< 1.桜井、慰安婦めぐる訴訟で敗訴 >
前回、「報道の自由」について語りました。
今回は、日本人が他者に対して偏狭になり易いことも見ます。
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はじめに
前回、世界や言葉や文化が異なる海を隔てた隣国の理解が困難なことを見ました。
これが往々にして視野狭窄で身勝手な言動を生み出します。
自分の属する社会だけに通じる主義主張を唱え、他者と通じ合える主義主張を模索するどころか、否定までします。
このことは幸福で平和な国を作るには大きな第四の壁になります。
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* 様々な珍発言
巷に溢れる視野狭窄で身勝手な言動を紹介します。
A: 「世界中が憧れるこの日本で『貧困問題』などを曰う方々は余程強欲か、世の中にウケたいだけ。」
桂春蝶がネットで発信。二代目落語家。
B: 「国民主権、基本的人権、平和主義、この三つをなくさなければ本当の自主憲法にはならない」
長勢甚遠が大会で発言。「安倍晋三さんを支える会」の中心メンバー、日本会議富山県会長。
C: 「先の大戦において祖国と同胞のために一命を捧げられたあまた英霊・・。 この英霊への感謝の念こそ、・・歴史認識の第一であるべきである。
大東亜戦争は、米英等による経済封鎖に抗する自衛戦争としてわが国は戦ったのであり、後にマッカーサー連合国軍最高司令官自身もそのことを認めている。」
日本会議のHP、歴史認識より抜粋。日本最大の保守(右翼)団体で自民党国会議員246人、安倍内閣19人中15人が入会か賛同している。
この三つの意見のどこが可笑しいのでしょうか?
例えば日本会議の役員には神社関係者が多いが、大会社のトップ、有名大学の教授も少なくない。
彼らが流言飛語の拡散に熱心・・。
世界は、彼らを世界を見ず、歴史を自己都合で解釈する時代遅れな人々と見るでしょう。
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* 何が偏狭なのか
A: 「『貧困問題』を言う人は余程強欲」について
この誤解は世界と日本を比較出来ていないことによる。
日本が優れて幸せな国と思っている人が多いのは事実で、国政調査結果で明らかです。
日々満足して暮らすことは素晴らしいことです。
しかしこれまで、世界に共通する指標を使って日本が如何に退歩し続けているかを見て来ました。
この事実さえ、日本は別格であり、指標にこそ問題があるとして無視する人がいる。
しかし無視できないことがある。
それは、多くの指標が年々日本の社会・経済・人権の劣化を示し、多くの途上国が日本を抜いて行くことです。
なぜこのような誤解が平然と語られるのでしょうか?
多くの人は海外の状況に関心がなく、政府や御用マスコミを信じて疑わないからです。
海外に目を向けて真実を知ろうとする人はごく少数に過ぎない。
日本が大戦に突入する時も、米国との経済力の差を正しく評価出来た人は一握りで、彼らは卑怯者と罵倒された。
海外への無知が悲劇を生む状況は変わらない。
B: 「憲法から国民主権、基本的人権、平和主義を削除」について
このアピールは王政復古を想わせ、近代史を冒涜している。
これを説く長勢は東大法学部出で、労働省を経て自民党議員になり、法務大臣にまでなっている(代々議員の家系)。
この彼が世界の憲法史の流れを無視している。
近代以降、欧米先進国はたとえ立憲君主制を取り入れる場合であっても国民主権と基本的人権を最重視して来た。
平和主義については、日本は最先端(理想)を走っている。
おそらくは日本会議の中心的テーマ、天皇の御世への回帰に沿って憲法を変えるには、国民主権は邪魔だろう。
基本的人権と平和主義は、君主(天皇)に統率された麗しい社会では混乱要因でしかない。
日本会議の台頭は、深まる日本の衰退と高まる世界の右傾化に触発されたのでしょう。
さらには天皇の存在、長期与党政権、さらに世襲議員の台頭が後押ししたのだろう。
相変わらず保守派リーダーは海外の歴史や情勢を無視して国民に自説を吹聴している。
これが可能なのは、多くの国民が海外に興味が無く、まして日々進化している諸外国の理念や政策に疎いからです。
これからは米国ではなく、幸福度が高い西欧数カ国と北欧5ヵ国の知見が有用です。
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C: 「英霊への感謝が歴史認識の第一、大東亜戦争は自衛戦争」について
このドグマは、強い自己愛ゆえの歴史の改ざんと言える。
これは単に稚拙な歴史認識に留まらず、外交に悪影響を与え、強いては平和を脅かす。
日本会議の言う「先の戦争は経済封鎖による自衛戦争だから日本に非は無い」は世界に通じるでしょうか?
簡単に反証します。
・ もし北朝鮮が経済封鎖に対抗してミサイルを発射した場合、世界は自己防衛とし見做すでしょうか?
・ 欧米の経済封鎖の35年前から日本軍は既に東アジアに侵攻していたので、世界は単に日本が戦争拡大を続けたと見るだけです。
・ 日本はロシアの脅威に対して東アジアに侵攻し、他の帝国主義国と同じであり、日本だけを責めるは片手落ちであると侵害国に言えるだろうか?
ドイツは侵害国に徹底して謝罪し、虐殺を認め、これを否定することを禁止した。
このことが今の信頼を生んでいる。
・ マッカーサー司令官が自衛戦争を認めたと言うが、安倍の祖父岸信介は戦後のインタビューで「あれは侵略だった」と発言している。
彼は戦犯になったほど深くこの戦争と植民地支配に関わっていた。
ざっと見ても彼らの歴史認識の狭量さがわかります。
彼らは世界や世界史を意図的に無視し、歴史を捏造している。
問題は人々がこれに簡単に踊らされてしまう下地(文化と報道)が日本に存在することです。
実はこの偏狭さが日本を窮地に陥れるとしたら。
< 6. 世界のニュース1 >
上: Khmer Times(カンボジア新聞)、March 26, 2018.
「安倍は縁故主義のスキャンダルの渦中で謝罪」
下: U.S. News & World Report(米国雑誌)、March 26, 2018.
「日本国民の半分は安倍が土地取引スキャンダルで辞任すべきと考えている」
* 身の周りで起きていること
私達は、真実を隠そうとする多くの報道に取り囲まれていると疑うべきです。
もっと世界に目を開いて下さい。
世界のニュースサイトとグーグル翻訳で、世界の動きが見えて来ます。
上の二つのニュースは日本の政治腐敗を的確に伝えている。
< 7.世界のニュース2 >
上: CNN(米国のテレビ局)の日本版、2018年3月30日。
「日本も北朝鮮との首脳会談を模索、取り残される不安募らせ」
下: Business Insider (米国のウェブサイト)の英国版、March 29, 2018.
「外交の転換、日本の安倍はスキャンダル災難から話題を替えることを狙っている」
この二つのニュースはアベが外交で人気回復を狙っているのを的確に伝えている。
日本の外交は、米国との同盟に束縛され東アジアと敵対的にならざるを得ない。
これで人気を得て来たが、内政と外交で共に窮地に陥ると、新たな目玉外交を模索し始めた。
御用マスコミやアベ友応援団の話だけを聞いていると真実が見えなくなり、国民は益々馬鹿にされることになる。
ここで日本の若者と経済を見てみましょう。
< 8.海外留学 >
上のグラフ: 日本の海外留学生は2004年から低下し続けている。
真ん中のグラフ: 日本での外国人留学生はアジアからが多い。
下のグラフ: 日本を除くアジア人留学生が増加している。
残念ながら、豊かになった日本の若者はチャレンジ精神を無くしつつある。
これは英国が19世紀半ばから衰退した時と同じ状況です。
< 9. 企業と若者の動向 >
上のグラフ: 若者は海外で働く意欲を年々無くしている。
中央の表とグラフ: 日本の競争力は年々低下し、政府の効率性と外国語のスキル
が大きな弱点になっている。
下のグラフ: 企業にとって東アジアは重要になったが、企業はグローバル化を担う人材確保で困っている。
この政治の混迷と社会の衰退からどうすれば抜け出せるのだろうか?
* まとめ
少なくとも日本会議の言う憲法改正―天皇中心、道徳や旧来の家族の復活、懺悔ではなく誇りを取り戻す、で日本の再興や平和構築は無理です。
明らかに外交や経済、若者の覚醒には逆効果になる。
最悪、戦前に戻るだけだろう。
皆さん、どうか世界から取り残されることを恐れて欲しい。
次回に続きます。