20190317




隣国はなぜ軍拡に走るのか?


北朝鮮は建国以来、ソ連援助の下で核開発を行っていた。
ソ連崩壊後、この庇護が無くなり、核兵器こそが米国への抑止力とみなされた。

一方、米国はそれまでの宥和策から強硬策に転じ、北朝鮮を悪の枢軸と名指した。
これに呼応するように北朝鮮はミサイル発射と2006年から核実験を繰り返した。

この米国の転換は子ブッシュ大統領(2001~2009)と取り巻きのネオコン(新保守主義)による。
彼らは米国の覇権を守るためには武力行使も辞さないとし、対外戦争と軍事費増大を図った。
これは彼らが軍産複合体で収入を得ていたことと、同時多発テロも影響している。
 

 

 


1980年代、中国経済は躍進を始め、歴史的に貧弱だった海軍力をシーレーン確保の為に増強する。
その後、台湾の領有を巡り米国との間で緊張が生じ、ロシアと協力し欧米を牽制した。
2010年頃から、南シナ海への侵出を強めた。
これは米国の核攻撃と海空軍の中国本土攻撃に対抗する目的で、核ミサイル原潜の深い航路と空軍の滑走路確保と考えられている。

現在、中国の軍事力は世界第3位になり、米国海軍艦艇の大半が太平洋に配されている。


次回、米国の戦争を見ます。

20190315

北欧3ヵ国を訪ねて 57: オスロ16: ノルウェー抵抗運動博物館





*1


今回は、アーケシュフース城内にあるノルウェー抵抗運動博物館を紹介します。
ここには第二次世界大戦の抵抗運動の様子が展示されています。
小国の悲哀と独立への強い思いが錯綜する中で、希望へと導いた国王の行動が光ります。






 
< 2. 博物館と関連映画 >

上: ノルウェー抵抗運動博物館の外観。
地下に展示室が広がり、狭いながらも十分に当時の状況を感じることが出来ます。
観光客は少ないが、学生や夫婦の見学者が少なからずいた。

左下: 抵抗運動の象徴になったノルウェー王ホーコン7世の肖像画。

右下: この抵抗運動が始まった三日間を描いた映画「ヒトラーに屈しなかった国王」のポスターです。

映画の主人公はホーコン7世です。
私は偶然、旅行に行く前にこの映画を見ることが出来ました。
これはノルウェー製でハリウッド製のような派手さはないが、当時の緊迫感と揺れる首脳陣の思いが伝わってくる良作でした。




 
< 3. 展示物 1 >

左上: この地図はドイツ軍がノルウェーに侵攻した状況を示しているようです。

右下のオスロ湾に一群のドイツ艦隊が侵入しているのが分かります。
当時の政府首脳と国王はオスロにいました。
抵抗のドラマはオスロから始まりました。

ドイツ軍は雪が残る1940年4月にノルウェー各地に同時に侵攻した。
ドイツは前年、ポーランドに侵攻を開始し大戦が始まっていた。
破竹の勢いで進軍したドイツ軍は1940年6月にパリを陥落させた。
この5月にはチャーチルが英国首相となり、英国は和平から臨戦体制に転換した。

左下: おそらく左がホーコン7世のようです。

右で威張っているのが悪名高いクヴィスリング首相でしょう。
ノルウェー軍人の彼はナチスを信奉しており、前年にヒトラーにノルウェー侵攻を要請していた。
実は、彼はナチス主体の「北海帝国」を妄想していた。
いつの世にもこのような人物は出るようです。
彼はドイツ軍侵攻の混乱に乗じ、全権掌握を宣言し、自ら傀儡政権を任じます。
しかし彼はノルウェー首脳と国民からは疎んじられ、ヒトラーを除いてドイツ側も信用していなかった。
彼は戦後、裁判によって銃殺刑に処せられた。
彼の名は今でも「売国奴」と同義語として使用されている。

右下: おそらくドイツ軍に占拠されたオスロ港でしょう。



 

< 4. 映画のシーン 1 >

上: 映画は冒頭、闇夜から始まった。

それはオスロ湾で最も狭いドレーバク水道にあるオスカシボルグ要塞の守備隊が舞台になります。
この要塞の島をフェリーか眺めることができました。

闇夜に乗じてドイツの戦艦が迫って来たので、守備隊長は王宮に判断を仰ごうとするのですが連絡が取れません。
ここで彼は砲撃の命令を独断で下し、戦艦を撃沈します。
(私には出来なかったでしょうが)

この彼の行動が国王に逃亡の時間を与え、後の抵抗運動に繋がった。
後に彼は勲章を授与されます。


下: 右はドイツ公使で左はドイツ将校です。

この映画で国王に次いで、心打たれた人物がノルウェー駐在ドイツ公使Curt Bräuerです。

映画の舞台は翌日のオスロに移ります。
彼はドイツ軍による支配を極力穏便に済まそうと調整に努めます。
ヒトラーとも直談判し、また侵攻して来たドイツ将校相手に孤軍奮闘します。
しかしホーコン7世はヒトラーから条件(傀儡政権を認める)を呑むことが出来ず、家族と政府首脳と共にオスロを去り列車で北部へ逃亡します。

大使の仲介の労は無に帰し、彼は任を解かれソ連への前線に送られ、9年間のソ連での捕虜生活に耐えることになる。
このような身の危険を顧みない他国を思う外交官がいたことに感動した。



 

< 5. 映画のシーン 2 >

上: ホーコン7世と王子、そして政府首脳がドイツ軍の追撃から逃れているシーンです。

下: 国王一行を守る兵士は少なく、少年兵も参加している。

ホーコン7世は逃亡しながらドイツの降伏要求を拒否し続け、2か月後に国外脱出を果たすることになる。
この時「独立を取り戻すための戦い」の声明を残し、王家、政府と軍の要人500名と共に船で英国に亡命します。
ロンドンで亡命政府を樹立し、連合軍と共に戦うことを宣言し、ノルウェー国内の抵抗運動への指示と支援を続けます。

そして国民は一丸となって統率の取れた抵抗をおこなった。
初めは非協力・非暴力で抵抗し、地下に潜伏し、ドイツ軍の劣勢が伝わると武力闘争に切り替えっていった。

戦後、国王は帰国を国民の大歓迎で迎えられ、再び独立を取り戻した。
そして現在、世界で一番豊かで幸福な国と言われる。



 
< 6. 展示物 2 >

ドイツ軍の侵略を模型で示したものです。


 
< 7. 展示物 3 >

抵抗運動の主役たちと様々な抵抗の様子が展示されていました。



 
< 8.展示物 4 >

これはどうやら抵抗運動側によるオスロでの破壊指令のようです。

指令書の地名は地図の黄色の破裂マークで、前回紹介したアーケシュフース城に至る道で、右側にオスロ中央駅があります。
指令書の目標名は、ドイツが創設したノルウェー内のナチス党組織です。
日時は終戦の前年の1944年です。


* 感想

この抵抗運動と映画も含めて感想を記します。

一番印象深いのは、劇中でのホーコン7世が語る言葉です。

彼は「私は国民から選ばれた王だから、もっとも尊重すべきは国民の声である」として、安易にドイツの言いなりなることは出来ないと悩みます。
ドイツに屈服して王家と国民の命を守るべきか、それとも半世紀前にやっと手に入れた独立を守るべきか。

実は、彼は1905年のノルウェー独立に伴い、国民投票でデンマークの王子からノルウェー王になっていたのです。

一方ドイツ侵攻で政府首脳はうろたえ、王は「君たちは国民から選ばれたのだから、国を率いる責務があるのだ」と諭します。
しかし彼らは答えを出しません。

王は象徴的な存在であって、政治に口出すべきでないとホーコン7世
は考えていた。
彼への国民の信頼は絶大で、ノルウェー政府も王の言葉を待ちで、ドイツも彼を条約調印の相手と見做していた。

彼は一人悩み「降伏拒否」を宣言することになる。
映画はここに至る3日間を描いている。


私が北欧に惹かれ、政治社会経済の良さを知りたいと願い、今回の旅にでました。

北欧三ヵ国に共通するのは立憲君主制ですが、大いに英国や日本と異なるものがある。
ここ数百年の歴史を見ると、北欧三ヵ国は王家の力が弱く、貴族と対抗させ、国民がまとまるため、国民が王家に国の統率を依頼するようなところがある。
これはヴァイキングが隆盛した社会背景と共通しているように思える。

ともかく議会制民主主義が国民と王家の信頼によってより強固になっている。
不思議な国です。

抵抗運動が分裂せず、スムーズに行われたのもこの国王への人気の賜物かもしれない。


実は、この館を退出する時、事務所の男性職員が目を合わせ「ありがとう」と言ってくれた。


次回に続く。



20190314

平成の哀しみ4: 深まる亀裂 2: 何が起きたのか





*1


隣国との諍いは何を意味するのか?



 


韓国と中国は日本に対して二島の領有を主張し、さらに植民地支配への反省を求めている。
また中国は軍事大国へ、北朝鮮は核兵器開発とテロ国家へと突き進んでいる。
一方、日本は過去を賛美するタカ派が政権を担い、軍事大国を目指し始めた。


少し動きを確認します。

中韓のように侵略された国が当時の非道を後になって訴える事は、ドイツや東欧でもあった。
それは戦時中のしがらみ(ナチス加担や独裁政権など)から政治や社会が抜け出せたこと、また社会運動の高まりも影響している。

尖閣問題は中国と台湾が資源獲得を狙ったのが発端だが、日中間で保留扱いにしていたものを日本の国有化で火に油を注ぐ結果になった。

一方、日本も様変わりしていた。

経済は長期に衰退し、政府の景気対策はことごとく失敗していた。
人々は諦めながらも、かつての繁栄を微かに期待もしている。
一方で大戦を知らず歴史を軽視する人々が増えた。

このような中、大戦を美化し、対外強硬策こそが日本復活の切り札との訴が人気を博するようになった。

これは世界史で繰り返されるパータンだが、日本のいつか来た道かもしれない。


次回は隣国の軍拡を考察します。











20190313

春の淡路島



 
*1


2019年3月9日、快晴の中、明石海峡公園、明石海峡大橋、はなさじきを訪れました。



 
< 2. 明石海峡公園 1 >


 
< 3. 明石海峡公園 2 >

 
< 4. 明石海峡公園 3 >

河津桜が満開でした。

 
< 5. 明石海峡公園 4 >

小鳥が集まっていました。

 
< 6. 明石海峡公園 5 >

 
< 7. 明石海峡大橋 >


 
< 8. はなさじき 1 >

 
< 9. はなさじき 2 >

菜の花が青空に映えていました。







20190312

平成の哀しみ3: 深まる亀裂 1: 日本と隣国





*1


日本と隣国の関係はどうなったか?


従軍慰安婦
既に議論されていたが1990年代になると、韓国側からの訴訟、国連の賠償勧告が続き、首相は謝罪した。

漫画 ゴーマニズム宣言
1992年連載開始、痛烈な社会批判で右翼ブーム到来。

北朝鮮の核
1993年からミサイル発射実験、2006年から核実験始める。

新しい歴史教科書をつくる会
1996年設立、歴史(自虐史観)を否定する保守団体。

日本会議
1997年設立、軍備増強、首相に強権集中、旧体制の復活などの憲法改正を訴える保守団体。

国民の歴史
1999年、自国賛美でベストセラー。

竹島
韓国は以前から強硬であったが、2000年代から日本で問題視される。

拉致
2002年、北朝鮮が初めて小泉首相に拉致を認めて謝罪。

韓流ブーム
2003年の冬のソナタが契機になり、韓国への好感度が上がる。

尖閣諸島
2012年、石原都知事による購入計画に対抗して日本政府が国有化。

自民党の日本国憲法改正草案
2012年発表、天皇明文化など日本会議の意向に沿った制定を盛り込む。

防衛費増大
2018年、防衛省は攻撃型空母を検討。
首相は米国より7年前の5倍以上になる5兆円の武器購入。


 


何やらキナ臭くなった


次回に続く





20190311

北欧3ヵ国を訪ねて 56: オスロ 15: アーケシュフース城





*1


今回は、海岸に面した丘に建つ古城、アーケシュフース城を紹介します。
北欧で訪れた城の中では最も郷愁を誘う佇まいでした。







 
< 2.散策ルート、上が北 >

上: 赤枠が今回紹介する範囲です。

下: 赤線が散策ルートで、Sから初めて半時計周りに進みEに戻りました。

時間が無く、あまり興味もなかったので城の建物内には入りませんでした。
城の敷地内にあるノルウェー抵抗運動博物館には入りました。
ノルウェーの現代史、第二次世界大戦に関心がある方は参考になると思います。
後に紹介します。

散策したのは2018年6月6日の11:00~12:00で、途中、ノルウェー抵抗運動博物館を見ています。










 
*3


 
*4

上: 北側のウオータフロントを見ています。
前日、ボートで右側の港に着岸しました。

下: この城壁の上の道から港を見下ろしています。




 
*5

下: 湾奥右手に見える茶色の建物がオスロ市庁舎の一部です。



 
*6

左上: 衛兵の少年が観光客に人気で、また可愛い。
右上: 城の西側にある砲台に向かって下ります。

下: ほぼオスロ湾の西側を見ています。






 
*7

下: この建物が最も重要な城の建物なのでしょう。
撮影している私の後ろ、海側に砲列があります。

この城は、1299年に創建され、1527年、火災に遭い大部分が焼失した。
1600年代前半に宮殿として改築され、城壁も造られた。
敵軍に9回も包囲されたが、一度も陥落することはなかった。
現在は公式行事が行われ、王室関連の亡骸が城内に埋葬されている。



 
*8

上: 砲列は西側、オスロ湾に向かっています。

下: 小さな門をくぐり抜け、砲台を振り返った。




 
*9

上: 先ほどの門から多くの観光客が出て来た。

下: その門の右側、城の建屋を眺める。



 
*10

上: ほぼ上記と同じ位置から、これから戻る方向を望む。

下: 真直ぐ進み、右に折れると、最初に入って来た場所に戻ります。

一部、軍事関連の施設が有り、通れないところがあります。


次回に続きます。




20190308

平成の哀しみ2: 身近な変化

 


平成に起きた身近な変化を見ます。




1989年以降、身の回りで起きた事

1. 民間給与は一度大きく下がり、その後ゆっくり下がっている。
2. ブラック企業が増えた。
3. サービス業で働く高齢者が増えた。
4. 失業率は長期に悪化していたが、ここ数年良くなった。
5. 金利は年々が下がっているが、ここ数年、株価は上昇した。

6. グルメと健康のTV番組が増えた。
7. 露天風呂の人気が定着した。
8. AKB48などのグループアイドルが活躍。
9. オーム真理教や幸福の科学が注目された。

10.若者の海外留学が減った。
11.投票率は年々低下しているが、特に若者で著しい。
12.所得の低い非正規雇用が増え続けている。
13.スマホやSNSが普及し、TVや新聞、書籍の視聴が減少。
14.平均初婚年齢が上昇中。

15.メイドイン中国は当たり前。
16.かつての優良メーカーに勢いが無く、外国人社長が増えた。
17.海外からの観光客や労働者が増えた。
18.介護サービスが定着した。
19.世論調査で生活の満足度は低下傾向にあったが、ここ10年は上昇。

20.「ゴーマニズム宣言」「年収300万円時代・・」が一世を風靡。
21.高視聴率だった報道番組ニュースステーションが終了。
22.嫌韓や嫌中が露骨になり、大戦時の問題が蒸し返されている。
23.ネットウヨの隆盛。


次回に続きます。