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20261001

短縮版 迫る多難な危機  第四章 4-2 後半2部

  


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。

Make the world and people happy again!

 

 

--- 目次  ---

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 4-2 なぜこのようなことが起きてしまったのか

   真実はどうして葬られたのか 1

    真実はどうして葬られたのか 2

    すがり続けた夢の果てに

    基本的な考え方

 

 

 


第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 

 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。米国で右翼ポピュリズムが、なぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日米欧等先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いています。さらに米国特有の病理(特徴的な宗教)が災いしています。

 

 米国が独裁化を回避し本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになり、また世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。

 

 

 

 真実はどうして葬られたのか 1

 

 いくら信仰心が高まっても、現代は科学の知見があまねく社会を照らしている。数千年前に遡る聖書の予言や格言に先進大国が振り回されるとは思いもよらなかった。実は、宗教のみが真実を覆い隠す役割を果たしたのでは無い。もう一つ深い闇が社会を覆いつくしているのです。

 

 


  分かり易い例があります。2017年、トランプ政権のスパイサー大統領報道官は、トランプ氏の就任式に集まった群衆の規模について「過去最大の人々が就任式に参加した」と主張した。しかし、メディアによる空撮写真や公共交通機関の利用データなどからは、前回のオバマ大統領の就任式時よりも少ないと指摘された。これについて、コンウェイ大統領顧問がテレビ番組に出演した際、「スパイサー報道官が示したのは嘘ではなく“代替的な事実(alternative facts)”である」と述べ、正当化していました。トランプの発言は虚言の方が多いのですが、虚実取り交ぜ、応援者には夢を与え続けて、批判に対しては報道機関と国民を煙に巻いてきました。実は、この煙に巻く事で、永らく米国民は真実と科学的知見から遠ざけられて来たのです。

 


 

 1950年代、喫煙と肺がんの因果関係が指摘され始めると、大手タバコ会社は共同で「タバコ産業調査委員会」などの偽装団体を創設しました。これは中立的な研究機関を装いながら、実際には業界に都合の良い偽物の専門家を雇い、科学的論争が未解決であるかのようなプロパガンダを流し続けたのです。さらに、あえてタバコと直接関係のない、癌の発生プロセスなどの広範な生化学研究に巨額の資金を提供し、因果関係の結論決定を遅らせる時間稼ぎを行いました。タバコ会社自身は、すでに「ニコチンには強い依存性があり、タバコは癌を引き起こす」という真実を突き止めていました。1980年代に受動喫煙の害が証明され始めると、タバコ会社は「お抱えの科学者」に資金を出し、「科学的な証拠が不十分である」とする論文を発表させました。この間も、真実のデータはすべて極秘とされ、1990年代の米連邦議会の公聴会でも、タバコ会社の最高経営責任者たちは「ニコチンに依存性はない」と宣誓供述をして嘘をつき続けました。しかし、あるタバコ会社の開発担当副社長は内部告発により解雇され、さらに会社とギャングから激しく攻撃された。しかし彼の証言などにより1998年、大規模な損害賠償請求訴訟において歴史的な和解(勝訴)が成立した。

 

 実は、この「確実な証拠がない」「議論はまだ続いている」という「疑念の製造」戦略は、今も形を変え蔓延し続けているのです。最も危険なのは、天然ガス・石油掘削会社と共和党による地球温暖化隠しです。他にも、保守系シンクタンクが様々な、「疑念の製造」戦略に加担しています。このような目くらましが、半世紀以上、巨額の資金をつぎ込んで垂れ流されているのですから、大半の国民は真実を見ることが出来なくなっている。一人一人が科学的論拠を確認するのは困難です。

 

 

 

真実はどうして葬られたのか 2

 残念ながら、21世紀、特に2010年以降は、さらに困難な状況に追い込まれている。単純だがトランプの前回の4年間で3万回を越える虚言は、史上圧倒的な量です。彼は1日に10~20回、虚言や紛らわしい言説を吐いている。選挙集会等で、自陣営の聴衆を喜ばすために、また報道機関から批判的な質問を受けると、彼はほとんど虚言か誇大な言説を連呼する。報道機関等のファクトチェックに膨大な手間と時間が掛かり、究明に追いつかない。さらに巧妙なのは、大手マスコミを毎回、フェイクニュースと罵り、トランプを絶賛するFOXや一部のインターネットニュースサイトのみが真実を報道していると付け加える。今も、トランプ氏支持者は頑強に彼を信じて疑わない。しかし、これはほんの序の口です。

 

 既に、インターネット上で嘘がこだまのように反響している事は周知の事実です。この状況を差す言葉、ポスト・トゥルース(Post-truth)が2016年に有名になりました。これは世論形成において客観的な事実よりも、感情的な訴えや個人の意見のほうが強い影響力を発揮する状況を指しています。イギリスのEU離脱(ブレグジット)やアメリカ大統領選でのトランプ勝利など、世界政治がデマで大きく動いた事例でした。このような状況が生まれた背景の一つに、SNSの普及によって、誰でも簡単に世の中に対して個人的な意見を表明することが可能となったと同時に、多くの情報を瞬時に流通・拡散できるようになったことが挙げられる。利用者が見たい情報だけを見る「エコーチェンバー」や「情報のサイロ化」(広く連携できない孤立化)が進んだことが大きい。SNSの普及は、個人的な考えの影響力を増殖させた一方で、フェイクニュースと呼ばれる事実と異なる情報が短時間で世界中に流布されてしまう状況も招いた。その結果、テレビやラジオ、新聞、雑誌といったオールドメディアの影響力は相対的に低下し、客観的事実が軽視されるようになった。このエコーチェンバーは、人間の心理(自分にとって心地良い情報を選択)とSNSや検索エンジンのアルゴリズムが、個々の利用者の興味(情報)を分析し、望みを叶えるように優先表示している事で、加速している。利用者はさらにこれが繰り返され、より狭い範囲の情報に閉じこもるようになる。この状況を巨大プラットホーム(Google、メタ等)が莫大な広告料欲しさに、コントロールし、トランプの1期の選挙から、選挙に有利になるように細工した可能性がある。当然、大統領就任後、リベラルが望むSNSの規制を反故にするのと引き換えを目指してのことのようです。この選挙時に、ロシア(プーチン)がトランプを勝たせるために、ヒラリー候補にダメージを与える為に、SNSで攻撃していたことが、ほぼ確実視されている。

 

 深刻度が増すポスト・トゥルース時代と混迷を深める経済・社会にあって、我々はどう対処すべきなのか? 

 

 

 すがり続けた夢の果てに

 米国民の多くがこの夢に幻惑され続け、さらに何割かの人が神の下に在り続けるなら、地上では諦めても良いと思っているかもしれない。その夢とは、新自由主義の単純すぎる例、トリクルダウンです。これは、シャンパングラスを積み上げ、最上段にシャンパンを注ぎ、やがて最下段にまで滴り落ちる例えで示されます。富裕層や大企業が豊かになることで、最終的に貧困層など社会全体にも富が浸透・波及するという考え方です。半世紀待っても、最上位のグラスが大きくなるだけで、下には零れませんでした。

 もっとも罪な経済イデオロギー「完全な自由市場こそが消費者に最大の利益をもたらす」は、自由主義の小さな政府と自己責任論と並ぶ三大テーマの一つです。このテーマの前者二つとマネタリズム(金融数量説)は、当時絶大な信頼を得ていたノーベル経済学者ミルトン・フリードマンが提唱したものです。半世紀も経た今となれば、どれも齟齬をきたしている。むしろ米国の災厄は、これら理論の呪縛から抜け出せないことにある。この市場原理(自由市場)については、共和党も民主党も共に推進し、他の小さな政府、自己責任論、マネタリズムについては、民主党は抑制気味でした。

 政府が規制をなくして市場を完全に自由にすれば、無数の企業が競い合って効率化が進み、価格が下がり、消費者が最大の利益を得ると考えたのですが、理想どうりにはならなかった。規制緩和が進んだ結果、予測とは逆に「勝者総取り(ウィンナー・テイク・オール)」の現象が起きました。規模の経済やネットワーク効果(IT大手プラットフォーマーなど)により、市場は競争が激化するどころか、少数の巨大企業による寡占・独占が進みました。その結果、価格支配力が強まり、中小企業の排除や、富の極端な集中(格差の拡大)という弊害が生まれた。

 

 当時、フリードマンが最も信頼されたのは、彼の金融数量説の採用によって、当時のインフレを抑制出来たことにあり、画期的でした。金融数量説の信奉から金融技術の進展が起こり、自由競争が重視された事と重なり、投機が巨大になり、実体経済と金融経済が乖離しました。そして巨額の利益は金融から生まれるようになり、投機が行き過ぎると、景気は加熱するが、やがて金融危機が繰り返すようになった。もう一つの問題は、多くの国で資金が投機に向き、本来の設備投資に向かなくなったことも長期的経済成長を抑えることになった。

 

 現在、多くの経済学者によって、現状の新自由主義による経済運営は、様々な問題を生み出しているとし、個々の政策について批判され、修正が求めらている。もつとも保守系、富裕層、大企業はこれに反対していますが。

 

 

 基本的な考え方

 

 現状の経済状況を観察すると、異常であることは疑いない。明らかな事は、貧乏人はより貧乏に、金持はより金持ちに、しかも固定化されて来ている。また社会保障等が先進国中遅れたままです。当然、これは人為的な政策による結果です。なぜなら1980年代以降、多くの経済・社会指標が急激に悪化して来たのですから。

 行き過ぎ積み重ねらた政策が問題でした。大幅な規制緩和による自由競争、徹底した自己責任への転嫁、富裕層や企業に偏った大幅な減税など大きい。これらの弊害については、個々に簡単に触れて来ました。ここでは要約と、考え方を提示します。

 

 先ず規制が必要です。私たちは長年に渡り、規制緩和こそが、良策と洗脳されて来ました。しかし、これは間違いです。一言で言えば、規制過ぎてもだめだが、規制が無いのも問題なのです。適切な自由競争を生むには、寡占を防ぐ規制が必要です。スポーツで言えば体重別の競技だからこそ良い場合があるように。自己責任を自覚してもらうことは勤労精神を育む上で需要ですが、個人の状況(健康、生まれた家庭、人種、失業)や不意の事故等で、その後のチャンスが閉ざされる事は、社会にとってマイナスです。この理解は難しい。特に共和党支持者は、これら逆境にある人々に、税金が盗まれていると思わされて来た経緯があります。富裕層の減税総額と逆境を支える福祉費の比較をしてみましょう。概算ですが、富裕層の課税を大戦前の税率に戻すと、年間数十兆円が国庫に入ります。さらにキャピタルゲインの優遇措置で富裕層は年間何十兆円も逃れています。もっとも米国は規制が緩いのでタックスヘイブンに多くは逃げてしまうでしょうが。民主党がよく行う雇用対策費用は年間20~30兆円でしょうか。つまり富裕層に税金を負担していただくと財政赤字を増やさず、まともな福祉政策が戻ってくるのです。

 

 重要な事は、政府の政策実施にあたって、適正なフィードバックが可能にしておく事です。現在は、明らかに間違っている政策であっても、変更、元に戻すことが出来ない。それは、富裕層と大企業が、豊富な資金力を使って、選挙などで優位に立ち、長年に渡り政府と国民を手懐けて来たからです。共和党は1980年代から急激に企業・富裕層優遇に舵を切り、民主党とは袂を分かっています。その政策は、法人税・所得税・配当税・相続税等の減税、規制緩和、労組への規制強化、企業補助等で、拡大の一方です。例えば、2025年の共和党の大型減税法案は、「年収100万ドル超の上位0.6%の1百万人が、年収10万ドル未満の1300百万人よりも大きな減税を受ける」とCenter on Budget and Policy Priorities(予算・政策優先事項センター)が分析しています。これが今の米国であり、トランプの実績なのです。

 

 どうか真実から目を逸らさないようにしてください。

 

----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

20260930

短縮版 迫る多難な危機  第四章 4-2 後半

 

「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」


この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。


まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!


--- 目次  ---

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 4-2 なぜこのようなことが起きてしまったのか

 目くらまし戦術1

 目くらまし戦術2

    宗教と道徳について

    米国の宗教と共和党の合体

    



第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化



 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。米国で右翼ポピュリズムが、なぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日米欧等先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いています。さらに米国特有の病理(特徴的な宗教)が災いしています。


 米国が独裁化を回避し本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになり、また世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。



 

目くらまし戦術1

 大半の米国民には、悪化からの脱出法が見えていない。これには大きく二つの理由があります。一つは、反リベラルのイデオロギーであり、二つには、新自由主義への信奉があります。


 反リベラルの発端は、労働者らが20世紀前半に成功させて来た待遇改善と、それに付随した人権尊重の運動に対して、保守派が不快感を持つようになったことにあります。この運動な成功事例は、ルーズベルト大統領のニューディール政策でした。この流れは英国で始まりました。しかしやがて、労働組合が団結力を笠に着て、労働者貴族の横柄さが強調されるようになります。さらに時を経て、移民や黒人らが、必要以上に優遇(アファーマティブ・アクション)され、国民の血税やチャンスが、彼らに盗まれていると言う噂が強調されるようになります。そして米国連邦最高裁において、2023年、このアファーマティブ・アクションが違憲と判断されました。この政策は、多数の民族が共存する国々で実績を上げて来ているのですが。当然、この政策を世界に先駆けて、取り入れたのは米国のケネディ大統領で、公民権運動援護の一環として行ったのです。これが半世紀を経て潰えたのです。ここに米国らしい、手に負えない過激な動きがある。




 その一つが連邦最高裁の判事の保守とリベラルの比率です。2023年の連邦最高裁の判事は保守6人、リベラル3人でした。これにより違憲とされたのです。つまり、国民や議会が最良と思える政策を実施しようとしても、最高裁が保守(共和党)に握らている限り、実行出来ないのです。民主党政権では融和策をとり、最高裁の判事比率はほぼ半々で推移していました。しかしトランプが、一気に転換させた。これもトランプが保守派から歓迎される理由の一つです。過去にも保守優位の最高裁において、労働組合弱体に繋がる判決が出ています。「本人が望まない場合に組合の活動費を徴収することを認めない」判断をしました。これは、1世紀以上前の労働運動で勝ち取って権利だった。このような判決、裁定、法が積み重なり組合は弱体化して行った。加えて、2010年以降、幾つかの判決により、選挙への寄付総額の上限廃止と、選挙広告への上限廃止により、無制限の金権選挙が完成した。これは、政治が資金力に支配される事を意味し、国民には悪夢なはずです。


 この流れの中で、気づいて欲しいことは、米国の保守勢力があらゆる力(最高裁、マスコミ、政治献金、ロビー活動等)を使い、弱者救済、人権擁護と並んで労働組合への敵視を長年、国民に植え付けて来たのです。これにより企業家等は労働者の賃金低下と首切り、配転等で有利になり、益々、利益を上げることができます。これが反リベラル・キャンペンの大きな目的です。したがって、保守はしきりに、ルーズベルト大統領のニューディール政策の成果否定に躍起です。そして着実に、資金力の多さ、そして大企業こそが政治を牛耳るようになって来たのです。



 目くらまし戦術2

 

もう一つ、リベラル敵視に使える強力な手段があるのです。それは人間の感情に揺さぶりをかけることで、同性愛と堕胎の問題でした。米国以外の先進国であれば、同性愛は当人の自由恋愛を尊重し、堕胎は健康と育児に関わるので女性の判断を尊重し、彼らの人権と自由を守ることになると考える。しかし米国では、同性愛禁止は聖書に書かれ、堕胎は命を大切する聖書の教えに反するからと、キリスト教原理主義者(福音派)らは考える。そして、この教派を大々的に選挙に取り込んだのが、レーガン大統領からで、その後、この関係はより深く結ぶ付くようになった。なぜなら、この教派は米国人口の1/4に達しているのですが、その信心深さゆえに、票に及ぼす力は人口比を上回るのです。確かに、聖書には、それらしい解釈を可能にする文言はあります。ただし、同性愛禁止や堕胎禁止を匂わす旧約の章は、古くは3000年前の記述まで遡れます。このような因習を今に守ることが正常な感覚とは思えない。信仰の自由は尊重されるべきだが、政府が特定の教派の人権保護に抵触する可能性のある要望を政策実現することで、票を手に入れる事は憲法の趣旨に反するように思うのだが。


 さらに奇異なことがある。人権先進国の北欧諸国は、元を辿れば同じプロテスタントです。つまり聖書の文言を重視する教派の国と言えます。それなのに、この国々では同性愛や堕胎は本人の自己決定権を保証されています。米国の福音派だけが特別なのです。また非常に奇妙に思えるのは、福音派がハルマゲドン(最終戦争)を信じて、世界が戦争で破壊された後、パレスチナの地にキリストの再臨が起きると信じていることです。そして聖書が大きな隣人愛を説いているにも関わらず、イスラエルの虐殺を支援して止まないのです。米国はイスラエル以外で最もユダヤ人が多く、成功者も多い国です。だから潤沢な資金が、宗教や政治を動かしている。当然、信者らは地球は球体でなく、人類は猿から進化していないと考えます。こんなセクト的教派に振り回されては困ると思うのですが。共和党は、悪辣でも強力な宗教集団であれば利用するのに躊躇がないのです。




 共和党には、民主党との敵対を最初に訴えて人気を博したギングリッジ議員がいますが、この人物が米国で最初に悪辣なセクト教団の統一教会を共和党の味方に引き入れた。同様に福音派と共和党はがっちり手を組み、互いに手に入れたいものを得た。福音派は、同性愛禁止、堕胎禁止、進化論授業禁止、イスラエル軍事支援を手に入れ、共和党は、代わりに民主党拒否(反リベラル)を通じて、最終目標の労働者権利剝奪、減税と企業・富裕層優遇を手に入れたのです。私に言わせれば、共和党の得たものは福音派の得たものより遥かに貨幣価値が大きく、福音派の人々は心(道徳感情)を満たせたに過ぎない。米国南部に暮らす多くの福音派は、現地の地下資源開発企業の大きな公害被害にめげず、企業の発展による地域振興に夢を託し、減税による低福祉や定収入に我慢し、崩れ行く共同体をキリスト教会への固い信仰で守ろうとしている、実にけなげな人々です。選挙の為に、彼らを食い物にしている人々に腹が立つ。トランプの言動に、その様子が端的に現れている。彼は信仰心もなければ道徳心も無いが、福音派の票を手に入れる為に、戦争を行い、人権など無視している。




 宗教と道徳について

 


 信仰の自由は守らてしかるべきです。しかしその信仰を理由に、一方的に他者の自由や権利を剥奪する事は許されない。これは現代の魔女狩りです。しかし米国の共和党には、宗教による弊害への意識が稀薄です。

 人の道徳感情には、思いやり、公正、忠誠、権威、神聖、自由等があり、保守派とリベラル派で重視する道徳感情に差異があります。これが両派の敵対感情を生むとする考えもある。道徳感情は進化で生まれた感情ではあるが、個人の道徳感情の強さは、属する集団や文化に大きく影響される。だからこそ、これら道徳感情が現代社会に適合するかを理性的に判断し、コントロールするべきです。例えば、遺伝に支配された感情や欲情のままに生きるべきと信じるのは馬鹿げている。問題は、既に述べたように、教団や政治団体がこれらを悪用してしまうことです。付け加えるならば、多くの共同体は無意識に、この道徳感情によって団結を強化し、宗教にその力が大きい。道徳感情が保守やリベラル、宗教を選ぶと考えるより、集団や宗教が道徳感情を強化していると考えるべきです。永続している共同体の中では、これらが強化されている。この典型例は、ヒンドゥー教徒のバリ島バンジャール(共同体)に見られ、米国の福音派にも言えるだろう。これをもって宗教を非難するのではないが、行き過ぎは、その共同体を閉塞状態(因習に囚われる)にする可能性がある。今の、米国の異常な精神状態を冷静に振り返って欲しい。


 実は、20世紀以降、宗教が懐古・原理主義的になり、世界各地で混乱と反動が生まれている。イランで、1979年、イスラーム革命が起きた。これは預言者ムハンマドの時代や初期イスラームの教えへの回帰を掲げ、当時の過度な西洋化を「イスラームの精神を汚すもの」として激しく批判しました。サウジラビアは1932年に建国されたが、この王家は、初期イスラームの純粋な形に戻ろうとする「ワッハーブ主義」を取り込むことでアラビア半島の統一への力を得た。インドのモディ政権は、「純粋なヒンドゥー教徒の土地としてのインド(ラーマ神の治世)」の復興を理想とするヒンドゥー右派の宗教情熱を取り込むことに成功している。イスラエルのネタニヤフ政権の連立に不可欠なユダヤ教右派は、神がユダヤ人に与えたとされる「約束の地(ヨルダン川西岸地区などを含む)」の領有と、ユダヤ教の律法(ハラーハー)に基づいた国家運営を求めます。ロシアもロシア正教に回帰している。


 これらには共通していることがある。現代の急速なグローバル化や世俗化に対する「強い危機感」が生まれ、「かつての正しかった時代」という神話的な過去を再構築しようとする教団が力を持ち始めた。それを保守的な政治集団が、選挙や革命に利用し権力を掌握するのに使ったと言える。この危険性と恐ろしさは、外部から見れば明瞭なのですが、埋没していると分からない。



 米国の宗教と共和党の合体

 

 欧州と比較すると同じキリスト教圏でも、米国は異なる。銃犯罪の多さ、暴力(銃)への寛容さ、そして福音派等のセクト化(巨大組織だが排他的)と政治への関与です。米国は、英国と同じ白人(アングロサクソン)だが、北米大陸で育まれた文化がある。米国は、かつてピューリタン(プロテスタントの一派)が北米大陸に植民したことで始まった。彼らは英国教会から脱することにより自らの信仰に忠実であろうして、未開の地に移住し、森林を切り開き、町を造って来た。そして勤勉・勤労であり、聖書に忠実であろうとした。これが今の米国の精神を育み、発展を支えているとかつて賞賛されたことがある。しかし私には、深刻な軋轢(歪)が生じているように思える。


 初期に米国の教会はヨーロッパに比べ大きな違いがありました。一つは、様々な宗教やキリスト教派が各地域に教会を造り、統合される事もなく、まして国からの支配もなければ財政支援もありませんでした。つまり独立独歩から始まった。これが憲法で政教分離がうたわれた理由です。もう一つは、大平原と森林を一から開拓し、開墾地は彼らの所有地になったのです。また広大な原野に村や町が点在していきました。これが西部開拓です。これらを背景にして、米国では300年間に三波の信仰復興が起きました。この復興とは、突然、信仰に燃えた人が聴衆に神への信仰に目覚めるように回心を求める演説を始め、それが各地に広がり、大きなうねりとなり、回心者が増えた。このブームは長続きはしないのですが、キリスト教徒の意識を高め、幾つかの社会運動と結びついて行きました。この演説者は、多くの場合、正規の牧師や宣教師ではなく、既存の教会から自由な人々でした。これが受け入れられた背景に、町や村は比較的新しく、強固な文化やネットワークが存在しておらず、他から流れて来た演説者は、村人の孤独感を癒した事も大きかったのでしょう。



 こうして米国の初期の白人、キリスト教徒には、大きな変化が現れました。初期には、政治支配者や教会の権威、つまりエスタブリッシュメントに反発し、必要あらば既存の教会からも独立し、地域毎に自由を選びました。これが幾たびかの信仰復興を経て、人々の平等や自由への意識が強くなって行きました。米国憲法は政教分離をうたっているが、宗教団体の政治活動は基本的に認められています。19世紀、福音派は、貧困層への救済活動に熱心でしたが、20世紀後半から、政治や社会問題に積極的に関与し、イスラエル支援を強硬に唱えるようにもなっている。


 1980年以降、米国の信仰復興(リバイバル)のエネルギーは、「宗教右派」と呼ばれる強力な政治運動へと姿を変え、社会を二分するほど過激化していきました。本来の「個人の心の救済」や「貧民救済」から、「国家の権力を握り、キリスト教の価値観で法を変える」という政治的な戦いへシフトしていったのが、最大の特徴です。それまで政治と距離を置いていた福音派が、保守派の政治家と手を結び、巨大な集票組織を作りました。これをモラル・マジョリティ(道徳的大多数)と呼び、人工中絶の反対や、公立学校での祈りの時間の復活を掲げました。福音派の圧倒的な支持により、レーガンが当選し、宗教勢力が大統領をも動かす政治の主役に躍り出ました。1990年代〜2000年代には、彼らは文化戦争を激化させ、メディアの発達(宗教専門のテレビ・ラジオ)を利用し、テレビ伝道師が活躍し、草の根による支配を強めました。また設立されたキリスト教徒同盟は共和党の地方組織を実質的に乗っ取るほどの力を持ちました。2000年代、その代表者はブッシュ大統領を支え、イラク戦争の支持や、同性婚反対の運動を過激化させました。2010年代から現在、トランプ支持と「キリスト教ナショナリズム」が台頭していきます。ここ数年で、過激化はピークに達しています。


 信仰の熱狂が、過激な政治思想と完全に融合しました。2016年以降、 伝統的なキリスト教徒のイメージとはほど遠いドナルド・トランプ氏を、白人福音派の約8割が支持し、トランプ現象が起きました。またキリスト教ナショナリズム、「アメリカは神によって白人キリスト教徒のために作られた国であり、その特権を取り戻すべきだ」という過激な思想が広がりました。2021年の連邦議会議事堂襲撃事件でも、十字架や聖書を掲げる人々が多く見られました。2022年、保守派の長年の悲願だった「人工妊娠中絶を認める判決(ロー対ウェイド判決)」の覆しに成功。これにより、宗教的なルールがアメリカ全土の法律に直接影響を与える時代へ突入しました。1980年以降は、自分たちの聖書的価値観を法律で強制しようとする「他者を排除し、国家をコントロールするエネルギー」へと過激化していったと言えます。



 私は米国の信仰復興に見られる熱狂は危険な段階に入ったと感じています。その実例が、「赤狩り(マッカーシー旋風)」です。アメリカのキリスト教、とりわけ福音派が現代のような強大な社会的地位と政治力(のちの宗教右派)を獲得する決定的な転換点となりました。この時期、冷戦の恐怖を背景に新しい信仰復興運動が巻き起こり、福音派は「反共産主義の急先鋒」として国家の主役に躍り出ました。これを利用し人気を博したのが共和党のマッカーシー議員でした。当時、米国内での被害としては、共産主義の疑いをかけられ、多くの映画関係者から民主党系の国務省スタッフ、学者等が職を失い、投獄もされた。しかし、一大ブーム(1947年~)を起こした熱狂も4年ほどで下火になった(虚言が露見)。しかし、当時、占領下にあった日韓では、共産主義にまつわる公職追放、解雇、思想弾圧、果てには投獄・虐殺が起きた(1949年、国鉄総裁下山事件など)。これは日本の労働運動に多大な禍根を残しました。米国、特に福音派は、共産主義を悪魔の思想と定義し、その後も憎悪は続いています。共産主義への過激な否定感情を通じて、むしろ米国内、特に共和党は国民の一体感を醸成することを学びました。赤狩りの時代、「共産主義の脅威から救われるには、今すぐ悔い改めてイエスを信じよ」と唱える福音派の最大の伝道師を共和党アイゼンハワー大統領は顧問に迎えています。結局、恐怖や敵、多くは悪魔に対して国内が団結する術を手に入れ、その過程で、甚大な被害が出ているのです。それは米国の大戦後の出兵や戦争、ベトナム戦争やイラク戦争は、それらが夢想が煽った結果でした。この辺りは、ヒトラーのユダヤ人と共産主義者を罵倒したのと同じでした。


 1950年代、マッカーシー旋風とリバイバルの波によって、米国は神の国になっていたのです。 1954年、赤狩りの最中に、公立学校などで唱えられる「忠誠の誓い」の文章に 「神の下に」という文言が正式に追加されました。その2年後には、アメリカ紙幣にも印刷されている "In God We Trust"(我ら神を信ず) が国の公式モットーとして法制化されました。これらはすべて、「無神論のソ連(赤)」と「神を信じるアメリカ」を明確に区別するための、マッカーシー思想と福音派リバイバルが合流して生み出した産物です。


 一言でいうと、米国のキリスト教の主流は、何よりも感情(回心等)を重視するので、爆発的に盛り上がり、盲目的になってしまう。彼らは宗教哲学や論理に意を介さないので政治に利用されやすい。これはヨーロッパには無い特徴です。



 ----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。


20260922

短縮版 迫る多難な危機  第二章 2-8,2-9

 


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

 

--- 目次  ---

 

第2章 人類は危機にどう対処したのか?

2-8 分断と対立を非暴力で乗り越えた社会があった 

   まとめ 

2-9 国家は対立・分裂し、また融和・統合を繰り返してきた 

   まとめ

 

 

 

 

 

第2章 人類は危機にどう対処したのか?

 人類は、初期には自然の猛威だけでなく、自ら作り出した災厄からも逃げ出すしかなかった。しかし、やがて工夫と協力で危機を乗り越えて来た歴史があります。失敗や成功の事例を見ます。

 

2-8 分断と対立を非暴力で乗り越えた社会があった

 

 歴史上、深い分断を乗り越え、暴力なしで国家や社会の統合に成功した事例を振り返ります。

 


 1930〜1960年代、米国はニューディールと公民権運動を成し遂げた。米国は、1929年の大恐慌による空前の失業率(約25%)と経済の崩壊に直面していた。また南部における露骨な人種隔離(ジム・クロウ法)など、階級や人種を巡る凄まじい分断があった。F・ローズヴェルト大統領は、労働者、農民、南部保守派、都市部の移民やアフリカ系アメリカ人を政治的に結びつける「ニューディール連合」を形成し、手厚い社会保障や経済的不安を緩和する公共事業を行った。彼は、社会・人種的に対立しがちな人々に「雇用」や「社会保障(年金制度など)」という実利を提供することで団結させた。この政策は、ケインズが説いたばかりの「有効需要理論」の最初の大きな成功事例でした。

 さらにケネディ大統領らが1960年代の公民権運動を支援し、法的な人種隔離を撤廃し、少数派を国家の枠組みへと統合するプロセスを進めました。

 

 1938年〜、スウェーデンは国家的な労使協調路線を創り上げた。1930年代の世界的不況の中、スウェーデンでも労働者側と資本家側の激しいストライキや暴力沙汰が相次ぎ、社会秩序が崩壊寸前でした。労使双方が政府の介入を待たずに直接交渉を行い、「サルツシャーデン協定」を締結。「労働争議におけるルール作り」と引き換えに、資本家側は雇用や賃金の安定を約束し、労働者側は経営権への不介入を受け入れました。これを機に「労働組合・経営者・政府」の協調体制が生まれ、世界最高水準の社会保障を支える強固な社会的連帯(国民の家構想)の土台となりました。この協定は、激しい労働争議を抑制し、協調的な関係を目指して労使双方が参加する共同の紛争処理・調整機関を作り、平和的解決を図る仕組みを整えた。このモデルは北欧各国に浸透し、今も高度な福祉国家を支え続けている。


 

 1990年代、南アフリカは平和裏にアパルトヘイトを乗り越えた。アパルトヘイト(白人による人種
隔離政策)の崩壊直後、白人支配層と被支配層の黒人、さらには解放を目指す黒人派閥間にも、数十年におよぶ弾圧と暴力による、修復不可能なほどの深い憎悪と分断が存在していました。黒人の解放活動家のリーダーだったネルソン・マンデラは、国際世論の後押しで白人政権から平和裏に政権を引継ぎ、大統領になった。しかし前政権支配層の加害行為、また解放方針の違いで敵対する黒人集団への対処が喫緊の課題でした。彼は、過去の人権侵害の加害者が公の場で真実を告白すれば刑事訴追を免除する「真実和解委員会」を設置しました。彼は、復讐に走り厳格な処罰を行えば報復合戦が始まり内戦に至ることを避けた。この道は、想像絶する苦難を伴いました。武装闘争で対立していた黒人グループが白人の支援を受け、マンデラ路線を葬るために、彼のグループを短期間に2万人以上殺戮していたが、彼は皆に耐えるように訴え、内戦勃発を防ぐことが出来た。

 

 1965年〜、シンガポールは独立時に多民族国家構築を成し遂げた。シンガポールは中華系、マレー系、インド系などの諸民族間で血生臭い人種暴動が発生した直後であり、国家として極めて脆弱な分断状態にありました。リー・クアンユー政権は、特定のマジョリティ優遇ではなく、英語を共通の行政・ビジネス言語としつつ、4大公用語(英語・マレー語・中国語・タミル語)を平等に扱い、すべての民族が等しく恩恵を受けられる住宅政策や義務教育を徹底しました。民族ごとの居住区の固定化を防ぐため、公団住宅に各民族の入居比率制限を設け、日常的な交流と融合を促しました。特定の民族優遇を避け、4つの主要宗教の祝日を平等に尊重する政策をとりました。民族に関わらず、能力と実績に基づいて評価・登用する仕組みを徹底し、国家の安定と経済成長につなげました。

 

 

まとめ

 人類は歴史を重ねる中で社会内部に多くの対立を生み出しては、紛争を招くこともあったが、上述のように融和策で団結を図り、次代の発展へとバトンを渡すことが出来た。

 

成功の要因。

l 一方が他方を力で抑え込まない。

l 異なるグループがそれぞれ公平な利益配分を得る為の制度的妥協点を見出す。

l 互いに合意出来る、対立を処理できる制度が必要。

l 多くの場合、優れたリーダーが牽引した。

 

 

 

 

2-9 国家は対立・分裂し、また融和・統合を繰り返してきた

 

 ここでは、紛争と公害防止以外の経済・社会・格差・健康などで世界が協力した事例を見ます。

 

 先ず世界最古の国際法とみなせるローデス海法がありました。古代ギリシャ・ローマ時代から7世紀頃まで採用された海上法規です。嵐の際に船を軽くするために積み荷を海へ投げ捨てた場合「救われた船や残りの積み荷の持ち主全員で、失われた損害を分担する」というルールを世界で初めて定めました。これ以前は、「漂着した難破船の財産は、その海岸の領主や住民のものになる」という略奪的な慣習がまかり通っていました。

 

1919年、ILO(国際労働機関)設立、加盟国187ヵ国。これは、第一次世界大戦後、世界の労働条件を改善することにより労働者の不満が社会不安や革命につながるのを防ぎ、労働者を酷使する国との国際競争で不利にならないようにする経済的な目的も兼ねていた。児童労働、強制労働、労働時間、結社の自由、最低労働基準、差別などについて国際基準を作ってきた。「1日8時間・週40時間労働」や「有給休暇」などの制度は、ILOのおかげで世界中に広まった。ところが、日本は基本条約の5件の内3件は批准せず、また米国の批准数はさらに少なく世界でも最低水準です。両国の労働者の権利が軽視されている証左でしょう。

 

1944~1947年、ブレトン・ウッズ体制からGATT誕生まで。これは、戦間期の保護主義と通貨混乱を二度と繰り返さないために、為替安定・短期資金支援を担うIMF、復興・開発資金を担う世界銀行

と国際貿易の自由化(GATT)を柱として構築された。GATTは、関税の引き下げと非関税障壁の撤廃などにより、貿易摩擦を解消し世界貿易量の爆発的な拡大を後押しした。世界は貿易ルールに従って経済的孤立から互いに経済的繁栄を目指した。これがグローバル化を成功させた。残念なことに米国は、80年前の禁じ手(関税)にしがみつこうとしている。

 

1980年、世界保健機関(WHO)による天然痘根絶。WHO(世界保健機関)の主導のもと、冷戦下であったにもかかわらず米国とソ連を含む世界中の国々が協力しました。資金提供、ワクチンの大量生産、世界各地での徹底した接種キャンペーンと監視活動を連携して行い、1977年、ソマリアでの発生を最後に、地球上から無くなりました。人類史上初めて感染症の根絶に成功しました

 

1987年~、Erasmusスタート。欧州連合(EU)が主導する大学生等の国際交換留学・教育支援プログラムです。目的は、ヨーロッパ圏内および世界各国との間で学生や教職員の流動性を高め、多様性の理解や国際的なキャリア形成を促進することで、累計参加者は1300万人を越えている。

 

2000年、国連ミレニアム開発目標(MDGs)採択。全加盟国によって採択され、2015年までに貧困・飢餓・初等教育・母子保健などを改善する8つの目標を掲げました。極度の貧困と飢餓の撲滅、普遍的な初等教育の達成、ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上、乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康状態の改善、HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止、環境の持続可能性の確保、開発のためのグローバル・パートナーシップの構築が目標でした。上記目標の「極度の貧困率の半減」や「栄養不良人口の割合半減」などは見事に達成されました。MDGs成果の一つとして、1990年から2015年にかけて10億人以上の人々が極度の貧困(1日1.25ドル未満での生活)から脱却することができました。これを引継ぎ、SDGsがスタートしました。MDGsが主に開発発展途上国を対象としたが、SDGsはすべての国を対象にし、17の目標でスタートし、2030年まで行われる。 。

  


2015年、パリ協定(気候変動対策)批准。190か国以上が批准した気候変動対策の国際枠組みです。       

  各国が自主的に温室効果ガス削減目標を提出し、5年ごとに見直す仕組みにより、事実上すべての国を巻き込む合意を実現しました。世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することを掲げています。しかし現状、国連環境計画の試算では、現在の各国の政策のままでは今世紀末までに2.6℃〜2.9℃の気温上昇が予測されており、1.5℃に抑えるための削減ペース(2030年までに約42%削減など)には遠く及んでいません。また温室効果ガス排出量世界2位の米国はトランプの意向によってパリ協定からの離脱・復帰を繰り返し国際協調を阻害している。

 

 

まとめ

  世界は、先ずヨーロッパ内での協力で始まり、第二次世界大戦後は、世界各国が協力するようになった。それはグローバル化と併走していた。明らかに一国の努力では解決出来ない課題が増えており、各国が協力しなければならなくなった。様々な国際機関を作り、機能させて来た。だが、うまく機能しているとは言えない。各国間の所得格差(貧困度)は緩和・縮小傾向にありますが、名目GDPで約800倍、購買力平価(実質的な生活水準)で約80倍の差がまだあり、経済的・技術的な協力には限界がある。また多極化が進み、南北問題から南の代表としてブリックスBRICSが影響力を高めている。さらにロシアと中国の独裁だけでなく、右派ポピュリズムが米国を筆頭に多くの国を内向きにさせている。ただでさえ国連は軍事・制裁の執行力を持っていないのに、拒否権により決議すらできないでいる。不安な状況が続いている。

 

 

 

----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

20260921

短縮版 迫る多難な危機  第二章 2-7

 



「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

 

第2章 人類は危機にどう対処したのか?

2-7 幾多のエポックが社会を変え、発展をもたらした             

まとめ 

 

 

 

 

 

 

第2章 人類は危機にどう対処したのか?

 人類は、初期には自然の猛威だけでなく、自ら作り出した災厄からも逃げ出すしかなかった。しかし、やがて工夫と協力で危機を乗り越えて来た歴史があります。失敗や成功の事例を見ます。

 

2-7 幾多のエポックが社会を変え、発展をもたらした

 

 人類の進化・進歩は、幾たびかの「大きなエポック(技術的・社会的転換)」を経て行われた。しかし社会内部では大きな対立と攻防がもたらされた。人類はこれらをどう乗り越えて来たのか? 四つのエポックが人々に何をもたらしたかを見ます。


 

 農業革命は約1万年前に始まり、それまでの採集から栽培・家畜化へ進み、定住と貯蔵が可能になった。そこから大変動が始まります。定住と土地の所有、食料の貯蔵が普及し人口が増えました。一方、不作になると他村の備蓄、家畜や土地を奪う事で生き残りを図るようになり、襲撃・略奪が増えた。やがて富の格差が生じ、支配者が生まれるようになった。青銅器時代になると戦争と都市化が加速した。紀元前3300年頃から始まり19世紀まで続く王権のスタイルが誕生し、強化されていったので、平民・奴隷は重税・賦役に耐える長い時代を生きることになった。生産効率を格段に上昇させた農業革命は、戦乱が平定され王権が安定すれば、平和が訪れて経済と文明の発達をもたらした。

 

 




 精神革命は紀元前800年~紀元前200年に、ユーラシア大陸の4つの地域でほぼ同時に興りました。ユダヤ教、ギリシャ哲学、諸子百家、仏教等の新しい哲学や宗教が誕生した。これらには以前に無い特徴があり、部族や小国を越えた広い地域に適用できる普遍的な真理や道徳を持つ思想や宗教でした。これが生まれた背景に、鉄器の普及により生産力と軍事力が向上し、大規模化する戦争が都市国家から大規模国家へと統合させたことがある。また交易網が発展し、異なる文化や異質な価値観が接触することで、自民族のローカルな神話を客観視し、より抽象的で普遍的な真理が生まれる土壌が育った。この過程で、敗れた王権の伝統的権威が失墜し、王宮の形骸化した祭祀(宗教)に批判が向けられた。一方で祭祀者(司祭)や軍の参謀らの知的エリート層の中から、新しい思想や宗教が生み出された。彼らの思想や宗教は、血縁や共同体の崩壊で混乱する民衆の心を捉え、大きな広がりを見せた。新しい帝国は、これらの宗教が社会に強い紐帯や安寧をもたらすとし国教と定め、押し広めた。こうして国家と普遍的宗教が強く結ばれるようになり、世界宗教として現在まで絶大な力を持っようになった。ギリシャ哲学でさえ、宗教(神)を否定することなく、神事は継承され都市民の絆として残った。精神革命は、社会の混乱の中から生まれた思想・宗教が民衆と国家に受け入れられ、その後も国家平定に役立ち続けた。

 


 商業革命は15世紀から18世紀にかけてヨーロッパで起きた。大航海時代を契機に世界規模の貿易ネットワークが形成され、金融制度・商業組織・社会構造が劇的に変化した。この過程で、為替手形等の金融制度が発展し、株式会社が誕生し、近代資本主義の原型が生まれた。また社会にも変化が起きた。商人・金融家は、港湾都市が発展すると、農業収入に依存していた封建領主に代り、巨富を築き、力を得るようになり、後の市民革命の担い手になった。新規なものに投資することにより富を築く事が可能になったことで、従来の身分や慣習に囚われない、自由な発想が商人を中心に広がっていった。こうした中、彼らの思いを代弁するような思想がいくつも生まれた。18世紀スコットランドのアダム・スミスの経済思想へと結実していきました。彼の言う「個人が自らの利益を追求して自由な経済活動を行えば、市場の価格メカニズム(見えざる手)によって、結果的に社会全体の富や便益が最大化される」が、現在も呪文のように唱えられている。

 

 16世紀の宗教改革の思想の一部には商業革命の影響も受けていた。カルヴァン派(プロテスタントの一派)が誕生し、西ヨーロッパの商工業者を中心に爆発的に広がり、後に英国から北米に植民するピューリタンとなり、今の米国の最大宗教派の礎を作った。ピューリタンは、中世カトリック教会が否定した金儲け・高利貸し行為に対して、「勤労による利益は神の恵み」と肯定するようになっていた。 

 


 

 英国の産業革命は、18世紀後半から19世紀前半にかけて、手工業中心の経済が、機械・工場・蒸気動力・大量生産を中心とする経済へ移行した大変化です。

 紡績織布の各工程の機械が1733~1779年に発明され導入されます。機械が大型化すると、動力としての蒸気機関が大幅に改良され、鉱山だけでなく工場・船舶・鉄道にも利用されるようになった。次いで製鉄・運河・鉄道が発達し、重工業化と輸送革命が進行した。

 

 工場が増えると都市化が進みましたが、労働者の住宅、上下水道、ごみ処理が不足し、人口過密と衛生問題が深刻化しました。工場では、女性や子供も多数働くようになり、また危険で長時間労働と事故が増えた。こうして産業革命の初期、労働者は悪条件下で賃金が低下し続けた。こうして資本家層の横暴が目立つようになり、宗教家・改革者・労働者の改革運動を背景に、1802~1842年にかけて議会は次第に労働者保護の規制を導入するようになりました。そして1871年労働組合結成、1906年スト権が合法化され、後に普通選挙を国民が手に入れることになった。やっと労働運動によって国民全体が産業革命の成果を得るようになり、賃金の上昇が始まった。

 

 産業革命において旧産業に働く人々は失業したはずだが、社会全体ではどうなったのだろうか? 学者らの推計によれば、全期間において平均失業率は1~3%程度と低いようだった。初期の農林業従事者が鉱工業・建設業とサービス業に向かい、新産業が旧産業の失業者を吸収した。しかし二つの問題があった。機械に仕事を奪われた職人は機械生産との価格競争に晒され、過酷で低賃金に耐えた。今一つは、資本主義経済が定着したことで、景気循環による恐慌が頻発し、失業率が10~20%になることもあった。

 

 産業革命は最終的に経済を発展させ国民所得を上昇させ、次の米国の自動車や電気産業の発展へと繋がっていった。そして資本主義経済と自由貿易体制が確立した。一方で、労働運動から民主主義(人権尊重、多数決)と社会保障の充実が進み、1970年頃まで中産階級は上昇し続けた。

 

 産業革命は今に通じる、科学尊重、チャレンジ精神、勤労習慣、自由と権利の平等、民主主義等の重要な国民の意識を育んだ。一方で、大航海時代より世界に植民地を広げる中で、白人以外への差別は無くならず、さらに産業革命終了頃からヨーロッパは帝国主義(植民地獲得)へと突き進み、各国が競争・武力衝突を繰り返し、第一次世界大戦の勃発に至った。

 

 

まとめ

 これまで4つの革命と一つの改革を見てきました。農業革命では、平等だった狩猟採集社会に終わりを告げ、戦争と国家を生み、軍隊を持つ王の下に階層社会が出来上がりました。

 精神革命では、文明の発展と経済圏の拡大により、戦争と国家の規模が拡大し、戦火で疲弊した社会を安定させる説得力を持った宗教が生み出され、より広大な領域に精神的な一体感が生まれた。

 商業革命では、武力だけが権力基盤だった社会から、商人が第二の権力を握れる貨幣経済社会が到来し、やがて封建社会が廃れることになる。また宗教改革で分離したプロテスタントは教会権力から、各人が神と対峙するという意味で、主体性と権力からの自由の意識を持つようになった。一方、神の救いは決まっているが不明とされたので、自分が選ばれることを望み、地上で勤労に励み、自由な経済活動を尊んだ。この革命が終わる頃には、ヨーロッパ人は自由と主体性を持ち得るようになった。しかし一方で、奴隷アフリカの奴隷黒人、新大陸の先住民の酷使、東欧の農奴化と、ヨーロッパ人による搾取と差別が地球規模で行われ、その後も大きな傷痕を残し続けることになる。産業革命は、資本主義経済(工場、金融、法制度、市場)と工業製品によるグローバル経済を確立した。都市化と鉄道等交通網が発達し景観が一変し、地主貴族、新興資本家(ブルジョワジー)、都市労働者(プロレタリアート)の新しい階層が生まれ、中産階級(商人・専門職・事務職)も拡大し、社会も一変した。この資本家と労働者の対立が激化する中で、国民には二つの道が示された。一つは、資本家の横暴を根絶するために労働者が政権を担う共産主義を目指す。もう一つは、労働者の要望を国の制度に反映し続ける福祉国家を目指す。英国は後者を選び、人権尊重や福祉制度が進んだ。20世紀前半まで、多くの欧米諸国はこの方向を目指し、北欧は遅れて福祉国家を選んだ。しかし、1980年以降、先進国は様変わりした。 

 

 残念ながら、現在は、これまで人類が築き上げて来た素晴らしい精神を反故にし、迷宮に迷い込み、泣き叫ぶだけになってしまったようだ。

 

 

----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。