*1
今回はまとめになります。
世紀末の呪縛から脱する手立てはあるのか?
未来を変えるには・・・
* はじめに
結局、多くの人は豊かさと平和に慣れてしまい緊張感を無くしている。
日本が大戦後、無一文の焼け跡から未来を信じ全員が一生懸命働き、画期的な復興を成し遂げた。
この時、人々は希望を持ちながらも将来の不安に備え、少ない稼ぎに関わらず貯蓄を行った。
この資金が国土建設や設備投資に向かい高成長を実現させた。
今はどうでしょうか。
日々、今を楽しむと言えば聞こえは良いが、夢に向かって挑戦し続ける若者は激減している。
あり余る資金は国内投資や賃金上昇に向かわず海外証券に向かうだけになった。
若者の海外志向の低下や資金の海外流出は英国没落時の正に再来です。
本当に刹那的な社会になってしまった。
これでは身も蓋もないが、回生の手立てはあるのだろうか。
*2
* 日本には素晴らしい歴史がある
かつて日本は長期的な展望を持つ民族だった。
この平野の少ない国土に1億以上の人間が暮らせる不思議がそれを物語っている。
これを可能にしたのが、共に社会や資源を守る文化です。
特筆に値するのは乱獲や乱伐を規制した漁業や林業の資源保護です。
世界にはこれらの枯渇を経験した地域が数多くありました。
また日本は海外の変化に素早く適応する力を持っていた。
明治維新では、それまでの中華文明一色から、攘夷すべきとした欧米に対し一転して、この文明を積極的に取り入れた。
地球上で、これほど遠方にある異文化の強国、しかも名うての侵略国相手にほぼ無傷で通商を結んだ国は、日本とタイぐらいでしょう。
また富国強兵の中で、初期には大英帝国に組し、ドイツが隆盛してくれば英国と手を切り、一度負かしたドイツと早々と軍事同盟を結んだ(二つの大戦で)。
この変わり身の早さは特筆ものです(親米も変わるかも)。
まして今は北欧と言う、素晴らしい次世代の社会モデルが存在する。
日本は真似るのが得意なのだから、今の疲弊と劣化から抜け出し、新たな道を進むことが出来るはずです。
しかし留意すべきことが一つある。
それは大陸の端にあり、巨大な人口を有する島国ゆえの宿命か、常軌を逸し無謀に走り易いことです(注釈1)。
*3
* 人類の素晴らしい足跡
人類は幾度も破局を乗り越えて来た。
破局とは、外敵や自然の驚異ではなく、社会が内包し放置すれば遂には崩壊に至るものです。
破局の最たるものに、既に述べた感情(貪欲と敵愾心)の暴走がある。
人類は如何にして社会の破局を未然に防いで来たのだろうか?
それこそが法制史であり、宗教だったと言えます。
要点をみます。
法制史の代表例を見ます。
古くはハンムラビ法典に同害同罰(同害報復法)が規定されていました。
これは貧富の差による罰則の不公平を是正し、民衆を公平に扱うことを目指した(紀元前2000年頃)。
仇討ちを禁止し、復讐の連鎖を防止した。
本来、限定された仇討ちは偶発的な殺人から部族間への戦闘拡大を避ける手段でした。
しかし、これを刑法で裁き決着させることにより殺人と憎悪の連鎖を断ち切った。
私有権が認められたことにより財産の侵害が明確化され、犯罪として禁止することが出来た。
税の徴収により公共投資が行われ、社会の安全、快適、衛生などの公共政策が進んだ。
三権分立により、政治の独裁や腐敗を抑制した。
国民が憲法を制定し、政治制度を規定することにより独裁を防止した。
化学兵器の禁止条約や不戦条約が結ばれるようになった。
こうして人類は長い年月をかけて因習や既成概念を打破し、社会の平和と幸福の為に法制度を発展させて来た。
さらに国家間、次いで世界が協働するようにもなった。
決して人類は規制緩和を進め、公共政策を縮小して来たのではない。
今の逆行―エゴや欲望の放任―は単に既得権益層の私腹を肥やすゆえの口実に過ぎない(すでに根を張っている)。
これら法制度がなかったら今の世界はなかったでしょう。
こうして破局を誘発する行為(犯罪)を制限するようになったが、法律だけでその欲望や心理を抑えることは困難です。
それを担ったものの一つが宗教でした。
世界宗教の多くは欲望の自制を促し、より大きい隣人愛を奨励して来た。
キリスト教を例にみます。
キリスト教は愛の対象を隣人から異民族まで拡大させ、暴力を否定した(パウロの貢献大)。
(ユダヤ教の旧約を引き継いでいるので一部暴力を肯定しているが、全体としては暴力よりも隣人愛を優先している)
しかも、政治を忌避しなかったことで、中世まで政治と強く繋がり大きな影響力を与えた(後に政教分離)。
(原始仏教は政治を忌避し、精神修行に重きを置いたので、政治力が弱くなった)
ヨーロッパ史には、キリスト教の暗黒面も目立つが、熱心な信徒によって奴隷解放などの人道的な革新や平和構築が多く行われた。
こうして見ると、人類は法制度と宗教を通じて、本能や欲望をコントロールし、社会の破局を防止して来たと言える。
我々は、その気になりさえすればまた豊かな道を進むことが出来るはずです。
* 最後の望み
今の日本を一言で言えば「無知、無関心、惰性、そして敵意」が社会を覆い尽くしている。
無知: 歴史を学ぼうとせず、都合の悪い歴史事実を無視する。
無関心: 未来を展望せず、現状の国際状況や国内の政治社会の動きを表面的に見るだけでメカニズムを理解しようとしない。
惰性: 不満や不安があっても現状維持からの脱却(改善さえ)に臆病になっている。
社会経済のメカニズムを理解しようとしないので、見栄が良ければ何ら中身の無い政策でも歓迎してしまう(注釈2)。
敵意: 既に解説しました。
この風潮を正さないといけない。
結論は、これ以上の悪化を食い止め、そして世界が手を握り、感情の暴走などの破局を防止する規制(法や条約)を始めることです。
その為には、惰眠を貪っている日本の大半(中間層)が覚醒し、政治を変え始めることです。
今なら政治の劣化は一部の過激な人々と煽るマスコミに留まっている。
しかし放置すれば、いずれ偶発的で小さな衝突事件を切っ掛けに破局へと進むでしょう(既に仕掛けられた歴史がある)。
*4
そこで期待出来る人々がいる。
年老いたと言え、団塊世代は青春時代、国家や戦争を論じデモに加わり篤い血潮をたぎらせた。
どうか日本の為、最後に人肌脱いでいただき、周囲に清風を吹き込み、改革に立ち上がる雰囲気を盛り上げていただきたい。
どうか団塊の世代は未来を生きる子供や孫の為に率先していただきたい。
東京裁判(~1948年)でインドのパール判事が願ったように世界が共同して戦争を裁き、平和を構築出来る日が来ることを望みます。
後退ではなく、一歩でも改革に踏み出そうではありませんか。
終わります。
注釈1
この列島は、古くは中華文明から程よい距離にあったことで文明を摂取出来るが侵略を逃れることが出来た。
次いで、欧米から遠く、魅力的な産物に乏しく、軍事的に重要で無い孤立した列島であったことが、帝国主義の災禍を受け難くした。
こうして巨大な人口を抱える日本は、一度世界の覇者を夢見ることなった。
もし当時の人口が数百万人以下であれば、敢えて帝国主義に対する自衛と称して大陸進攻を企てることはなかっただろう。
注釈2
ふるさと納税は、結果的に富裕者の税金逃れを加速させ、課税の逆進性をもたらす。
これは寄付行為に多額の返礼品があるからですが、これは当初予想された。
政権はこの指摘を無視し、見栄えさえ良ければ後先考えず施行した。
多くの人は、楽しみが増え、景気上昇に繋がると感じているが、必要な税収が減り、それを他の国民の税収で補っているだけです。
景気を良くする為なら他の有効な手段は幾らでもある。
日本の公共投資と言えば、政治屋の地元の土建屋が潤うものでしかないが、福祉(人件費など)などの投資の方が社会的に有意義であり、かつ経済効果は同じです。
日本では話題に上らないが、北欧の公共投資とは後者なのです。
現在、日本では低所得の非正規雇用が増えているが、これを加速させているのがこの度の「働き方改革」など、これまでの与党の一連の政策です(米が主導し1980年代から始まった)。
難しい理屈は不要です。
実際に、悪化し続けている事実に目を向ければ納得できるはずです。
極論すれば、流動性の高い労働者の存在はあっても良いのです。
問題は補償の無い首切り、特に論外は同一労働同一賃金が無視されていることです。
政府はこれを野放にし、国民も嘆くだけで政権に拒否の態度を示さない。
北欧ではこれらが守ら、かつ最も幸福な国であり経済成長も続けているのです。
国民が目を覚ます以外に道はないのです。
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