私は今の首相の豪胆さに感服しています。
端的にはアベノミクスと憲法改正です。
ここまでやれる人物は他にいないでしょう。
事の良し悪しは別ですが。
*2
まえがき
私はアベノミクスの意気込みを評価します。
成功すれば首相は日本史に燦然と輝いたことでしょう。
それまでの日本の金融トップ―官僚、エコノミスト、日銀とは真逆の施策をぶち上げた。
彼は著名なクルーグマンが唱えた政策を即刻2013年から実施した。
狙い通りに行くと、苦労無く莫大な累積債務は消え失せ、経済は復活するのですから、私も成功を願ったものでした。
円安は確かに輸出大手企業を潤してはいるが、いまだに目標インフレ値は達成できず、好況の実感はない。
後5年じっと我慢すれば景気は好転すると信じたいが、当のクルーグマンが2015年秋に異次元緩和は失敗だったと言っている。
もともと、私はすんなりとは行かず、行ってもより大きなバブル崩壊を招くだけだと推測していた。
実際、アベノミクス(リフレ策など)の多くは欧米先進国が既に実施している施策で、その結果、欧米の状況は良くなったと言えるでしょうか。
アベノミクス前の日本の経済状況(失業率など)でも経済成長率を除いて欧米より良かったと言える。
今の状況を見ると、クルーグマンの後の指摘が正しいのでしょう。
それでも私は首相の豪胆さに感心する。
ひょっとすると自信過剰か無鉄砲なだけかもしれないが。
もに一つ気になるのは、せっかく恵まれた家系や政治基盤を持ちながら、従わない人に対して下品なところです。
惜しいような気がする
*3
彼の行動パターンに不安がある
国民が望んでもいない憲法改正に、自分の歴史観を前面に押し出し、突き進む姿勢には驚かされます。
これに関連し、憲法改正について御贔屓の読売新聞を読んでくれと国会で答弁する神経は凄い。
正に、お友達(加計学園)や右翼の同志(森友学園)への身びいきは強烈だ。
かつて品格ある首相はたとえ思っていても、ここまで贔屓を露骨に言い募ることは避けるでしょう。
明らかに、これは国のトップが自ら公明正大で無いことを吹聴しているのですから。
もっとも、彼にとっては自分に付き従うものこそが正義であり、反対するものは偏向している悪なのでしょう。
だが、世界の報道マンは読売新聞を、日本の新聞の中でどう評価しているのでしょうか?
決して上位には見られていません。
しかし、ここで一考が必要です。
なぜ現首相は、このようなことが出来るのでしょうか?
よく一強だと言われます。
それはそれで間違いはないのですが。
それは小選挙区制や与党が取り組んできた官邸支配の結果とも言えますが、やはり一番はポピュリズムでしょう。
先の民主党の失敗、長い経済低迷、ころころ変わるトップ、さらに加えて先進国の同様の状況があります。
端的な例は、現首相がポピュリズムの権化トランプ大統領と気が合い、さらに大統領はタカ派ルペン党首と気が合うことで、正に右翼ポピュリズムの大合唱です。
一番のポイントは、現首相が圧倒的な人気を保持していることに尽きる。
人気があれば、与党議員は当然付き従う。
また官僚も民主党のように敵と見なさいのであれば組みやすい。
*4
しかし、ここに問題があります
結論から言うと、国民は真実を知ることが出来ずに、国家が暴走することを防げなくなることです。
既にこのことを危惧している方もいるでしょうが、安心している方に何が問題かを示します。
視点は三つあります。
A: 国会審議での政府や官僚の答弁に難点あり。
つまらない森友学園や加計学園の問題です。
日本の国家予算は100兆円ほどあり、この両者による無駄な出費は自治体分を入れても200億円以下でしょう。
首相にすれば、たかだか1/5000のロスに過ぎない。
そんな小さなことでも政府はまともに答弁せず、また官僚も記録が無いとか、全面黒塗りの資料を出す始末です。
つまり、政府や官僚にとって都合の悪い情報は一切出さなくて良いと開き直っている。
特定秘密保護法がこれに加わるのですから鬼に金棒です。
要は、国民が真実を知る権利より、首相の面子が重要なのでしょう。
これがまかり通れば今後、為政者は国民を偽って思いがままに振る舞うことが出来る。
*5
B: さらに日本の組織文化が災いを生む。
日本人は村意識が強く、トップや集団の意向に盲従し易い。
俗に言う、忖度や気配りで人は動き、悪く言えば「赤信号、皆で渡れば怖くない」に陥る。
企業で働いた経験のある方は、このことに納得できるでしょう。
もっとも、これにも良い所があり、組織が一丸となって秩序を維持し、また事に当たることです。
しかし、これがまた問題を生む。
それは、社会正義に基づいた内部告発であっても、組織やトップへの裏切りと見なされることです。
この意識は日本では根深く、加計学園の前前川事務次官でも激しい。
つまり、この組織文化は良いこともあるが、トップや組織が悪い方向に向かっているのに是正する力が働かず、大きな災いを生むことになる。
原発や食品偽装の内部告発などにもその例があった。
C: この問題は幾度も不幸な歴史を生み続けて来た。
日本の組織は都合の悪い情報や記録を残さない、出さない傾向が強い。
大戦時、米英は日本より遥かに戦場の情報を国民に流すように努めた。
日本はドイツほどではないが、偽情報を意図的に流した。
また軍部は徹底して記録隠滅を図った。
米国政府は政策決定過程を記録し保存し、後に為政者の判断が正しいかを検証する歴史があるが、日本には乏しい。
日本には、お上のやることに口出ししない雰囲気が残っている。
隠蔽状況は、現政権により強化され、昔に逆戻りしている。
*6
今後、何が起きるのだろうか?
このような場合、歴史上、一番起きやすいのは戦争でしょう。
世界の戦史を見ると、本当に敵国が一方的に攻めてくることもある。
だが往々にして自ら口火を切った戦争や、小競合いから始まり、互いに戦火を拡大させた戦争もある。
後者の場合、国民が些細な戦闘などの事実でもスピーデイに入手出来れば、早期に為政者や軍隊の暴走を防ぐことができる。
当然、マスコミが御用新聞でないことも重要ですが。
しかし、これが政府により捻じ曲げられたり、伝わらなけらばどうなるのでしょうか?
今回の二つの問題や南スーダンの自衛隊日報のような政府答弁では・・・。
その先に来るものは80年前に歩んだ道であり、今まだ御存命の戦争経験者の悲願を無にすることになるかもしれない。
歴史は、大惨事に至る道が準備されていることを教えてくれています。
今、私達に求められているのは先の大惨事を予見することです。