20261003

短縮版 迫る多難な危機  第五章、第六章 終了 

 

 

「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 



この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。

Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

第5章 放置すれば最大の危機、どう対峙すべきか

 5-1 米国は独裁国家に向かう

 5-2 世界は戦争に向かう

  5-3 我々は如何にすべきか

第6章 参考

 6-1北欧に学ぶ

     

 

 

第5章 放置すれば最大の危機、どう対峙すべきか

 

 前章では、米国の異常事態は、経済政策の失敗と富裕層に利する社会になってしまった事が大きいと論じました。そしてそれを正常に戻すことも困難であることを見てきました。この章では、米国の今の状況を放置することが、米国民だけでなく、世界を破綻に陥れる可能性があることを見ます。

 

 

1 米国が独裁国家へ向かう


 

私が一番恐れているのは、早ければ米国がトランプを首班にした独裁国家へと今年中に変貌する可能性です。彼は政権を牛耳り身を守る手口を日々露骨に使っています、悪行がバレないように職場のトップを挿げ替える等。また都合が悪くなると支持者を煽り不正選挙を正すとして議事堂占拠を扇動しました。これらがエスカレートしていって独裁者にならない方が不思議です。トップは独裁が可能なら独裁の方が遥かに楽なのですから。強欲で道徳意識が欠落し、虚偽を毎日に吐くような人物は、独裁に何の抵抗も無いでしょう。

 ここで矛盾した米国の現状に幻惑することになります。様々な心理学実験で、人は乳児から大人まで、嘘つきを嫌い、犠牲を払ってでも罰まで与えることが確認されています。これは、嘘つき(裏切り者)を排除しないと、社会集団が崩壊してしまうことから、長い進化の過程で脳に刻み込まれた強力な生存戦略の一つだと考えれているのです。ところが、毎日、大統領が嘘を吐いている事を知っていても、米国民の何割かは気にもかけないのです。正に、独裁誕生前夜と言えるでしょう。これに似た事例がありました。

 

 ヒトラー独裁を可能にする総統への経緯はあっけないものでした。1933年の選挙で、ナチ党288議席(得票率44%)でドイツ国家人民党52議席と連立を組み、ヒトラーは過半数を手にいれます。ここで都合よく国会議事堂放火事件が発生します。ヒトラーは、これを共産党のテロと断定し、ヒンデンブルク大統領を泣き落とし、大統領緊急命令を発令させ、共産党81議席を無効にします。この事件の真相は不明です(ヒトラーの犯行だろう)。しかし、これではまだ憲法改正は不可能でした。そこで中央党(カトリック系)に、「教会の権利を守る」という約束で73議席を手にいれます。こうしてヒトラーは総議席数の2/3を手に入れ、素晴らしい憲法を改悪し、独裁権を手に入れ、この後、あれよあれよという間に、第二次世界大戦へと突き進んで、自滅した。不思議に似ていると思いませんか。違うのは、当時のヒトラーは、裏で残虐な事をしていましたが、表向きは誠実な人物と見られていたことぐらいでしょうか。それにしても政治のトップや政治屋は、何時の時代にも先を読めないものですね。

 

 現時点でトランプの独裁化は道半ばを過ぎ、完成まで一息といったところでしょうか。最高裁と共和党を手懐け、熱狂する支持者達を従え、テクノ・リバタリアンとGAFAまで尻尾を振るようになっている。さらに20年以上裏で繋がっているプーチンが幾度もトランプを支援しており、これからも続くだろう。いつの世も独裁者同士は実に相性が良い。どうか、独裁に気をつけてください。

 

 

2 世界は戦争に向かう

  

 現在、イランと米国、イスラエルとパレスチナ(ガザ)、そしてウクライナとロシアが戦争をしている。中国による台湾侵攻の可能性も否定できない。去年ぐらいまでは、ロシアが世界大戦の火種と思われた。しかしここに来て、米国とイスラエルが加わった。

 過去の二つの大戦は、帝国主義に続く国家間の覇権争いの延長で始まり、次の大戦は疲弊した国家が始めました。実は、両大戦に共通していることがありました。一方が専制国家かファシズム国家で対峙したのは民主主義国家だった。開戦を仕掛けたのは、共に専制国家群(ドイツ帝国、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国)、ファシズム国家(ドイツ、日本、イタリア)でした。つまり。独裁国家が巨大な戦争を始める可能性が高いのです。それはロシアに続く米国かもしれない。

 

 

3 我々は如何にすべきか

 

 世界と自国を、今、変革しないと手遅れになる。迫る危機と内部崩壊の状況を既に説明しました。この状況を救うには、第一に米国が独裁に走らないようすることです。今の米国に、自らを正す力を期待できないと思う。この中間選挙で、またも共和党が過半数を取ると、トランプは自らを守る為に一気に独裁に向かうだろう。もう一つの悪いシナリオは、トランプと共和党が敵意を煽り、内戦状態が勃発することです。民主党が過半数を取るぐらいでは、状況の改善が期待出来ないので、混乱が続くことになる。共和党には良識を期待出来ないと思う。

 先進国はもっと鮮明に、トランプ政権に独裁や横暴を抗議する必要がある。日本が最も情けないのだが、世界には日本に好感を持っている国は多い。どうか、今こそ、自由民主主義を標榜する国々が協力して、米国にNOと言うべきです。カナダやスペインが孤立しながらも戦い、イタリアも反意を鮮明にしている。戦争では無い、常識を米国民に説くだけです。個々には弱いので、多くの国が集結し手を携えるのです。さすれば米国も、過ちに気づくかもしれません。現状のままであれば、熱狂的な米国民はトランプの腕力を平和や経済への脅威とみなしていない。優れた先進国首脳がこれぐらいのことをしなくてどうすのか。

 

 トランプに退場して貰えば、次は、二つの事に、世界は進まなければならない。一つは、新自由主義的な政策を見直し、適正な規制と監督を行い、福祉政策により、文明崩壊の切っ掛けになって来た中間層以下の底上げを行う。次いで、世界が一致協力して、戦争防止、タックスヘヴン対策、気候温暖化対策などに進むことです。一国だけの新自由主義からの転換は、不可能とは言えないが、共に貿易や金融のシステムを変えて行かない限り、うまくは行かないでしょう。AIの対策も緊急を擁します。ここ一二年が勝負です。このためにもトランプの退場は絶対です。

 

家族と世界を再び幸福にしましょう!Make the world and people happy again!

 

 

 

 

第6章  参考

 

6-1.北欧に学ぶ

* 北欧の素晴らしさ


幸福度 

 北欧は毎年上位総なめです。幸福度の評価は、各国1000人にアンケートを答えてもらい、3年間の平均値を取ります。アンケートは、最高の人生を10、最悪の人生を0とし、回答者に自分の人生がどの段階にあるかを評価してもらいます。この値の多い方から順位を付けます。2024年の世界幸福度ランキングで、日本は143カ国中51位となり、順位を下げ続けている。


一人当たりGDP

 2024年、一人当たりGDPの世界ランキングは、デンマーク10位、日本38位です。左図の緑折れ線が日本で、唯一低下している。本来は微かに増加しているのですが、円安で落ち込んでいる。

 

所得格差


 北欧は一人当たりGDPが高かく、かつ所得格差(ジニ係数)が低い。日米と比べると違いが分かる。北欧は比較的平等なのに、経済が成長し、所得も高いのです。

 

世界競争力ランキング

 北欧の競争力は世界トップレベルです。ノルウェーは通年10位に入っていることが多い。評価は経済状況、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラをさらに細かく計20項目で分析して行われている。かつて日本は1989-1992年に1位を獲得し続けたことがあった。現在、日本の競争力は対象67ヵ国中35位で低下の一方、評価項目で20位に入っているのは5項目に過ぎない。

 

他の指標を見る

 北欧の腐敗認識指数、民主主義指数、報道の自由度、ジェンダー平等指数は、総て日本より評価が高く、ランキングは上位にある。教育水準では、北欧と日本は同等と言えるようです。

 

ベンチャー投資

 ヨーロッパで北欧のアイスランドとスウェーデンは多い。一人当たりベンチャー投資額の世界ランキングの1~10位はシンガポール、イスラエル、米国、スイス、UAE、英国、カナダ、スウェーデン、アイルランドでした。2024年、一人当たりベンチャー投資額は米国630$、スウェーデン270$、日本14.9$で、日本の投資総額は米国の124分の1、北欧の18分の1に過ぎない。これでは北欧に負けるのは当然だと思われます。


 

 こうして見ると、北欧は幸福、社会の安定性、豊かさ、成長性総てを持ち合わせていることになる。北欧が半年以上雪に覆われることぐらいが欠点でしょう。経済社会の指標で日本が良いのは、低い失業率と肥満率、そして平均寿命が2年長いぐらいでしょうか。

 

 

* 労働市場での施策とシステム

 就労を促す社会規範・社会制度、高い労働組合の組織率を背景とした労使協約重視の労使関係、労働移動を促進する様々な仕組みに特徴がある。

 老後生活保障の基本となる年金制度は、給付が就労時の所得に比例する社会保険方式が基本にある。これは、社会保障制度の受益者に対して必要な職業訓練や人材投資によって労働市場に戻そうという考え方で、日本の就業率61%に対して、スウェーデンは76%ある(就業率=就業者数/15歳~64歳人口)。つまり多くの人が働いている。これは、賃金の男女差が少なく、女性の就業率が高い為だと考えられる。年間労働時間は、日本の方が12%ほど長い。一方、スウェーデンの失業率は7.6~8.3%で、日本2.5~3.6%で数倍高いが、前者は3ヵ月以内、後者は1年以上に失業者が多い。

 スウェーデンの労働組合組織率68%に対して、米国は12%、日本も18%と非常に低い。これは、後者2ヵ国の政府が組合潰しを先導して来たことに一因がある。スウェーデンでは、組合員以外にも影響が及ぶ全国労働協約の適用率は9割といわれている。この高い組織率を背景に、かつて賃金交渉は、スウェーデン経営者連盟とスウェーデン全国労働組合連盟の間で、総括的に行われて来たが、現在は、徐々に産業レベルで行われるようになって来た。後にみるが、これは日本の企業内組合内での交渉とは、大きく異なる結果をもたらすことになる。

 

 スウェーデンの労働移動は活発で、男性の平均勤続期間は10年ほど、日本の13年より短い、但し米国は4年ほどです。スウェーデンの若者は転職することに前向きです。これは労働組合が企業の整理解雇を容認する一方、職種毎の同一労働同一賃金により、労働者は転職による不利が無いからです。したがって日本のような最低賃金制はない。こうして転職を促進し、低生産部門を圧縮し、産業構造を高生産部門(高付加価値)へと拡大させていった。低生産部門の大量失業者を、積極的労働市場政策(教育と休業補償)によって、シフトを可能にしているのです。このことが、「アングロサクソン型(英米等)」とそれに追従する日本、つまり新自由主義国との差になってしまったのです。この北欧の産業転換を可能にしたのは、政策によって転職意欲を持つ労働者とマクロ的な経営者連盟と全国労働組合連盟の協議体制があったからです。この協議体制で産業転換も話し合われる。北欧などの労働者はキャリヤアップの為に、日頃から研鑽を積むことになるが、日本では、学校を卒業すれば学業はお仕舞いというわけです。歴史的な背景と政治状況が異なるので、日本の労働組合が北欧型に脱皮出来ないとは思うが、残念です。

 整理解雇が自由な一方、企業が離職者の再就職に対して責任を果たしている。政府からの財政支援の無い民間団体が加盟企業の支援によって、その任を果たしている。

 

 上記の施策やシステムの効果はどのようなものなか? スウェーデンの雇用調整スピードは日本より数倍高く、景気後退からの立ち直りの期間も数割早い。スウェーデンの賃金調整スピードは日本の6倍遅く、日本のように簡単に低下することはない。また、産業を跨ぐ労働移動はスウェーデンの方が活発に行われている。

 

 スウェーデンでは、政権交代が行われ、現在、新自由主義が取り入れらているが、基本的な福祉国家としてのスタンスは変わらない。変わったのは、高福祉や充分な補助はモラル・ハザード(責任感の欠如)を招くとし、働くことへのインセンティブ(動機付け)を重視するようなり、転職時の休業補償期間の削減や、その手続きを実態に即したものにすることにより、失業期間の短縮に成功していることです。

 

 北欧には学ぶべきものは多々あるのですが、基本的な考え方を知ってもらえれば充分です。このやり方で、あらゆる分野が日々革新され、世界トップ10の幸福度を満喫し続けているのです。

 

 

 

 ----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。

 

 

20261002

短縮版 迫る多難な危機  4-3

  


「一時の自己満足の為に人類を破滅させては、神も悲しむだろう」

 

この短縮版は、既に投稿済みの「迫る多難な危機」を、少し内容を割愛、分割して連載します。

 

まえがき

 現在、深刻な危機が同時多発的に地球と人類に迫っています。特に、この20年あまり、一部の大国が身勝手に振舞って来たことでより加速しています。今、私達が立ち上がらないと、子孫に顔向け出来なくなる。家族と世界を再び幸福にしましょう。Make the world and people happy again!

 

--- 目次  ---

 

第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化

 4-3 手強い相手

   破綻は不意に必ず訪れる

   歴史は繰り返す

   テクノ・リバタリアン(テクノファシズム)

   様々な経済理論

 

 


第4章 緊急に対処しなければならない危機:米国の独裁化


 既に見たように、今、世界は危機的な状況に突入しつつある。中でも、米国の独裁化が最も危険で、目前に迫っている。米国で右翼ポピュリズムが、なぜここまで力を得てしまったのか、その背景を見ます。そこには日米欧等先進国に通じる、新自由主義政策の欠陥が深く根付いています。さらに米国特有の病理(特徴的な宗教)が災いしています。

 

 米国が独裁化を回避し本来の民主主義に戻ることが、米国民を迷いと苦難から解放することになり、また世界が一致協力して、世界の危機に対処できるようになる。

 

 

4-3 手強い相手

 規制や監視を単純に強めるだけで、経済にブレーキを掛けず、国民の所得を上げ、暮らしを良くすることが出来るのかと不安に思うかもしれない。しかし、現状しか道がないと思うのは、詐欺師の思うツボです。異なる味方を紹介します。

 

 破綻は必ず不意に訪れる

 

 私は1970年代から、幾多のビジネス書、特に半年から数年先の経済を予測してきた本を読んで来ましたが、間違いなく予想を外している方が目につく、当たることはほぼない。著者の多くは投機家ではなく、当時著名な学者でした。例えば、昭和バブルの時代、5年かけて株価は4倍になり、景気は絶好調でした。しかし1990年にバブルが崩壊し、株価は半年ほどで半減し、当然、地価も景気も急降下でした。巨大企業は残れたが、暴利を貪ろうとした企業と人々は、夜逃げしたり、消えていった。貴重な資産を無くした人が周囲に何人もいた。暴落前後の土地と株式の日本全体の評価損はおよそ1400兆円、GDP3年分が吹っ飛んだのです。被害は甚大でした。これを当時、日本の識者は予測出来たと思いますか? 私は当時、関心を持って世情を見ていました。一部の人は投機に浮かれ、多くの人は投機に乗り遅れたことを後悔し、この景気は危険だと思っている人はほぼいなかった。一人のエコノミスト(経済企画庁内)は崩壊の1年前に、資産インフレへの危険性を著書で指摘していましたが、「1年後に崩壊する」という具体的な期日や大暴落には触れていませんでした。

 

 米国では、2008年のリーマンショック時、金融の神様と呼ばれたグリーンスパン議長でさえ、この崩壊を予見できなかった。彼は、後に米下院の公聴会で「市場の自己修正機能を過信し、自由市場モデルの欠陥を見抜けなかった」と発言している。一方で、数人のエコノミストは1~3年前ほどから異常に気づいていました。ただし暴落の期日の予想までは無理だったようです。これらのことから幾つかの教訓が得られます。トランプが株価を非常に気にしているように、これは株価が大統領支持に直結しているからです。国民の年金や資産の多くは株で運用されているからです。株式は最大の投機対象であり、投機家は借金で投資を行い、ついに国内の民間債務総額がある水準を越えると、過去に幾度も金融危機を起こしています。つまり、現状では金融危機は繰り返す運命にあるのです。バブル崩壊の詳細メカニズムは不明で、的確に予測出来ません。これまで金融危機は4~8年間隔で繰り返して来たのですが、今回は珍しく、リーマンショック以降18年以上も起きていないのです。単純に、マグマが大量に蓄積されていると私は恐れています。現在の経済状況は、絶好調と言うより、綱渡りに近いと考えられます。

 

 トランプの手腕は素晴らしく、期待できるのでしょうか。彼のビジネスキャリヤは汚点の連続です。彼の不動産事業は倒産の繰り返し、法の範囲ですが負債をかぶらず、また違法ギリギリのあくどい手段で入居者の追い出し、また税金をほとんど払っていない(開示を拒否している)。彼は悪徳弁護士なしで事業を継続することは無理だった。プーチンは、トランプが苦境の時、うま味のある案件を提示し助け続けている。トランプの人気はテレビ番組「アプレンティス」で造られたものでした。トランプは科学的知見がほとんど無いので、これからの産業革命を指揮するのは不可能だろう。それはコロナ蔓延時のあたふたぶりで証明済みです。

 

 

 歴史は繰り返す

 

 共和党やトランプの造り出した経済は、巨大企業と富裕層が巣くってしまった経済、また単に衰退しつつある経済になったと言う方が正しいかもしれない。少なくとも、この半世紀の間に大半の国民にとって良い経済ではなくなった。人類史上、大半の国民が経済も含めて上昇気流に乗れた時代があった。英米において19世紀後半から20世紀初頭だった。これは英国の産業革命の成熟期であり、遅れて米国の大量生産方式が進展した時代でした。労働者が始めて政府や権力に対峙して、交渉出来た時代だった。人類史上における画期だった。

 

 ところが反動が起きた。第二次世界大戦後、主に二つの事が欧米を揺るがすことになる。一つは、特に英国でしたが、20世紀初頭は福祉国家に近く、国有企業による財政赤字増大と労働組合による賃金上昇とストに困っていた。もう一つは、米国が、4回の中東戦争でイスラエルを支援したことにより、アラブ諸国が米国を封じ込める為に、OPEC(石油輸出機構)を創設し、原油価格を数倍に上げた。後に30倍を越えることになるが、ずーと後のことです。これにより世界は急激なインフレに見舞われることになった。また米国の保守層が、リベラル的な労働者・黒人・女性等の人権擁護により、社会・文化の急激な変化を恐れたようです。そこで保守層は、レーガンを前面に押し出し、インフレ対策として、金融操作(マネタリズム)を進める一方、一気に労働組合潰しを始めた。この時、英国と日本も同調し、国有企業と労働組合潰しを推し進めた。こうして、20世紀前半に一世風靡した労働運動と累進課税は終わりを告げたのです。つまり、かつての封建時代の惨状に状況に戻ってしまったのです。

 

 こうして見てくると、現在の米国の資本主義だけが、資本資本主義でないことが理解していただけると思います。実は、別に模範例があるのです。それは北欧諸国です。北欧は資本主義を基盤としています。当然ですが、自由市場、私有財産、海外貿易、労働組合(加入率7割)もあります。それに加え、手厚い再分配(医療費原則無料・学費無料・年金完備)がなされており、社会民主主義と呼ばれています。ただ税金は最も高い部類に属します。しかし日本と比べて、税金と公的な掛け金の合計の所得に対する比は、少し多いぐらいです。北欧は、この体制で、幸福度と一人当たりGDPのランキングで200ヵ国中、1位~6位ぐらいに入ることが多い。他の資本主義国より良いシステム、労使間の協調、転職の支援、労働者擁護、男女平等、小学校から環境・政治意識の高揚等があります。それでも、常時、システムアップを図っており、腐敗の無いのが一番です。

 

 つまり、今の米国の資本主義が最良では無く、様々な形があり、かつては別の形でうまく行っていたのです。

 

 

 

 

 テクノ・リバタリアン(テクノファシズム)


  ここ10年ほどで、国の舵取りに大きな波乱要因が加わった。それはテクノ・リバタリアンの出現です。イーロン・マスクやピーター・ティールなどがその代表で、「高度な数学的・論理的知能と巨額の富を持ち、最先端テクノロジーによって国家の規制を排した自由な社会を実現しようとする思想・人物」のことです。庶民が彼らの思想が危なっかしいからと遠ざけようとしても、政治は彼らの資金力と発信力を利用することになる、トランプが露骨に利用して来たように。大統領就任式の時に、名だたるGAFAの代表者たちが寄り添っていたのが、今の時代を象徴していた。トランプと一度決別したイーロン・マスクは、2026年の中間選挙で、また共和党支援に1億ドル以上を投じるとしている。残念ながら、彼の知名度と資金は、その思想の是非に関わらず大量の票を獲得するでしょう。そして、テクノ・リバタリアンの思い描く政策が実現したら、米国はどうなるのか? 懸念される点を整理します。

 

 先ず、彼らが目指す政治思想リバタリアニズム(自由至上主義)の問題です。これまで、米国の惨状は、自由放任の金融投機、寡占により機能しない自由市場、富裕層による政治支配、その結果として貧富の拡大が続いていると説明して来ました。ところが、彼らは公権力や国家の介入を極限まで排除し、個人の自由と自己責任の最大化を目指している。具体的には、自由な理想社会を造る為に、選ばれた天才だけが政治を担い、愚民は政治に口出さなくても良いと言うことになる。イーロン・マスクの現実の経営手腕、Twitter買収時の人権・倫理関連部門の全員解雇から、類推できる。

 リバタリアンにも様々な人物がいて、極端なケースでは、政府は不要でインターネット上で国民は平等に関り、暗号通貨で経済を回すとし、空想に近いものもある。言い換えると、天才と巨大資金による独裁から無政府主義まであり、共通しているのは、19世紀後半から20世紀前半、欧米が目指して来た自由民主主義とは相容れないもので、非常に危険です。



 歴史を振り返ると、同様の横暴な人物に振り回された事例がある。時代を牽引した二人の発明家兼経営者を例に挙げます。18世紀半ば、英国の産業革命に火をつけた一人アークライトは、水力紡績機の特許を取得し、これが近代的な工場制機械工業の先駆けとなった。彼が建てた工場では、何万人もの労働者が囲いに入れられ、厳しく管理された。労働者には時計の針のように規則正しい行動と単調な作業が強要され、人間の本能に逆らうような過酷な時間管理と労務管理の原型が作られたとされています。このような経営者の横暴が当時蔓延っていたからこそ労働運動が起きたのです。

 米国でも幾つか類似の事例があり、有名なのは自動車の大量生産システムを確立したフォードです。彼が労働組合を敵視し、組合を最後まで認めなかったことは有名です。私設警察・スパイ組織を作り、工場内に多数のスパイを潜入させ、労働者が組合の噂をしていないか四六時中監視させました。労働者同士が仕事中に私語を交わすことすら禁止され、違反者は即座に解雇されました。工場で、全米自動車労組が合法的なビラ配りを行おうとすると、雇われたギャングらが襲撃し激しい暴行を加えた。フォードは自分が思う労働者像に叶う場合は高給を出し、気に食わなければ即解雇しました。現代ではアマゾンも労働者に対して同様な振る舞いを見せていました。

 

 ここで成功している起業家の能力・性格について注意すべきことがあります。イーロン・マスクやピーター・ティールは素晴らしい能力を持っているが、自閉症傾向(アスペルガー症候群)が有り、シリコンバレーの起業家に多い。この傾向は、他者との意思疎通や感情の理解に困難をもたらす。従って、上述の二人の経営者にも言えるのですが、彼らは労働者、市民、弱者への共感に乏しい。ある心理学者は、経営者には社会性パーソナリティ障害が多く見られ、他者の権利を軽視し社会規範を守らない傾向があると言う。我々周辺にもブラック企業、ワンマン会社はあり、結構、成長しているケースがあります。つまり、共感力を持たないテクノ・リバタリアンは事業に専念してもらい、政治への直接参加は避けるべきなのです。

 

  

 様々な経済理論

 

 この半世紀、様々な奇抜な経済理論が生まれては消えていくのを見てきました。国の舵取りを大きく変える時に、学者に経済理論を並び立てられ、そちらは危険だ、こちらだと言われると返す言葉がない。しかし、実はほとんど失敗するか役立たずだった。幾つかの理論を簡単に振り返ります。

 

 最近では、現代貨幣理論があります。これは「自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても破綻(デフォルト)しない」と言う、累積財政赤字トップの日本にとっては夢のような解決策です。数人の議員は、熱心に説き、大勢は無視です。私も惹かれますが、やはり怖い。提唱者は、通貨発行が大量になり、インフレが加速すれば、課税して抑え込めば良いと、唯一の欠点に対して、解決法を提示している。これが信用できない。理屈は簡単だが、政治的には簡単ではない。暗号資産についても同様の不安があります。暗号資産(仮想通貨)で良く言われるのが、ブロックチェーンは完璧なので贋金のような事態は起こらず、マイニング(実質的な通貨発行権)も管理出来ているので、順調に伸びるとされている。しかし、2016年、イーサリアムが約60億円ほど不正流出したのを皮切りに、その後も、様々な攻撃や不正流出が起きている。しかし最重要な事は、人類がこの300年間、国(中央銀行)が貨幣発行と管理で苦しんで来た経緯を考えると、雨後の竹の子のように、暗号資産が参入してくる事態は、とてもじゃないが許容できない。インフレ抑制のために貨幣供給量を減らすとか、失業者を減らす為に供給量を増やすとかの制御を適切に出来るはずがない。現状は、金儲けに目がくらんで、ねずみ講のように、先駆けた者が多くの利益を得られるからであり、今一つは資金洗浄の為に利用したいのでしょう。私には愚かな喧噪にしか映らない。

 

 レーガン政権が当時華々しく喧伝した「ラッファー曲線」と言うのがありました。非常に単純で分かり易いものでした。これは税率を下げれば労働や投資の意欲が高まって経済が活性化し、最終的には税収が逆に増加するという主張でした。私はあまりの単純さゆえに驚いた。しかし、結果としてこの政策は巨額の財政赤字(と貿易赤字)をもたらすことになりました。失敗は、国防費の巨額増、議会に拒否された社会補償費削減、FRBの高金利政策による景気の落ち込みが、大きかったようです。この理論はサプライサイド経済学(供給側の経済学)の一部ですが、この逆がケインズのデマンドサイド経済学(需要サイド経済学)です。実は、この半世紀はこの学派が対立し、レーガン以降、それまでのデマンドサイド経済学に代わってサプライサイド経済学に取って代わられたのです。サプライサイド経済学は、減税や規制緩和により、企業の生産意欲や供給力を高める。「モノを作れば売れる」という考え方がベースにあります。デマンドサイド経済学は、政府支出(財政出動)や減税などで、人々の消費や需要を刺激する。「買いたい欲求(有効需要)が経済を動かす」という考え方がベースにあります。ニューディール政策はデマンドサイド経済学の成功例でした。現状の悲惨さは、サプライサイド経済学によると言えます。

 

 これらの経済政策の失敗事例から学べる教訓は、経済政策や経済のコントロールは難しく、必ず修正が必要だと言うことです。しかも、修正の目的が国民の利益に叶うべきなので、民主主義が不可欠なのです。必ず、常時、民主主義体制が維持されている必要があるのです。独裁は絶対に避けなければなりません。

 

 

 ----全体の目次----

第一章、世界に迫っている危機の要約。

第二章、人類はこれまでに危機に対してどう対処して来たか。 

第三章、我々が直面している重大危機。

第四章、米国の衰退と世界の危機回避能力喪失は一体。

第五章、如何にあるべきか。

第六章、成功している北欧は資本主義のもう一つ道。