*1
前回は、日本だけでなく世界が右傾化している背景を見ました。
右傾化はハンチントンが指摘した文明の衝突が大きく影響している。
今回は、今起きている不思議な言葉遊びを見ます。
はじめに
今の日本の経済と政治は凋落を深めているように思える。
しかし、多くの人にはそうは映らない。
この違いを「何が問題か?」で解明したいと連載を始めました。
今まで、日本の経済先行きと所得格差、右傾化を取り上げて来ました。
しかし、これとて反対の立場から見れば正常に見えるらしい。
今回、この反対の立場の一端をみます。
*2
忖度を巡って
ある田舎の役場を退職した人に、私は「役場で忖度(そんたく)はどのような感じですか?」と聞きました。
彼は「そんなものは無いよ! 第一、忖度と言う言葉は急に出て来たものだから・・・」とあっさり否定されてしまった。
マスコミでは森友・加計問題、詩織さん事件で「忖度」が毎日のように騒がれています。
私は彼の口から、忖度の事例が聴きたかったのですが、拍子抜けでした。
忖度と言う言葉はあまり使われていなくても、出世を望む人の多くは上司の意向を汲み取り仕事をするのが当然で、実際に忖度はまかり通っているはずです。
これが出来ないと上司から「気配りの出来ない奴」と相手にされなくなるでしょう。
敏感な彼は、とっさに私の質問に政府批判を汲み取り(忖度し)、否定したのでしょう。
彼は如何にも強面で独断専行タイプでした。
「忖度」はあまり使われない言葉ですが、その意味するところは大概の人には分かり、日本の社会に定着した精神文化です。
どちらかと言うと良い意味で使われ、その意味は他者への配慮、気配り、推察などでしょう。
ある新聞記者が2003年に投稿した文に忖度を使っていた。
「・・。あえて忖度すれば、そのような錘(おもり)を心の中にぶら下げた人々が、数多く戦後の数十年を生きて来たのではないか。」
これは戦後、親しい人物が誰にも従軍中の体験を語らなかったことについて触れたものです。
*3
あるテレビのニュース番組で
以前、二人のコメンテーターが森友問題に関して答えていました。
司会者が「官僚は忖度するものですか?」とこの二人に尋ねました。
すると、一人は「忖度は当然あるはずです」と答えた。
もう一人は、「上級の官僚は忖度なんかしないですよ」と明言した。
私は聞いていて、奇異な感じを受けた。
忖度自体が悪いのではなくて、上司や利害関係にある人物の便宜を計り、法や手続きを曲げて、不公正なことをする事が悪いはずです。
このことは自明なのに、簡単に忖度を否定し、しかも下級の官僚ならやるでしょうとはぐらかす返答に、この人物の悪い忖度例(権力者へのおもねり)を見た。
この人物とは田崎史郎氏でした。
面白い座右の銘
ある官僚の座右の銘が「面従腹背」だそうです。
この意味は「うわべだけ上の者に従うふりをしているが、内心では従わないこと」で、通常悪い意味で使われます。
この官僚なら上の者(権力者)に忖度をするはずはなく、自ら便宜を計らない潔癖な官僚と言える。
それこそ田崎氏の弁に従うなら、正に上級官僚の手本と言えるかもしれない(笑い)。
もっとも出来る官僚達は政治屋を馬鹿にしているので、このような風潮が生まれと言え、やはり良い状況とは言えないが。
この官僚とは前文部科学省事務次官の前川喜平です。
これに輪を掛けて不可思議な事
実は、この前川氏を「官僚のクズ」と言い放った元官僚がいた。
この元官僚は「面従腹背などと言って逃げず、官僚なら正々堂々とクビを覚悟で仕事をしろ!」と前川氏を罵倒する。
私もそうあって欲しいと願うが、そうでないのが日本の悲しさ!
官僚組織は縦割社会の典型で、残念ながら長いものには巻かれろは日本の風土です。
かの田崎史郎氏は忖度しないのが上級官僚と言い放ったのに、ここではそれが仇になっている。
この元官僚とは岸博幸氏です。
*4
何がおかしいのか
おそらく私のこの説明を読んでも、二つの異なる立場は対立したままでしょう。
現政権内で忖度が災いを生んでいると考える人と、忖度など無いと考える人の溝は埋まらないでしょう。
簡単に言えば、忖度はありふれた日常の行為で、これを否定することに無理がある。
むしろ日本では出生する人ほど(仕事が出来る人ではない)、忖度出来るのが常識です。
重要なことは、忖度により不正が行われることです。
先述の役場の退職者や田崎氏、岸氏の立場は「忖度があった」ことを否定することにより、配下の不正行為を権力者(上司から首相まで)と切り離すことにあるようです。
つまり彼らは誰かの立場が悪くならないように忖度しているのです。
残念ながら、この態度も日本の組織でよく見られるトカゲの尻尾きりで、幾度も繰り返されて来ました。
悲しい事
今の日本の政治では不毛な口論が延々と続くだけです。
不毛なのは追及する側と追及される側だけではない。
それらに加勢し、さらにつまらない口論と煽動を行うマスコミに生きる人々が居る。
この人々の言説に留飲を下げ、憂さを晴らす人々が、さらに大勢居る。
これが最も悲しいことだろう。
私の知る限り、革新が続き、成長し続ける会社の社長は、部下が上司への無駄な忖度、おべっかなどをしないようにさせている。
小さな不正も積もれば、やがて山となるの例えです(笑い)。
日本の政治も私利私欲(党利党略)を離れ公正でありたいものです。
次回に続きます。