今に始まったことではない。

日本政府は大陸侵攻前、国内の露払いを行った。
白虹事件1918年、治安特別法制定1925年、特別高等検察発足1928年と続いた。
ジャーナリズムと反戦運動弾圧が最初は国民の知らないところで、遂には堂々と行われるようになった。
そして満州事変1931年、起こるべくして起こった。

日本では、ヒトラーのような狂気の独裁者がいなくても、それぞれの組織(軍部、政府、民間)が、あたかも競争するように暴走して行った。
この現象は他の民族でも起こるが日本で顕著です。
これをセクショナリズム、同調圧力、帰属意識などで表現できるでしょう。
実に困った病理です。

現在、内閣情報調査室は170名程の体制だそうです。
これが諜報と世論誘導・攪乱などを行っていることになる。
だが、伊藤さん事件でもみ消しを行った警察官僚中村格(菅官房長官の元秘書官)の存在を考えれば、公安、警察も加担していることにもなる。
さらに小泉政権時の安倍官房長官時代に組織された電凸(電話攻撃部隊)も配下にある。

さらに危険なのは、今は政府のトップ自身が危険なことです。


* 最後に

映画を見終えて周りを見ると、ほとんどが初老の夫婦でした。
若い人はほとんどいなかった。
映画は、金曜日の午後4時から6時頃だったので、無理からぬことかもしれないが。

それにしても高齢の方々が、この手の政治映画を見に来てくれることに意を強くした。
まだ日本には心ある人々がおり、絶望するわけにはいかないと。


終わります。






平成の哀しみ 76: 改革を妨げるもの 11: 欲望の経済政策 3






この100年間の欧米の変化から
米国流の経済政策の問題が見えて来る


 


20世紀初頭、英米は労働者の権利擁護に向かいました。
これが賃金上昇を呼び、格差は世界史上初めて大きく是正された。

ルーズベルト大統領はニューディール政策で賃金上昇を奨励し、恐慌からの復興を成功させた(需要喚起)。
これがその後の欧米の経済政策を方向付け、高い経済成長を遂げた

しかし70年代になると、欧米はインフレと不景気の同時進行に苦しむようになる。
幾つかの要因はあるが、目立ったのは組合の大規模ストライキによる混乱でした。

1980年代、サッチャーとレーガンは賃金上昇が経済低迷の元凶だとし、公共企業体と組合の解体、賃金抑制に転じた。
さらに貨幣供給量を抑制することで劇的にインフレを退治した。

その後、欧米はこの自由主義と金融重視の政策に転換し、今に至る。

自由主義とは、自由放任下の競争で経済を活性化させる立場です。
逆に言えば、権利擁護や公共福祉の為の規制は自由競争を阻害するだけと考えます。

金融重視とは、中央銀行が貨幣供給量を自由に調整出来れば、インフレ退治も景気刺激も可能だとする立場です。


しかし欧米は新たな問題に苦しむことになる。


次に続く






20190705

平成の哀しみ 75: 改革を妨げるもの 10: 欲望の経済政策 2



 
*1

日米を比べると見えるものがある

 
*2

日本の経済政策は米国追従と、米国流の自由放任主義と金融依存が顕著です。

結果が良ければ米国追従でも良いのだが。

半世紀に亘る日本経済の凋落は政府や日銀が度重なる米国の圧力をうまくかわせず、傷口を自ら開いてしまったことにあった。


さらに日本の状況が米国と異なることに注意すべきです。

米国は移民流入により先進国中群を抜いて人口増加率(1%)が高く、経済成長が続く。
しかし日本は唯一減少(0.1%)に加え少子高齢化に突入した。

 
*3
 
*4


世界を席巻するGAFA各社、IT産業は米国から生まれた
しかし日本は家電・自動車に替わる次世代産業を生み出せていない。
また生産性は先進国中ランクを下げる一方です

日本は米国と異なり社会保障支出の大きな政府であり、財政赤字は先進国中群を抜いて大きい。
さらに先進国中、日本だけが勤労者所得を下げ、貯蓄も減り続けている。

つまり米国に比べても重要な成長要因が欠け、負の部分が増大している。



 
*5

さらに米国流の模倣には危険な面がある。

米国は巨大バブルの発信地であり、所得格差拡大でもトップを走る。
今のまま経済政策の物真似を続けていると、米国の悪い面だけが実現するだろう。


次に続く



20190704

平成の哀しみ 74: 改革を妨げるもの 9: 欲望の経済政策 1




  
*1


劣化する経済政策

財務大臣、財務官僚、日銀総裁のほとんどが法科出身。

ノーベル賞の受賞は多いが経済学賞の受賞はない

政策を担う経済学者は竹中氏のように米国経済界に近い人物が多い

この三つが日本の経済政策の貧しさと偏りを象徴している。


欧米の著名経済学者の本に触れると日本の経済学者は格下に思える。

私は、2冊の本「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」と「日本人の勝算」を読んで、その意を強くした。

前者は日本の労働経済専門家2人の執筆だが、分析は現状の追認に過ぎず、追及に深みがなく対策案も無い。
その一方、世界の実績を無視してまで、二つの小論で最低賃金アップを否定していた。
その理由は自由市場崇拝と米国が重視していないからに過ぎない。



 
*2

この本が日本経済新聞「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」で1位なので如何に低レベルかが分かる。




 
*3

後者は日本在住の英国人企業家の著述で、世界118人の論文を基に論を進める。
その追求は理論ではなくデーター、例えば最低賃金アップを行った社会の統計分析から妥当性を確認している。

日本の問題は米国盲従にもあるが、経済データーを分析して効果を議論する姿勢がないことです。


次に続く